<前節・湘南戦のレビュー>
新日本プロレスのオカダ・カズチカ選手がゲストで登場した一戦。オカダ選手のキャッチフレーズをモチーフにした「味スタに“ゴール”の雨が降るぞ!!」と銘打った一戦で、ゴールを挙げたのは“東京のレインメーカー”だった。
仲川輝人選手がドリブルで相手を翻弄してパスを通せば、松木玖生選手が絶妙なタイミングでペナルティエリアの中に侵入してボールを受けてフィニッシュまで持ち込む。一度目でネットを揺らせずとも、パスを出した仲川選手がゴール前まできっちりと詰めていて、獲るべき選手が獲る。
東京の先制点は理想的な形だった。
ビルドアップの部分で多少なりとも苦しむ時間帯もあったが、個人の力を存分に生かして拮抗した試合展開に風穴を開けた。後半に入って一度は逆転されたものの、セットプレーのチャンスに松木選手が起点となってエンリケ トレヴィザン選手の同点ゴールを導いた。
勝ち切ることこそできなかったものの、公式戦で2連敗かつノーゴールだったチームにとって、嫌な流れを変える大きな勝点1と2ゴール。この勝点を活かせるかどうかは、明日のセレッソ大阪戦に懸かっている。
“東京のレインメーカー”が、明日の味スタにも“ゴール”の雨を降らせる。
<試合プレビュー>
前節は湘南ベルマーレと2-2で引き分けたが、ケガで離脱していた中村帆高選手、安部柊斗選手、渡邊凌磨選手が続々と戦列に復帰した。彼らがそれぞれの特長を活かして見せ場を作ったことは今後に向けた好材料だろう。今シーズン2点目を挙げた仲川輝人選手も「ここ数試合はメンバーが入れ替わったことで少しずつプレーにズレが生じていた。ケガ人が復帰して、ここからは十分な戦力で戦える。一人ひとりのクオリティは高いので、コンビネーションを磨き、相手に脅威を与えていきたい」と上向きつつあるチームの現状を前向きに語った。
今節はホームでセレッソ大阪と対戦する。注目は今シーズン12年半ぶりに古巣・C大阪に復帰した香川真司選手と、東京の長友佑都選手との“親友対決”。Jリーグでは2010年3月20日以来となる対戦を前に、長友選手は「真司にはたくさんの刺激をもらって成長させてもらった。その成長を彼の目の前で見せつけたい。ただ、勝つのは東京」と闘志を燃やしている。
日本サッカー界を長く支えてきた2人の対決がJの舞台で実現する。どちらも譲れない勝負だが、もちろん勝つのは東京だ。
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[アルベル監督インタビュー]
Q、前節は、4-2-3-1の布陣が機能して流れが良くなりました。今後もこのシステムは試合のなかで使用していく予定ですか。
A、4-3-3と4-2-3-1の差はごくわずかな差です。守備の仕方に若干の違いが生じますが、今後も状況に応じて使い分けていきたいと思います。
Q、前節の湘南ベルマーレ戦では、安部柊斗選手がトップ下の位置で機能していました。
A、彼のテクニカルな面がレベルアップしているところが関係していると思います。昨シーズンまでの安部選手は、ボールを奪うシーンは多く見せていましたが、ロストしてしまう場面も見受けられました。ですが、今は落ち着いたプレーを見せてくれています。彼は、典型的なトップ下の選手かと問われれば、そうではない部分もあります。私が思う典型的なトップ下とは、長い時間ボールをさわり、ライン間で長い時間プレーする選手です。安部選手については、積極的にスペースへ飛び込んでいくタイプのトップ下だと考えています。相手選手の背後やスペースに飛び出していく動きはチームの武器としても機能しています。選手たちの特長を踏まえても、背後への飛び出しは有効的です。また、トップ下の選手が攻撃に専念しすぎてしまうと、攻撃と守備のそれぞれのポジションが2組に分かれてしまう傾向にあります。我々は、ピッチ内で選手同士が分かれてしまうことはなく、連動性を求めていますし、二分化させないためにも、安部選手のような運動量豊富なトップ下の存在が必要です。
Q、怪我から復帰したメンバーも加わり、連携面も良くなったと思います。今週の練習で、連動性についての手ごたえはありましたか。
