<前節・横浜FC戦のレビュー>
青赤一丸となった気迫の勝利で守護神の旅立ちに華を添えた。
横浜FCと対戦した前節、野澤大志ブランドン選手の海外移籍前ラストマッチとなった一方、6月に加入したばかりのアレクサンダー ショルツ選手にとっては東京デビュー戦。ともに節目の試合を迎えることになった。
開始早々にスコアが動いた。前半4分に右サイドを崩され、クロスボールを押し込まれて失点。いきなり1点のビハインドを背負う形になってしまう。
早い時間に先制された東京だったが、相手が引き気味に構えるスタイルを敷いてきたこともあって、ボールを保持しながら押し込む展開が続く。前線からの即時奪回でチャンスを作るなどして敵陣に襲いかかっていった。
ハーフタイムを折り返しても変わらず東京が主導権を握り続けると、後半14分に佐藤恵允、長倉幹樹、仲川輝人の3選手を同時投入したことで攻撃がペースアップ。長倉、仲川の両選手が潤滑油となってワンタッチプレーが増え、攻撃に厚みを加えていく。

後半34分に得たペナルティキックはショルツ選手のキックが相手ゴールキーパーに止められてしまったが、それでも気落ちせずに攻め続けた東京に最後の最後で勝利の女神が微笑むことになる。
まずは後半40分、橋本拳人選手のクロスを長倉選手がヘディングでねじ込んで同点。そして後半アディショナルタイムにペナルティキックのチャンスを得ると、自らが決めると覚悟を固めた森重真人選手が右足で力強く蹴り込んで土壇場で勝ち越しに成功。歓喜の輪が解けたところでそのままタイムアップを迎え、東京が重要な横浜2連戦で連勝を収めた。
<今節のプレビュー>
今シーズン初となる3連勝へ、チーム状況は上向きだ。
先週末の明治安田J1リーグ第22節で横浜FCに勝利して5連戦を締めくくったチームは、今週火曜日から再始動。しっかりとコンディションを作りながら対戦相手となる柏レイソルの分析や対応策を叩き込み、連勝中の自チームにもフォーカス。自分たちが試合で披露できている持ち味とここまでの積み上げを確認した。
球際で激しく戦い、しっかりとゴールに矢印を向ける。“東京らしさ”を全員がピッチで表現することで、チーム全体にもスタジアムにも気持ちの伝わる試合ができるようになってきた。6月に復帰してきた室屋成選手も「それまでとの比較はできないですけど」と前置きしながら、「みんなが勝ちたいという気持ちを出せているし、チームとして戦えているという感覚がある。そこが結果を出せている大きな要因だと思う」と現状の手応えを語る。
室屋選手だけでなく、6月に新しく合流した新戦力が “力蔵トーキョー”のベースに大きな上積みを加えている。アレクサンダー ショルツ選手が最終ラインに落ち着きを加えれば、万能型の長倉幹樹選手は適切なタイミングでビルドアップに顔を出して攻撃の起点となり、ゴール前への積極的な飛び出しや前線からの守備で周りの力を引き出すキーマンになってきた。長倉選手は6月18日に行われたツエーゲン金沢との天皇杯2回戦で青赤初ゴールを決めて以降、公式戦で早くも3ゴールをマーク。しかもすべて後半40分に得点しているという偶然も話題を集める。

チームの成長に手応えを感じる松橋監督は「ここまでみんなで取り組んできたイメージに、新しくポイントとして(力を)加えられる選手が入った。それがこれまでの積み上げを良い方向に向かわせて、良い加速感が出るような形になっている」と連勝を収めたチーム状況について話す。
今節の対戦相手となる柏レイソルは、今シーズンから就任したリカルド ロドリゲス監督がボールポゼッションするスタイルを構築して現在リーグ2位。勝点で首位の鹿島アントラーズに並び、パス本数やドリブルの仕掛け、攻撃回数など多くのデータでリーグトップクラスの数字を残している。

今週木曜には東アジアE-1サッカー選手権2025決勝大会 韓国に臨む日本代表メンバーが発表された。長友佑都、俵積田晃太の両選手が名を連ねた東京に対し、柏は古賀、久保、垣田、細谷の4選手が選出されており、好調なチーム状況を反映する結果にもなっている。
ある程度はボールを持たれてしまう展開が予想されるが、東京としては決して相手をリスペクトし過ぎず、簡単に良いスペースを与えることなく、寄せるべき時にしっかりと寄せて自由を奪って攻撃に移りたい。そのうえで暑さとスタミナを考慮しながらバランスのとれた試合運びも肝要となりそうだ。
今シーズン初の3連勝へ向けて。選手個々が躍動感を持ち、個の融合がチームの力になり始めた。上向き調子にある東京にとって、上位につける柏との今節は、自らの進化を確認できる一つの試金石となる。決して一喜一憂せず、目の前にあるワンプレー、試合でしっかりと結果を出し、自らの手で未来を変えるきっかけとなる勝利を手にしたい。
[松橋力蔵監督 インタビュー]

