<マッチレビュー>
東京は前節、ホームでの湘南ベルマーレ戦を2-2で引き分け、公式戦の連敗を止めた。ホーム連戦となる今節は、セレッソ大阪との対戦。3月8日にルヴァンカップの初戦で対戦しており、終盤の失点で0-1と敗れた。メンバー構成こそ異なるものの、東京としては大阪での借りを返し、リーグ戦の今シーズン3勝目を挙げたい一戦。
東京は、怪我から復帰して前節は途中からの出場だった安部柊斗選手と渡邊凌磨選手をスタメンで起用。センターバックの一角にはエンリケ トレヴィザン選手に代わってキャプテンの森重真人選手が入った。
1stHALF—ボールを保持してゴールに迫る
朝から降り続く雨に濡れたピッチコンディションのなか、お互いに序盤は様子をうかがう展開となった。
ボールコントロールに慣れてくると、東京が細かくボールをつないでリズムを作っていく。自陣でボールを動かすだけでなく、しっかりと縦方向にビルドアップしながら相手陣内に入り込み、ペナルティエリア付近までボールを運んでいく。
フィニッシュまで持ち込むシーンこそ少ないが、ボールを奪われてもディフェンスラインを高く保って相手の攻撃を遅らせ、迅速なプレスバックでボールを奪い取り、再びボールを握ってじっくりと攻撃を組み立てる。
東京のファーストチャンスは前半22分だった。中盤の攻防で安部選手がボールを拾うと、バイタルエリアで数的同数の場面を迎える。ペナルティエリア内に持ち込みながら左からサポートに入ってきた渡邊選手にパスを通すと、相手ゴールキーパーを引き寄せた渡邊選手がゴール前に横パスを送る。ディエゴ オリヴェイラ選手が飛び込んでいたが、後方から追い付いたディフェンダーにブロックされてボールを押し込むことができなかった。
ボールを持ちながらもなかなかラストパスが合わずにいたが、前半41分にはミドルレンジのパスで中村選手が右サイドの深い位置でボールを受け、マイナス気味のパスを松木玖生選手へ。松木選手は前を向いて持ち出し、左足を強振する。ゴール右隅を捉えたシュートだったが、相手ゴールキーパーの好セーブでゴールからかき出された。
2ndHALF—渡邊選手の豪快なゴールで追いつくも…
後半の立ち上がり。ワイドな展開で左から右にボールを動かされると守備のスライドが間に合わず、クルークス選手に強烈なシュートを打たれるが、ゴール右上に飛んだボールはヤクブ スウォビィク選手が驚異的な反応で右腕を伸ばしてセーブ。
その後は相手の陣内でボールを動かす展開に。後半7分には左サイドで大きく開いていた徳元悠平選手がボールを受けると、ペナルティエリア手前にポジションをとっていた渡邊選手の足元へパスを通す。相手ディフェンダーを外した渡邊選手がコントロールショットを放つが、ゴールのわずか右へと逸れた。
自分たちのペースで試合を進めながら、一瞬の隙ができてしまった。後半14分、自陣右サイドやや浅い位置からのフリーキックを与えると、フィールドプレーヤーとゴールキーパーの間にスピードのある絶妙なボールを入れられ、飛び込んできた奥埜選手に詰められて先制を許した。
試合をコントロールしていたかに見えていたタイミングでの失点に落胆してもおかしくなかったが、東京の選手たちはポジティブに攻撃を繰り返す。後半23分、右サイドで中村選手が浮き球のアーリークロスを入れると、ペナルティエリア手前で渡邊選手が胸トラップし、そのまま倒れ込みながら右足ボレーシュート。鮮やかな軌道のボールはゴール右上へと吸い込まれて東京が同点に追いついた。
勢いを止めない東京は後半37分、交代で投入された俵積田晃太選手が右サイドを個人技で突破。ゴールラインまで抜け出してマイナス方向にパスを送ると、ニアサイドで安部選手がワンタッチで合わせるが、わずかにゴール右へと逸れた。
交代カードを切って逆転に向けて加速したい東京だったが、逆に後半40分に右サイドから崩され、またしても奥埜選手に合わされて勝ち越しを許してしまう。
失点前に準備していた交代カードはそのまま使い、塚川孝輝選手と東慶悟選手を投入して打開を試みるも、有効な攻撃につなげることはできず。1-2でタイムアップを迎え、今季ホームゲームでの初の敗戦を喫した。
MATCH DETAILS
<FC東京>
STARTING Ⅺ
GKヤクブ スウォビィク
DF中村帆高/木本恭生/森重真人/徳元悠平
MF安部柊斗(後半41分:東慶悟)/小泉慶/松木玖生
FW渡邊凌磨(後半32分:俵積田晃太)/ディエゴ オリヴェイラ(後半41分:塚川孝輝)/仲川輝人(後半18分:アダイウトン)
SUBS
GK野澤大志ブランドン
DFエンリケ トレヴィザン/長友佑都
GOAL
後半23分:渡邊凌磨