A、戦線離脱していた選手たちが試合勘を取り戻すには、もう少し時間を要すると思います。前節の湘南戦では、渡邊凌磨選手、安部選手、中村帆高選手が復帰しましたが、3選手についてももう少し時間が必要です。怪我人が少ない他クラブもいくつかありますが、我々もそのクラブと同様に同じメンバーでここまで戦い続けられたとしたら、我々の連携面もさらに向上していたことでしょう。戦線離脱していた選手たちがこのタイミングで戻ってきました。彼らが良い形で試合勘を取り戻していくことに期待しています。またあわせて若い選手たちが躍動しています。彼らの成長にももちろん期待しています。
Q、優れたウイングの選手たちを生かすためには、ライン間のプレーも重要になるかと思います。
A、ウイングの選手には大きく分けて二つのタイプがあると思います。スピード系のスペースが必要なウイング。もう一つは、狭いスペースでも状況を打開できるウイングです。後者のようなプレイヤーは、今までこのクラブにはいなかった印象です。俵積田晃太選手や渡邊凌磨選手がタイプとして当てはまるかと思います。彼らの特長を生かすためには、中盤を上手く支配し、相手を押し込む時間を長くしなければいけません。俵積田選手は、狭いエリアで緩急をつけながら局面を打開できるウイングですし、彼のような選手をチームとして活かすプレーが求められています。チームとして一歩一歩進んでいますが、残念なことに中盤の選手たちが長い間、戦線離脱していたことにより、成長スピードも若干停滞してしまいました。サッカー界における記憶力というのは、短い期間という認識でいます。みなさんのなかに、最近の記憶だけが残ってしまっていますが、継続性をもって昨シーズンから成長しています。開幕戦の浦和レッズ戦のように、昨シーズンの試合とは違いや大きな差があったと思います。怪我人が発生してしまったことは仕方のないことです。ここからしっかりと仕切り直して、さらなる成長を促していきたいと思います。
Q、渡邊選手や安部選手が復帰したことでもたらされることを教えてください。
A、もちろん、彼らの復帰は素晴らしいニュースですが、彼らも試合勘を取り戻すためには時間が必要です。これは、フィジカルコンディションではなく、公式戦のピッチで表現するボールタッチや試合の流れを読む力、という点です。今は、そのプロセスにいると思っています。
Q、これまでの経験のなかで、試合日と誕生日が被ったことはありましたか。
A、なかったように思えますし、おそらく初めてのことです。私の誕生日よりも、同じ日が誕生日である私の娘を祝福したいです。娘は私と同じ日、かつ、同じ時間帯に生まれました。
Q、明日のセレッソ大阪戦は、どのような試合になることを期待しますか。
A、セレッソ大阪には、テクニックがあり攻撃力のある選手が揃っています。特に、引いて守るようなチームを相手にした時、その能力が顕著に表れている印象です。そのような相手を前にして、我々の武器をうまく生かさなければなりません。中盤の選手たちにはインテンシティの高いプレー、スピード感を特に求めていきたいと思います。相手ゴールに向かう意識を強く持って臨まなければ、セレッソ大阪の武器が光り輝いてしまい、難しい試合状況になってしまいます。東京の選手たちの特長を上手く生かし、先ほど話をした部分を表現していきたいと思います。
[選手インタビュー]
<長友佑都選手>
Q、週末にはセレッソ大阪に所属する香川真司選手との対戦も控えています。Jリーグの舞台では13年ぶりの対戦となりますが、いまのお気持ちを教えてください。
A、香川選手との対戦で記憶に新しいのは、アメリカで開催された親善試合で、マンチェスター ユナイテッドとインテルにそれぞれ所属していた時の対戦です。個人としては、Jリーグのピッチで戦うことは初めてに近い感覚です。香川選手とは、日本代表に選出された時期も同じで、仲良くさせてもらっています。ここまでの過程で香川選手から多くの刺激を受けて成長させてもらいました。その成長を彼の前で見せつけたいと思っていますし、勝ちたいと思います。
Q、長友選手にとって香川選手は、どのような存在ですか?
A、親友であり戦友、苦楽をともにした仲です。
Q、実際にお会いするのは何年ぶりですか。
A、カタールワールドカップ終了後に香川選手へ会いに行きました。
<木本恭生選手>
Q、第7節の湘南ベルマーレ戦は2-2という結果でしたが、苦しい時間帯も多く難しい試合のように見えました。振り返ってみていかがですか?
