<前節・横浜FC戦のレビュー>
開幕戦以来およそ1か月ぶりのホームゲームは、獲るべき選手がゴールを獲って、鮮やかに勝点3を手に入れた。
試合はいきなり動く。前半5分、仲川輝人選手が起点となり、中村帆高選手のパスを受けたディエゴ オリヴェイラ選手が反転しながらゴールに流し込んで先制点を手にする。
前半に関しては、ボールを保持して試合をコントロールすることができず、ゴール前で完全にフリーな状態でシュートを打たれるなど決定的な場面も作られた。そこでチームを救ったのはヤクブ スウォビィク選手だった。この日、スウォビィク選手は90分を通して少なくとも3点分は決定的なシーンでビッグセーブを見せた。チームの勝利を最後方から支えた。
なかなか試合のコントロールが効かないなかで、追加点はチームのもう一つのお家芸から生まれた。前半27分、前線からの連動したプレスを仕掛けると、仲川選手が相手のパスをインターセプトしてゴールに流し込み、ハイプレスからのボール奪取とショートカウンターでリードを広げた。
オウンゴールで1点を失って試合を折り返したが、後半の頭から投入された森重真人選手と塚川孝輝選手がボールを動かすハブとなってチームに落ち着きをもたらす。経験のある選手が試合を落ち着かせると、若手選手が躍動し攻撃が活性化した。特にインパクトを残したのは俵積田晃太選手。左サイドで果敢にドリブル突破を仕掛け、決定的な場面にも関わった。
後半17分には、前半の途中に投入された長友佑都選手がマッチアップで勝利してクロスボールをゴール前に入れると、ディエゴ選手が頭で冷静に流し込んで試合を決める2点目をゲットした。
試合後にアルベル監督が苦言を呈したように前半はリードを奪ったもののボールを保持できずに苦しんだが、90分の中で修正する力を発揮し、後半は内容でも相手を圧倒した。
<プレビュー>
クラブにタイトルをもたらした長谷川健太元監督が率いる名古屋グランパスとの対戦は3度目となる。昨シーズン、ホーム味の素スタジアムで戦った一戦は引き分けに終わり、内容の部分でも課題を残す形に終わった。
昨シーズンのアウェイ最終戦となった対戦時には、90分に渡ってボールを保持しながらも先制を許す展開。後半に猛攻を仕掛けると、木本恭生選手のゴールで同点に追いつく。しかし、自陣でボールを奪われるミスから、シーズン途中に移籍した永井選手にゴールを許し勝ち越しを許すと、ボールを保持してセカンドボールをことごとく回収し相手陣内で試合を進めるも、ゴールをこじ開けるあと一手が出せずに敗れた。
東京を知り尽くす相手指揮官に対して、青赤の選手たちが成長の跡を見せることができるか。昨シーズンの課題であったボールポゼッションをしたあと、どのようにゴールを奪うかはプレシーズンに徹底してトレーニングを行ってきた。前節の横浜FC戦ではその成果も見せることができた。
球際に強く、堅守速攻で戦ってくる名古屋に対して、臆することなくボールを回して相手を走らせ、固められたゴール前をアイディアと個人の力でこじ開けることができるか。アルベル体制2シーズン目の成長を示すのに格好の舞台で、東京が昨シーズンのリベンジに臨む。
[アルベル監督インタビュー]
Q、バングーナガンデ佳史扶選手が日本代表に選出されました。
A、彼が日本代表に初めて選出されたことをとても嬉しく思っています。今回招集されているメンバーから、若い選手にチャンスを与えるというメッセージのある選考だったと思います。若い選手に期待しているというメッセージも込められていると思いますし、Jリーグのチームでも、良いプレーをしていれば、若くても日本代表につながるというメッセージも含まれていると思います。重要なことは、選手はプレーすることによって成長するということです。ヨーロッパに行けば成長できるわけではなく、プレーしなければ当然成長が止まってしまいます。そういう意味でも、今回Jリーグでプレーしている若い選手を招集してくれたことにとても嬉しく思います。
Q、昨シーズンから成長した部分は何ですか。
A、昨シーズンから、彼のテクニックのレベルは素晴らしかったと思います。最後のゾーンで攻撃に関わるプレーは改善点がありました。大きな改善点であった守備の部分は、トレーニングを継続し励んだことで、今はしっかりと改善できていると思います。継続して、1対1の局面の対応は改善すべきだと思っています。攻撃のところでも、最後のクロスの精度をさらにレベルアップできれば、より素晴らしい選手になると期待しています。
Q、アルベル監督から見本にして欲しい海外選手を伝えていたりしますか。
A、通常サイドバックは、スピードに特長がある選手が多いと思いますが、彼は特殊な特徴を持っているサイドバックだと思います。高いレベルでバランスよく多くの要素を持っていますし、テクニックのレベルが高いうえに、攻撃での貢献度が大きいです。その良いバランスがあるゆえに、具体的にめざすべきお手本のような選手を選ぶのは難しいです。