<セレッソ大阪>
STARTING Ⅺ
GKキム ジンヒョン
DF松田陸/山中亮輔/マテイ ヨニッチ/鳥海晃司
MF原川力/毎熊晟矢(後半20分:中原輝)/奥埜博亮/カピシャーバ(前半9分:ジョルディ クルークス)(後半31分:上門知樹)
FW香川真司/レオ セアラ
SUBS
GK清水圭介
DF進藤亮佑
MF鈴木徳真
FW加藤陸次樹
GOAL
後半14分:奥埜博亮/後半39分:奥埜博亮
[アルベル監督記者会見コメント]
Q、試合を振り返ってください。
A、今日の試合は、前後半で流れに大きな違いはなかったと思います。後ろからのビルドアップや簡単なボールロストは改善することができたと感じています。試合を上手く支配できていましたが、それを相手ゴールに向かう意識やチャンスメイクにつなげることはできませんでした。その部分に関しては、私自身も改善が必要だと思っていますし、矢印を自分に向けたいと思います。
同点に追いついた後、決定的なチャンスがありましたが、決め切れなかったことで、その後に守備のミスもあり、2点目を奪われてしまいました。我々は毎試合勝利のために準備をしているので、もちろん今日の敗戦は悔しいです。しかし、低い位置からのビルドアップや簡単なボールロストの回数を減らすこと、試合を支配するという部分などで、大きく改善し、試合を重ねるごとにチームが成長する姿を表現できていたかと思います。ただ、それをより相手ゴールに向かう意識につなげないといけないですし、決定的なチャンスメイクに結びつけなければいけないと思っています。
Q、最後に塚川選手を投入した意図を教えてください。
A、ディエゴ オリヴェイラ選手が筋肉に違和感を感じていたため、塚川選手を偽9番としての役割で送り出そうとしました。交代の準備中に失点してしまったのは残念でした。
Q、センターフォワードをサブメンバーに入れなかったのはなぜでしょうか。
A、ぺロッチ選手のコンディションが悪かったことや、熊田選手はルーキーということもあるので、中盤の交代要員として塚川選手をベンチ入りさせました。
[選手インタビュー]
<渡邊凌磨選手>
Q、ナイスゴールでした。
A、勝てれば良かったですが、素直にゴールは嬉しかったです。
Q、得点シーンを振り返ってください。
A、あのシーンのようにサイドバックから斜めのパスを受けるプレーは得意で、まずは足元で受けてから考えようとしていました。最初は、ゴールキーパーが前に出ているのが見えていたので、ゴロのパスであればダイレクトでシュートを打とうと思っていましたが、あのような浮き球のパスが来てトラップした時に、良いところにボールをコントロールできたので、シュートの選択をしました。
Q、トラップした時にシュートを打つことを考えていましたか。
A、ゴールキーパーが前に出ていることが分かっていたので、思い切りシュートを打ちました。
Q、あのようなゴールを決めたことはありますか。
A、ありません。これからも絶対にないです(笑)。
Q、1-1になってからの試合を振り返ってください。
A、得点を獲りに行く時は、焦ってしまいボールを失う回数が多くなったり、早くなったりしてしまうと逆に守備の時間が多くなってしまうので、改善できればよかったです。相手選手により、守備する時の守り方は変わってくると思います。一人で守れるわけではないので、そのコミュニケーションの部分をもう一回、イチからやらなければならないとベンチから見ていて思いました。
Q、ご自身のプレーや同点に追いつくまでのビルドアップの仕方は、ここ数試合の中で改善していると思います。
A、シュートの本数を増やしたり、ペナルティエリアの深い位置を取るなど、決定的なシーンを増やしていかなければならないと思います。先ほどのお話と矛盾するシーンもあるかもしれませんが、自分も含めて、前半はボールを大事にしすぎて、シュートを打てる本数が減っていました。なので、もっと大胆かつ丁寧にやることを、意識してやっていければ良いと思いました。
Q、勝てない試合が続いていますが、どのように考えていますか。
A、まだ、なんで負けたのか整理ができていないので、試合を見返して改善点を見つけていきたいです。チーム内では、昨日や今日の試合前にも、良いディスカッションができていたので、全てを悲観せずに勝点を獲るためにやるべきことをやっていきたいと思います。
Q、湘南ベルマーレ戦と比較して、ボールを動かし前進していたと思います。
A、全員が良い立ち位置をとてボールを回していれば、ボールを奪われても守備がしやすいので、今日の試合をベースとして忘れずにやっていきたいです。
