<前節・ヴィッセル神戸戦のレビュー>
今シーズン最後のアウェイゲームに臨んだ東京。天皇杯準決勝で喫した手痛い敗戦から立ち直り、新たな歩みを進めることが求められた。
開始早々から軽快なパスワークでチャンスを生み出すと、その後は神戸のハイプレスに対して地上戦で挑みながら、シンプルに裏を狙う攻撃を織り交ぜながら得点をめざしていく。
チームとしても球際のバトルや攻守の切り替えで激しさを披露。少しずつ神戸に押し込まれる時間が目立つようになるが、ラインを下げることなくコンパクトな布陣を保って集中したサッカーを見せていく。

特に守備陣の奮闘が際立つ試合でもあった。前半44分には決定的なシーンを作られながらゴールキーパーの波多野豪選手が右手を伸ばして指先でわずかにコースを変えて難を逃れると、後半開始早々の4分にも波多野選手が強烈なシュートを弾き出す。後半23分には佐藤恵允選手が全速力で自陣まで戻るプレスバックを見せ、同28分には神戸のカウンターを食らったシーンで、室屋成選手が猛ダッシュからのスライディングブロックで得点を許さない。
何とかゴールを陥れたい攻撃陣は、後半26分に仲川輝人、マルコス ギリェルメ、安斎颯馬の3選手を同時投入。これで前線にアクセントが加わり、攻守の切り替えが素早さを増しただけでなく、裏のスペースを狙うシーンも増えていく。
しかし、最後まで神戸の守備網を崩すことはできず。終了間際にはヴィッセル神戸の大迫選手のシュートがポストを叩いて肝を冷やしたが、全員が集中したプレーを続けてタイムアップ。アウェイで勝点1を持ち帰る結果となった。
<今節のプレビュー>
2025シーズンの最終戦は『Big Thank You Day』。アルビレックス新潟を迎え撃つホーム最終戦で一年間の集大成を披露し、しっかりと勝利という結果で応えなければならない試合となる。
今年1月のチーム始動から数えて、松橋力蔵監督はピッチで合計242セッションのトレーニングを実施。ボールをしっかりと大切にしながら、臨機応変に素早く裏のスペースを突くサッカーを追求してきた。ベースとなる球際のバトルにもこだわり、前半戦の“産みの苦しみ”を経験したなかで積み上げてきたものを4バックへのシステム変更、途中加入した選手たちの活躍などで昇華させ、戦えるチーム、勝てるチームへの礎を作り上げた。
今週木曜には松橋監督の契約更新が発表され、シーズン移行期となる2026シーズンの明治安田J1百年構想リーグも引き続きトップチームの指揮を執ることが決まった。これを受けて指揮官は「大変光栄なことですし、この決断をいただいたことには本当に感謝しています。多くの方の理解と勇気、そして覚悟も持って決断してくださったと思うので、しっかりとその気持ちを受け止めて、しっかりと前に進んでいきたい」と強い眼差しで未来を見据える。
チームはここまでリーグ戦37試合で13勝10分14敗の11位。今節で勝利すれば五分の成績でフィニッシュすることになる。しっかりと積み上げてきたものを結果として残し、来シーズン以降への自信と手応えを持ってシーズンを終えたいゲームとなる。また、直近のリーグ戦で5戦無敗、わずか2失点という堅守が光る。安定した試合運びを進めながら、負けない強さを手にしつつあると言っていい。

激しい青赤スタイルを象徴するようなプレーを続けてきた室屋成選手は「理想を言えば、攻撃のところでもっともっとクオリティを上げたい」と課題を語る一方で、「自分たちには1点差のゲームをモノにできる力があるし、1点あれば勝てるという感覚や自信もある。逃げずに戦えるようなメンタルもチームとして持てるようになってきた」と手応えを口にする。そして「リキさん(松橋監督)の契約延長が発表されたし、チームにとっても、ファン・サポーターのみなさんにとっても来シーズンに向けて希望を持てるようなサッカーをしたい」と新たなスタートの一戦でもあることを強調した。
2025シーズンを締め括る『Big Thank You Day』。「常に多くのみなさんに感謝しながら戦っている」という松橋監督は、一緒に戦ってきてくれたファン・サポーターに対しても感謝の意を込めた。

「彼らの熱い応援は、本当に我々を前に推し進めてくれている大きな一つの要因になっています。みんなで喜び合いたいという想いを持っていけるような熱量を与えてくれていますし、身に余るようなコールもいただいているので、それにしっかりと適した監督にならなくてはいけないという気持ちは常に持ってきました。本当に感謝の気持ちが尽きないシーズンだったと思っていますし、(新潟戦は)勝つことが大前提となるなかで、自分たちが推し進めているようにイニシアチブを握って、魅力的で、観ていて面白いサッカーでしっかり勝って終わる姿を見せたい」
なお、試合当日はFC東京オリジナルデザインの『フリースポンチョ』が先着30,000名様にプレゼントされ、味の素スタジアムのペデストリアンデッキには明治安田J1百年構想リーグで新たに着用するユニフォームビジュアルを使用したトラスバナーが掲出される。さらに飛田給駅北口から甲州街道までのスタジアム通りが歩行者専用道路となり、人気のキッチンカー出店やステージイベント、調布市関連ブースなどで賑やかに盛り上がる“青赤ストリート”が実施される。ピッチで戦うチームと合わせて、試合周辺の様々なイベントにもしっかりと注目しておきたい。
[松橋力蔵監督 インタビュー]

