<マッチレビュー>
4月に入って過密日程での7連戦を戦ってきた東京。今日のルヴァンカップのグループステージ第5戦が連戦の最後の一戦となった。グループステージも残すところ2試合となり、3位タイ同士の直接対決ということもあり、プレーオフ進出に向けて負けられない試合をアウェイの地に乗り込んでジュビロ磐田と戦った。
アルベル監督が明言しているように、ルヴァンカップでは若手選手の成長を促すために、経験を積んでいる選手と若い選手を組み合わせて起用している。この一戦では、梶浦勇輝選手がトップチーム昇格後初めてスタメンで起用され、またバングーナガンデ佳史扶選手も大怪我から復帰後初めてスタメンでピッチに立った。ルヴァンカップ前節の湘南戦でスタメン出場した2種登録の東廉太選手は今回の磐田戦でもスタートから出場。経験値の高い髙萩洋次郎選手、東慶悟選手、三田啓貴選手が若い選手をけん引し、チームを勝利に導く役割を担うメンバー構成となった。
前半4分に左を起点にゴール前に迫られる場面を凌いでからは、東京がボールを保持して磐田を相手自陣にじわじわと押し込んでいく展開。前半8分にはディフェンスラインも含めてゆっくりとボールを動かして相手を押し込むと、ボランチで起用された東選手がスイッチを入れる。中盤の中央でパスを受けると、三田選手に預けて前方へスプリント。三田選手、髙萩選手がワンタッチでつないだボールを、相手守備陣のギャップを突いてフリーで受けてシュート。相手ゴールキーパーに止められたが、緩急をつけたビルドアップで一気にチャンスに持ち込んだ。前半28分には髙萩選手のフリックに山下敬大選手が前向きでゴール正面のエリアを抜け出す。ペナルティエリアの外で左足を振ったが、枠を捉えることができない。前半30分にも髙萩選手がチャンスメイク。自陣でボールを奪うと、縦パスを受けた髙萩選手がヒールでスペースへとボールを残す。前向きに走る佳史扶選手がボールを受けてスピードに乗ると、そのままペナルティエリアのすぐ外まで運んでシュートを狙う。ゴール左上隅を捉えたシュートだったが、これは相手ゴールキーパーのファインセーブに阻まれた。
前半終了時点でグループ1位の湘南と2位の福岡の直接対決が終了し、2チームの勝点が9で並んで勝点差が5に広がり、磐田との試合が引き分けでもグループステージ突破の可能性がなくなる状況。
前半に作った良い流れを継続したい東京は、後半8分に三田選手が相手からボールを奪うと、相手の背後にミドルレンジのパスを通す。そこに山下選手が反応して抜け出してゴールに流し込んだが、これはオフサイドの判定。しかし、東京は流れを継続して好機をものにする。後半10分、エンリケ選手からのくさびのパスを受けた山下選手が相手マーカーに潰されながらもワンタッチで左サイドの三田選手につなぐ。ペナルティエリア左角でコントロールした三田選手は相手ゴール―キーパーとディフェンダーの間のスペースへクロスボールを入れると、飛び込んできた梶浦選手がワンタッチで合わせて東京が先制に成功した。試合をコントロールしてリードを維持したい東京だが、後半18分には大津祐樹選手にフリーで抜け出され、後半22分にはクロスボールをゴール前で合わされるピンチを迎えるが、どちらも波多野豪選手がビッグセーブでシュートをはじき出し、磐田の反撃を跳ね返す。しかし後半23分、ショートコーナーを起点にワイドに揺さぶられると、ゴール前でファビアン ゴンザレス選手に押し込まれて同点に追いつかれる。
終盤に入るとややオープンな展開で磐田にもゴール前に迫られる場面を作られるが、守備陣は粘り強くボールサイドへのスライドや球際での強さを落とさず対応。逆に後半43分には相手の背後に抜け出した山下選手が相手ゴールキーパーと交錯したこぼれ球がサポートに入ってきた梶浦選手のもとに入る。無人のゴールに向けて梶浦選手がシュートを放ったが、これはクロスバーに当たって枠の外へと外れた。後半45+7分にはゴール右寄りの位置から三田選手がミドルシュートを放つが、右ポストにはじき返される。決定機を生かせないでいると、試合終了間際、クロスボールを起点にゴール前に押し込まれ、クリアし切れずにこぼれ球を拾われて逆転を許した。
若手選手が躍動し、ベテラン選手もチームをけん引する働きで決定的なチャンスを何度も作りながら、悔しさの残る敗戦となった。
[アルベル監督インタビュー]
Q、試合を振り返ってください。
A、試合の流れをふたつのフェーズに分けることができます。ひとつはボールとともに試合を支配できていた時間帯です。ただ、我々がゴールを決めた後の10~15分で我々の支配を相手に譲ってしまった時間帯がありました。点を決めた後に守備的にプレーをしたことは、改善しなければいけません。
ただその後に、あらためて試合を支配することができていました。試合を通して、勝利に値するだけのチャンスを複数作れていたと思います。しかし、サッカーというのは決定的なチャンスを作りながらそれを生かし切れないと、相手にチャンスが訪れるような展開が起こるものです。
