<マッチレビュー>
カレンダーは4月に突入したが、今節のヴィッセル神戸戦が2022シーズンのJ1リーグ戦における東京のホームゲームとしてはようやく2試合目となった。AFCチャンピオンズリーグ(ACL)に出場する3クラブとの中3日での連戦の2戦目。前節、横浜F・マリノスとの一戦で1点差に泣いた東京としては、ホーム味の素スタジアムでチームの成長を示しつつ勝点3を獲りたい一戦。
今節は松木玖生選手が出場停止となり、インサイドハーフは東慶悟選手が起用された。前線では永井謙佑選手がリーグ戦では開幕戦以来のスタメン起用。ディフェンスラインでは右サイドバックに渡邊凌磨選手が入り、左サイドバックには長友佑都選手が入った。
相手のヴィッセル神戸はアンドレス イニエスタ選手がスタメン出場し、橋本拳人選手がサブでメンバー入り。
立ち上がりからボールを保持された東京は、サイドバックの背後のスペースを狙われてゴール前に迫られる。前半5分には右サイド深くまで侵入されてクロスボールを入れられ、大迫勇也選手に頭で合わされるが、これはゴールの左へと逸れた。ボールを保持し続けられない中で、前半12分にまたも右サイドからゴール前に迫られると、1対1の場面でヤクブ スウォビィク選手がビッグセーブ。しかし、ゴール前にこぼれたボールを山口蛍選手に押し込まれて先制を許した。
1点を追う東京は、失点直後から徐々にボールを保持して相手を押し込みはじめる。前半27分にはワイドにボールを動かし、渡邊選手がペナルティエリア右寄りにポジションをとった安部柊斗選手に預ける。安部選手が左足でクロスボールを入れると、ファーサイドで東選手がワンタッチでボールを落とし、ペナルティエリアに入ってきた永井選手が左足で合わせたが、シュートはゴールの上へと外れた。直後の前半28分には、ハイプレスで相手のミスを誘うと、東選手が攻撃に出ようとした神戸のディフェンスラインの背後にスルーパスを通す。スペースに飛び込んできたディエゴ オリヴェイラ選手は、相手ゴールキーパーの位置を見て狙いすましたシュートを放つが、これもゴール左へとわずかに逸れた。前半40分にもビッグチャンス。木本選手がミドルレンジの鋭いパスを右サイドへと通す。渡邊選手が早いタイミングでアーリークロスを入れ、永井選手が合わせるが、相手ゴールキーパーの攻守に阻まれた。
後半立ち上がりから攻勢を強める東京は後半6分、ペナルティエリア内右スペースに永井選手が抜け出し、ゴールライン際でマイナス方向のパス。ニアに飛び込んできた渡邊選手が相手ディフェンダーの前で合わせたが、シュートはゴールわずか右へと逸れた。続けて右サイドからチャンスメイクすると後半10分、渡邊選手が対峙したマーカーの股を抜くパスでスペースに永井選手を走らせる。抜け出した永井選手はニアに相手を寄せたところでファーサイドへ山なりのパスを入れると、ゴール前に詰めていたアダイウトン選手が頭で押し込んで同点に追いついた。
東京の勢いは止まらない。後半12分には、左サイドでボールを持った渡邊選手がイニエスタ選手をかわしてドリブルで抜け出すと、ゴール前ニアサイドにパスを入れる。走り込んだ永井選手がヒールでおとし、さらにアダイウトン選手がつないでディエゴ選手がゴール正面で受けると、後方に落としたボールを森重真人選手が豪快に叩いてネットを揺らして逆転に成功した。
後半21分にはペナルティエリア手前でくさびのパスを受けた長友選手がフリックでゴール前にボールを送ると、相手ディフェンダーが処理し切れなかったボールがディエゴ選手の目前にこぼれる。相手ゴールキーパーも前に出て間合いを詰めてきたが、冷静にゴール左隅に流し込んで東京が一気に神戸を引き離した。
試合終盤には途中投入された山下敬大選手が立て続けにチャンスに絡む。44分にはゴール前に抜け出してゴール左斜めの位置で左足を振り抜いたが、シュートはわずかにゴール右へと逸れた。試合終了間際には三田啓貴選手が左から入れたクロスボールにダイビングヘッドで合わせてゴール!と思われたが、VARのサポートによりハンドの判定でゴールは取り消しに。それでも、後半立ち上がりからの攻勢をタイムアップまで継続し、味の素スタジアムに強烈な攻撃的サッカーのインパクトを残す45分になった。
