熱き男の生き様

COLUMN2024.3.14

熱き男の生き様

日本サッカー協会は3月14日、『FIFAワールドカップ26アジア2次予選 兼 AFCアジアカップサウジアラビア2027予選』朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)代表戦に臨むSAMURAI BLUE(日本代表)メンバーを発表した。そのリストのなかには、『FIFAワールドカップカタール2022』から約1年3か月ぶりに長友佑都の名が刻まれた。


この日、小平グランドでの練習後、ピーター クラモフスキー監督からこう選手たちに伝えられた。

「私もみんなも誇りに思えることがあるので発表する。佑都が代表に入った。本当にいつも自分の準備をいかにしているか、しっかりと自分の身体のためにやることを毎日やっている。そして、常にうまくなろうと、メンタルアプローチをしている。それを本当に誇りに思うし、それに値することをやっていると思う。そして、おめでとう。国を代表することは栄誉なことだ、楽しんでくれ」

指揮官がそう言葉にすると、選手たちは拍手喝采で37歳の新たな挑戦を祝った。


夢舞台の激闘を終え、一度は引退を考えた。沸々と湧き上がってきた、アジア人初の偉業となる5大会連続出場への想いがそれを踏みとどまらせた。

「4年間、カタール大会に全てを懸けてきた。正直、ワールドカップ後の未来のことはまったく考えていなかった。まず大きな刺激を受けたのは決勝のアルゼンチンとフランスの試合を見て、自分自身が衝撃を受けて、すごいエネルギーをもらった。サッカーの素晴らしさや、サッカーでこれほど人々に感動を与えられるのだ、と。自分はそこの舞台に立たせてもらった。これからも自分が諦めなければ再びあの舞台に帰ることができるかもしれない。沸々と湧き上がる情熱を感じ、この未来をつかむのも自分次第だと思った」


再び青と赤の炎を燃やし、誰よりも熱く戦い続けた。そのなかで人知れず、不断の努力を重ねてきた。地べたにはない、育ててきた見えない根っこは簡単には折れることはない。飽くなき向上心は満足という言葉なんて知らない。長友は「満足……。満足はしたことがないかな」と言い、こう続ける。

「今でも、自分のキャリアに満足なんてできていない。何だろう……目標や夢がいつだって高いから、その分志も高くなって全ての意識が高くなる。だから、今も全然満たされていない」

誰も踏んだことのない道を歩んできた。意志あるところに道は浮かび上がる。

それを知る男は、今シーズン開幕前から「個人的にはJリーグで圧倒的な活躍をして日本代表に行きたいという目標がある。5回目のワールドカップをめざしているからベストイレブンに選ばれるぐらい活躍しないといけない」と、言い続けてきた。叶えたい夢は必ず言葉にし、実現させてきた。誰かが引いた限界という名の線は、長友にとっていつも飛び越えるための目印に過ぎない。

「笑う人もたくさんいた。それでも、5回目のワールドカップをめざすということを口にしてきた。言霊という言葉があるように、言い続けて信じ続ければ、道はつながっていく。やっと一つの扉が開けた。ここから勝負が始まる」


嘲笑を、本物の笑顔に変えてきたお祭り男は一歩先行く自分を追いかけ、ついに“ポスト長友”に自ら名乗りを上げた。その目には、これから始まる厳しい競争と、進むべき道程が映し出されている。だからこそ、「まだ叶ったわけじゃない。ここからだから。まだまだここが通過点」と自分に言い聞かせるようにして言葉を重ねた。

「ロシア大会の時から『おっさん』と呼ばれてきた。カタール大会までの4年間もかなり険しい道で、かなりの批判も浴びた。それでも信じて戦い続けて辿り着いた。ここからあと2年。それ以上に厳しい道が待っていると思うと、心して自分も戦わないと。本当に自分も懸けているので必ずつなげていきたいし、このチャンスをモノにしたいと思います。

おっさんって言われ続けてきて、僕と同世代や、いろんな職業で、ベテランと呼ばれる人たちに勇気を与えられるかもしれない。こんなおっさんと言われても戦って、前人未到の5大会目のワールドカップをめざしているんだ、と。自分の生き様を見せていきたい」


機は熟した。歴代2位の代表通算142試合出場を誇り、出場すれば歴代4位の年長記録を更新する。青赤から蒼き衣に着替え、熱い熱いオレたち東京の誇りが大仕事に挑む。

さあ、長友佑都の出番だ。






Text by 馬場康平(フリーライター)