<前節・京都サンガF.C.戦のレビュー>
3試合連続の3失点。アウェイ京都の地で直面したのは、屈辱の結果だった。
立ち上がりは果敢なプレスで主導権を握り、球際の強さを見せてセカンドボールを回収。積極的なスタイルで試合に入ることができた。だが、チームは京都サンガF.C.の苛烈なプレスを受けてロングボールを多用してしまい、選手間の距離も遠くなって思うように攻撃の形を作ることができない。
前半32分にクロスボールから失点を許すと、後半に入っても流れは変わらず。何とかボールをつないで攻めようとする東京だったが、京都はそこを引っ掛ける狙いを徹底。後半25分にはビルドアップしていこうとしたところで猛プレスを受けてボールを失い2点目を献上すると、同30分にはロングボールから抜け出され、鋭いシュートを決められる。

前々節、前節に続いて、またも3点を失い3連敗という悔しい結果に終わった。だが、ゴール裏に詰めかけた青赤の仲間たちは、試合後のあいさつで下を向く選手たちに向かって歌い続けた。
「いつも俺らがついてるぜ。自分を信じていれば勝利はついてくる──」
整列したままスタンドを見上げ、鳴り響く応援をじっと聴く選手たち。その歌声は青赤イレブンがロッカーに戻った後まで続いていた。この敗戦が、そしてこの瞬間がチームを変えたと言えるようにしなければならないと誰もが思った京都の夜だった。
<今節のプレビュー>
覚悟のリーグ戦再開だ。これ以上ない屈辱を味わい、力強く共闘を誓った京都の夜から2週間のインターバルを挟んで、明治安田J1リーグがリスタートする。
この期間、チームは前節の悔しさを強く噛み締めてトレーニングに臨んだ。何より京都の試合後に見た光景が、選手たちの胸に強く残っている。
波多野豪選手が「すごく大事な瞬間だったと思います。本当に心に響きましたし、選手間でも話をしました。みなさんの想いを強く感じましたし、何としてもその気持ちに応えなければいけないと思っています。まず次の試合で、最後に一緒に笑って喜び合いたい」と話せば、森重真人選手は「みんなとともに必死になって勝利をめざさなければいけないと改めて思った。ファン・サポーターのためにももっと必死になって勝利を届けたい」とホームでの勝利を誓う。

この中断期間、チームにはいくつかの動きがあった。まず俵積田晃太選手と長友佑都選手がFIFAワールドカップ26をめざすSAMURAI BLUE(日本代表)に選出され、俵積田選手はオーストラリアとの1試合目で日本代表デビュー。続くインドネシア戦でも途中出場を果たした。初戦は硬さが見られたものの、2戦目は得意のドリブルでゴールを演出するなど持ち味を発揮していた。また、北原槙選手はU-17日本代表のスペイン遠征に参加、小林将天選手はU-20 Jリーグ選抜として香港遠征を行ったのち、フランスに移動してモーリスレベロトーナメントを戦うU-20日本代表に合流している。
そしてチームは後半戦の巻き返しに向けて4選手を獲得。ドイツのハノーファー96から室屋成選手を完全移籍で、サウジアラビアのアル シャバブ サウジから元韓国代表ゴールキーパーのキム スンギュ選手を完全移籍で、浦和レッズから長倉幹樹選手を期限付き移籍で、カタールのアル ワクラSCから2023シーズンのJリーグベストイレブンでもあるアレクサンダー ショルツ選手を完全移籍で獲得。それぞれ実績のある実力者で、後半戦の大きな力になることが期待されている。また、その一方で塚川孝輝選手の水戸ホーリーホックへの期限付き移籍も発表された。
そして昨年5月から長期にわたって負傷離脱していたバングーナガンデ佳史扶選手がついにチーム練習に完全合流したことも大きなトピックス。国内トップクラスの突破力と左足はここからチームの攻撃力を押し上げてくれそうだ。
様々な動きがあった2週間、チームは京都戦の悔しさを受け、後半戦の反攻に向けて強い気持ちでトレーニングに臨んだ。再開初戦を控えた選手たちは口々に「絶対に勝ちたいという想いで、ギラギラした雰囲気で練習できた」と話し、勝利への空気で満ち溢れていることを明かしてくれた。
このインターバルを、チームを変えるきっかけにしなければならない。リーグ戦18位という現状を受け止めながら、大きな巻き返しを誓う。波多野選手が続ける。
「戦い方とか、戦術とかいろいろありますけど、まずはパッション、情熱みたいなものを見せていきたい。本当にみんなが目をギラギラさせているし、本当に戦場に向かうような目つきと心構えで臨みたい。ここから上位に絡んでいくような戦いをしたいし、そのきっかけになるようなゲームにしなければいけないと思う。中断期間は今シーズンで一番と言ってもいいくらい良い雰囲気の中でトレーニングを積めました。本当に試合が楽しみですし、みなさんも楽しみにしてもらってもいいんじゃないかと思っています」
少し時間が空いたことでトレーニングに集中でき、チームのマインドが勝ち負けから少し距離が開いたことはポジティブに考えていい。自分たちに矢印を向けてしっかり準備ができたことで、連敗を止めるというより、ここから勝ち進んでいくというメンタルになれたはずだ。
反撃の6月へ。青赤一丸となって今節のセレッソ大阪戦で勝利し、覚悟を持って自らの手でしっかりと未来を切り拓いていきたい。
[松橋力蔵監督 インタビュー]

