いよいよ4月29日(金・祝)に、東京が新国立競技場で初のJリーグを戦う。
改修前の国立では、Jリーグ加盟初年度から多くの公式戦を戦ってきた。思い出に残るスーパープレーもあれば、インパクトのあるイベントもあった。悲願のタイトル獲得以降、東京がすべてのタイトルを国立で獲得していることは、東京と国立の深い縁を象徴している。
俺たちの国立。
新しい一歩を国立で刻む前に、これまでの国立に残してきた足跡、思い出を当時の写真とともに振り返る。
2021年 不安と戦った1年の最後に
【試合情報】
2020JリーグYBCルヴァンカップ 決勝
FC東京 2-1 柏レイソル
2020年は世界中の人たちにとって、抗うことのできないアクシデントへの対応に追われた年だった。新型コロナウイルス感染症感染拡大の影響を受け、不安要素と戦い続けた1年。
だからこそ、2021年1月4日、新国立競技場で迎えたルヴァンカップ決勝戦は、多くの歓喜をもたらしてくれた。
クラブにとって11年ぶりのタイトルは、長谷川健太監督のもとでの初タイトル、新国立競技場で初の決勝戦……と初づくしでもあった。
ただ、喜びと同時に、監督選手たちにとっては無事に開催され、シーズンを戦い抜くことができたという安堵感、感慨の思いも強かったはずだ。試合後の森重真人も「嬉しさと共にホッとしている。今はこの2つの気持ちしかありません」と正直な心境を吐露している。
さかのぼること秋――。
ルヴァンカップ準決勝では、マッシモ フィッカデンティ監督率いる名古屋グランパスに、安部柊斗の2得点とアダイウトンのダメ押しゴールで快勝。準決勝ではレアンドロのフリーキックを含めた2発で、川崎フロンターレに完封勝ち。
そして11月に行われる決勝で勝利し、カタールで行われるAFCチャンピオンズリーグ(ACL)へのはずみに……と考えていたと思う。
しかし決勝直前、対戦相手の柏レイソルにクラスターが発生、決勝戦は翌年1月4日に持ち越されることとなった。
延期になった分、怪我明けの東慶悟には出場チャンスが巡るという明るい話題もあったが、一方、ACLでディエゴ オリヴェイラが負傷。何よりチームとして疲労困憊のACL、リーグ最終盤から、この1試合のためにもう一度力を振り絞るのは至難のようにも感じられた。
それでもチームは粛々と、かつ高い集中力をもって準備を進める。
1月4日、お正月気分の残る新国立競技場。
どこまで動けるのか…との心配は無用だった。天皇杯にも似た独特の雰囲気の中で東京は躍動する。そして、まるで兄貴分のディエゴに捧げるように、ドレッドヘアのレアンドロと、アダイウトンが決めて柏を突き放す。
長谷川健太トーキョーを象徴するかのようなブラジル選手たちの活躍もあり、最後まで手を抜かず、全力で駆け抜けたシーズンを優勝で締めくくった。
いつだって一筋縄ではいかない。けれども「俺たちの国立」では絶対に勝ちとる。目の前のゲームに集中して、真摯に、総力で……勝利の要因はいろいろと挙げられるだろうが、そういうところがすべて東京っぽいのではないか。
ちなみに長谷川健太監督は「一度タイトルを獲ることで、他のタイトルが近づくもの」と言っていた。OK、ここからもっともっと近づいていこうじゃないか。
Text by 藤原夕(フリーライター)