Q、2025シーズンの最後の練習が終わりました。今の気持ちを教えてください。
A、チームは浮き沈みがありましたが、選手は本当に高い意識でトレーニングを積んでくれていました。最後には、「明日はしっかりそこを出しましょう」と選手に伝えました。
Q、明日はどのような試合をファン・サポーターの方に見せたいですか。
A、明日に限らず、我々は常に上をめざして勝っていかなければいけません。勝つことを大前提に、自分たちがイニシアチブを握り、観ている人も面白いと思える魅力的なゲーム展開をめざしています。そのような展開をめざしてトレーニングを行っていますし、そのなかでもしっかりと勝利している姿を最後に見せたいです。明日は特別な日ではありませんが、最終戦をホームで迎えることができるということに特別感はあります。選手たちも感じているとは思います。ですが、いつもと変わらず勝点3をめざして戦うことが一番大事なことです。
Q、アルビレックス新潟の印象はいかがでしょうか。
A、最近の試合では非常に良い試合の入りをしている印象があります。ですが、そこをしっかりと引っくり返せるくらいのパワーを持って試合に入らなければいけません。新潟には少し隙を与えればチャンスを作れる選手もいますし、高い決定力を持っている選手もいます。そこはしっかりと警戒をしなくてはいけません。彼らの順位や現状を考慮して試合に入ることは危険です。最後は自分たちに矢印を向け、相手より走ること、相手より早く切り替えること、球際で戦うことなど、ベースの部分で相手を上回っていくことが一番大切です。
Q、今シーズン最後の試合に向けて、ファン・サポーターの方へのメッセージをお願いします。
A、彼らの熱い応援は我々を前に押し進めている大きな原動力です。良くない時には、ブーイングをしてもらうことで“やってやる”という気持ちにさせてくれます。常にみんなで喜び合いたいと思わせていただけるような熱量で応援してくれています。僕個人にも身に余るようなコールをいただいているので、それに似合う東京の監督に、しっかりとならなければいけないという気持ちは常に持っています。まだ、明日の試合もありますが、本当に感謝の気持ちが尽きないシーズンだったと思っています。
[選手インタビュー]
<室屋成選手>

Q、明日の試合はチームとして2025シーズンの集大成となります。
A、松橋力蔵監督の続投も発表されていますが、2026シーズンを見据えた試合になると思っています。チームにとっても、ファン・サポーターの方にとっても来シーズンに向けて希望を持てるようなサッカーをしたいです。
Q、今シーズンの積み上げについてはどのように感じていますか。
A、チーム全体が、対戦相手に対して柔軟な立ち位置ができるようになってきました。僕が在籍しているハーフシーズンでも、それを感じることができています。1点差をものにできる試合が増えてきたことは、そのあたりが影響しているのではないかなと感じています。
Q、チームとして守備が安定してきて、それをベースに戦えるようになったと思います。手応えはいかがでしょうか。
A、僕はディフェンダーなので守備にフォーカスすると、無失点の試合が多くなっています。そういった部分では1点差の試合をものにできるような力が僕たちにはあると思っています。1点をとることができれば勝てるという感覚もありますが、そういった自信はあります。理想を言えば、攻撃の部分のクオリティは上げたいと思っていますが、守備は全員でハードワークできているので、そこは来シーズンに向けてチームとして取り組むべき課題だと思っています。
Q、明日のホーム最終戦は『Big Thank You Day』と位置付けて、支えてくれた方々への感謝を伝える試合です。選手として、感謝を伝えるためにピッチでどのようなことを表現したいですか。
A、自分のやることは変わりません。味の素スタジアムに来てくれているファン・サポーターの方が熱くなれるようなプレーを、チームとしても個人としてもしたいと思っています。これまでと変わらず戦う姿勢を見せたいです。
<遠藤渓太選手>

Q、ヴィッセル神戸戦では、チームとして連動し切れていない場面もありました。
A、守備と攻撃のバランスが悪く、攻撃の選手も守備におもきを置いてしまっていました。良い守備から良い攻撃につなげるパワーや強度が足りなかったと思います。後ろの選手だけで守れるわけではないですし、攻撃も前線の選手だけで得点がとれるわけではないと思っています。後ろの選手も攻撃に関わらなければいけないですし、前線の選手も守備に関わらないといけません。その意思疎通をこの一週間であらためて共有してきました。
Q、神戸戦でも得点のチャンスはあったものの、決め切ることができない展開でした。勝つためには得点が必要になります。
A、そういったシーンもありましたが、根本的にゴールに向かっていく回数やチャンスの数が少なかったです。今週の練習ではしっかりとその現象を解消するためのトレーニングも行いました。しっかりとゴールに向かうために、前に圧力をかけるために、全員でやっていきます。
Q、アルビレックス新潟の印象をお願いします。
A、今シーズン最後の試合で、強い気持ちを持って試合に臨んでくると思います。降格が決まった後の方が、思い切って試合を進めることもできると思います。そのような状況ではなくとも、シーズン最後の試合に懸ける思いはどのチームも相当強いと思うので、そこに負けないように、強い気持ちを持って試合に臨みたいと思います。
Q、明日の試合は2025シーズン最後の試合になります。
A、2026シーズンに少しでもつながり、良いイメージを持って次のシーズンに入れるような試合にしたいです。結果としては、中位という結果になってしましたが、それでも期待して観に来てくれるファン・サポーターのみなさんがいる限り、その期待に応えなければいけないと思います。今シーズンは浮き沈みの激しいシーズンでしたが、そんな状況でも見放さずに、ホームで熱い応援をしてくれたファン・サポーターの方や、アウェイの地まで応援に来てくれたファン・サポーターの方がいるからこそ、今シーズンの苦しかった時期も戦い抜くことができました。最後に良い形でシーズンを終えられるように、自分たちは全力で試合に臨みます。