Q、約2週間のインターバルがありました。この期間で上積みした部分を教えてください。
A、チームとしての戦い方をもう一度確認しました。攻守のそれぞれの面にしっかりと時間をかけて取り組むことができました。選手もチームとして足りない部分に対して、しっかりと取り組んでくれました。大きくも小さくも細かいところも、自分たちが向き合えることすべてに取り組んできました。それに対する選手たちの姿勢も手応えとして感じています。あとは、試合で力を発揮するだけです。
Q、セレッソ大阪を相手に、前半戦での戦いを受けて、どのような試合を展開したいですか。
A、非常に攻撃的なチームですし、1試合あたりのシュート数も多い印象ですが、決して受けに回るのではなく、勢いを持って臨まなければいけません。たとえ、守備の時間が続いてしまう場合でも、相手の特長をしっかりと潰していく必要があります。攻撃時、前線に厚みをかけてくることも頭に入れつつ試合を進めたいと思います。
Q、連敗を止めるだけではなく、ホームでの勝利が求められると思います。
A、この期間を活用して自分たちにしっかりと矢印を向けて準備を進めてきました。連敗を止めることよりも、ここから勝ち上がっていくマインドでC大阪戦から取り組んでいきたいと思います。苦しい状況でも我々をサポートしてくれる、ファン・サポーターのみなさんの期待に応えたいです。
[選手インタビュー]
<東慶悟選手>

Q、リーグ前半戦は難しい時間を過ごすなかで、率直にどのようなものを感じていましたか。
A、僕自身を含め、物足りなさを感じていました。まだまだやらなければいけないことがたくさんあります。勝つために、課題が多く残ったリーグ前半戦だったと思います。
Q、前節の京都サンガF.C.戦は内容、結果ともに難しい試合でした。
A、京都の方が勝つために必要なプレーや要素が僕らより上回っていました。僕らの現状が出てしまった試合内容と結果にもなってしまいました。何とかこの状況を変えていきたいという気持ちと危機感は全員が持っていますし、変わるキッカケを今節のセレッソ大阪戦にしたいです。選手各々の気持ちの部分もそうですし、すべてにおいてリーグ前半戦以上に表現しなければいけません。難しい順位にいる現実を受け止め、上昇していくためのキッカケを今節で掴みとるために戦うだけです。
Q、約2週間のインターバルがありました。その期間でチームとして、東選手個人として意識的に取り組んだことはありますか。
A、まずは攻守の切り替えです。プレーするうえで、ベースの部分こそ重要ですが、反対に疎かになりがちです。切り替え、球際の強さの意識をもう一段階高める、そして質を上げることを重視しました。練習での取り組みだけではなく、試合で表現してこそのサッカーです。それだけで勝てるスポーツではありませんが、まずは戦ううえでのベースを高めています。攻撃的なプレーにおけるエッセンスや僕自身の特長も加えていきたいです。そのフィーリングや感度を高めて、よりゴールに関わるプレーも増やしていきたいと思います。
Q、セレッソ大阪戦からリーグ後半戦がスタートします。あらためて、チーム・個人としてどのようなプレーに注目してほしいですか。
A、勝利に対する姿勢を前面に出してプレーしていきます。ここまでもやってきたつもりですが、よりこだわってプレーしたいです。そして、それを周りの選手にも伝播させていきたい。その姿勢をピッチで示して、勝利を貪欲に手繰り寄せたいと思います。
<高宇洋選手>

Q、試合のなかった2週間という期間で、どのようなことに取り組んできましたか。
A、京都サンガF.C.戦で悔しい想いをしました。期間もあくので、“トレーニングからやるしかない”と、全員で話していました。個人的にも、細かい部分もそうですが次の試合に勝つための準備をずっとしてきました。
Q、選手と話していても、ピッチの中でギラギラしたものがあるように感じました。
A、そこは、感じています。練習中のゲーム形式のトレーニングでもこれまで以上にバチバチやり合っていますし、みんな次の一戦への強い想いがあるので、本当に良いトレーニングができています。それを明日の試合で表現するだけだと思います。
Q、明日の試合においてピッチではどのようなことを表現していきたいですか。
A、コンパクトにしっかりと戦うことが大切だと思います。もう一度、球際の部分、走る部分、切り替えの部分はこのチームの良さでもあるので、そういったところは落とさずに、試合の入りから常に相手を凌駕できるように、僕自身もそうですが、チーム全体で求めながらやっていきたいです。
Q、松橋力蔵監督が、インターバル期間の取材で “覚悟”という言葉を使っていました。セレッソ大阪戦が、重要な一戦になるのではないでしょうか。
A、苦しい結果が続いているなかで、このインターバルを経て再開という試合なので、自分たちのやってきたことを表現しなくてはいけないですし、ここから勝ち続ければチャンスはあると思うので、この1試合を機に這い上がっていけるようなリスタートにしていきたいです。


