<マッチレビュー>
今シーズンのルヴァンカップはすでにグループステージの敗退が決まり、今日の一戦が最終戦となった。ホーム味の素スタジアムに迎えるのは、プレーオフ進出のために勝点3がほしいアビスパ福岡。今シーズンは2度対戦し、どちらも東京が敗れている。東京にとってはホームで借りを返したい一戦となった。
アルベル監督が明言しているとおり、この一戦では若手選手やリーグ戦で出場時間の短い選手がスタメンに並んだ。安田虎士朗選手がプロ初スタメン。またU-18所属で2種登録の東廉太選手と熊田直紀選手がスタメン出場し、土肥幹太選手がサブで初めてメンバー入り。来シーズンの加入が内定している2種登録の荒井悠汰選手も3月15日のジュビロ磐田戦以来となるメンバー入りを果たした。
お互いにボール保持を分け合う展開のなかで、前半25分を過ぎた頃から東京がボールを保持してじわじわと相手を押し込んでいく。前半の終盤にはバイタルエリアで相手を押し込んでの連携からフィニッシュまで持ち込み、セカンドボールも回収して分厚い攻撃を展開した。ただし、フィニッシュの場面でシュートがミートできなかったり、枠を捉え切れずに0-0で試合を折り返した。
後半に入っても東京がボールを保持する展開が続く。相手を押し込む中で、自陣に引いて守備ブロックを固める相手をなかなか打開できない。焦れずに相手を押し込む中で、後半26分にはセットプレーでチャンスメイク。左からのコーナーキックをファーサイドで東廉太選手がヘディングで合わせるが、シュートは相手ゴールキーパーの好守に阻まれる。その後も相手に反撃の余地を与えずに押し込み続け、ボールを動かし続けながらゴールへの道を探る東京。終盤には三田啓貴選手がペナルティエリアに抜け出してあと一歩という場面も作ったが、最後までネットを揺らすことはできず0-0でタイムアップを迎えた。
勝利こそ挙げられなかったものの、若い選手がチームのプレースタイルをしっかりと表現し、ベテラン選手は彼らを盛り立てるようにサポートした。チームとしての結束を強めていきながら、試合の主導権をしっかりと握ってゴールに迫り続けたことはリーグ戦に向けたポジティブな材料となる。中2日で迎える柏レイソルとの一戦に向けて、手応えを得た一戦となった。
[アルベル監督インタビュー]
Q、試合を振り返ってください。
A、今日は、我々の特に若手選手の成長について振り返りたいと思います。最初の10~15分は若手選手がプレースピードに慣れることができず、ドタバタした時間が続きました。相手にはチャンスを作られてはいませんでしたが、我々が期待するプレーはできていなかったと思います。必要ではない状況で簡単にボールを失うことが続くと、我々が期待しているプレーはできません。当然、相手のゴールに近いゾーン、アタックゾーンではリスクを冒した大胆なプレーが求められます。しかし、そのゾーンに近づくまではより正確に慎重にプレーしないといけません。
森重は久しぶりにピッチに立ったこと、そして横で17歳の選手がプレーしていたこともあり、そういう意味でも試合のスタートでなかなかリズムがつかめないのは当然だと思います。そして(東)慶悟をボランチで試してみたいという狙いもありました。
そのような様々な理由により、最初の10~15分はなかなか良い形で後ろからのビルドアップができていませんでした。けれども、その後は違った展開で試合が進んでいたと思います。前半だけでも明確なチャンスを2つ作ることができていました。そして我々が期待するテンポでの良いプレーが随所に出ていたと思います。怪我から復帰した森重は、試合勘を取り戻させるために最初から45分間だけプレーする予定でしたので、ハーフタイムに交代しました。45分良い感覚でプレーできていたので、次につながる出場になったと思います。
福岡のベンチには危険な選手が複数人いました。そのような危険な選手が後半に投入された際、17歳の東廉太を上手くサポートするためにセンターバックを3枚に変更しました。17歳のセンターバックがルキアン選手と対峙するのはやはり難しいものです。そこでミスがあったとしても上手くカバーできるようにスリーセンターバックに変更しました。ただ、システムというのは特に重要ではないと理解しています。もっとも重要なのはプレースタイルですし、立ち位置を変えても上手く表現できていたと思います。若手選手は状況の変化に上手く適応していたと思います。後半もいくつかチャンスを作れていましたし、PKの可能性があるような場面も作ることができていました。もちろんこれは審判を批判しているわけではありません。
後半、17歳の選手が3人同時にピッチに立っている時間が長くありました。福岡はチームの中心選手が多かったと思います。難しい相手に対して、17歳の若手選手たちが、自分たちの個性を大胆に発揮していたのは評価に値すると思います。そういう意味でも、ピッチに立っていた若手選手を誇りに思います。また、ベテランの(東)慶悟や三田や児玉が、若手選手が大胆にプレーすることをサポートしてくれていたのも評価に値すると思います。
我々のアカデミーが上手く選手を育成できていることを高く評価できる試合だったと思います。FCバルセロナでアカデミーダイレクターを務めている時にも同じような状況がありました。若手選手の中に才能のある選手がいるのであれば、彼らにチャンスを与えなければいけないということです。私がFC東京にいる限りは、才能がある若手にはどんどんチャンスを与えていきたいと思います。
