<前節・セレッソ大阪戦のレビュー>
二つの“初”が大阪の地で青赤に勝利をもたらした。
中断期間が空けておよそ半月ぶりとなったリーグ戦の再開は、今シーズンまだ1勝しかできていないアウェイゲーム。さらに、ルヴァンカップも含めてすでに3試合を戦って1分け2敗と勝利できていないセレッソ大阪と対峙した。
試合開始早々、一つ目の“初”が試合を動かす。前半8分、フリーキックを得ると、ピッチの状況を見極めた長友佑都選手がクイックスタートで相手陣内の深くにボールを入れる。ディエゴ オリヴェイラ選手が呼応してペナルティエリア内でボールを受けると、相手ディフェンダーに突かれてボールを失ったが、サポートに入ってきた松木玖生選手がこぼれ球を拾い、角度をつけて対角線上にシュートを叩き込んで先制点を奪った。
これが、松木選手にとって今シーズンのリーグ戦初ゴール。これまで多くの決定機に絡み、あとわずかという惜しいシーンを続けてきた松木選手がゴールを奪い、チームは勢いに乗った。
…かに思えた。
その後、ディエゴ選手が前半で交代すると、後半の序盤には小泉慶選手も交代するアクシデント。ホームゲームでビハインドを追うセレッソ大阪が圧力を強めてくるなかで、チームの屋台骨となるセンターラインの2選手が交代し、東京は落ち着きを取り戻すのに時間を要した。
その間にセレッソ大阪に何度となくサイドを起点に攻め込まれると、クロスボールをゴール前で合わされるシーンが続く。
そこで東京のゴールに鍵をかけたのが二つ目の“初”、野澤大志ブランドン選手だった。J1リーグ戦初出場となった試合で、押し込まれる時間帯でもドタバタせずに冷静に対応。前に出るべき場面では飛び出してボールをペナルティエリア内からかき出し、留まって構えるべき場面ではボールサイドへのステップワークと鋭い反応でシュートブロックしてみせた。
また、ボールを懐に収めたあとのリスタートに緩急をつけるなど、ビルドアップの起点としても重要な役割を担った。
東京が誇るパリ五輪世代の2選手が踏んだ“初”は、大阪の地で東京に勝点3をもたらした。
<試合プレビュー>
J1リーグ再開初戦となったセレッソ大阪とのアウェイゲームは、松木玖生選手がリーグ戦での今シーズン初得点を挙げて1-0で勝利を収めた。勝利の立役者となった松木選手は、公式戦4試合ぶりの勝利に「勝点3を奪うことができて良かった」と安堵した一方で、「ゲームをコントロールすることはボランチにとってすごく必要な仕事。蹴り合う展開になってしまったのはボランチの責任だと思う」と、反省の言葉も忘れなかった。クラモフスキー監督も「彼の精神力や献身性には、私も刺激を受けている。彼が夢見ている選手になるためにはもっともっと磨いていけるものがある」と、松木選手の成長に期待を寄せた。
今節は連勝を懸けて京都サンガF.C.を味スタに迎える。今夏に京都から加入した白井康介選手は、古巣との対戦を前に「相手を知っていることも、自分が知られていることもあるのでやりづらい」と前置きしながら、「絶対にこのゲームは負けたくない。バチバチ行きたいです」と恩返しを誓う。インテンシティやハードワークに強みを持つ京都を上回るには、戦う姿勢で負けないことが重要。東京は真っ向勝負で勝ちにいく。
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[ピーター クラモフスキー監督インタビュー]
Qビルドアップの精度についてどのような手応えがありますか。
A、常に積み上げをして、改善していきたいと思っています。もっと成長できる、もっとやれることはあります。自分たちの戦い方を発展させながらプレーの幅を広げ、プレッシャーがかかり、スペースのない状況下でも、ピッチ上で選手たちが素早く判断をしなければいけません。それができるようになれば、試合で自分たちの使いたいスペースをうまく活用できるようになると考えています。
Q、野澤大志ブランドン選手をはじめ、ゴールキーパー陣の競争について教えてください。
A、野澤大志選手のセレッソ大阪戦のパフォーマンスはゴールキーパーグループが毎日積み上げてきた練習の成果だと思っています。全員が最大限のパフォーマンスを出そうと毎日高め合っている証拠です。
Q、あらためて野澤大志選手の良さ、強みを教えてください。
A、才能と可能性のある素晴らしいゴールキーパーです。ボールを持った時の冷静さや圧力がかかったなかでもプレーできる能力を持ち、良い判断ができる選手です。シュートストップやクロス対応など、高いスキルも持ち合わせています。多くのポテンシャルを持っている選手です。
Q、クラモフスキー監督がゴールキーパーに求める要素や役割を教えてください。
A、自分のプレーエリアのなかでしっかりと要求できることです。それは攻撃でも守備でもそうです。他の選手たちに何をしないといけないのかという決まりごとを伝え、それをできるように要求していくことが大事です。ゴールキーパーは11人いるポジションの一つです。それが誰かと違うわけではありません。そこでリーダーシップや特長を出し、チームの勝利につながるパフォーマンスを発揮することに期待しています。
Q期限付き移籍で加入した原川力選手の調子はどうですか。
A、チームとしての決まりごとを学びながらプレーしていますし、ゲームのなかでそのパフォーマンスを出してくれたらいいと思っています。チームに貢献できるようにしっかり準備してくれていると思います。
