＜前節・浦和レッズ戦のレビュー＞
今シーズン初の3連勝をめざした一戦。アウェイに乗り込んだ東京が試合を動かしたのは開始早々、前半7分のことだった。
俵積田晃太選手が相手陣内でカットインから縦方向へパスを出すと、そこに抜け出した遠藤渓太選手が倒されてペナルティキックを獲得。これをマルセロ ヒアン選手が右足できっちりと決め切り、早い時間の一撃で先制点を奪った。得点力を発揮している背番号19はこれで3試合連続ゴールとなった。
前半32分に同点とされてしまうが、“力蔵トーキョー”らしく最終ラインからゴールキーパーを使ったビルドアップ、さらには前線のスピードを活かしたアタックで積極的に仕掛けていった。
ハーフタイム明けの後半4分には右サイドを突破した佐藤恵允選手の折り返しをヒアン選手が右足で強烈に狙ったが、至近距離でセーブされて勝ち越しとはならず。東京も波多野豪選手が好反応でゴールを守るなど、一進一退の時間帯が続く。
すると後半23分、交代出場したばかり安斎颯馬選手が左サイドから折り返し、中央の遠藤渓太選手が合わせて勝ち越しに成功。青赤が一歩前に出た。
しかし、相手のクロスからゴール前で押し込まれ、VARのサポートが入ったが得点が認められ、再び試合は振り出しに。そして後半アディショナルタイムに手痛い勝ち越しゴールを許して逆転負け。アウェイで悔しい敗戦を喫し、シーズン初の3連勝を手にすることはできなかった。
＜今節のプレビュー＞
浦和レッズに敗れて連勝が止まり、ミッドウィークに行われた2025 ＪリーグYBCルヴァンカップでは湘南ベルマーレに敗れて大会から姿を消すことになってしまった青赤。浦和戦では最終盤に悔しい逆転負けを喫し、湘南戦では何度も攻撃でいい形を作りながら1点が遠く敗戦。
ともに勝てたはずの試合、勝たなければならなかった試合を落とす結果となってしまったが、松橋力蔵監督は「負けに不思議の負けはない。細部を徹底して突き詰めていかなければならない」と現状を受け入れる。
選手たちからも自らに矢印を向けたコメントが相次いだ。
高宇洋選手が「勝負弱いです。（湘南戦は）やりたいこと、やろうとしていることができていたゲームだったし、手応えもあった。勝たなければいけなかった。最後の質もそうだし、決め切れない時に守り切れるか。そういうところが最終的に結果となって自分たちに降り掛かってくる。内容が結果に結びついていないので、まだまだ足りないということ」と厳しく語れば、東慶悟選手は「これが現実。良い試合をするためではなくて、勝つために来ている。これで勝てないのが我々の現状。決め切れるか、守り切れるか。サッカーではそれが重要なポイントだし、僕たちの結果や順位が（現状を）表していると思う」と警鐘を鳴らす。
内容は確実に向上している。選手個々の持ち味が組み合わされ、ユニットごとの良さも出せるようになってきた。最終ラインからのビルドアップ、前線のスピードを活かした鋭い攻撃はもちろん、湘南戦では攻守にわたって素早い切り替えを見せて全員が戦っていた。
だが、それでも勝てなかったのが現状だ。それを打破できるかどうかは自分たち次第。悔しい敗戦から中3日で迎える国立競技場でのサンフレッチェ広島戦。チームには勝利への強い意欲とリバウンドメンタリティが試される一戦となる。
そんなチームに今週、一つの吉報が届いた。21歳になったばかりの俵積田晃太選手が初めてSAMURAI BLUE（日本代表）に選出されたのだ。長友佑都選手とともに日の丸を背負うことになった若武者は、「特長であるドリブルを武器にアピールしたいですし、得点やアシストなどの数字にこだわってプレーしたい」と意気込む。日本代表選手として初めて臨むリーグ戦、松橋監督は「良いステップにしてほしいですし、足を止めずに進んでいってほしい。（周りは）過剰に反応しなくても良いのかなと思います」と期待とともに見守るスタンスを表す。
それでも期待と注目度は大きくなる。周りからの見られ方も、相手からのマークも変わるだろう。そこでどんなプレーを見せられるかに注目しておきたい。
対する広島は4連敗からの4連勝中。中心選手に負傷者を出しながら5位につける。ここまでの総得点は東京よりも一つ少ない16だが、12失点はリーグ最少タイ。組織的なサッカーと対人プレーの強さを武器に復調してきた。
東京としては相手の出方を窺いながら、戦い方や狙いどころを見定めていきたいところ。もちろん相手が変わればやり方が変わるだけに、湘南戦の好内容が今節に何かを約束するものではないが、ここまでの積み上げを“俺たちの国立”で結果に結びつけ、フィニッシュにこだわりと怖さを出すことで、大きな巻き返しへの第一歩としたい。
[松橋力蔵監督 インタビュー]
Q、湘南ベルマーレ戦から短い期間でサンフレッチェ広島戦を迎えます。この期間で選手たちにどのようなことを伝えましたか。
A、負けに不思議な負けはありません。その試合から突き詰められることがあると思っていますし、一つひとつの細かいプレーの徹底だと思っています。個人の能力ではなく、戦術的なアクションのなかに混在しているタスクの精度、強度を突き詰めていこうと伝えました。そして、フィジカル、メンタル、タクティカル、それぞれの視点でやれることを突き詰めています。
Q、今シーズンの広島を監督はどのように見ていますか。
A、人に強いプレーや目線が揃ったプレーが印象的です。裏を返せば、そこをひっくり返すことで我々にもチャンスが訪れると思っています。強度の高い“戦い”になると思っています。