Q、東慶悟選手のアンカーとしての評価をお願いします。
A、良いプレーをしていました。もちろん彼は攻撃の長所を持った選手だと思いますし、守備の面でも貢献できる選手だと思います。彼のトレーニングでのプレーを見ている際に、足元の技術はもちろんのこと、良い形で配球するところを評価しました。そして空中戦のところでも守備で貢献できます。良いポジショニングができるという長所もあります。そういう様々な理由から彼をボランチで試したいと思い、そのテストは上手くいったと思います。ボランチの選択肢がひとつ増えたと言えるでしょう。
本人にも直接伝えましたが、我々のボランチは、自分が走るというより目の前にいる安部柊斗や松木玖生を走らせてバランスをとる役割だよ、と言いました。インサイドハーフの後ろのボランチは、チームにパウサ(落ち着き)を与えられるような選手です。そういう意味でも、青木であったり(東)慶悟というのは、そうした長所を持った選手だと思います。今日のボランチとしての(東)慶悟は良い点数を与えることができると思います。
Q、若手選手にチャンスを与えてきたルヴァンカップが終わり、若手選手に今後、どのような姿勢を見せてほしいですか。
A、若手選手にチャンスを与える機会は探していきたいと思います。リーグ戦で大胆に若手選手にたくさんのチャンスを与えるのは難しくなります。ただ、トップチームでトレーニングをすること、トップチームで設定されているトレーニングマッチに出場することも成長を促す素晴らしい機会になると思います。そうした形で引き続き若手選手にチャンスを与えて成長を促していきたいと思います。
ルヴァンカップは最初に10試合が保証されているわけではありません。今回のように6試合をグループステージで戦い、その後にプレーオフに進む形式です。勝ち上がった際に、より上の順位を目指すのであれば、若手選手よりも経験のある選手を起用しようと思う監督も多いと思います。そういう意味でも、勝ち上がったら若手選手にチャンスが増えるかと言えば、必ずしもそうとは言えないと思います。
良いご質問でしたので、私に良いアイデアが浮かびました。例えばルヴァンカップの改善案として、グループステージがより多くのチームで行われるというのはどうでしょう。そして、少なくとも5人のU-23の選手をスタメンで起用しなければいけないというルールを加えるのはどうでしょう。日本にはリザーブリーグが存在しません。そういう意味でも、若手選手の成長を促す必要があると思います。
[選手インタビュー]
<東慶悟選手>
Q、ボランチとしての出場でしたが監督からはどのようなことを期待されて試合に入りましたか。
A、まずはポジションのことよりも、若手の選手が多かったのでチームをまとめてほしいという話はありました。細かい指示というよりは、なるべくポジションバランスを崩さないように意識してほしいと言われていました。
Q、リーグ戦とはメンバーや配置が変わる中で、90分間を通して前にも後ろにも気を配って中心となってプレーされていたと思います。
A、今日初めてボランチとしてスタメン出場をして課題もありますが、どんなポジションで出場しても自分の良さを出して、チームが勝つためにプレーして食らいついていきたいと思います。
Q、ここから個人としてさらに伸ばしていきたい部分はどこですか。
A、ボランチでも決定的なパスは出せると思いますし、そこは自分の長所でもあると思います。守備の部分では、元々守備的な選手ではないので、強度や危機察知はもっと高めていかなければいけないと思います。今年で32歳ですが、まだまだ成長して上手くなりたいですし、新しい監督になって色々なことを学んでいるので、もっと吸収して次にチャンスが来た時は勝利に貢献できるプレーをしたいと思います。
Q、ボランチとして出場した手ごたえはいかがでしょうか。
A、リスク管理やボールを回収する役割が大きいポジションであり、何度かできたとは思います。あとはプレーしながらポジションを修正したり、読みの部分は練習しながら改善していきたいと思います。
配給の部分では、キックの精度だったり、縦パスの精度を高めてチームの循環を生むポジションだと思うので、できた部分とできなかった部分がありますが、ボランチで90分間プレーできたことはよかったと思います。コンディションは良く、練習からいいプレーは出来ているので続けていきながら監督の期待に応えていきたいと思います。
Q、ボールが上手く回っている中で前向きにいい状態でボールを持っていれば縦パスをつけても良い、というのは他の選手のヒントにもなったと思います。
A、相手がブロックを作って守っている中でも縦パスを通していかないとブロックを崩すことはできないので、ボランチの選手でも周りを活かすためには必要なプレーだと思います。そして、ポジションに限らず、もっとコンビネーションで崩していけるシーンをチームとして増やしていきたいと思います。
Q、U-18の熊田選手がプロ初スタメン出場をしたり、若手選手が多く出ている中で、改善点はありますか。
A、特にU-18の選手とは練習を一緒にやれていないですが、ボールが配給できれば良さが出る選手だと思うので、周りがサポートして、引き出してあげることが大事だと思います。
<品田愛斗選手>
