<前節・ガンバ大阪戦のレビュー>
ボールを保持して攻撃重視のサッカーを展開すると、対戦相手に守備ブロックを固められて攻略に苦しむことはよくある傾向だ。
相手を押し込んでボールを保持していると、縦方向に崩そうとした時にスペースが足りない。そうすると、ピッチの横幅を活用して密集する相手を広げ、選手間のギャップを狙う、または大きくサイドを変えて相手の守備のスライドが間に合う前にクロスボールからゴールを狙う形が増えてくる。
前者ではわずかにできたギャップを通していく技術とプレー精度が求められ、後者では相手を置き去りにするスピードが必要とされる。
ガンバ大阪戦、試合の主導権を握りながらもなかなかゴールが奪えないでいた東京は、前者を選択してスコアを動かした。しかも、個人能力の高さだけでなく、スイッチを入れたパサー、二人目、三人目、四人目が連動した高度な連携でペナルティエリア内の狭いエリアを攻略してみせた。
相手を押し込んだ状態で右サイドに開いた長友佑都選手が攻撃のスイッチとなるくさびのパスを、ペナルティエリア中央付近に入ってきたディエゴ オリヴェイラ選手に通す。
相手ディフェンダーを引き付けたセンターフォワードがボールをスルーすると、後方でサポートに入っていた仲川輝人選手がボールを受ける。
ディエゴ選手がボールをスルーした流れでゴール方向に走り、そのままディフェンダーを引き連れてゴール前にスペースを作り出す。そこに四人目の刺客となった原川力選手が飛び込み、仲川選手のパスを受ける。
ここからは原川選手のテクニックが光った。最初のコントロールでディフェンダーを一人かわすと、中央に持ち出すフェイントで二人目もはがし、ゴールキーパーが反応しづらい足元を狙って冷静にボールを流し込んだ。
相手の守備陣がすべての対応で後手を踏む連携プレーと個人能力の融合。クラブ設立25周年を迎えた当日、東京の未来を具体的にイメージさせるゴールが生まれたのは、偶然ではない。生みの苦しみを未来の栄光につなげる。現在の状況を前にさじを投げるのではなく、成長を期して取り組み続けるチームの成果は、これからもピッチ上で増えてくるはずだ。
<試合プレビュー>
約3週間の中断を経て、リーグ戦が再開する。今シーズンもあと5試合となった。タイトル獲得やAFCチャンピオンズリーグ出場圏の可能性もなくなり、一方でJ1リーグ残留も決まり、チームに求められるのは未来につなげるサッカーの構築と勝者のメンタリティを身に付けることにフォーカスされている。
連勝したサガン鳥栖戦、ガンバ大阪戦では、勝利してなお仲川輝人選手がチームメイトにさらなる奮起を呼びかけるなど、1試合1試合を無駄にせずにチームとしての成長を促す努力を積み重ねている。
久々の公式戦は、この3週間での積み上げを試しつつ、追い求めるサッカースタイルの深化と勝ち切る戦いの両立でファン・サポーターに進む道を示したいところ。
対戦相手の横浜FCは最下位に位置し、17位の湘南ベルマーレとは勝点1差でJ1リーグ残留の争いの真っただ中にある。試合を戦うモチベーションは非常に高く、勝利への渇望も全面に押し出してくることが予想される。それだけに、東京は相手の勝利への渇望を凌ぐチームとしての成長意欲で上回り、またサッカースタイルの深化という点でも相手より先んじているところを見せつけたい。
前半戦の対戦時は、開幕後4戦目で対峙。東京は3試合を戦って1勝1分1敗と調子が上がり切らない状態ではあったが、前半5分に幸先良く先制した流れで3-1と勝ち切り、主導権をにぎる試合展開を見せた。
この一戦を挟み、10月28日(土)にはクラブ設立25周年記念試合の締め括りを迎える。2連勝中の流れをアウェイの地で途切れさせることなく、勝点3を積み上げて味スタに戻りたい。
[ピーター クラモフスキー監督インタビュー]
Q、今節対戦する横浜FCは残留争いをしているチームです。どのようなことを意識して試合に臨みますか。
A、残留したい気持ちを前面に出して戦ってくる手強い相手であり、難しい試合になると思います。私が常に選手たちに求めている、試合に臨むメンタリティが重要であり、我々にとって勝点3を掴みとることがすべてです。両チームとも、勝点3を取りにいく熱い戦いになると思います。相手の戦い方は分かっているので、強みをリスペクトし、弱点を突く戦いを見せられるようにしたいです。
Q、今シーズンはまだ3連勝していませんが、連勝がもたらす価値をどのように考えていますか。
A、我々のパフォーマンスにおいて、今何をすべきかに焦点を置いています。これまで促してきたこと、成長した部分をしっかりと試合で発揮することができれば、相手にとって脅威になると思います。自分たちのパフォーマンスを最大限出すこと、最高のフットボールを表現することに焦点を置いています。それには、いかなる場面でも集中を怠らず、局面の勝負で勝つことが重要です。試合には、勝敗の分岐点になる局面が必ずあり、そこをしっかりと自分たちのモノにしていくことを求めています。我々が育てていくべきは、相手に対して時には冷酷に戦うメンタリティなのかもしれません。私は常に目の前の試合に勝つことだけを考えています。横浜FCに勝つために持っているすべてを出していきたいと思います。
