【多摩川クラシコ特別版】8/11 川崎戦 MATCH PREVIEW & INTERVIEW<br />
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INTERVIEW2024.8.10

【多摩川クラシコ特別版】8/11 川崎戦 MATCH PREVIEW & INTERVIEW
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<前節・ガンバ大阪戦のレビュー>

頼もしい守護神が帰ってきた。

中断期間明け初戦となった明治安田J1リーグ第25節。アウェイのガンバ大阪戦は序盤から相手にボールを保持され、自陣に押し込まれる展開が続く。高宇洋選手が「前半はサンドバッグのようだった」と振り返るほど苦しい状況だったが、そこでチームを救ったのがU-23日本代表の活動から帰国して間もない野澤大志ブランドン選手だった。

前半16分にイッサム ジェバリ選手のシュートを横っ飛びで弾き出すと、続く23分にはジェバリ選手のヘディングシュートを右手一本でかき出すスーパーセーブ。さらに32分には守備陣が身体を張ったブロックで相手の猛攻をしのぐと、ダワン選手のシュートを野澤選手が超絶反応で右手を伸ばしてセーブ。短時間で三度のファインセーブを見せ、先制点を許さない。

後半は、耐えながらカウンターを狙うべく、アタッカーの俵積田晃太、怪我から復帰した小柏剛、U-23日本代表の活動から戻ったばかりの荒木遼太郎といった攻撃的な選手を送り込み攻勢を強めたが、リーグ最少失点を誇るガンバ大阪の牙城は崩せず。守備陣の奮闘もあって何とか耐えきり、スコアレスで勝点1を手にした。

粘り強く守った守備陣とともに、圧倒的な存在感で立ちはだかった野澤選手。まさに“東京ゴール前に大志あり”という頼もしさを感じさせた。荒木選手も「今日は“大志の日”ですね」と代表活動で一緒に戦ったチームメートを称えたほどだ。

本人は「シュートストップに関して、手応えはありました。自分は最後の砦。打たれてしまっても止めるくらいの力を発揮しなければいけないので、止めることができて良かった。本当に合流したばかりで時差ボケもありましたけど、試合に出させてもらえたことに感謝しています。サッカーをすることが楽しいので、これからも喜んで、感謝しながらプレーしたい」と充実の表情。そして「まだまだやれることはたくさんある。代表活動で味わった特別な経験や刺激が薄れないように、いまこの瞬間を大切にしていきたい」と川崎フロンターレ戦に向けて気持ちを切り替えていた。


<マッチプレビュー>

J1リーグ再開初戦となったガンバ大阪戦は0-0で引き分けた。この一戦では、U-23日本代表から戻ったばかりのゴールキーパー野澤大志ブランドン選手が好セーブを連発。アウェイで貴重な勝点1を持ち帰ることに貢献した。野澤大志選手は試合を振り返り、「押し込まれた展開になっても、70分ぐらいまで0-0でいけば勝機が見えてくる。それを一つの目標にしていたので、達成できて良かった」と胸を張った。その一方で、「課題は多く残っている。ボールの取りどころや、前進していくところについては、もっとチームで話していきたい」と、チームをより改善するためのポイントも強調した。

今節は多摩川を挟んだライバルとの対戦を迎える。今シーズン、開幕から苦しんできた川崎フロンターレは、直近7試合負けなしと調子を取り戻してきた。川崎のアカデミー出身の高宇洋選手は、自身2度目の多摩川クラシコに向けて「前回は東京に加入してから出場した2試合目で初めて負けた試合だった。すごく悔しかったし、こちらに退場者が出てから好き放題やられてしまった。今回はとにかく勝点3をとりたい」と、リベンジに燃えている。東京にとっては、ここから上位をめざすためにも重要な一戦。求められるのは勝利だけだ。

今節のマッチデープログラムはこちら


[森重真人選手×小林悠選手 多摩川クラシコ特別対談]

同学年の2人は多摩川を挟んだライバルチームに2010シーズンから加入し、しのぎを削ってきた。互いに今年で37歳を迎える東京の森重真人と、川崎フロンターレの小林悠が見てきた多摩川クラシコの歴史を語り尽くす。(取材:8月4日)


――互いに2010シーズンに新加入しているので、多摩川クラシコでは同じ景色を見てきたと思います。多摩川クラシコはどんな一戦ですか。
森重真人 オレたちはどちらかというと苦い思い出の方が多いかな。
小林悠 通算だったらどっちが勝っているんですか。