アルベルトーキョーの旅はまだ始まったばかり。中3日でACL出場クラブとの連戦の締めくくり、浦和レッズとの一戦を控える。4月10日、攻撃的サッカーのインパクトを今日以上に味の素スタジアムに残せるように、また明日からのトレーニングで少しずつ成長を続けていく。
[アルベル監督インタビュー]
Q、試合を振り返ってください。
A、試合のスタートを上手く入れず、10分、15分苦しむ時間帯が続きました。そして我々のミスから失点をしてしまいました。その後は上手く試合に入れたと思います。そして前半のうちに複数の決定的なチャンスを作っていましたから、そこからゴールを生み出すことができれば良かったのですが、そう上手くいきませんでした。
その後、試合を決めたのは、早いテンポを維持することだったと思います。そのことで全体的に我々が試合を支配できていたと思います。後半、全体的に前からのプレスも効いていましたし、ボールを保持するところ、ゴールに積極的に向かうところが良いバランスを保てていたと思います。そして、後半も多くの決定的なチャンスを作り出し、そこから複数のゴールを生み出せたことを嬉しく思いますし、そしてチームが継続的に成長してくれたことを嬉しく思っています。
Q、特に後半に右サイドが機能していましたが、永井選手に幅をとらせていたように見えました。右サイドの評価をお願いします。
A、我々の右サイドが機能していたというのは事実だと思います。ただ興味深いのは、同じサイド、相手にとって左サイドから彼らが良い攻撃をしていたというのも事実です。同サイド、我々の右サイド、彼らの左サイドで良い攻防がありました。彼らはそこからゴールを生み出しましたし、我々も複数の決定的なチャンスを作りました。両チームにとって多くのチャンスがそちらのサイドで生まれたことは興味深いポイントです。後半に関しては右サイドだけでなく、左サイドからも良い形で攻撃ができていたと思います。
Q、立ち位置にこだわったサッカーをしていますが、現状の選手の立ち位置に対する手応えはいかがですか。
A、全体的に良い立ち位置がとれている中、サイドからの攻撃はできていましたが、中央からの攻撃というのはまだ足りなかったと思います。良い立ち位置をとれていながらも、中央からの攻撃の構築というところにはもう少し時間がかかると思います。当然、今シーズンを通じて継続して成長しなければいけない部分だと思います。ただ、サイド攻撃は構築できています。いつも言っている通り、試合を重ねながらチームの完成度を高めていきたいと思っています。
Q、前節はプレーのテンポよりもウイングにポイントがあると話していましたが、今節はいかがでしたか。
A、今日に関しては、キーポイントはふたつあったかと思います。ひとつ目は、どちらが自分たちのプレースタイルをより表現できるかどうか。ふたつ目は、我々がどれだけプレーテンポを速く維持できるか。それが勝利につながると思っていました。神戸は中央での攻撃を得意としています。そして我々は中央よりもサイドからの攻撃が得意ということがあります。そうした流れの中で、試合のスタートの時に、彼らの中央からの攻撃の構築への対応で苦しみました。そしてその後、我々もリズムをつかみ、サイド攻撃を上手く構築できていたと思います。そして今日は、プレースピードよりもインテンシティ、プレー強度が重要でした。後半も高いプレー強度を維持してプレーできたことが、勝利のポイントだったと思います。今日の試合だけでなく、練習からも強度の高いプレーができていますし、フィジカルコンディションも良い状態が維持できており、それが勝利につながったと思います。
[選手インタビュー]
<森重真人選手>
Q、得点シーンを振り返ってください。
A、セットプレーだったのでボールがこぼれてきたら打てるポジションを取っていた中でボールが来たので上手く決めることが出来ました。
Q、ボールを呼び込んだというよりはそのポジションにいたらボールが来た、という状況でしょうか?
