<マッチレビュー>
先週末のJ1リーグ鹿島アントラーズ戦から中3日で、ルヴァンカップグループステージの第5節を迎えた。Eグループは4チームが勝点3差で並ぶ大混戦。首位のガンバ大阪との直接対決はすでに終わっているが、プライムステージ進出に向けて、東京としては一戦必勝で勝点を積み上げたいところ。
3日後にはJ1リーグのヴィッセル神戸戦も控えているため、メンバーは過密日程も視野に入れた編成になった。ゴールマウスはこれまでもルヴァンカップ全試合に出場している野澤大志ブランドン選手に託された。センターバックコンビは鹿島戦から変わらず、右サイドバックに安斎颯馬選手、左サイドバックにはバングーナガンデ佳史扶選手を起用。中盤の編成は鹿島戦と同じ3選手。前線には仲川輝人選手に変わってペロッチ選手が入った。
1stHALF—相手のペースも耐えながら反撃のタイミングを伺う
序盤はセレッソ大阪のペース。早い段階で縦方向にボールを入れられると、ボールを回収できずにフィニッシュまで持ち込まれてしまう。ゴールを捉えられる場面はないものの、東京側のセットプレーのチャンスから一転、カピシャーバ選手のスピードを活かしたカウンターでフィニッシュに持ち込まれるなど、相手の縦への推進力に苦しめられる。
押し返したい東京だが、前半24分に佳史扶選手が負傷交代するアクシデント。早い時間帯に交代カードを切る展開になった。
なかなか決定的な場面を作れなかったが、前半39分にはカウンター気味に素早く相手ペナルティエリア手前までボールを運ぶ。安部柊斗選手のラストパスをディエゴ オリヴェイラ選手がバイタルエリアで受けると、反転しながらシュートを放つが、惜しくも枠の右へと逸れた。
2ndHALF—野澤選手のビッグセーブで勝点1を得る
試合の主導権を握りたい東京は後半のスタートから、東慶悟選手に代えて青木拓矢選手を、ディエゴ選手に代えて俵積田晃太選手を投入。中盤と前線にフレッシュなメンバーを入れて状況の打開を図る。
この交代で流れが変わり、左サイドを俵積田選手が何度も突破してセレッソ大阪ゴールへと迫るシーンを作り出す。後半22分には縦に早い攻撃を仕掛け、渡邊凌磨選手のスルーパスに俵積田選手が抜け出して相手ゴールキーパーと1対1となる場面もあった。
しばらく東京がボールを保持して相手陣内でボールを動かす時間が続いたが、後半35分にはカウンターからクルークス選手にドリブルでペナルティエリア内までボールを運ばれる。ゴール左斜め手前の位置からシュートを打たれるが、ゴールマウス右隅を捉えたボールを野澤選手が反応してはじき出した。
野澤選手は後半41分にもビッグセーブを見せる。右サイドを突破されてゴール前にクロスボールを入れられると、目の前でレオ セアラ選手にヘディングで合わされる。フリーの状態で打たれたシュートだったが、クロスボールの軌道に合わせて身体を流すことなく、野澤選手がギリギリのところでボールにくらいついてかきだした。
試合終盤もフレッシュな選手を投入してゴールをめざし続けたが、ゴールを割ることはできず。そのままスコアレスドローで試合を終えた。
MATCH DETAILS
<FC東京>
STARTING Ⅺ
GK野澤大志ブランドン
DF安斎颯馬/木本恭生/森重真人/バングーナガンデ佳史扶(前半24分:徳元悠平)
MF小泉慶/東慶悟(後半0分:青木拓矢)/安部柊斗
FW渡邊凌磨(後半44分:寺山翼)/ペロッチ(後半29分:塚川孝輝)/ディエゴ オリヴェイラ(後半0分:俵積田晃太)
SUBS
GK児玉剛
DF木村誠二
GOAL
―
<セレッソ大阪>
STARTING Ⅺ
GKヤン ハンビン
DF松田陸(後半0分:レオ セアラ)/進藤亮佑/舩木翔/西尾隆矢
MF喜田陽(後半42分:原川力)/鈴木徳真/カピシャーバ(後半13分:阪田澪哉)/中原輝(後半29分:ジョルディ クルークス)
FW上門知樹/加藤陸次樹(後半0分:奥田勇斗)
SUBS
GK清水圭介
DF山下達也
GOAL
―
[アルベル監督記者会見コメント]
Q、今日の試合の総評をお願いします。
A、全体を通して試合を観ていただいた方には、とても見ごたえのある試合になったと思います。両チームとも勝利を目指して攻撃的に戦ったからです。前半に関しては我々よりも相手のほうがチャンスを作っていましたが、必ずしも試合を支配されていたわけではなかったと思います。守備のプレスの掛け方が曖昧になってしまい、そこが上手くはまらなかった前半でした。我々の特徴の一つは激しいプレスであり、ボールを奪ってからの素早い攻守の切り替えです。しかし前半はそれが上手く機能しませんでした。また、前半はボールの動かし方のテンポも悪かったと思います。