Q、約3週間の中断期間を経て、メンバーの入れ替わりはありますか。
A、今日の練習でもやっていたようにメンバーのバリエーションはありますし、複数のオプションを持ち合わせています。試合まで時間はあるので、練習で選手たちのコンディションなどをみて考えたいと思います。
Q、U-22日本代表に選ばれていた4選手も活動を終えて帰国します。試合経験を重ねてチームに戻ってくることをどのように感じていますか。
A、帰国し、クラブハウスに到着してから、4選手それぞれのコンディションを確認したいと思います。横浜FC戦に出場するかどうかは分かりません。プレーする、しない含めて、今は何も言えません。国を代表して戦うことは本当に特別なことですし、すごく気持ちの良いことだと思います。コンディションをしっかりと確認して判断したいと思います。
[選手インタビュー]
<エンリケ トレヴィザン選手>
Q、前節のガンバ大阪戦では完封勝利し、連勝となりました。どのような手応えを感じていますか。
A、ガンバ大阪戦では、非常に良い形で勝利できたと思っています。私自身、ディフェンスの選手ですので、守備面において相手に得点を与えることなく、ゼロで抑えることができたこと、勝利に繋がる守備ができたことに手応えを感じています。今節は横浜FCとの対戦を控えていますが、約3週間の中断期間を経て、身体も頭もリフレッシュした状態で試合に臨むことができると思っています。横浜FC戦に向けて、良いトレーニングをチームとして行えています。ガンバ大阪戦は一度忘れ、次節で勝利すること、連勝を伸ばすことに集中していきたいと思います。
Q、中断期間の話がありましたが、チームとして高めたこと、整備したことはありましたか。
A、約3週間の中断期間中は非常に良い練習ができた実感があります。特にフィジカル面の強化とチーム内の連携面を深めることができましたし、戦術的な練習にも取り組みました。一歩一歩、良い方向に進んでいると思います。
Q、クラモフスキー監督が求める守備を構築するために、プレー、指示、ディフェンス間の連携で意識していることはありますか。
A、ディフェンスの選手ですので、まずは個々の守備力が当然求められていますが、そのなかで大切にしていることは、味方とのコミュニケーションと守る際のポジショニングです。練習からコミュニケーションをとること、ディフェンスラインから守備時のポジショニングを指示することを意識しています。徐々に良くなってきている実感はあります。
Q、横浜FCには外国籍選手をはじめ、個々で打開する能力を持った選手が前線に揃っています。どのように対策をしますか。
A、今節の横浜FCに限らず、簡単な試合はないという覚悟を持って戦っています。相手には能力が高い選手が多く揃っていますし、非常に難しい試合になることが予想されます。横浜FCの今のチーム状況や順位を考えると、この一戦に何が何でも勝利したいという非常に強い気持ちで臨んでくると思います。私たちも3連勝をめざして戦いますし、受け身になることなく、勝利を求めて熱く戦いたいと思います。
<俵積田晃太選手>
Q、3試合連続ゴールに期待が高まっています。
A、今シーズンもあと5試合となりましたが、連続ゴールをめざして頑張りたいと思います。左右どちらのサイドで出場したとしても、僕自身のスタイルは変えず、縦への仕掛けやシュートの意識、サイドからクロスを供給して得点に繋がるプレーをしていきたいと思います。
Q、俵積田選手自身の武器であるドリブルが得点やチャンスに繋がっているようにみえます。
A、強みとしているドリブルが通用するというのは、今シーズンはじめのトレーニングやデビューした試合の時から分かっていましたし、手応えはありました。ドリブルは僕自身の特長でもあるので、それが通用しなかったら終わりだと思っています。そこに自信を持ってきましたし、高めていきたいと思います。
Q、試合出場と得点を重ねていますが、どのような点に成長を感じていますか。
A、守備の部分では、今も課題は残っていますが、徐々に意識づけができているように感じています。立ち位置や細かいところを色々な人から教えてもらったり聞いたりして、少しずつではありますが、チームが求める守り方に合ってきていると思います。シーズン当初に比べると、体力がついてきた感覚があります。
Q、横浜FC戦はどのような戦い方が重要になりますか。
A、守備の時にブロックを組む相手に対して、ボールを持つだけでは崩せない局面もあると思います。そういう時に、自分のドリブルで相手ディフェンスを崩して、得点に繋がるプレーを見せられたらと思います。3試合連続ゴールが理想ではありますが、毎試合、目の前のことを意識しながらプレーしていきたいと思います。