Q、中村帆高選手も日本代表に入ってもおかしくないと思います。
A、中村選手の守備能力を上回る選手は、日本にいないと思います。そういう意味では、世界レベルでも通用すると思います。攻撃のバランスを保つために、高い守備能力に見合った技術を磨いてきました。フィニッシュゾーンでのクロスの精度も改善してきています。更にそこがレベルアップすれば、偉大な選手になれる可能性を秘めていると思います。昨シーズンの序盤では、中村選手だけではなく、佳史扶選手も試合に出場していませんでした。高いレベルに成長するには、重要なポイントがあると思います。それはメンタルの強さ、成長する能力、学ぶ能力です。長友選手は今36歳ですが34歳の時と、今ではどちらが素晴らしい選手でしょうか。今の方が良い選手だと思います。なぜならば、彼は成長する能力を持っているからです。だからこそ私も、一人ひとりの選手がどれくらい成長する能力を持っているかに注目しています。この世界では、ある特定のレベルまで達した時に、それ以上成長しない選手がたくさんいます。ですが、世界中の偉大なレベルにたどり着いた選手は、日々成長し続ける能力を持っている選手たちだけです。我々のプレースタイルは、彼らの成長を促す要素の一つだと思います。選手一人ひとりが成長しないといけない、成長することを求め続けるスタイルだからです。多くの選手がおびえてプレーする傾向にありますが、リスクを冒してプレーしないといけないです。我々のプレーというのは、リスクを負う、勇気を持ってプレーすることを求めます。そして、それに応えて成長した選手が、中村選手だと思います。
Q、名古屋戦に向けて意気込みをお願いします。
A、名古屋の長谷川監督は、前線にいるクオリティーの高い3選手が、プレーすることを心地よく思い、チームを指揮していると思います。小さなミスを犯せば、そこから相手は決定的なチャンスを作ってくると思います。我々は、戦線離脱している選手を複数抱えていますが長いシーズンでは起こりうる状況です。偉大なクラブは、そういう難しい時期をしっかり乗り越えることができます。今は、苦しむ時期だと思い、乗り越えたいと思います。時期が変われば流れも変わり、怪我人の人数も変わってきます。その難しい時期にしっかりと勝ち点を積み重ねることができるチームがやはり偉大なチームですし、そのようなチームをめざしています。今週も良い準備ができているので、明日も良い試合ができると確信しています。
Q、横浜FC戦を踏まえての課題は何ですか。
A、横浜FC戦は、前線からのプレスでボールを奪い、ゴールにつながったプレーは良かったですし、満足しています。そして、11個の決定機を作れていました。京都戦以外の試合では、明確な決定機を毎試合10回以上作れています。試合を通して、前半のチームのプレーについては、満足していません。低い位置からのビルドアップをしている時に、しっかりとボールを保持するべきところでミスが重なり、期待通りのプレーができていませんでした。後半は、全体を通してミスが少なかったですが、ボールを支配できていた時間が短かったので、明日はしっかりと修正をしてボールを支配する必要性をチームで理解したうえで試合に臨みたいです。
[選手インタビュー]
<木本恭生選手>
Q、今シーズンも開幕から出場し続けていますが、安定感の部分でチームに貢献できている手ごたえはありますか。
A、試合に出場させてもらっていますが、まだまだやらないといけないことがあります。パフォーマンスには納得していません。
Q、チームを引っ張っていく意思を昨シーズン以上に感じますが、意識していますか。
A、昨シーズンの終盤からチームを引っ張ることを意識しています。今シーズン、森重選手がいない時に、自分が最年長になる試合がありました。そういった状況では、しっかりと声を出してチームを引っ張っていく意識を持たなければいけません。そうすることで自分の集中力や責任感も出てくるので続けていきたいです。
Q、前節の横浜FC戦の勝利は、チームにどのような影響がありますか。
A、アルベル監督も言っていましたが、前半は自分たちが思っていたようなサッカーができませんでした。昨シーズンであれば負けていた試合だったと思います。ですが、内容が良くなくても、前線の選手が点を取り、勝点3を積み重ねることができました。良い状態で次節を迎えられることは凄く良いことだと思います。
Q、内容の面ではもっと後ろからつないでいきたいところでしょうか。
A、京都サンガF.C.戦では前線から守備に来られて、自分たちがボールを持つ時間も少なく、簡単に前に蹴ってしまっていました。横浜FC戦では、ボールをつなごうとする意識を高く持ちました。ボールを失うこともありましが、ここ数試合のなかではつなぐ意識が高かったと思います。
Q、今シーズンの名古屋グランパスの印象はいかがですか。
