<前節・横浜F・マリノス戦のレビュー>
試合開始後1分もたたないうちの失点。
味の素スタジアムは、前節 ヴィッセル神戸戦の前半の雰囲気をそのまま持ってきたような静寂に包まれた。
鹿島アントラーズ、神戸、横浜F・マリノスという上位勢との3連戦。その3試合とも相手に先制を許す苦しい立ち上がり。しかも神戸戦は前半だけで3失点しており、嫌な予感が脳裏をよぎってもおかしくなかった。
しかし、東京の選手たちは頭を下げることなく、何事もなかったかのように立ち上がり、前を向いて戦いに戻ってきた。中盤の主導権争いでは、ビルドアップの型を成熟させている横浜FMにボールを持たれる。しかし、いざマイボールになれば、相手のディフェンスラインが高いとみるや縦方向に一気にスピードアップしてスペースを狙い、スペースがなければボールを落ち着かせて相手を押し込んでじっくりと攻めていく。
同点ゴールは縦に素早く運ぶ形で生み出し、逆転ゴールは相手を押し込んでサイドに引き出し、ゴール前のマークを分散させて奪った。
後半の半ばに数的不利になってしまうが、東京の戦う姿勢は緩まなかった。陣形を下げ過ぎることなく、ボールサイドに粘り強くスライドしてプレッシャーをかけ、高い位置でボールを奪ってショートカウンターも仕掛ける。そこには、一歩も引くことなく、真っ向から勝点3を奪いに行く姿があった。
結果だけを見れば、前節の神戸戦と同じ2-3。しかし、その中身はまったく違うものだった。東京がボールを持つと何かが起きるぞ。観る者にそんなワクワクした気持ちを抱かせる気迫のプレーを、90分をとおして見せてくれた。
<試合プレビュー>
横浜F・マリノス戦は、先制を許したものの前半のうちに逆転する展開だった。しかし、数的不利になった後半の終盤に再逆転を許し、連敗となった。
スコアも同じ2-3ではあるが、その内容は異なる。ヴィッセル神戸戦の前半は強度もパフォーマンスも上がらず3失点したのに対して、横浜FM戦は終始チームの調子は落ちなかった。結果的には連敗という成績で今シーズンの折り返しを迎えるが、手元に残った戦える実感は前節の試合前とは違う。
相手のガンバ大阪は、序盤戦で最下位になるなど苦しい時期を過ごしたが、徐々に順位を上げて15位まで持ち直している。東京とは勝点6差となる。今シーズン、会場となるパナソニック スタジアム 吹田では、ルヴァンカップのグループステージで対戦し、0-3で敗れている。味の素スタジアムでの一戦は1-0と勝利し、今シーズンの成績は1勝1敗のイーブンだ。
7日に行われた天皇杯2回戦では、JFLに所属する高知ユナイテッドSCに1-2で敗れており、ガンバ大阪にとってこの一戦は再起をかけたホームゲームとなる。さらに最下位との勝点差はわずかに1と、順位こそ挽回したものの苦しい状況にいることには変わりない。リーグ前半戦最後の試合でホームのファン・サポーターの前で勝点3を挙げたい気持ちはより一層高くなっているはずだ。
東京にとっても、今シーズンは試合ごとの波、90分のなかでの波が激しいシーズンとなっている。前節の横浜FM戦でつかんだはずの戦える実感をしっかりとピッチで表現できるか。継続して高いパフォーマンスを出せるかどうかが鍵を握っている。
[アルベル監督インタビュー]
Q、リーグ前半戦最後となる今節、どのようなことを大事にして戦いたいですか
A、ここ最近のガンバ大阪は、より強度の高い、そして、相手ボールに積極的に向かうチームに変わってきている印象です。いずれにせよ、規模の大きいクラブの一つですし、クオリティの高い選手が揃っているという点で危険な相手です。そして、彼らにとってホームでの一戦です。パナソニック スタジアム 吹田は素晴らしい雰囲気のなかで試合ができるという記憶があります。我々は今、良い状態です。選手たちにも伝えていますが、今は自信を持ってプレーできているので、自信を持ち続けてプレーしようと伝えています。もちろん勝点3をめざして戦います。
Q、リーグ戦では連敗中ですが、そこを気にし過ぎてはいけないということですね。
A、リーグ戦は長丁場の戦いです。すべての試合が終わった際に、どの順位で終えているかが最も重要です。リーグ前半戦は怪我人が続出し、苦しんだ時期がありました。そのため同じメンバーで戦い続けることができませんでした。そして、5月の大型連休期間のアビスパ福岡戦、北海道コンサドーレ札幌戦は、良い試合ができずに連敗を喫してしまいました。直近のリーグ戦では、上位争いをしている2チームとの対戦でした。ヴィッセル神戸戦に関しては、前半に決して適切ではないプレーが目立ちましたが、後半は良いプレーをしていたと思います。横浜F・マリノス戦に関しては、全体を通して良い試合をしていました。逆転もしましたが、退場者が出てしまったことが試合に大きく影響を及ぼしました。リーグ前半戦は、アウェイゲームが多かった印象です。いずれにせよ、今チームは良い状態です。チーム状況に私は自信を持っています。
Q、今後、巻き返しに向けて重要なことを教えてください。
A、プレーテンポを早め、そして選手同士の理解度を深めて、チームの成熟度を高めることが重要になってくると思います。
Q、引いて守備を固める相手に苦戦している印象です。
A、コンパクトにミドルエリアでブロックを組むチームが狙っていることは、我々の縦パスを奪って、素早く攻撃に転じることです。そのようなブロックを敷いたチームに対してはボールをうまく動かし、背後への飛び出しで相手のディフェンスラインを下げることが重要になります。水曜日の天皇杯 福島ユナイテッドFC戦は、多くのチャンスを作りながら、ゴールを3つしか奪えなかったことは改善の余地を残しています。合わせて、試合終了までの15分間は、やはり我々としても良いプレーができませんでした。