Q、今シーズン初の3連勝が懸かる大事な試合が控えています。
A、まずはそこをめざしています。チームの良い流れを継続していきたいです。相手の柏レイソルは首位と同じ勝点で2位のチームではありますが、全く歯が立たないとは思っていません。勝利するためのパフォーマンスを発揮するだけです。
Q、前回の対戦を踏まえ、柏の印象を教えてください。
A、攻撃時の厚みのかけ方は前回の対戦時よりブラッシュアップされている印象です。相手にスペースを与えない、プレスをかけ切った時にしっかりと奪い切ることが、この試合では特に重要です。そこだけに頼るわけではありませんが、個々の局面では、我々に分があると感じています。自分たちで攻撃の流れを作り、守備の面では全員で組織的かつ身体を張っていければと思います。
Q、ボランチをはじめ、後方からのビルドアップなど抑えるべきポイント、警戒すべきポイントが多くあると思います。
A、もちろん相手の良さでもありますが、反対にそこを潰すことで良さを打ち消すことに繋がります。相手の良さを警戒し過ぎてしまい、違うスペースを活用されてしまうリスクを考えると、やはり全体的にバランス良く、慌てずに対応することが一番だと思っています。
[選手インタビュー]
<室屋成選手>

Q、明日の試合は3連勝に向けた重要な一戦になると思います。
A、前節も良い勝ち方ができ、2連勝できました。上位相手との試合になるので、そういう相手にも自分たちが良いサッカーをして勝ちたいです。
Q、連勝している要因はどこにあると思いますか。
A、僕は(シーズンの)途中からチームに加わったので、それ以前の雰囲気等は正直分からないです。ですが今は観ている人も感じているかもしれないですが、僕もピッチに立っていて、最後まで食らいついたり、負けたくないという気持ちがチーム全員から伝わります。その気持ちがチームに良い効果をもたらしていると感じているので、そういったところだと思います。以前は分かりませんが、今はピッチでチームとして戦えているという感覚があります。
Q、柏レイソルは、首位と勝点が並んでいる状況で2位となっています。調子の良いチームかと思いますが、どのような点がポイントになると思いますか。
A、アウェイでの試合なので、ある程度ボールを握られてしまうのは、想定しなければいけないと思います。僕たちも練習を含めて、ゴール前で良い連携で相手を崩せるシーンも多く作れてきているので、そういった部分でもチャンスを作れるのではないかと思っています。とにかく相手はボールポゼッションが上手いチームなので、後ろの4枚がどれだけ崩れずに耐えられるか、ということもすごく重要になると思うので、意識して取り組みたいです。
Q、明日、勝利するためには何が必要になると思いますか。
A、“気持ち”だと思います。相手は2位のチームなので、難しい試合になるのは間違いないと思います。どれだけ自分たちが耐えられるか、自分たちが少ないチャンスをものにできるかが重要になります。自分たちが今できることをどれだけ出すことができるかが、勝負を分けると思います。
<アレクサンダー ショルツ選手>

Q、劇的な勝利を掴みとった横浜FC戦を振り返ってみていかがでしょうか。
A、もちろん勝てて嬉しかったです。自分たちの順位としても勝てたことはとても重要なことだと思います。結果として逆転勝利することができて良かったです。ここまで2連勝できたことは少なかったと思います。なので、これを継続していけるようにしていきたいです。
Q、練習の際に松橋監督からも、柏レイソルに勝利することでよりこの2連勝の価値が大きくなるという話がありました。重要な一戦になると思います。
A、柏はすごく調子の良いチームなので、難しい試合になることは予想できます。アウェイの素晴らしい雰囲気の良いピッチで試合ができることはすごく楽しみです。難しい試合にはなりますが、しっかりと顔を上げて戦いたいと思います。
Q、浦和レッズに所属していた時に指揮を執っていたリカルド ロドリゲス監督が対戦相手の指揮官です。
A、リカルド監督もですが、小泉選手や犬飼選手も浦和でチームメイトでした。今まで一緒に戦ってきていた人たちと試合ができることは非常に嬉しいです。天皇杯での優勝など、リカルド監督とは浦和で成功した時期を一緒に過ごしていました。
Q、堅守を持ち味にしている分、先制点が重要になります。無失点で試合を終えることが一番重要かと思います。
A、前回の試合ではチャンスを作られてしまい、試合開始4分で失点をしてしまいました。柏戦では自信を持ってプレーできるように、しっかりと練習をしてきましたし、常にコミュニケーションをとり、万全の準備をしていきたいです。相手の攻撃的な選手にも優れている選手が多いので、難しい試合になると思いますが、しっかりと対応することができれば僕たちが勝てると思っています。