後半スタートから青木拓矢選手と俵積田晃太選手を投入し、ハーフタイムの修正も上手く機能して後半は良いプレーができていました。後半は我々がしっかりと支配できた時間帯も長かったですし、より攻撃的に相手のゴールをめざす良いサッカーができていたと思います。ただ、セレッソ大阪も外国籍選手を含めてクオリティの高い選手がいますので、決定的なチャンスもいくつか作られましたが、我々もしっかり守って失点をしなかったことも重要なポイントでした。
そして、今日の安斎颯馬選手の活躍にはとても満足しています。俵積田選手も試合を重ねるごとに成長している姿を証明したと思います。ペロッチ選手も時間が経つごとに良いプレーをしていたと思います。今日ゴールを守った野澤大志ブランドン選手も良いプレーをしました。特にチームを救う決定的なセーブをいくつか見せてくれました。最終節、京都サンガF.C.戦に勝てばグループステージを1位突破する可能性が高いです。そういう意味でも最終節を勝ちに行きたいと思います。
Q、佳史扶選手のケガについて現時点で分かる範囲で教えてください。
A、明日、精密検査を受ける予定ですので、今の時点ではなんとも言えません。もちろん軽傷であることを願っていますが、状況が分からないのでコメントはできません。
Q、今日はリーグ戦と変わらない顔ぶれでしたが、メンバー構成の意図を教えてください。
A、ルヴァンカップにおいても私は勝利したいと、シーズン当初よりみなさんに伝えてきました。そしてカップ戦の予選リーグが始まった当初よりも、けが人が戻ってきているというのも影響しています。やはり、若い選手が試合経験を重ねてさらに成長するためには、良い試合をしなければならないと思いますが、良い試合をするためには若い選手だけでなくそこに経験豊富な選手が加わり、彼らが支えてくれることが重要になってきます。若手選手ばかりになると不安定な試合になってしまいます。ですので、ホーム京都戦でもそうでしたが、若手選手に経験豊富な選手を上手く融合させて戦うことが、若手選手の成長を促してくれると期待しています。今日のホームゲームでも、若手選手を起用するのと同時に勝点3を得るためにも、若手選手の成長を促すためにも、経験豊富な選手を融合させて起用しました。
Q、前半プレスをかけられなかった理由をどのように考えていますか。
A、今日はペロッチ選手とディエゴ オリヴェイラ選手の同時起用を試しました。ディエゴ選手は右サイドでプレーすることに慣れておらず、ペロッチ選手も我々の守備の形にまだ慣れていない部分がありました。それゆえに前線からのプレスの掛け方が上手くいかず、相手ボランチをフリーにさせてしまうことが多くなってしまいました。
我々の武器のひとつはハイプレスです。私は自分のチームがハイプレスをかけ、そこからボールを奪いチャンスを作る形も武器にしたいという希望があります。けれども、今日の前半に関しては前線のプレスが連動しなかったため、上手く機能しませんでした。また、ボールを持った時のプレースピードが遅かった部分もありました。選手たちは徐々にワンタッチ、ツータッチなど速いテンポでプレーするようになってきていますが、それが90分間を通してできているかというとそうではなく、まだ成長段階だと言えます。それができる時間帯が増えてきているのも間違いありませんが、私が期待しているレベルにはまだ辿り着いていないのが現状です。このプレーテンポに慣れていない選手たちが、その部分で日々努力していることは私にも伝わっていますし、間違いなく日々レベルアップしています。
[選手インタビュー]
<ペロッチ選手>
Q、試合を振り返ってください。
A、内容的には悪くない試合だったと思いますが、最後の部分でもっと落ち着いてフィニッシュまで持っていきたかったです。今日の試合を終えて、また今週末には大事なヴィッセル神戸戦があります。しっかりとリカバリーをして土曜日の試合を迎えたいです。
Q、前半は厳しい内容でしたが、どの部分が上手くいっていなかったですか。
