本職のトップ下で勝負
「東京のために」すべてを尽くす
MF 10 東 慶悟
2024シーズンに挑む全青赤戦士を紹介していくスペシャルコンテンツ。果たして開幕を控えた選手たちは何を考え、どんな覚悟で一年に臨もうとしているのだろうか。クラブ愛、タイトルへの渇望、活躍への想い、そして果たすべき役割を胸に秘めた選手たちのストーリーとは──。在籍12シーズン目を迎え、マルチロールとしてチームを支えてきた東慶悟。いろいろな経験を経た彼が抱くのは「東京のために」という強烈な想い。歴史と革新を両立させるべく、本職のトップ下で新シーズンに挑む。
「このクラブで選手としても人間としてもすごく成長できている。感謝の気持ちを込めて今シーズンはプレーしたい」
新シーズン開幕前のキャンプを打ち上げ、東慶悟はこう言った。東京では今年で12シーズン目。“青赤の男”として、干支が一回りするだけの変遷を見てきた。ともに戦ってきた選手やスタッフ、監督が入れ替わっていく。近年はマルチロールとしての役割を求められ、ゴールキーパー以外はほとんどのポジションをこなして、その変化に悩みながらもチームを支えてきた。
2021シーズン、アウェイで0-8の大敗を喫した横浜F・マリノス戦では、リードを広げられる苦しい展開で3バックの中央に入り、新人だった大森理生のスクランブル出場をサポート。先発を外れる機会が増えていた2022シーズンの後半戦は、適役不在となった4-1-2-3のアンカーを任された。常にベンチの要求に応え、自身も不慣れであることには変わらない状況でもこなしてきた。そういった経験を乗り越えたことで、「一周回って楽しい感覚がある」という境地に達した。そこにあるのは「東京のために」という想いだけだ。
「東京ガスサッカー部からの歴史があって、親会社がMIXIになって、エンブレムが変わった。苦しい時もありましたけど、クラブはそういう過程を経て強くなっていくものだと思う。過去を忘れてすべて新しくするのも違うし、いろいろな経験をしたからこそ今があると思う。 チームは新たなチャレンジに取り組んでいますけど、12年前から知っている立場としては、歴史を忘れずにしっかり引き継いでいきながら、新しいものへチャレンジしていきたい」
今シーズン、選手としては久々にチーム始動からトップ下として臨む。他の選手たちが口を揃えて「巧い」と高く評価する東慶悟。彼が本来備えている技術を発揮するにはもってこいのポジションだ。ギラギラした気持ち、曲げたくない信念はあるが、一方で年齢を重ねて生じてきた余裕もある。「それを味として出せれば良い」。求められることに応え続けてきた彼がギラギラと余裕のバランスが取れた姿をピッチ上で見せ、持ち前の技術と真価を見せつける。
Text by 後藤勝(フリーランスライター)