怪我に悩まされながら見せた
大きな手応えと可能性
人に、選手にストーリーあり。2024シーズンを戦い抜いた全青赤戦士を選手ごとに紹介する『2024 PLAYER’S REVIEW』。果たして彼らはいかなる想いを抱えながらシーズンを過ごしていたのだろうか。自信、手応え、課題、喜び、悔しさ……。それぞれが送った今シーズンの戦いを、本人の言葉を紡ぎながら振り返る。
トップチーム昇格2年目にして開幕スタメンの座をつかんだ土肥幹太。負傷離脱を繰り返しながらビルドアップの起点として存在感を見せた2024シーズンは、手応えとポジティブな課題を感じつつ、手にしたチャンスをモノにしきれないシーズンでもあった。成長の可能性は無限大。その一端が垣間見えた彼の一年を振り返る。
華々しく開幕スタメンを飾った土肥幹太。しかし「今シーズンは怪我が多くて。そこが一番大きかった。ピーター監督からチャンスをもらいながら、それを活かしきれなかった」と自身が言うように、好スタートから一転して度重なる負傷離脱でリーグ戦出場は15試合に留まった。
怪我との付き合い方も難しかったが、J1リーグのグレードで対戦する相手とのマッチアップにおいて、フィジカル不足を痛感させられたことも“プロの洗礼”だった。
「まずは体格からもっと変えなければいけない。相手がゴツいフォワードだと、やっぱり物足りなさがあることを自分でも感じた。具体的に言うと、FC町田ゼルビアのオ セフン選手のような相手になると、自分では足りない部分がものすごくあると感じたシーズンでした」
体格差でうまく相手を抑えられなかったとしても、危険な場所を察知して急行するような状況を把握する力、あるいはより素早い判断で失点を防ごうとする力が彼にはある。身のこなしや守備の個人戦術で防げるところがあるかもしれない。しかし、その点でも上回られる相手がいた。
「川崎フロンターレの山田新選手も嫌な相手でした。最後の最後まで身体を当ててきたり、守備になるとこちらを必死に追ってきたり、ボールが外に出るまで諦めなかったり、そういう細かい部分ですよね。最後の最後まで戦っている。そういったところをものすごく感じました」
技術面でも不足を感じていた。アカデミー時代から複数のポジションをこなし、器用な印象を持つプレーヤーだが「局面を変えられるパスが出せるようになりたい。チャレンジが少なかった」と、展開力の向上を心に誓うことがしばしばあった。
ただ、もちろん手応えがなかったわけではない。明治安田J1リーグ第10節アルビレックス新潟戦、怪我で負傷交代を余儀なくされた第11節京都サンガF.C.戦の前半に関しては「試合展開も含めて良かった。チームとしても、自分としても良くプレーできた」と、プロの世界でも通用する基準を見出していた。
「ボールの回し方も良かったです。新潟戦では相手に持たれていましたけど、怖さは全くなくて、チーム全体にしっかりつなぐ時はつなぐというまとまりがあった」。
チームは好調期と不調期を繰り返し、自身は複数回の負傷離脱を経験した。大きな波のあるシーズンになってしまったが、プロ2年目はセンターバック、ボランチ、サイドバックをこなし、ビルドアップから始まる戦い方に成長の可能性を見いだしたシーズンとなった。
Text by 後藤勝(フリーランスライター)