A、前半はミスが多かったですし、連携もできていない場面がありました。あまり良くない前半を終えて、ハーフタイムに修正を行い、後半は私たちが試合を支配できていたと思っています。
Q、攻め込んでいる時間帯での交代となりました。
A、もちろん、少しでも長くプレーしたいという気持ちはありますが、ピッチに立つ選手は監督が決めることですし、先発での出場もあれば途中出場することもあります。メンバーに入らない時でも、チームを応援して勝てるようチームを鼓舞しようと思っています。1分や2分の出場であっても、チームのために全力で貢献するだけです。
<野澤大志ブランドン選手>
Q、チームを救うプレーが光っていました。
A、プライムステージ進出に繋がる試合で結果として、無失点で試合を終えられて良かったです。
Q、前半はチーム全体として厳しい戦いを強いられていましたが、最後尾から見ていていかがでしたか。
A、内容は良くなかったと思います。ハーフタイムで修正し、後半は前からのプレスなど、全員が同じ意識を持ちプレーしていました。前半の課題をハーフタイムでしっかりと修正できたのは良かったと思います。
Q、プレスの意識以外に後半に入り、改善された点はありましたか。
A、ここ最近の試合でチームとして一番共有できているのは、チームのスタイルを貫くこと、球際で負けないことや最後まで走り抜く“戦う姿勢”をしっかりと見せる、ということです。“戦う”部分については、もっとプレーでみせないといけないという想いは、全員が感じています。最後尾から見ていても、全員がハードワークしていましたし、僕自身、助けられたプレーも多くありました。
Q、片手で反応したシュートセーブがチームを救いました。
A、全てにおいて、完璧にセットされた状態で守備ができるわけではないので、あのような場面が後半15分以降から増えてくると想定していました。攻守において上下動が多くあった試合でしたので、守備のズレが生じてしまうことはイメージできていましたので、全く焦ることなくプレーできました。
Q、ここまでグループステージでは、全試合に出場しています。これまで積み重ねてきたものを証明することにも繋がっていますか。
A、今日の試合は引き分けてしまいましたが、次の第6節までプライムステージ進出を懸けた緊張感のなかでプレーできることは、僕自身のプロ生活において財産になると思います。仮に今日の試合で勝利していたら、緊張の糸が緩んでいたかもしれません。緊張感をもってプレーできることをプラスに捉えて、チームとして次の試合に臨みたいと思います。
Q、野澤大志ブランドン選手自身、どのような想いをもってルヴァンカップをここまで戦ってきましたか。
A、東京がタイトルを獲得することだけを考えています。僕自身、勝ちにこだわるメンタリティをもって試合に臨んでいますし、試合を重ねるごとに成長できていると思います。
Q、第6節の京都サンガF.C.戦の結果次第では、プライムステージ進出が決まります。意気込みをお願いします。
A、勝って突破することだけを考えてプレーしたいと思います。
<俵積田晃太選手>
Q、久しぶりの出場となりましたが、周りの選手から何か言われたことはありましたか。
A、周りの選手から、カバーなどのサポートはするから自分のしたいことを考えて積極的にやるように声をかけていただいていました。自分の特長である前に仕掛けることを意識してプレーすることができました。
Q、シュートを打ったシーンもありました。出場した45分間を振り返ってください。
A、途中からの出場でしたので、自分がなんとかしなければいけないという気持ちが強くありました。なので、決め切ることができず非常に悔しかったです。
Q、今日の結果で、最終戦にプライムステージ進出の可能性を残しました。
A、次の試合に繋がったことは良かったです。次の試合では絶対に勝って突破できるようにしたいと思います。
Q、途中出場が多いなかで、右サイドでの出場も多くなっています。
A、監督から与えられた役割やポジションでできることを全うするだけです。
Q、次の試合に向けた課題をお願いします。
A、最後のパスの質やクロスの質、シュートの決定力など多くの課題があります。少しずつ課題を克服していき、一流の選手になりたいと思います。
Q、何か結果が出れば、新たな扉が開きそうな予感があります。
A、今、自分に一番足りないのは結果だと思っています。結果を出して、より良い選手になりたいと思います。