A、前後半を通して、素直に湘南の方がチームとしてやりたいことや、自分たちがやりたいことをさせないという部分でも上回られたという部分があります。そういう意味では追いついて何とか勝点1を獲ったという感じでしたが、やはりホームでしたし、勝点3をめざして戦っていたので悔しい思いがあります。
Q、アルベル監督は試合後、ビルドアップに課題があったと話していました。
A、湘南戦に限らず、今年はなかなか後ろからのビルドアップがうまく行かないという部分があり、そこに責任も感じています。個人の技術も確かにそうですが、チームとしての距離感やサポート、ポジショニングの部分でも修正しないといけないですし、ビルドアップは個人のところよりもチームの立ち位置が重要になるので、今週のトレーニングでもそういう部分の修正ができていると思いますし、話し合いもできているので、徐々に良くなっていけばいいなと思います。
Q、確かに、ビルドアップは個々のスキルよりも、チームとしての意識統一が大切です。
A、ルヴァンカップでのガンバ大阪戦もそうですし、自分たちのクオリティが低いわけではないと思うので、ガンバ大阪とか湘南が良いビルドアップができていることを考えると、個人だけではなくてチームとしてうまくやっていくということが大事かなと思います。
Q、そういう意味では、序盤戦でケガ人が多く、メンバーを固定できなかった影響もあるのではないでしょうか。
A、少なからずあると思いますが、それを言い訳にはできないですし、それを補うくらいの選手層はいると思います。ケガ人が戻ってきてプラスにはなっていますが、それを言い訳にはしたくないです。
Q、ただ、ケガ人の代役として若い選手がチャンスを得ていることはポジティブな部分もあるのではないですか。
A、若い選手が活躍することはチームの底上げにもなりますし、将来の東京を担っていく選手たちだと思うので、若い選手の活躍というのは自分たち中堅以上のベテランの選手たちにとっても刺激になります。自分たちはそういう若い選手が伸び伸びプレーしたり、やりやすい環境を作るということも一つの役割だと思うので、そういうところも同時にやっていかないといけないなと思います。
Q、木本選手個人としては、ここまでリーグ戦全試合にスタメン出場しています。東京で2シーズン目を迎えて、意識が変わった部分はありますか。
A、昨シーズンよりもチームを引っ張っていくという意識はあります。声をしっかり出してチームを引っ張っていく部分は表現できていると思いますが、パフォーマンスの部分で自分の良さを出せていないなと思っていますし、今シーズンに関して少しもがいているかなと思っています。
Q,どういった部分をさらにアピールしたいと思っていますか。
A,ビルドアップの部分でもっとしっかりリズムを作っていくという役割があるなかで、なかなか後ろからリズムを作れていないところが結果に出てしまっていますし、それで相手を勢いづかせてしまっているという感覚があります。そこで相手に「やれるぞ」という雰囲気を出させてしまっているのも感じています、そういう意味では相手がもっと困るようなプレー、ビルドアップをしていかないと今後厳しくなっていくかなと思います。
Q,今節の対戦相手であるセレッソ大阪は5シーズン在籍した古巣ですが、やはり対戦する時は特別な感情がありますか。
A,そうですね。セレッソ大阪を離れて3年目になりますが、対戦する時は特別な部分があります。楽しみです。
Q,今シーズンはまだホームで負けていませんが、ファン・サポーターに向けて意気込みをお願いします。
A,ホームで負けてないというところで、やっぱりファン・サポーターの声援だったり、雰囲気が自分たちの後押しになっています。前節、苦しい状況のなかでも追いつけたことはホームの雰囲気があったからだと思うので、セレッソ戦も良い雰囲気を作ってもらって、必ず勝利を届けたいと思うので、応援よろしくお願いします。
<渡邊凌磨選手>
Q、ケガから復帰した前節の湘南ベルマーレ戦を振り返ってください。
A、率直に楽しくプレーできました。約1か月間、何もできない時期を経験したのは、久しくありませんでした。サッカーができるありがたみや楽しさを感じて45分プレーすることができました。2失点目については、細かなミスをした時のボールの失いどころが悪かったです。これから、突き詰めていく必要があると思っています。
Q、前節の湘南戦は復帰後早々に45分もプレーされていました。
A、当初の予定よりも長い時間の出場となりました。ですが、ピッチに立てば、しっかりやるしかないですし、「行けるか?」と聞かれれば、答えはイエスです。気合を入れてピッチに立ちました。
Q、外から見たチームは、どのように映っていましたか。
A、チームとして上手くいっている時は、深く考えなくてもボールは回りますし、得点も入り、勝つことができると思っています。ですが、何か一つでも問題が発生してしまった時に、修正する能力がまだまだ足りないと感じました。自分が復帰して、もっと考えてサッカーをしなければならないと、あらためて感じました。
Q、次節のセレッソ大阪戦は、どのようなところを大事にプレーしますか。
A、湘南戦は、自分自身としても得点を狙っていました。あのシュートが決まれば、というシーンもありました。途中出場でも、しっかりと突き詰められれば、ゴールに繋がると思いますし、今シーズンは得点力を向上させることを目標に掲げているので、引き続き頑張っていきます。
Q、チームとしてはどのようなプレーを見せたいですか。
A、離脱していた選手たちが続々と戻ってきたので、できることも増えたと思います。もちろん勝たなければなりません。練習からコミュニケーションなどの細かな部分を妥協せずにこだわれば、結果がついてくると思います。
Q、ここから良い方向に変えていくための具体的なアプローチはありますか。
A、自分自身にまずできることは、距離感やボールを失わないプレーを表現することだと思います。ボールを簡単に失わなければ、円滑なプレーが生み出せますし、チャンスも増えると思います。ボールを簡単に失うことなくプレーすることをアルベル監督からも要求されているので、意識的にプレーしていきたいと思います。
Q、思い描いたようなスタートダッシュは切れなかったと思いますが、ここからどのようなことが大事になりますか。
A、得点とアシストで示していくことが重要になると思います。
Q、得点やシュート数も伸び悩んでいる状況で、どのようにチームを助けたいですか。
A、シュートで終わることが大事だと思います。戦術の前に、できることはもっとありますし、サッカーの根本的な部分を突き詰めていきたいと思います。