Q、アルベル監督はルヴァンカップを若手の育成の場と言っていますが、今日の試合は品田選手に対してどのようなリクエストが監督からありましたか。
A、試合前のミーティングでは、渡邊選手と自分のインサイドハーフには、『何キロでも走れ』と指示があったのと、若手選手に向けては『思い切ってプレーしなさい』と2つ指示がありました。
Q、いつもは落ち着いて配球するイメージがありますが、今日は動的なプレーが多かったと思いました。手ごたえはどうでしたか。
A、前半に今日一番のチャンスといえる、自分の持ち運びからシュートまでというシーンもありましたし、あそこで得点をとれなかったことが悔しいですし、結果を出さないとJ1リーグの試合で選ばれないと思います。ただ、今までの練習試合でもあのようなプレーをイメージしてプレーしていたので、一つ形に出せたことは良かったと思います。
Q、インサイドハーフの感覚は今日の試合でつかめましたか。
A、アルベル監督のやり方は約束事もあり、考えながらプレーしていましたが、試合前にも言われた通り若手選手は思い切りプレーしなさいという事を念頭に、自由さを持ってプレーしようと思って試合に入りました。つなぎの部分や、前につける部分でも良さは出せたのかなと思います。
Q、U-18出身の選手やアカデミーの選手が多かった中で、自分がまとめようという意識はありましたか。
A、今日は自分もラストチャンスだと思っていたので、そこまでチームをまとめるという余裕はなかったですが、やりやすさはありました。
Q、試合開始直後から気持ちが入ったプレーが見られました今日の一戦に臨む心境を教えてください。
A、ここまでなかなか試合に絡めていなかったので、この試合でやれないと次はないという気持ちで臨みました。気持ちの部分をしっかり作って、数字を残したかったというのはありましたが、自分のプレーは少し表せたと思います。
Q、最後まで気持ちが切れませんでした。
A、FC東京のエンブレムを付けている以上、それは最低限のことですし、昨シーズンから18番を背負わせていただいているので、そういった部分を踏まえて個人としてもチームとしても結果を残したかったです。
<東廉太選手>
Q、プロの試合で90分プレーしてみていかがでしたか。
A、今日は憧れている森重選手の隣で一緒にプレーすることができて、自分のなかでも今までで1番大きな経験になりました。森重選手は世界で戦ってきた選手なので細かい部分まで色々盗もうと思っていました。練習からしっかりプレーを見て学んでいますが、今日は相手を引き付けて逆サイドに展開するなどトップクラスのプレーを間近で体感できすごく良かったです。
自分自身、前半は全然ダメでした。パスミスも多かったですが、東選手や三田選手や森重選手がすごく声をかけてくれたので、後半切り替えてプレーして試合を終わることができて良かったです。後半コーナーキックから三田選手が良いボールをあげてくれたのを自分が決めきることができなかったので、そこを決めきれば勝てていたと思いますし、仕留めきることも今日の課題として残りました。
Q、味の素スタジアムでファン・サポーターが多くいる中でのプレーはいかがでしたか。
A、今日は母親が試合を見に来てくれていました。いつも気合が入っていますが、そういった意味でいつもとは違う特別な想いでしたし、自分が味の素スタジアムに立っている姿を初めてみせることができました。一番のサポーターなので、そこは全力で期待に応えたいと思いプレーしました。
Q、今シーズンここまで出場してみた手応えと課題はいかがですか。
A、徐々に課題も多くなってきて、そこを埋められる部分は埋めてきましたが、まだまだプロの世界では及ばないですし、自分はU-18でもかなわない部分もあります。貴重な経験をさせていただいているので、課題を明確にしてもっとトレーニングから意識をあげていかないといけないと思います。
Q、ルヴァンカップが終わり、今後はリーグ戦が続いていきますが意気込みはいかがですか。
A、森重選手や木本選手がいて、エンリケ選手も復帰してくるので、そこに入れるぐらいの力をつけないといけません。まだ足元にも及ばないですが、今日の試合のように森重選手のプレーなどを吸収して、盗んで自分の物にし、その回数を増やしていき、いつか超えるのが目標なので、憧れではなくライバルになれるようにしっかりやっていきたいです。
<熊田直紀選手>
Q、トップチームでの初スタメンとなりました。試合を振り返ってください。
A、難しい試合ということはわかっていましたが、個人的には結果を求めていました。勝てなかったことももちろん悔しいですが、得点を取れなかったことが一番悔しいし、悔いが残ります。
Q、味の素スタジアムで初めてプレーした感想を聞かせてください。
A、ファン・サポーターのみなさんも多く来てくださって、本当にチカラになりましたし、プレーしやすい環境でした。
Q、今日トップチームで長く出場したことで、将来の目標が現実的になってきましたか。
A、そういうことは考えずに、この先も100%のチカラでトレーニングや試合に臨み、またこの舞台に辿りつきたいと思います。
Q、今日の試合を経験して、今後への課題は見つかりましたか?
A、U-18での試合と強度が全然違いました。なので、この強度に慣れるということもそうですし、U-18では、自分がチームを引っ張れるようにこの経験を活かしていきたいです。