<前節・鹿島アントラーズ戦のレビュー>
大型連休中に直面した課題。それを克服した多摩川クラシコ。その流れで迎えたのが、5試合連続無失点で5連勝中の鹿島アントラーズとの一戦だった。
5試合連続無失点。
鹿島が持つ守備の威圧感は記録に違わぬものだった。球際への寄せ、ボールを奪われた後のリトリートのスピード、ゴール前の強さと高さ。キックオフ直後からストロングポイントを前面に押し出されて、鉄壁を築かれた。
難攻不落の要塞を思わせる隙のなさ。
鹿島に先制を許したことで、その固さは強まる一方だった。針の穴に糸を通すような正確なパスと連動が要求される中、一瞬の隙を見逃さない男がいた。
序盤から相手センターバックと駆け引きをしていたディエゴ オリヴェイラ選手。前半25分、相手センターバックとスイッチするように身体を入れてゴール方向に向き、後方からファウルを受けてペナルティキックを獲得した。
動き出しを見逃さなかった安部柊斗選手のループパスも見事だったが、呼応して相手ディフェンダーとゴールの間に自分の身体を滑り込ませたディエゴ選手のポジショニングの妙が要塞の扉をこじ開けた。
同点に追い付いてからは互いに強度を落とさずにタイムアップまで球際の激しい攻防や目まぐるしい攻守の入れ替わりを繰り返した。1点のリードを守られて後半に突入していたら、鹿島の勝負強さを発揮されて逃げ切られていた可能性もある。五分五分の勝負に相手を引っ張り出したエースの華麗なターンがこの一戦のキーポイントになった。
<試合プレビュー>
上位につけるチームとの3連戦は2戦目を迎えた。前節、アウェイで5連勝中の鹿島アントラーズと対戦した東京は、ディエゴ オリヴェイラ選手が獲得したペナルティキックを自ら決めて相手の無失点記録を止めた。さらに、試合全体を通しても強度が落ちず、相手を押し込むような展開も見せた。
今節は首位を走るヴィッセル神戸との対戦となる。得点数はリーグ2位で、失点の少なさも1位という攻守ともに整ったチームだ。
また、2018シーズンに加入したイニエスタ選手が退団を発表した直後の試合であり、かつホームゲームということもあってスタジアムはイニエスタ選手への惜別の熱気に包まれるだろう。チームとしても世界的なレジェンドとプレーする残り少ない時間を無駄にするまいと、いつも以上にギアを入れてこの一戦に臨んでくるはずだ。
東京としては、スタジアムの雰囲気に飲み込まれることなく、また神戸の勢いにも気圧されることなく、あくまで自分たちが積み上げつつあるスタイルにこだわりたい。特にリーグ得点ランキングトップを走る大迫選手、今シーズン4得点をマークしているかつての青赤戦士である武藤選手を中心とした強力なアタッカー陣にはここまでの試合以上に最大の警戒が必要だ。
大型連休中の連敗後、チームは「まずは守備をしっかりすること」という共通認識のもと、組織的な守備から球際での強度を上げてボールを奪回する機会を増やし、その後のショートカウンターやボール保持などで主導権を徐々に握っていく流れを作ってきた。
首位、イニエスタ、大迫、武藤…と気になる要因を挙げればキリがない。当然、相手を知り、相手の対策を積むことはもちろんだが、自分たちのスタイルで相手を上回ること、ベクトルを自分たちに向け、勝点をつかんで東京に戻りたい。
[アルベル監督インタビュー]
Q、得点能力の高いアタッカー陣が揃うヴィッセル神戸との対戦になります。
A、昨シーズンと比べて、神戸は非常にインテンシティの高いチームに変わってきている印象です。ゴールに向かう意識が高く、ダイレクトプレーを上手く織り交ぜながら攻撃を組み立てるチームに昨シーズンから様変わりしたようにも思えます。90分間のハードワーク、そして、前線には危険な選手が多く揃っていますし、前線の選手の個性が活きるチーム編成になっていると思います。
Q、強度の高いプレーをする神戸に対してどのような戦い方が重要になりますか。
A、まずは、少なくとも同等のインテンシティを我々が表現し、1対1の局面をはじめ、全ての局面でデュエルに勝つことが重要です。そして、我々の選手たちが持ち合わせるクオリティを最大限に活かすことです。神戸は前線から激しいプレスをかけてくることでしょう。我々も同等以上のプレーで対抗することが重要です。いつもお伝えしている通り、J1リーグは非常に拮抗しています。拮抗した試合では先制点が試合の流れを手繰り寄せるために大きな影響を及ぼします。だからこそ、試合の入りから集中して臨む必要があります。