――通算は東京の11勝9分け23敗です。
小林 2010シーズンからだとどうですか。

─2010シーズンからだと東京の6勝4分け17敗です。
小林 そうなんですね
森重 勝った記憶があまりない。ここ数シーズンだと、昨シーズンの国立開催で勝ったぐらいじゃないかな。
小林 そうなんだ。
森重 やっぱり川崎は強いよね。
小林 ファン・サポーターがすごく盛り上げてくれる一戦なので、ちょっと特別な感覚はあります。でも、今聞いたほどの成績の印象が僕はなかったです。それほど負けている印象はなかったけど、それほど勝っていたのかと、ビックリしたぐらいです。


――1番印象に残っている試合を教えてください。
小林 2019シーズンのアウェーでJ1リーグ通算100ゴールを決めたのが、多摩川クラシコだった。その試合は内容も良くて、3-0で勝利した試合でした。その印象は強く残っています。
森重 100ゴールか。すごいな。オレは……印象に何も残っていない。
小林 ハハハハ。でも、モリゲと(太田)宏介にやられた試合なかったっけ。等々力で。モリゲに決められて宏介にはフリーキックを決められている。そういう試合がなかったかな。
森重 宏介のフリーキックね。あったね。
小林 その時、モリゲがヘディング決めてなかったっけ。
森重 決めてる、オレ?でも、確かに多摩川クラシコでゴールを決めているイメージは残っている。

――太田選手との共演は残念ながらありませんでしたが、ゴールで言うと小林選手が4得点で、森重選手は3得点しています
森重 いやぁ惜しい(笑)。
小林 すごい、すごい。ディフェンダーで3得点はすごい(笑)。
森重 確かに、決めているイメージはあるわ。

─等々力では、2012シーズンに決勝ゴールを奪っています。
森重 それは印象深い試合だったね。
小林 本当かよ、覚えてねぇだろ(苦笑)。
森重 いやいや自分が決めたから、その試合は特に印象に残ってる。
小林 適当だな(笑)。


小林選手が選んだ2019シーズンの明治安田生命J1リーグ第19節に当時首位に立っていた東京を3-0で破る先制点を挙げた。前半20分に、左サイドのコーナーキックを頭で合わせて史上14人目となるJ1リーグ通算100ゴールを達成。さらに、チーム2点目となる齋藤学選手の得点もお膳立てするなど、チームも自身も最高のパフォーマンスを見せた。


森重選手の思い出の一戦は、2012シーズンの明治安田生命J1リーグ第5節のアウェイゲーム。後半開始早々に長谷川アーリアジャスール選手が退場し、数的不利の中で自陣に押し込まれる時間帯が続いた。その苦しい時間帯を耐え抜き、試合終了間際の後半42分に右サイドのコーナーキックから頭で合わせる値千金の決勝弾となった。

─なぜこれほど東京は川崎に勝てなかったのでしょうか。
森重 川崎は強い。あの黄金時代は特に強いと感じた。とにかくどう守ってどうカウンターを打つか、しかなかった。あの時代は過去のJリーグを振り返っても、多分なかなか肩を並べるチームがないほどの強さだったと思う。
小林 モリゲが口にした、2017シーズンくらいからは確かにプレーしていても相手が東京だからというわけではなく、どこにも負ける気はしなかった。途中から入ってくる選手もクオリティが高くて誰が出てもおかしくないメンバーだった。試合前に負けるかもなんて思わなかったです。


─川崎は調子を落としていても、多摩川クラシコで東京に勝って勢いづくことも多くありました。
小林 ありましたね。それぐらい大事な試合だったのだと思う。勝てば勢いに乗れるし、チームの雰囲気を変えられる一戦だった。確かに何度か東京に勝って調子を上げていったシーズンがあったなと言われて思い出しました。ただ、試合前に特別な話をしているわけでもありません。
森重 オレたちも選手同士で、試合前に多摩川クラシコだからといって特別話すことはないかな。
小林 でも、徳永(悠平)さんがレナトと対戦する週の練習だけは気合が違うって聞いたことがある(笑)。
森重 ハハハハ。確かに、あのどんな時も平常心の徳永さんが一年の内にやる気スイッチが唯一入る。それが多摩川クラシコの週だった(苦笑)。
小林 そういうエピソードはないけど、周りが盛り上げてくれるから自然とみんな気合が入っている。映像を作ったり、色々と準備をしてくれるので。
森重 あったよね。
小林 面白いのもやってたよね。
森重 芸人さんに扮したこともあった。
小林 サンシャイン池崎さんのネタもやったよね。そうやって盛り上げてくれるから、そこで気合のスイッチが自然と入るかな。