Q、その部分がブレてしまうと、良くなくなってしまうのでしょうか。
A、ボールを回していても意味がないと思ってしまい、ロングボールを蹴ってしまっても良くないと思います。自分たちがやろうとしているサッカーで、勝点を積み上げる事に価値があると思います。上手くなっている実感はあるので、勝てればさらに良いと思います。
Q、ボランチの枚数を変えていました。違いはありますか。
A、配置については、守備の影響が大きいと思っています。守備がやりやすかったり、やりにくかったりする部分はあると思います。攻撃時に中盤の3人が流動的に動いていることは変わらないので、守備時に相手センターバックへのプレスをディエゴ オリヴェイラ選手がいくのか、ウイングの選手がいくのかの違いだと思います。
Q、前半に惜しいシーンがありました。
A、相手ディフェンダーとゴールキーパーの間ではなく、相手の前でボールを受けたかったのですが、安部柊斗選手が仕掛けていたので、狙う位置を変えました。最初はゴールキーパーに取られてしまうと思ったのですが、前には出てきていなかったので、元々見えていたディエゴ選手にパスを出しました。
Q、今日のゴールのようなシーンが東京は少ないと思います。スタイルに拘り過ぎているのではないでしょうか。
A、あのようなゴールがないのは理想です。僕自身もあのようなゴールを取りたくはなかったです。チームがやってきたことで得点をできれば理想ですが、上位にいるチームは、なぜかゴールが入ってしまったり、セットプレーから混戦になりオウンゴールや偶然当たって入ってしまうことなどがあると思います。あのような得点も必要ではあると思いますが、あのようなゴールにこだわる必要はないと思っています。それがあるから勝てていないわけではないですし、それがあるので、上位にいけることはあっても、その逆はないと思っています。
<中村帆高選手>
Q、試合を振り返ってください。
A、ファン・サポーターのみなさんに申し訳ない気持ちでいっぱいです。それに尽きます。
Q、アシストを含め、局面に応じたプレーも見られました。
A、良いテンポだったからこそ、前半は特に相手が嫌がるプレーをもっと出していきたかったですし、ゴールを決めるべきシーンもありました。決め切れないことで苦しいゲームにしてしまったことがチームとしての反省点です。
Q、前節と今節の違いはありましたか。
A、守備面では、相手選手の対応の仕方などを長友佑都選手、森重真人選手が中心となってアルベル監督ともコミュニケーションをとってくれました。前半は個人としても感触的には悪いものではなくて良いシーンもありました。良い感覚でプレーできたことで得られたものもありました。よりブラッシュアップしていきたいと思います。
Q、パス回しやポジショニングなど改善されたように見られました。
A、今日の試合は前半から良いテンポでボールを上手く動かすことができましたが、得点を奪い切れませんでした。時間が進むにつれて疲労などもあり、全てのプレーに対してフレッシュにいけなかった時に、チーム、個人としての隙が生まれてしまい、勝負を分けたと思います。改善しなければいけないこともありましたが、ポジティブな面もありました。次のルヴァンカップに向けてチームとして高めていきたいと思います。
<森重真人選手>
Q、試合を振り返ってください。
A、悪くはない内容でしたが、このようなスタイルのサッカーを表現する時の課題が見えてしまいました。ゴール前の迫力やアイディア、シュートで終わるシーンをもっと生み出したかった試合でした。
Q、システムも変わり、内容も良くなったと思います。
A、守備面については、選手間でもしっかりと話し合いをしました。攻撃面では、距離感や立ち位置など、個々のアイディアや自由さを出し合えています。結果はついてきていないので、ネガティブになりがちですが、良い部分も当然ありました。良い部分を勝利に繋げることが大事です。勝つための戦い方、手段を選んでいます。ここから勝ちを積み重ねていかないと得られることも少なくなっていくと思います。
Q、2失点目については、時間帯を含めてもったいない印象でした。振り返りをお願いします。
A、自ら守備のバランスを崩し、相手にスペースを与えてしまいました。チーム戦術と個々の守備対応のミスを修正し合って、積み重ねていきたいと思います。
Q、試合を重ねるごとにファン・サポーターのみなさんの声援が大きくなっているように感じます。ピッチに立って感じるものはありますか。
A、期待に応えたい想いです。ファン・サポーターのみなさんも期待を寄せてくれていると思いますし、自分たちもそれに応えたいです。お互いに良い方向に進んでいきたいです。