A、前線3人の攻撃力も凄いですが、ランゲラックを中心に守備陣が凄く良いです。先に取られると相手の守備を崩すのは難しいと思います。そういう意味でも1点、2点の勝負になると思います。後ろは失点を0で抑えながら、積極的に攻撃にも関わっていきたいです。
Q、昨シーズン途中まで一緒にプレーした永井謙佑選手との対戦になります。
A、永井選手もそうですが、キャスパー ユンカー選手やマテウス カストロ選手も、自分たちが攻撃をしている時こそ注意しないといけない選手です。90分のなかで1分も気を抜けない相手です。自分のウィークポイントであるスピードや裏への対応の部分を相手は突いてくると思います。より集中してやっていかなければいけません。
Q、東京に在籍していた時に永井選手から「もっと喋れ」と言われていたと思います。今これだけ話している姿を見て驚くと思いますが。
A、変わった姿や楽しんでいる姿を見てもらいたいです。
Q、自身のなかでは、昨シーズンと比べてどのくらい変わったと思いますか。
A、だいぶ声は出しているつもりです。チームに慣れてきたことで、より自分のキャラクターを出せていると思います。
Q、ルヴァンカップでは若い選手とも馴染んでプレーしていたと思います。
A、練習から話していますし、キャラクター的にも後輩にビビられるキャラではありません。どの選手からも声をかけられやすい性格だと思っています。そういう意味では、ルヴァンカップのメンバーともしっかり馴染んで良い方向に進めていると思います。
Q、名古屋戦は、ボールを持つことが大事になりますか。
A、ボールを持っているから常に良い攻撃ができる訳ではないと思います。昨シーズンの名古屋戦は、ボールを保持することができたのですが、なかなか良い攻撃ができませんでした。今シーズンのキャンプではボールを持ったなかで、敵陣でどう崩すかをトレーニングしてきました。その成果を出したいです。
Q、前節の横浜FC戦に向けて、仲川選手は「決勝戦のつもりで戦おう」と話していたと聞きましたが、そのくらい強い気持ちがありましたか。
A、ホームゲームでしたし、その前で負けているので2連敗は避けなければいけませんでした。決勝戦のような強い気持ちを持って試合に入り、良い形で点も取れました。気迫は見せられたと思います。今シーズンは、毎試合、目の前の試合に集中する意識でやっていきたいです。
Q、前節の横浜FC戦後に木本選手もユルネバを歌っているように見えましたが。
A、良い雰囲気のなかで初めてファン・サポーターが歌っているところを聞くことができました。歌詞を全部覚えている訳ではないですが、自分はチャントを聞くのが好きでYouTubeで予習していました。多少は歌えたかと思います。チームに馴染んできたと思います。
<バングーナガンデ佳史扶選手>
Q、日本代表に初選手されてから一夜経っていかがですか。
A、日本代表に選出されたことを昨日初めて知り驚きましたが、楽しみな気持ちでいっぱいです。
Q、色々な方からの祝福メッセージが凄かったのではないでしょうか。
A、今まで支えてきてくれた人たちから本当にたくさんのメッセージをもらいました。凄く嬉しかったですし、しっかりプレーを見てもらいたいです。恩返ししたい気持ちが強くなりました。
Q、多くの人に支えられてここまで来ることができましたね。
A、今までのサッカー人生でうまくいかないことの方が多いなか、たくさんの人に支えてもらい、ここまで押し上げてもらえたと思っています。日本代表に選ばれ、そういう人たちに喜んでもらえることは自分としても一番嬉しいことです。
Q、次の目標は、日本代表のユニフォームを着て出場し活躍することですか。
A、日本代表で活躍することは、ずっと前から目標の一つでした。今そこに一番近づけていると思います。ですが、まだ選ばれただけなので、しっかり練習からアピールしていきたいです。そこで結果を残せる選手が上がっていけると思います。しっかり結果を残せるように頑張りたいです。
Q、日本代表に選出されて初めてのリーグ名古屋戦になります。プロデビュー時の長谷川健太監督との対戦にもなりますが、意気込みはいかがですか。
A、長谷川監督は、自分をプロにさせてくれた監督です。一番成長させてもらえたと思うぐらい、僕のプロサッカー人生のなかで重要な人物です。長谷川監督率いる名古屋との対戦なので、しっかり勝って自分自身が成長した姿を見てもらいたいです。
Q、永井謙佑選手もいますがいかがですか。
A、永井選手にも凄くお世話になりました。しっかり永井選手から失点しないように気合を入れて守備から試合に入り勝ち切りたいです。
Q、ファン・サポーターのみなさんへの感謝や今後の意気込みを聞かせてください。
A、今回の発表後もそうですが、日ごろからたくさんのメッセージをいただけて力になっています。自分がアカデミーの頃、太田宏介選手が日本代表に呼ばれ、憧れの存在でした。今回は自分が日本代表に初めて呼ばれたので、プレーでアカデミーの選手たちに憧れてもらえるように全力で頑張りたいと思います。まずは、名古屋に絶対に勝ちます。