PLAYERS FILE 2024<br />
TAWARATSUMIDA KOTA

COLUMN2024.2.21

PLAYERS FILE 2024
TAWARATSUMIDA KOTA

変幻自在のドリブルがパワーアップ
力強さを加えて新たな境地へ
MF 33 俵積田晃太



2024シーズンに挑む全青赤戦士を紹介していくスペシャルコンテンツ。果たして開幕を控えた選手たちは何を考え、どんな覚悟で一年に臨もうとしているのだろうか。クラブ愛、タイトルへの渇望、活躍への想い、そして果たすべき役割を胸に秘めた選手たちのストーリーとは──。昨シーズン、ルーキーながら強烈なドリブル突破で青赤の未来に光を差し込ませた俵積田晃太。11月には明治安田生命J1リーグの月間ベストゴールに選ばれる一撃を決めるなど、その名をJリーグ全体に轟かせた。そして新シーズン、課題改善に向けて取り組んだ筋トレが、彼をネクストレベルに押し上げる。




つかみどころがない……どころか、気づいたときには置き去りだ。それはドリブルの話じゃない。俵積田晃太の成長速度の話だ。

変幻自在のドリブルは、実家から徒歩1分圏内にある広場にルーツがあるという。休日になると、父親とマーカーを並べて即席の練習場ができあがる。そこで、技を磨いてきた。

「ドリブルはとにかく量をこなした。広場にマーカーを置いて、トップスピードに近いドリブルや、細かいタッチのドリブルもずっとそこで練習をしていた。普段の練習や、ゲーム形式、練習試合、公式戦、とにかくボールを持てば全部ドリブルをしていた」

そこからアップデートを繰り返し、プロの舞台でもそれは確かに通じた。だが、終わりなき旅は、まだ始まったばかり。プロ1シーズン目の昨シーズンは序盤こそ猛威を振るったが、徐々に対策されて数的不利な状況に追い込まれ、力任せに押しつぶされる場面も目立った。

そこで新たな戦いに備え、今オフは肉体改造に挑んだ。年が明けると、分厚さも増して一回り大きくなった身体で小平グランドに現れた。確固たる手応えがあるのだろう。「上半身も下半身も全身の筋トレをやった」と口にした表情は自信に満ちていた。

その成果は、すぐに表れる。今シーズン初の対外試合となったFC琉球との練習試合で、チームがやや劣勢に陥り掛けた瞬間だった。中盤の左サイドでボールを持ち、ポーンと前方のスペースにボールを蹴り出してフルスロットルで前進する。その後は独壇場だった。一歩前で身体をねじ込もうとしてきたディフェンダーを力強くはね飛ばし、グンとギアを上げた。わずか3歩で置き去りにすると、中央に折り返してゴールをお膳立てしてみせたのだ。

背筋がゾクッとした。試合後、涼しげな表情で「良かったです。ぶち抜きました」と言い、言葉を重ねた。

「自分でもパワーはついてきたと思う。これを継続して出せるようにしたいし、試合でも何本もやっていけるようにしたい。もう1年目の選手ではないので、しっかりと戦力として主軸としてのポジションを勝ち取りたい。チームに貢献することを頭に入れてプレーしていきたい」

想像を遙かに上回るアップデートだったが、驚く間さえも与えてはくれない。俵積田はすでに次の段階へと進んでいる。

「すべてにおいてレベルを上げたいし、昨シーズンの数字よりも上に行きたい。新体制発表会見でも言ったように結果にこだわっていきたいし、得点、アシストを量産していきたい」

今シーズンも予定調和を崩す、予測不能なインプロビゼーションが奏でられるのだろう。しかも力強くレベルアップした形で。今シーズンもきっとにやけちゃうんだろうな、あのドリブルに。



Text by 馬場康平(フリーライター)