PLAYERS FILE 2024<br />
MORISHIGE MASATO

COLUMN2024.2.17

PLAYERS FILE 2024
MORISHIGE MASATO

定位置争いは大歓迎!
「戦う男」が見せる野心
DF 3 森重真人



2024シーズンに挑む全青赤戦士を紹介していくスペシャルコンテンツ。果たして開幕を控えた選手たちは何を考え、どんな覚悟で一年に臨もうとしているのだろうか。クラブ愛、タイトルへの渇望、活躍への想い、そして果たすべき役割を胸に秘めた選手たちのストーリーとは──。37歳になるシーズンを迎えた森重真人。同年代の選手が次々と新しいキャリアを選択していくなかで、変わらぬ存在感を見せ続けている。そして2024シーズン、激化するセンターバックのポジション争いを歓迎し、戦う男であり続ける覚悟を固めている。 



もう、何度巡ったのだろう──。奥歯をかんだ冬を越え、また春を迎える。息をするようにボールを蹴ってきた。人生の半分以上をプロサッカー選手として過ごしてきたのだ。同世代の仲間たちが次々とスパイクを脱ぐなかで、それでも青と赤を着てボールを追いかけ続けている。

毎朝早くにクラブハウスに来て、帰るのは最後。そんな生活を何年も続けてきた。それを苦労だなんて言わない、むしろ「すごく幸せなこと」と口にする。

「この年齢になって改めて幸せだと思う。20代後半に思うことと、今思うことはなんかちょっと違う。20代はサッカーするのが当たり前というか、終わりが見えていなかった。でも、30を過ぎてからは、やっぱり終わりを意識するようになってきた。そうなると、そのありがたみを実感する。頭では分かってはいるけど、本当にそういうことが来た時にいろんな感情が湧いてくるようになった」

今年で37歳。ベテランなんて呼ばれるようになって久しい。それでも昨シーズンの明治安田生命J1リーグで29試合のピッチに立った。ストイックな日々の賜物……。そう言い聞かせようとしていた自分に気付いたという。

「『周りは36歳で試合に出ていてすごいよ』と言ってくれる。でも、その枠のなかで満足していたんじゃないのかなって。でも、ここからでしょ!」

そう言うと、ネジを巻き直して「もう一度鍛え直そうかな」と言い始めた。もともとの性分がそうなのだ。挑むことを楽しんできた。それは歩んできた、これまでの道が示している。

「もう時代は、次の世代に行っている」

そう口にした表情は少しも寂しそうじゃなかった。今シーズンは始動日から熾烈な定位置争いを演じる。木本恭生、エンリケ トレヴィザンに加え、若手の突き上げを「大歓迎」と言い、楽しそうに笑った。

もうこれで何周目なのだろう。でも、またその入り口に立つ度に、サッカーの面白さと奥深さに気付かされる。ここまでのめり込めたのは、そういうヒリヒリとした競争があったからだ。誰よりも青赤を着て戦い続けてきた森重真人は、変わらず今シーズンもここにいる。ほほのくぼみを深くし、もぎたての野心がこう吐き出させる。

「あぐらをかいているようじゃ面白くない。やっぱり戦う男でまだまだいたい。それが一周して出た答えだから」 



Text by 馬場康平(フリーライター)