Q、連戦のなか、選手たちのコンディションは監督の目から見ていかがですか。
A、今節は、中2日で神戸戦を迎えますが、以前のコロナ禍で開催されていたリーグ戦はさらに過密な日程だったと記憶しています。今回のような3連戦かつ中2日で迎える明日の神戸戦では、後半の20分過ぎから疲労が明確に表れてしまう選手が出てくる可能性も十分にあり得ますが、今週水曜日のルヴァンカップに出場していない選手、プレー時間をコントロールできた選手も複数いるので、選手交代をはじめとするマネジメントでクリアになると考えています。
Q、神戸には、昨日、退団が発表されたアンドレス イニエスタ選手が所属しています。監督からみたイニエスタ選手の印象を教えてください。
A、今までのサッカー界の歴史において、彼は間違いなく世界のトップ20に入る偉大な選手です。そして、彼が日本に来てくれたことによって、Jリーグの世界的な認知度も非常に高まりました。イニエスタ選手がどれだけ素晴らしい選手かは誰もが知っていることです。
Q、イニエスタ選手が明日の試合に出場することもあるかと思います。どのような試合展開を予想していますか。
A、イニエスタ選手のクオリティの高さは誰もが知っています。仮に彼がピッチに立つのであれば、ワンプレーで劇的に試合を変えてしまうことも考えられます。彼はワールドクラスの選手ですからね。
[選手インタビュー]
<森重真人選手>
Q、明日のヴィッセル神戸戦に出場すれば、J1リーグ通算450試合出場達成となります。
A、あっという間でしたし、つい最近400試合出場を達成したばかりという感覚です。年齢を重ねるごとに、ますます早くなっている印象ですね。
Q、ここまでのキャリアを振り返っていかがですか。
A、楽で順調なシーズンを送った経験はなく、苦しい時期もありました。プロ生活を送るうえで難しさを感じながら毎シーズン、プレーしています。
Q、これまで長い間プレーしている原動力は何ですか。
A、勝ちたいという気持ちと、東京で長い間プレーさせてもらっている責任感が原動力ですね。
Q、先日の川崎フロンターレ戦から守備の仕方が整ってきた印象を受けました。
A、選手たちで修正すること、問題を解決する力がまだまだ僕たちには足りていません。ハーフタイムや試合後に話し合って修正することはいくらでもできると思っています。試合のなかで、メンバーに入った選手たちがそれぞれしっかりと考えてプレーする必要があると思います。
Q、森重真人選手や徳元悠平選手がボールを保持している際の安心感がプレーから見られるシーンもあります。
A、最終ラインでバランスを取ることが難しいと試合のなかで感じる場面もあります。ここ数試合は前線に素早くボールを送るような戦い方をして、勝点を積み重ねてきました。素早く前線に送ること、自陣からしっかりと繋ぐ判断や、今いるメンバーそれぞれの強みをどのように活かすかのバランス感覚が重要になります。
Q、武藤選手との対戦、再会を控える今の心境を教えてください。
A、チームとしても、武藤選手自身としても、調子の良さを感じています。ここ数試合を見ても、身体のキレも良く、ゴールを積み重ねています。彼の良さは分かっているつもりですし、もちろん武藤選手も、僕自身について分かっていることが多いと思います。そのなかで良い戦いをしたいと思っています。
Q、武藤選手とコンビを組むのは大迫選手です。攻撃力の高いアタッカー陣をどのように抑えますか。
A、映像でも確認しましたが、ゴール前での駆け引きや少しの動きでディフェンスの裏をついてきます。上手さを感じていますし、ゴール前では特に注意してプレーしたいと思います。
Q、首位を走る神戸に勝利することで、良い流れがもたらされると思います。
A、ルヴァンカップも含めた連戦で首位相手に勝利を収めることができれば、チームに良い流れが生まれると思いますし、来週の横浜F・マリノス戦も含めて上位との対戦が続くので、集中して臨みたいと思います。