─初めはそうやって周りも含めてこの一戦を盛り上げてきたけど、大久保嘉人選手が多摩川を往復したり、ちょっとずつ因縁も増えてきました。
小林 確かにそうですね。
森重 嘉人さんもそうだけど、川崎が一時代を築いた一方で、僕らは置いてけぼりを食らった。やっぱりそこに追い付きたい、食らい付いていくという意味でも川崎を意識するようになった。悠がいたり、家長(昭博)くんのような同世代がいるので、だんだん個人的にも多摩川クラシコを意識するようになってきたと思う。
小林 モリゲが言ったように同世代の選手が東京には多かった。今は(長友)佑都君もいるし、仲の良い選手が東京には多かった。やる気も入るし、楽しみな一戦になってきたと思う。


─さて、今回の多摩川クラシコですが、互いに現在は不本意な順位にいると思います。この試合をきっかけにしたいという思惑もありますか。
森重 盛り上がる試合だし、川崎に勝ち切れていない悔しさもある。そこに新しい若手が今入ってきて、お互いが新たな時代を多摩川クラシコで作り上げていけるんじゃないのかなと思っている。今回は、そういった意味では新生同士のぶつかり合いになると思っています。
小林 今、順位は上にはいないですけど、個人的にもリーグが中断する前に苦しいなかで最後に勝ってチームとしても良い雰囲気でこの中断期間を過ごせたと思っています。怪我人も帰ってきて競争も激しくなって、ここから巻き返していける良い状態にあると思います。だからこそ、ここがすごく大事な試合になるかなと思います。

─今回の対戦で、ここを見てほしいというポイントを教えてください
森重 東京の今シーズンは、みんながハードワークをしてゴールを奪うサッカーを掲げているので、得点の取り合いになるかもしれない。そこでも自分たちが上回れるんだというところをめざしているので、期待してほしいと思います。
小林 僕たちは今シーズン失点が多くなって守備を改善したら、今度はゴールが決められなくなってしまった。そういうことを繰り返しながら、やっとここにきてチームはカタチになってきたと思う。結果もついてきたし、ゴールを決められる選手はたくさんいるので、得点にはこだわってやっていきたいと思います。


─最後は、バチバチのコメントで締めましょう。
森重 川崎には散々痛い思いをしてきた。前半戦は負けているので、絶対にシーズン2連敗はできない。今、チームも調子が上がってきて、コンディションも良い。怪我人も戻ってきて、戦力がそろっているなかで今回の対戦を迎えられる。リベンジと東京の強さをこの多摩川クラシコで見せつけたいと思います。
小林 フロンターレも前半戦の苦しい時を乗り越えて強くなっていると思うので、東京と対戦する時も良い状態で臨めると思います。ここで多摩川クラシコに勝って後半戦一気に上位に昇っていけると思っています。気合入れて勝てるように頑張ります。


多摩川を挟んで対峙してきた二人はライバルでありながらも、堅い友情で結ばれてきた。二人の対談は、まるで東京と川崎の関係性を見ているようだった。ただし、今回で44回目を数える多摩川クラシコは、試合を重ねる毎に因縁や記憶に残る場面を増やしてきたのも事実だ。勝負だけは譲れない。それが、この多摩川クラシコを真の伝統たらしめる道だと、彼らが示してきたのだ。

Text by 馬場康平(フリーライター)


スポーツナビでは、『37歳の多摩川クラシコ 森重真人×小林悠 ~刺激し合うベテランの夏~』を公開中。ぜひご覧ください。


[ピーター クラモフスキー監督インタビュー]


Q、ガンバ大阪戦から中3日で多摩川クラシコを迎えます。
A、まずはコーチングスタッフを中心に試合の分析を進めています。木曜日には試合の振り返りをミーティング形式で行い、選手たちは疲労を考慮して2グループに分けてトレーニングとリカバリーを行いました。試合に向けた準備を進めつつ、コンディションを高めています。

Q、ガンバ大阪戦は集中した守備が無失点に繋がりましたが、高い集中力と強度の高いプレーが続いた各選手の消耗や疲労も大きいのではないですか。
A、いまお話にあった内容がフットボールで求められる大きな要素です。集中力を切らさないことは守備の時でもボールを握って攻撃を組み立てる時も、フットボール全体において常に求められます。加えて、自分たちには求められているものが多くあります。成長を促し、良い試合を展開できるようにしていきたいです。

Q、そのなかでボールを保持する時間を長くしていきたいということですか。
A、それはもちろんそうです。主導権を握り、支配することが理想です。ですが、運動量を落とすということではありません。ボールを動かし続け、相手が嫌がるゾーンを突いていくこと、前へ前へと飛び出すスプリントを求めています。前への重心が大きくなるのであれば、後ろの選手たちも連動してラインを上げなければいけません。フィジカル的な要求は決して守備だけではなく、攻撃にもあります。つまり、集中して状況を判断しなければいけないということです。我々のプレーに焦点を当て、すべての要素に対してアプローチしていきたいと思います。