A、そこのポジションに誰もいなかったのでカウンターを受けないようにすることと、こぼれ球がきたら拾えるポジションを取りました。
Q、先制点を取られてしまった後、神戸はあまり攻めてこなくなった印象です。先制される前と後の時間帯でチームとしての難しさはありましたか?
A、自分たちがやることは変わらず、神戸は前線から守備をしてくることも無かったのでボールを相手陣地まで運べる機会が多かったです。ボールを動かしながらゴールを狙っていければよかったなと思います。
Q、ゴールシーンは感情が表れていたように思いますが、いかがでしょうか?
A、毎試合感情を前面に出してやらなければいけないですし、後ろの選手が盛り上げていかないとチームも沈んでしまうので、安定したプレーをしながらチームに喝を入れるような立場でいなければいけないと思っています。
Q、2試合連続で先制されてしまっていますが、特に今日は着実に逆転した印象がありましたが、90分通してのゲーム運びはいかがでしたか?
A、まだまだ修正しなければいけないところはありますし、神戸はあまり前線からプレスをかけてこないチームなので、もっとボールを素早く回すことができればよかったと思っています。またみんなと話し合いながらより良くしていきたいと思います。
Q、3/12広島戦のあとにもまだまだ、という話をしていた中で今日のまだまだは少しレベルが上がっていますか?
A、成長はしていると思いますが、失点やボール回しの精度も満足いく試合内ではなかったので一人一人もチームとしても成長していきたいです。
Q、ここまでの試合で立ち上がりの入りが悪いと見えますが、最後尾から見ていて何が原因だと思いますか
A、これまでのFC東京は守備から入ってリズムをつかんでいくサッカーでしたが、今シーズンからはボールを繋いでリズムを作るサッカーにチャレンジしています。試合を通じて少し硬いなと感じますが、緊張感をもってボールを回すという事に、引き続きチャレンジしていくことでこれから更に進歩できればと考えています。
<ディエゴ オリヴェイラ選手>
Q、前半はボールを持たれる時間も長かったと思いますがいかがでしたか。
A、神戸はもともとクオリティが高いチームだと知っていたので、立ち上がりから良いリズムで良い試合の入り方をしてきたのは、ある程度想定の範囲内でした。後半は逆に自分たちのクオリティを発揮してボールを握ることが出来ていたので、それが改善できた要因だと思いますし、前半の反省を活かせたと思います。
Q、ボールが前線に来ない時間帯が続いたと思いますが、どんな準備をしていましたか。
A、前線でボールを受けられない難しさより、相手が引いて守備ブロックを固めてくる難しさを感じていました。前半に訪れた決定機を外してしまったので、できるだけ早くチームとしても得点をとり、逆転できるように考えながらプレーしていました。その中で、前半より難しいシーンで得点を決められたのは良かったと思います。
Q、ワンタッチツータッチで崩せている場面も多くありました。
A、後半、自分たちが日ごろから練習している攻撃パターンやリズムを表現することができて、それに相手チームがついてこられなくなったため、自分たちのリズムが相手を上回って得点をとることができました。それによってチームにも余裕ができて、自分たちのペースで試合を運べたので良かったと思います。
Q、次の試合に向けた意気込みをお願いします。
A、今日の試合は、多くのファン・サポーターがスタジアムに来てくださり、大きなサポートをしてもらえました。次の浦和戦でも自分たちが勝点3をとって3連戦を締めくくるには、リカバリーをしっかりして良い準備をすることが重要です。次の浦和戦でも、味の素スタジアムに多くの方にお越しいただき、チームを後押ししてもらって、ファン・サポーターのみなさんと一緒に勝利を分かち合いたいです。
<アダイウトン選手>
Q、試合を振り返ってください。
A、相手はクオリティの高いチームなので、試合前から難しい戦いになると思っていました。その中で、自分たちのリズムとスタイルを出すことができればチャンスを作れると信じていたので、得点をたくさん奪って勝てたことは嬉しく思います。
Q、後半はどのような修正をしたのですか。
