いよいよ4月29日(金・祝)に、東京が新国立競技場で初のJリーグを戦う。
改修前の国立では、Jリーグ加盟初年度から多くの公式戦を戦ってきた。思い出に残るスーパープレーもあれば、インパクトのあるイベントもあった。悲願のタイトル獲得以降、東京がすべてのタイトルを国立で獲得していることは、東京と国立の深い縁を象徴している。
俺たちの国立。
新しい一歩を国立で刻む前に、これまでの国立に残してきた足跡、思い出を当時の写真とともに振り返る。
2013年 夢が現実へ。20年越しの国立
【試合情報】
2013Jリーグヤマザキナビスコカップ/Bグループ 第6節
FC東京 2-1 アルビレックス新潟
2013Jリーグ ディビジョン1 第23節
FC東京 2-3 サガン鳥栖
2013シーズンは国立競技場が特別な舞台になったタイミングが2回ある。
1回目は8月28日のJ1リーグ第23節サガン鳥栖戦。2020年の五輪開催地を決定する9月7日の国際オリンピック委員会(IOC)総会(場所はアルゼンチンのブエノスアイレス)を控え、試合前に東京五輪招致イベントをおこない、東京ドロンパが聖火台にあがった。1964年の東京五輪でも使用された聖火台での点火を東京のマスコットが引き受け、首都のJクラブとしての責任を担った瞬間だった。
もう1回は5月15日のナビスコカップグループステージ第6節アルビレックス新潟戦。20年前の同じ5月15日にJリーグ全体のオープニングマッチであるヴェルディ川崎対横浜マリノスが開催されたこのスタジアムでの公式戦ということもあり、メモリアルマッチとして耳目を集めた。
そしてなにより、当の選手たちが士気を高めていた。1993年5月15日にスタンドからピッチを見つめていた石川直宏と李忠成がスタメンで出場。そして国立にめっぽう強く、Jリーグに憧れて成長したJリーグ世代である石川が先制点を決めた。1-1に追いつかれたあと三田啓貴のゴールで勝ち越した試合だったため、石川の決勝点とはならなかったが、居合わせた誰もが“国立で持っている”石川を祝福した。
「ゴールを決めたときは、自分のところに来い、と、強い想いを抱いていたときにボールが来て、ほんとうに集中して決めることができました。(今日のゴールは特別か?)特別ですね。もう一回打てと言われても打てないし、その(特別な)雰囲気のなかでやることもできない。自分にとって特別なゴール、チームにとって大きな1勝で、Jリーグにとってはまた新たなスタートになると思います」
試合後、石川はこう語った。20年前の5月15日は夢が現実の目標へと変わった日。その目標とする舞台で、Jリーグが開幕したときの自分の記憶を辿りながら試合に入った石川は、「最高でした」と感無量の面持ちだった。
Text by 後藤勝(フリーランスライター)