当然ながら、試合に負けてしまった後には怒りをおぼえるものです。けれども、私は落ち着いています。チームは今、成長段階にいます。多くの若手選手の成長を促すためには、彼らにチャンスを与えないといけないと思います。リーグ戦に出ている選手に過密スケジュールを強いることは難しいです。そういう意味では、ローテーションすることは必然だと思います。そうした状況の中で、自分の感覚を信じてメンバーを決めています。特に今シーズンは、このような選手起用をしなければいけないと感じているので、自分の感覚に従ってメンバー編成をしています。
今日プレーした選手たちは、勝利をめざしてしっかりとプレーしてくれたと思います。特に若手選手のプレーには満足していますし、ポジティブな収穫がたくさんありました。私の役割は、数年間かけて東京を偉大なクラブに育てることです。当然、ルヴァンカップのグループステージで敗退することは誰も願っていません。けれども、私の今大会の選手起用は間違っていなかったと信じています。それが我々に必要な選手選考だと思っているからです。
Q、後半の早い時間の交代の意図と梶浦選手をスタメン起用して期待したことはなんですか。
A、佳史扶に関してはメディカルチームと話をして、怪我から復帰したばかりなので出場時間を制限することを当初から予定していました。東廉太については良いプレーをしていました。ただ、チームとしては苦しい時間帯だったので、岡崎を入れてチームを安定させる意図がありました。
梶浦を含め、可能な限りすべての若手選手にチャンスを与えたいと思っています。ここ最近のトレーニングの中で、彼(梶浦)のプレーに注目していました。そしてポジティブな感覚がありました。18歳にも関わらず、彼はスタメンとしてチームに大きく貢献してくれたと思います。17歳のセンターバックと18歳のボランチという形で若手選手を起用して今日の試合に臨みました。彼らの成長はとてもポジティブなニュースだと思います。今日の試合も負けたことを悔しく思っていますが、その代わりに若い選手を起用して彼らの成長を促せたのだとしたら、将来的に見た場合には今日の試合は大きな収穫があったと思います。
[選手インタビュー]
<梶浦勇輝選手>
Q、プロ初ゴールでしたがいかがでしたか。
A、自分としては、初ゴールよりもチームの勝利が一番欲しかった結果です。自分にももうひとつビッグチャンスがありましたし、初ゴールも嬉しいのですが勝利という結果をもってこれなかった悔しさが一番です。
Q、攻撃のときはワンアンカーのような形になっていたかと思いますが、その部分はいかがでしたか。
A、U-18のころはダブルボランチでやっていたので、どちらかがボールに関わりながらというのは話していたので、意識してプレーしました。
Q、全体的に通して良さを出せたと思いますがいかがでしたか。
A、前半を通してボールに上手く関わろうとしていたのですが、何回かボールを奪われるシーンがありました。ボランチの選手としてそのプレーは致命的なので、ミスがないことが普通という選手になりたいのでそこは反省点だと思っています。
Q、勇気をもって縦パスを狙えていたのが印象的でしたが試合を振り返ってみていかがでしたか。
A、個人的にはもう少し見ることができたらなと思いました。サイドチェンジのパスも1、2本しか通せなかったのでもっと大胆にプレーして良かったのかなと感じています。
Q、髙萩選手や東選手、渡邊選手などの周りの選手から何か感じたことはありましたか。
A、(髙萩)洋次郎さんも(東)慶悟くんも(渡邊)凌磨くんも、一番前向きにプレーしていますし、自分を助けてくれてすごくやりやすかったです。うまくサポートするポジションをとってくれて、近くにいればそこを見てプレーできるので、自分としては周りに助けられた試合でした。
<安田虎士朗選手>
Q、梶浦選手や松木選手といった同期の選手が先に試合に出ている中でどういう気持ちで準備していましたか。
A、もちろん悔しいという気持ちもありましたし、自分がやってやろうという気持ちで試合に臨んだのですが、決定的なチャンスもあった中で決めるべきところで決めきれないという課題が出たと思います。
Q、監督から呼ばれたときの気持ちはいかがでしたか。
A、やっとチャンスがきたので、やってやろうという気持ちで試合に入りました。
Q、ドリブル突破や攻撃面で違いを見せられたと思います。
A、そこの部分は自信があるんですが、チームを勝たせられるかどうかという結果の部分が足りないので、次からもそこにこだわってやらないといけないと思います。
Q、シュートを打ち切れなかったシーンを振り返ってください。
A、ボールの位置も含めて迷ったところがあって、ボレーでいこうか一度反転しようかというところで迷いがあり、あのシュートとなりました。
経験もそうですが、練習から自分でどんどん取り組んで、自信をもってその判断をできるようになりたいと思います。
Q、結果の部分が足りないと言われていますが、その前の中盤で繋ぐ部分などはしっかりできていたように見えました。
A、その部分は自分の仕事でもあるし、後ろと前のつなぎ役、起点となるところは自分の特徴を出していきながら、結果に繋げて行きたいと思います。
Q、今日の試合時間は短かったですがスタートから出てもやれる自信はいかがですか。
A、試合はなかなか出られていなかったので、自信を取り戻すのにも時間がかかっていたんですが、今日のファーストタッチやファーストプレーでいい入り方ができたので自信をもってできました。