ピッチに魔法をかけたファンタジスタ
青赤で圧倒的な実力を証明
MF 71 荒木遼太郎
人に、選手にストーリーあり。2024シーズンを戦い抜いた全青赤戦士を選手ごとに紹介する『2024 PLAYER’S REVIEW』。果たして彼らはいかなる想いを抱えながらシーズンを過ごしていたのだろうか。自信、手応え、課題、喜び、悔しさ……。それぞれが送った今シーズンの戦いを、本人の言葉を紡ぎながら振り返る。
期限付き移籍で青赤の一員となり、開幕4試合4得点という衝撃デビューで一気にチームの中心選手となっていった荒木遼太郎。一瞬で局面を打開するパス、ゴール前での流麗なワンタッチプレーなど、彼がピッチで見せた魔法は今シーズンの東京を語る上で欠かせない。U-23日本代表にも再び名を連ね、夏にはパリ五輪に出場して準々決勝進出も経験。世界の大舞台を味わった。そんな“タロウ”はサッカー人生のターニングポイントになったはずの青赤での1年間をどう見ているのだろうか。
「荒木遼太郎が加入する」と聞いて、どのくらいの人がワクワクしただろうか。期待の声はたくさん聞こえてきた。でも正直、不安視する声がなかったわけでもない。それがどうだ。いまや青赤の全員が彼を「タロウ」と呼び、全幅の信頼を置いている。クラブ史上初の71番は、そのプレーで証明してくれた。
これまで何度も記してきたが、荒木遼太郎は“復活”や“再起”という類の言葉を使って表現されることをとにかく嫌った。それは余計なプライドとか変な頑固さから来るものではなく、自身の中に「やれる」という確かな自信があったからこそ。開幕前からそういう強い想いを言葉にしてきたし、シーズン中のパフォーマンスを見れば、すぐに納得できた。シーズン終盤、あらためて東京でのプレーを決めた判断について聞くと、気持ちの良い答えを返してくれた。
「自分の選択は間違っていなかったと思う。U-23日本代表にも入れてパリ五輪にも行けた。一昨シーズンと昨シーズンがあってこその今シーズンだと思うけれど、これでキャリアの選択肢は広がったと思うので、ここからもっと良いキャリアを歩んでいきたい」
少しうれしそうに、少し安心したように話す荒木の今シーズン、特にチームと代表の活動を並行していた前半戦は目まぐるしかった。でも、久しぶりに感じるその忙しさが心地良くもあった。
「とにかく目の前のことで一杯一杯で前半戦は本当に忙しかった。でも、それが楽しかったですね。シーズン後半に少し時間ができて振り返ることができたけれど、やっぱり忙しいことは良いことだなと。シーズン前半は連戦も多かったけれど、オフ期間も代表に行く感じが、本当に選手として一番充実した時間。ここ最近は味わっていなかった懐かしさもありつつ、楽しいシーズンでしたね」
チームとして今シーズンを振り返った時に、荒木遼太郎の名前は絶対に欠かせない。それと同じように荒木遼太郎がこの先のプロキャリアを見た時に、“東京での2024シーズンがあったから”と思ってくれれば、それは幸せなことである。
「自信は確実につきました。ファンの人の多くは『タロウはできる』と信じてくれていて、今シーズンはそういう皆さんのために良いプレーができたと思います。それは自分のプレースタイルを変えずにやり続けたからこその結果だと思っています」
彼の創造性がチームを救い、攻撃に彩りを加えた。ハードワークをいとわない献身的な姿勢でも青赤をけん引し、記録にも記憶にも残る選手となった。
タロウはタロウらしく、これからも走り続けていく。
Text by 須賀大輔(エル・ゴラッソ)