Q、アウェイで苦しい試合が続いています。
A、昨シーズンはより攻守の切り替えの速さを武器にした形で戦っていました。そういう観点ではアウェイゲームの方が成績を残せていた傾向があったかと思います。今シーズン、チームは継続的に成長しています。その流れも受け、ホームゲームでは、より心地よくプレーできている印象です。もちろん、どのような環境下であろうと同じプレーを表現しなければいけませんし、改善すべき点だと思います。
[選手インタビュー]
<青木拓矢選手>
Q、ガンバ大阪戦に向けた意気込みをお願いします。
A、ヴィッセル神戸戦、横浜F・マリノス戦を振り返ると、良い守備ができている時には良い攻撃のリズムになっていた印象です。攻撃は当然大事ですが、まずは良い守備から試合に入りたいと思います。
Q、早い時間帯に失点しないために大事なことを教えてください。
A、気を付けていないことはないと思いますが、集中を切らさないことを言い続ける必要があると思います。チーム全体で意識しつつ、90分で試合に勝つことが大切です。ゲームプランニングやコントロールが重要だと思います。
Q、中盤のポジションでどのような発信をチームメートにしていきますか。
A、試合のなかで、良い時間帯と悪い時間帯の両方が絶対にあります。特に、悪い時間帯に入ってしまった時、ピッチの中で選手同士がすぐに修正する力が大切です。選手たちで修正できなければ、上の順位にはいけません。すぐに修正できるような状況や雰囲気を作っていきたいと思います。
Q、青木選手自身の手応えはいかがですか。
A、5月中旬に川崎フロンターレとの練習試合があり、その頃から、コンディションがだいぶ戻ってきたなという印象です。今節こそ、絶対に勝ちたいと思いますし、見ている人たちに楽しんでもらえるようなゲームをしたいです。横浜FM戦と神戸戦は同じスコアでも、内容は全く異なりました。見ている人たちに楽しんでもらい、その上で僕たちが勝つ。スタジアムからファン・サポーターが笑って帰れるような試合をしたいです。
Q、守備の連動についてはどのように意識していますか。
A、東京には対人に強い選手が多くいるので、連動したプレーが重要です。横浜FM戦は球際で戦えていたシーンも作ることができたと個人的には思っています。守備が上手くはまらない場合は、帰陣して整えることも重要だと思います。
Q、ガンバ大阪のイメージ、勝敗を分けるポイントを教えてください。
A、映像を見る限り、スタンドダードな守備をきっちりしてくるイメージがあるので、難しいゲームになると思います。ポイントは自分たちがやりたいことを出せるかどうか。出せない時や悪い時間帯でも、しっかり守る、点を取るという作業は悪いなりにできればと思います。
<ディエゴ オリヴェイラ選手>
Q、直近のリーグ戦3試合で4ゴール。調子が上がってきているように見えます。
A、コンディションは良い状態になってきています。昨シーズンに負ってしまった怪我も克服し、痛みがないなかでプレーできています。もちろん、ゴールを奪うために足りないところもありますので、さらにコンディションを高めていきたいと思います。
Q、リーグ戦で連勝しているガンバ大阪との一戦です。どのような試合展開にしたいですか。
A、難しい試合が予想される相手ですが、私たちも良い選手が揃っています。アウェイかつリーグ前半戦最後の試合でもあるので、しっかり立ち上がりから集中して試合に臨みたいと思います。
Q、今シーズン、ルヴァンカップですでに2回対戦していますが、ガンバ大阪のスタイルや戦い方をどのように捉えていますか。
A、今シーズン戦った2試合どちらも非常に難しいゲームでした。先ほど話した通り、明日の試合はアウェイゲームで、厳しい試合になると思います。マークの厳しいディフェンスの選手が揃っているガンバ大阪を相手に、勝つ姿勢をしっかりと示して、勝利を掴み取りたいと思います。
Q、今節でリーグ前半戦が終了します。ここまでのリーグ戦を簡単に振り返るといかがですか。
A、当然、私たちがイメージしていた結果ではありませんし、満足していません。J1リーグはご存じのとおり、レベルが拮抗していますし、勝利を簡単に得ることはできません。前半戦を全体的に振り返ると、良い試合をしていたにも関わらず勝利に届かない試合もあれば、試合内容が悪いなかで勝利を掴み取った試合もありました。リーグ後半戦は、良いゲームを続け、勝利を求めていきたいと思います。
Q、ディエゴ オリヴェイラ選手自身、今シーズンの前半戦で特に印象に残っている試合はありますか。
A、第13節の川崎フロンターレ戦です。国立競技場開催の多摩川クラシコに約57,000人の方々がスタンドを埋め尽くしてくれました。みなさんご存じのとおり、川崎は非常に素晴らしく強いチームです。そのような相手に難しい試合のなかで勝利を得られたことは一番印象に残っています。
Q、最後に、ガンバ大阪戦に向けた意気込みをお願いします。
A、リーグ前半戦はアウェイゲームで良い結果を得られない試合が多くありました。アウェイゲームが続くことも前半戦はありましたが、どのクラブも条件は同じだと思っています。明日の試合から新たな一歩を踏み出すためにも、しっかりと勝って、良い流れをチームにもたらしたいと思います。