Q、室屋成選手の加入発表もありました。あらためてどのようなプレーに期待されますか。
A、東京から世界に羽ばたき、多くの経験をして今回復帰してくれました。得た経験や僕らがJリーグだけでは経験できないものをプレーから見せてほしいと思っています。彼の経験が若い選手への刺激になることも期待しています。本人の良さを前面に出したプレーに期待しています。
Q、俵積田晃太選手が日本代表に初選出されました。
A、歩みを止めることなく、ここからさらに前進してほしいです。この勢いを自身のプラスにして、ググっと成長曲線を描く選手もいれば、足踏みしてしまう選手もいます。日本代表の一員として感じたこと得たことがどのように表れるかは選手それぞれですが、僕自身、俵積田選手を対戦相手の監督として見ていた時から、いずれは代表に入る選手の一人だろうと感じていました。そのような視点で言えば、何の驚きもありません。これを良い機会にしてほしいです。
[選手インタビュー]
＜高宇洋選手＞
Q、サンフレッチェ広島戦に出場すれば、Ｊ１リーグ通算100試合出場となります。
A、ここまで色々なことがありましたし、最初の1試合目も覚えています。色々な人の支えがあったおかげでここまで来ることができたことに感謝しています。
Q、思い出の試合を選ぶとしたらどの試合ですか。
A、やはり、デビュー戦です。すごく覚えています。ガンバ大阪U-23でチーム事情もあってアウェイのいわてグルージャ盛岡戦で右サイドバックとして出場しました。試合後、チームのオフ期間を利用して川崎の実家に帰ったタイミングで監督が代わることを告げられて、大阪に戻ってきてくれ、と。次の日の練習に参加してスタメンだと分かって試合に出場しましたが、バタバタしたことを覚えています。
Q、東京でも2シーズン在籍して試合を積み重ねてきましたが、一番印象残っているのはどの試合ですか。
A、昨シーズンのアウェイ、アビスパ福岡戦です。その試合でダメだったら終わってしまうくらいの覚悟がありました。普段は緊張しないですが、福岡戦はとても緊張しました。自分を証明できたゲームだったので印象に残っています。
Q、100試合目は迎えようとする試合の対戦相手は広島です。
A、強度の高いチームですし、ここ数シーズン常に上位争いしているチームなので、一人ひとりの質も高いですし、本当に素晴らしいチームです。昨シーズンもアウェイでやられていますし、難しいゲームになると思いますが、連敗は許されません。勝たなければいけない試合ですので、しっかりとやっていきたいと思います。
Q、相手のハイプレスをかいくぐるかがボランチとしてもポイントになってくると思います。
A、相手は一人ひとりが高い強度で、人に強く当たってくる印象のチームです。どうにかズレを起こせれば、そのズレのなかで、質も伴いつつ上手く剥がすことができれば、相手のゴール前までいけると思います。どのポジションにも良い選手がいますし、３バックのメンバーも固定されていて、強固な守備を築いています。いかにそこを突いていけるかだと思います。
Q、メモリアルな試合で、メモリアルゴールも期待しています。
A、国立競技場では、ゴールが取り消しされたものも入れれば、三回ゴールネットを揺らしています（笑）。この前の湘南ベルマーレ戦もそうですけど、シュートシーンを決め切れる選手にならないと評価されないと思います。今回、（SAMURAIBLUEのメンバーに）俵積田晃太選手も入りました。彼の能力に疑いはないですが、良い刺激になりました。彼が選ばれたことで嬉しい気持ちもありましたが、悔しい気持ちもあります。その想いをしっかり表現する一戦にします。
＜土肥幹太選手＞
Q、悔しい結果となりましたが、浦和レッズ戦を振り返ってください。
A、攻撃では良い部分が多かったですが、守備の部分は個人としてもチームとしても課題が残りました。そこをトレーニングしてきましたし、個人としてもクロスの対応を練習してきたので、次の試合でそれを活かしたいです。
Q、クロス対応の練習をしてきたと言っていましたが、ここ数試合ではサイドから失点するシーンが見受けられます。どのような改善が必要でしょうか。
A、クロスを上げさせないというのが一番重要ですが、上げられてしまってもしっかりとマークを付くことが大事です。そのためにはニアポジションに入る選手の立ち位置、マークの付き方などそれぞれの選手の事前のポジションどりが重要です。前節は自分のところで二度やられていました。そこを改善するトレーニングを行ってきたので、しっかりと試合で表現したいです。
Q、サンフレッチェ広島は4連勝中という勢いのあるチームです。
A、広島は身長の高い選手も多くセットプレーも個人それぞれ強い選手が多いので、注意が必要です。ですが、今週やってきたことをできれば勝てると思いますし、これからにもつながると思うので重要な試合になると思います。また、明日はミラーゲームになると思いますが、そうなったときに広島には強力なアタッカーが多く在籍しているので、マークの受け渡しがはっきりしないとズレを生んでしまいフリーな選手がうまれてしまいます。そういったシーンが失点につながってしまうので、そういった部分を発生させない、発生しても試合中に修正することが重要になると思います。
Q、連敗は絶対に避けなければいけません。
A、浦和戦で勝てていれば、順位も一つ上にいました。そのことはチーム全員が分かっていますし、ここから連勝していかないと降格圏に入ってしまいます。それはあってはならないことだと思うので、絶対に勝ちたいです。連勝して上位に入りこんでいきたいです。