Q、今節の京都サンガF.C.戦は中断期間明け初のホームゲームになります。
A、ファン・サポーターのために勝利をつかみ取るだけです。クラブのために勝点3を奪い、チームとして成長している姿、高いパフォーマンスをお見せしたいと思っています。京都はアグレッシブに来ると思いますが、我々もアグレッシブに戦う準備はできています。京都は良いチームですし、局面で戦ってくるチームなので色々なチャレンジが生まれると思います。そのような状況でも、自分たちで解決法を見つけ、一人に頼るのではなく、チームとしてすべて出し切って勝ちたいと思います。
[選手インタビュー]
<白井康介選手>
Q、京都サンガF.C.から東京に移籍し、ちょうど1か月が経ちました。新しい環境には慣れましたか。
A、シーズン途中の移籍は難しく、最初は苦労しました。東京には優しい選手が多く、良い雰囲気を作ってくれたこともあって、少しずつ環境に慣れてきました。東京はキャリアで6つ目のチームですが、もともと人見知りなので、新しいチームになじむコツは未だに分かりません(笑)。
Q、天皇杯のロアッソ熊本戦、先日のセレッソ大阪戦と2試合、ピッチに立ちました。プレーの感触についてはいかがですか。
A、自分の良さを100パーセント出せているかと言えば、出し切れていないというのが正直なところです。これからもっと良いところを出せると思っています。僕自身の強みはスプリント能力と、攻守両面の対人プレーです。スプリントで攻撃に絡み、相手をはがしてクロスを上げるところを一番に見てほしいと思います。
Q、クラモフスキー監督からはどのようなプレーを求められていますか。
A、インテンシティの高いプレー、攻守の部分で前に出たり、戻ったりというスプリントを求められています。そこは自分の良さを出せていると思いますが、サイドバックとしてインサイドをとるプレーなど、今まで経験してこなかった部分はトレーニングでもっと磨いていきたいです。特にポジショニングはもっと良くなると思っています。積極的に攻撃に関わるプレーを前面に出したいですが、守備の決まり事もあるので、しっかりリスク管理をして攻守両面で成長したいと思います。
Q、サイドバックには長友佑都選手やバングーナガンデ佳史扶選手がいます。
A、東京のサイドバックは選手それぞれの良さや特長があって、質の高い選手がそろっています。僕自身はサイドバックとしての経験が少ないので、学ぶものが多いです。サイドバックとして成長をする上で、良い環境に来たと思っています。
Q、今節はさっそく、古巣の京都との対戦です。ファン・サポーターに向けて意気込みを聞かせてください。
A、古巣対戦は、どうしても意識してしまいますし、やりづらさと楽しみの両面があるので複雑です。京都は絶対に前からプレスに来るスタイルなので、自分がうまく相手の背後を取って守備を崩したいと思います。うまくプレスをはがせば、そこを起点に相手を崩すことに繋がるので、意識してプレーしたいと思います。この京都戦だけでなく、これから自分の良さを最大限に出して、チームに貢献していきたいと思っています。白井康介をよろしくお願いします。
<東慶悟選手>
Q、前節のセレッソ大阪戦はスタメンで出場しました。試合の振り返りをお願いします。
A、松木玖生選手が良い時間帯に先制点を決めてくれました。相手に多くの決定機を作られはしましたが、無失点で終えられたこと、勝点3を持ち帰ることができて良かったと思います。
Q、セレッソ大阪戦の後半は攻め込まれる時間が長くなりましたが、そうなった要因をピッチ上でどのように感じていましたか。
A、様々な要素があったと思いますが、得点を獲った後に、守りに入り過ぎてしまいました。もう少し攻撃的なサッカーができれば良かったと思います。
Q、中盤の位置でプレーするうえでの約束事、東選手自身が意識していることがあれば教えてください。
A、大きな約束事はありませんが、ベースとして攻守の切り替えや守備のスイッチを入れるプレーを意識しています。トップ下の位置では、前線から相手のボールホルダーを追いかけるプレーが必然的に増えてきますので、一つの役割にはなっているのかなと思います。
Q、リーグ中断前の浦和レッズ戦、先日のセレッソ大阪戦と東選手の守備の貢献度が非常に高い印象を受けました。
A、シーズン序盤は中盤の低い位置でプレーする機会が多くありました。前線の選手であっても、今のサッカーでは守備の貢献度が求められますし、僕自身がアンカーの位置でプレーしていた時に、どのように相手にプレッシャーをかければ後ろの選手が助かるのかをイメージしていました。まだまだやれることが多くあると思っています。
Q、昨シーズンからアンカーでプレーしてきた経験が今のプレーに活きているということでしょうか。
A、昨シーズンから中盤の低い位置でプレーする回数が多くありました。そのポジションでしか得られない感覚もあったと思います。
Q、京都サンガF.C.との一戦を控えていますが、相手の印象など教えてください。
A、ルヴァンカップも含め、公式戦2勝1敗という状況ですし、印象はそこまで悪くはありません。全員がハードワークをして戦ってくるチームですし、リーグ前半戦のアウェイでは、相手を上回ることができずに負けてしまいました。ベースの部分でしっかりと京都を上回りたいと思います。