納得できない数字と結果も
余裕と充実が感じられた理由
DF 4 木本恭生
人に、選手にストーリーあり。2024シーズンを戦い抜いた全青赤戦士を選手ごとに紹介する『2024 PLAYER’S REVIEW』。果たして彼らはいかなる想いを抱えながらシーズンを過ごしていたのだろうか。自信、手応え、課題、喜び、悔しさ……。それぞれが送った今シーズンの戦いを、本人の言葉を紡ぎながら振り返る。
「好事魔多し」とでも言うのだろうか。コンディション、メンタルともに好調さを感じさせていた木本恭生に起こったアクシデント。思わぬ負傷がそれまでの流れを変えた。“勝負の年”と位置付けた2024シーズン。イメージどおりの結果と数字を残せず、センターバックの定位置確保には至らなかった。それでも自分自身に矢印を向け、余裕と充実の表情が感じられたのはなぜか。そんな背番号4の今シーズンを振り返る。
加入3年目となる今シーズンを、木本恭生は勝負の年と位置付けていた。それなのに、リーグ戦の出場数は1年目の33試合、2年目の24試合を下回り、センターバックの定位置を確保することはできなかった。
悔やまれるのは、6月に行われたサンフレッチェ広島とのJリーグYBCルヴァンカップ プレーオフラウンド第1戦での鼻骨骨折に伴う離脱だ。本人も「身体は動いていたし、メンタル的にも良かった時期だったので」と振り返るタイミングでの離脱はもったいなかった。
しかし、彼の表情を見ていると、青赤のユニフォームに袖を通して3年目の今シーズンが、最も充実したシーズンになっているように映るのもまた事実である。
「もっと試合に絡みたかったですし、試合数に関しては全く納得できていないですけれど、今シーズンは気持ち的にもすごく落ち着いてやれていたし、パフォーマンス自体は悪くなかったと思っています」
それはなぜか──。開幕前にも記したように、昨年8月に一つの節目となる30歳を迎え、心の変化が大きな理由になっているのは間違いない。
「加入1年目は多くの試合に出させてもらって、2年目の昨シーズンは自分がやらなければいけないという思いを持ち過ぎて、自分一人で抱え込み過ぎてしまった。その経験もあって今シーズンは力を抜いてできた部分もあったし、それによってパフォーマンスが改善されたところもありました」
さらにもう一つ、木本が自分と向き合えるようになった要因には、若手の突き上げもある。プロ2年目の19歳で開幕スタメンをつかんだ土肥幹太や大卒ルーキーながらセンターバックと左サイドバックのポジションでチームを支えた岡哲平の存在が、“まじめな4番”の気持ちを楽にさせた。
「変な言い方ですけど、今シーズンは自分が試合に出られなくても他の選手がやってくれているという考えでやれていました。若い選手が台頭してきて、逆に自分に専念できたというか、普段の練習から自分が試合に出るために取り組めましたし、試合に出られていないことに落ち込むのではなく、自分の成長のためにできました。そこは自分でも変わったと思います」
今シーズンもタイトル獲得どころか、その争いにも加われなかったチームについては「不甲斐ない」と肩を落とし、自身のプレータイムについても、もちろん満足できていない。
それでも、その清々しい表情と滑らかな口調は開幕前と変わっておらず、ヤスはヤスなりに自分と向き合い、新たな気付きを得る2024シーズンを過ごした。
Text by 須賀大輔(エル・ゴラッソ)