A、1番に修正したのはインテンシティです。前半にできなかったわけではありませんが、相手より上回ることが出来なかったので、後半はインテンシティをもう一回上げていこうと話して、持ち直せたと思います。
Q、サイドを有効に使いながら攻撃できていましたね。
A、自分のサイドから攻めることができたというよりは、両サイドから良いバランスで攻撃ができたことが後半の得点につながったと思います。
Q、前節の敗戦から切り替え、3連戦の最後となる浦和戦を良い形で迎えられますね。
A、もちろん次の試合も難しくなることが予想されますが、ホームの味の素スタジアムで試合ができるので、高い集中を保ちながらプレーして、勝点3を取れるようにしたいです。
<永井謙佑選手>
Q、まずは1点目のクロスのシーンを振り返ってください。
A、最初のタイミングであげようと思ったら相手が寄せてこなかったので、間ができて中の位置をしっかり確認できました。アダ(アダイウトン選手)の位置も見えていたので、上手く合わせられてよかったです。
Q、次のゴールも永井選手がヒールで上手くアダイウトン選手に残しました。
A、しっかりと見えていました。ボールを受けた時に自分では打てないと思って、受ける前にアダの位置を確認していたので、彼にボールを渡すという選択をしました。
Q、その2点ともに起点は渡邊選手のパスでした。前半はパスが合わなくて、ふたりでやりとりしているシーンがありましたが、時間が経つにつれて合っていった感じでしょうか。
A、最初は(渡邊)凌磨も出すタイミングがつかめていなくて、「出してくれたら俺が追い付くから信じて出してくれ」と言ったら出してくれるようになって、自分としてはすごく助かりました。そこから何度かチャンスを作れたので、結果として1点目の部分で冷静に合わせることにつながりました。
Q、上手く逆転できた要因はどこですか。
A、前半からチャンスはあったし、ハーフタイムに1点返せばチームとして勢いに乗れるからとチームで話していたので、監督が求めていることを追求しながら、選手としても自信を持ってやれていますし、そこが結果的に後半に3点とれたことにつながったと思います。
Q、アルベル監督は積み上げるシーズンと言っていますが、その中でも結果を残せている理由はなんだと思いますか。
A、やっぱり監督自身も勝者のメンタリティを持つことの大切さは日頃の練習や試合前にも常に言っています。時間はかかるけど勝ちながら積み上げていこうと常々言われているので、勝てている要因はそういう部分にあると思います。
Q、連敗しないことも大きいと思うのですが、どう思いますか。
A、連敗するとACL圏内やタイトルは厳しくなるので、そこは僕たちも意識していましたし、ホームということでよりアグレッシブにいこうという話をしていました。自分としても、チャンスが2、3回あったので、次は自分がゴールを決めて勝利に導けるようにしたいです。
<東慶悟選手>
Q、1点目をとってからチームの勢いや流れが変わったと思いますが。
A、前半もチャンスがありましたし、サッカーはゴールを取れればチームにとっていい薬になるので、ホームでいい雰囲気で立て続けに得点が奪えたので、東京らしさが出たかなと思います。
Q、後半から連動した守備でボールを奪えていたと思います。
A、後半に入って相手の運動量が落ちたこともありますし、強度が東京の良さでもあるので、そこが後半は上手くはまって良かったです。
Q、前半はなかなかチャンスを決めることができないなか、後半はチャンスを得点にしっかり結びつけることができていましたが、何が変わったのでしょうか。
A、チャンスも多く作れているので、すごくいいことだと思います。前半のうちに決められる時に決めていれば、もっと楽な展開になりますし、まだ成長段階なので、みんなでいっぱいチャンスを作りながら得点をとり、試合をものにしていきたいと思います。
Q、新しいサッカースタイルの浸透度はいかがですか。
A、まだまだだと思います。今日は勝てましたが、内容の部分は練習からもっと突き詰めていきたいです。
Q、次の試合に向けて意気込みをお願いします。
A、連敗しなかったことは良いことですが、大事なのは連勝することなので、浦和はすごく良いチームですし、試合は3日後なので、良い準備をしていきたいです。個人的にも試合に出られたらアピールしていきたいです。