<天皇杯2回戦・ツエーゲン金沢戦のレビュー>
AFCチャンピオンズリーグ2へとつながる天皇杯初戦となる2回戦はツエーゲン金沢と対戦し、3-1で勝利を飾った。直近の6月14日に行われた2025明治安田J1リーグ第20節セレッソ大阪戦からスタメン11人を変更して臨み、そのなかには、バングーナガンデ佳史扶選手が名を連ね、昨シーズンの5月31日に行われたサガン鳥栖戦以来、383日ぶりに公式戦のピッチに復帰した。
他会場ではアップセットも起きていたが、主導権を握りながら冷静に試合を進めた。前半32分に、中盤で仲川輝人選手がボールを奪うと、そのままゴール前へと持ち上がった。最後はそれに併走した佐藤恵允選手が流し込んで先制に成功する。
さらに、前半44分に野澤零温選手が右サイドを突破し、ゴール前へとクロスボールを上げる。それを佐藤選手が頭で押し込んで追加点を挙げ、2点のリードをもって試合を折り返した。

後半は不用意なミスから金沢に付け入る隙を与えてしまったが、野澤大志ブランドン選手を中心に失点せずにゲームを進める。
そして、仕上げは同40分だった。俵積田晃太選手が放ったシュートのこぼれ球に長倉幹樹選手が素早く反応。ダイビングヘッドで押し込み、デビュー戦で名刺代わりとなる移籍加入後初得点を挙げた。その後、試合終了間際に金沢に1点を返されたが、公式戦6試合ぶりの勝利を飾った。
松橋力蔵監督も「無事に次のステージに進めたので今はホッとしている」と胸をなで下ろしつつ、「勝って反省ができるが、課題は数多くあると思っている」と兜の緒を締め直していた。
<天皇杯3回戦のプレビュー>
直近の明治安田J1リーグ第23節柏レイソル戦は0-1で惜敗となったが、首位のチームを相手にどちらに転んでもおかしくないゲームを演じた。6月の特別移籍期間で加入した新戦力が既存戦力と融合し、確実にチーム力は上がってきた。
対する大分トリニータは片野坂監督が率い、J2リーグで現在12位。リーグ戦ここ6試合未勝利と苦しんでいるが、堅守速攻を武器に、2回戦では北海道コンサドーレ札幌とのペナルティキック戦までもつれた接戦を制して3回戦へと駒を進めている。松橋監督は「素晴らしい監督が率いていて実績も十分ありますし、本当に選手の目線がしっかりと揃っている」と警戒。さらに指揮官は「攻守の切り替えのところは大きくゲームを左右するポイントになる」と続ける。
分厚い壁をこじ開け、いかにゴールに迫ることができるか。新戦力の活躍に期待がかかる。浦和レッズから6月に期限付き移籍で加入した長倉幹樹選手は公式戦4戦3発といち早くチームにフィット。青赤の新たな得点源として期待に違わぬ活躍を見せている。天皇杯3回戦後に中2日で迎える浦和レッズとのJ1リーグ第24節には契約により出場できないため、この大分戦に全力を傾けられるはずだ。

その万能ストライカーはこの一戦を前に、「大分はブロックを敷いてくるので、それをどう崩すかにチャレンジしたい。個人のところで剥がすことも大事になるので、アタッキングサードでは個人のクオリティを見せていきたい」と言葉にする。再び個人技が詰まったスキルフルな得点にも大きな注目が集まる。
「とにかくゴールを決めないと勝てない。どんなゴールでもいいので狙いたいと思います」
“カップを奪いとる”ために。まずは2シーズンぶりのベスト16をめざし、クラサスドーム大分へと乗り込む。
[松橋力蔵監督 インタビュー]

Q、柏レイソル戦から少し試合間隔が開き、練習に取り組む時間が多くあったと思います。2週間どういったことに取り組んできましたか。
A、チームとしての攻守のところであったり、ポジション的なところであったり、全体へのアプローチが多かったとは思います。選手が非常に良い姿勢で取り組んでくれたので、良い練習での積み上げができたと思っています。
Q、全体へのアプローチという点で、守備面では特に距離感を保つことが重要になると思いますが、そこの整理などはどのように行いましたか。
A、我々はクロスボールからの失点が多いので、クロスボールへの対応であったり、その前段階の部分の上積みを行いました。距離感については守備だけの話ではなく、攻撃との関連も十分にあるので、そういう意味では守備だけではなく攻守ともに距離感の認識合わせをやってきました。
Q、明日、大分トリニータ戦がありますが、その後に中2日で浦和レッズ戦も控えています。
A、天皇杯は負けたら終わりなので、勝つためにどういうメンバーで行くかを考えています。中2日での試合になりますので、大分戦に加えて浦和戦も含めてメンバーを考えています。全員ではないですが、個々の選手とも少し話をしながら、メンバーを決めていければと思います。
Q、大分の今シーズンの印象を教えてください。
A、すべての試合を見たわけではありませんが、実績も十分あるクラブですし、非常に素晴らしい監督が率いています。スタイルを持ったなかでやっていて、選手の目線がしっかり揃っているサッカーが展開されている印象です。攻撃的に仕掛けつつ、守備のところではしっかりブロックを組んでくると思います。攻守の切り替えの部分が大きくゲームを左右するポイントになると思っています。
[選手インタビュー]
<小泉慶選手>

