国立競技場の記憶 vol.12 #ThisisTOKYO

COLUMN2022.4.09

国立競技場の記憶 vol.12 #ThisisTOKYO

いよいよ4月29日(金・祝)に、東京が新国立競技場で初のJリーグを戦う。

改修前の国立では、Jリーグ加盟初年度から多くの公式戦を戦ってきた。思い出に残るスーパープレーもあれば、インパクトのあるイベントもあった。悲願のタイトル獲得以降、東京がすべてのタイトルを国立で獲得していることは、東京と国立の深い縁を象徴している。

俺たちの国立。

This is TOKYO.

新しい一歩を国立で刻む前に、これまでの国立に残してきた足跡、思い出を当時の写真とともに振り返る。

2010年 意地のオーバーヘッド

【試合情報】
第90回天皇杯全日本サッカー選手権大会 準決勝
FC東京 1-2 鹿島アントラーズ

1999年のナビスコカップ準決勝も相手は鹿島アントラーズだったが、クラブ史を振り返ると天皇杯での対戦がとにかく多い。それだけ鹿島がカップ戦でいい位置につける確率が高く、東京がそこまで到達したときに当たるということなのだろう。

東京ガス時代の1994年は天皇杯1回戦で鹿島に2-0で勝利。1997年の天皇杯準決勝ではジョルジーニョとビスマルクが揃っていた当時の鹿島と激突して1-3の敗戦。そこから13年の時を経て、2010年の12月29日に東京は再び鹿島と天皇杯準決勝で顔を合わせた。


12月4日京都サンガF.C.に敗れてJ2リーグ降格が決まっていた東京は、その前にベスト8進出を決めていた。12月25日の準々決勝でアビスパ福岡を下し、最後のタイトルを獲ろうとの意地もあり勝ち上がったのだ。

すでに藤山竜仁と浅利悟の姿もなく、時代の区切りに新世代の東京がどこまでやれるかの試金石のようでもあった。この年はナビスコカップ、スルガ銀行チャンピオンシップ、J1を合わせて4試合が国立で開催されている。チャントにもあるように「スルガを獲って世界一」にも喜びはあったが、やはり年の瀬に決勝進出をかけて戦う天皇杯準決勝は格別。2年前の同じ日にはエコパスタジアムで柏レイソルに敗れ決勝進出を逃しているが、今度こそファイナリストになれるのだろうか──。

興梠慎三、大迫勇也、野沢拓也ら錚々たる顔ぶれの鹿島は序盤、シュート攻勢に出て東京はこれに苦慮。しかし前半39分、リカルジーニョの左からのクロスを平山相太がオーバーヘッドで叩き込む!この大会4得点目となる劇的な一発で東京が先制した。


しかし後半22分、FC東京U-18出身の宮崎智彦が左からあげたクロスを大迫勇也にヘディングで決められ同点に。延長前半4分にはこの日二枚目のイエローカードを提示された米本拓司が退場となってしまう。そしてPK方式の決着が見えてきた延長後半16分、興梠に右足のシュートを決められ、東京はついに力尽きる。

リーグ戦の悔しさを天皇杯で晴らすには、あと一歩が足りなかった。

Text by 後藤勝(フリーランスライター)