Q、リーグ戦が中断し、公式戦がない期間ができました。チームとしてどのような準備ができましたか。
A、いろいろな改善点がありますが、練習メニューの一つひとつに対して選手は100%で取り組んでいたと思います。そのなかでプレーの強度を求められていました。ゲーム形式が多かったので、やはり戦うのは試合ですし、ゲームをとおして攻守ともに目線を合わせてきました。
Q、柏レイソル戦は結果としては敗れたものの、自分たちからアクションできた場面も多い試合だった印象です。その流れをトレーニングで継続できましたか。
A、攻撃でも守備でも、負けたからといって全部が悪いわけではなくて、良いところも出ていました。あとは最後の質の部分で、結局はそこにいきつきます。全部をネガティブに捉える必要はないと思いますが、結果が一番大事です。負けていることを考えたら、まだまだ足りない部分が多いのだと思います。この期間でもそうですが、練習でそうした隙を自分たちで埋めていくしかありません。しっかりと向き合っていきたいです。
Q、「目線合わせ」という言葉がありましたが、認識のズレを埋めたり、同じ方向を向くような選手間のコミュニケーションについては、この期間での手応えはありますか。
A、最初の頃に比べたら、迷いながらピッチに立っている選手は少なくなってきていると感じます。あとは強度やクオリティのところが重要で、全部が全部ではありませんが、勝つためにはそこも大事になってきます。技術、クオリティ、強度の部分について、この2試合は天皇杯とリーグ戦と別の大会にはなりますが、突き詰めていきたいです。リーグ戦では連敗しないことが大事ですし、ホームでなかなか勝てていないので、天皇杯で勝利してホームに戻ってまた勝って、再び中断期間でリセットしていきたいと思います。
Q、ルヴァンカップもそうでしたが、天皇杯でもカテゴリーが異なるチームとの試合になります。中2日で迎えるリーグ戦まで視野に入れると、より難しい戦いになるかもしれません。
A、難しい部分はありますが、そのなかで勝たないといけないのがノックアウト方式の大会です。たとえばルヴァンカップの1回戦ですら、最後の最後にペナルティキックを獲得して勝てたような試合でした。カテゴリーにかかわらず難しい試合になることは想定しながら、勝って上にいければと思います。正直に言って、天皇杯は勝つことがすべてです。しっかりと結果にこだわって戦いたいです。
Q、ここまでの試合を含めて、自身のパフォーマンス、自身の役割に対してはどのように感じていますか。
A、(リーグ戦では)この順位ですし、何も貢献できていると思っていません。まずはプレーで示すことが一番です。そこは自分にベクトルを向けて、試合に臨みたいと思います。
<白井康介選手>

Q、出場となれば、久しぶりの公式戦となります。どのようなモチベーションで、どういうプレーを見せたいですか。
A、とても高いモチベーションで練習から取り組むことができています。室屋成選手が東京に帰ってきて、バングーナガンデ佳史扶選手も長期の怪我から復帰しました。サイドバックの層も厚くなった実感がありますし、コンディションを落として出遅れた分、自分のプレーをピッチで表現して、スタメン争いにしっかりと加わって、そこからスタメンへの定着をめざしていきたいです。
Q、今お話にあったとおり、佳史扶選手と室屋選手それぞれが帰ってきて、代表活動中の長友佑都選手もいます。個の能力が際立つ面々が揃うなか、どのように良さや強みを出していきたいですか。
A、今名前が挙がった選手たちと比べた時に、自分の良さとして攻撃力という部分では負けない自信があります。スピードを活かしたドリブル突破や相手を剥がすプレー、オーバーラップなど、攻撃面でどれだけ違いを作ることができるかが、今後の自分に対する評価のポイントになってくると思っています。
Q、対戦する大分トリニータは、3バックを軸にしたシステムです。攻守におけるズレがピッチ内で起こることが予想されます。
A、もちろん簡単なゲームにはならないと思っていますが、力の差をはっきりと見せられるくらい、内容と結果にこだわりたいです。サッカーの形としては、ミスマッチがお互いに起こると思うので、そのズレをどちらがうまく活かし、どちらがうまく消すことができるかが重要になると思っています。
Q、一発勝負のトーナメント方式の大会になります。
A、リーグ戦と異なる一発勝負の大会で、いつもとは違う緊張感がありますが、勝ち進むことでAFCチャンピオンズリーグ2にも繋がっていきます。天皇杯のタイトルはどうしても欲しいですが、まずは目の前の試合に向かって、勝利に集中するだけです。


