Q、まずは2021年名古屋グランパスでのシーズンについてお聞かせください。
A、試合に出場できなかったわけではなかったですし、タイトルも獲れてリーグ戦の順位も常に上位にはいました。序盤戦でしたが川崎フロンターレともいい争いができていた時期もありました。ACLも戦いましたし、チームとしては充実していました。ただ、個人的には納得の行くシーズンではなかったですし、ボランチでの出場は増えていく中、個人的な感情とチームのために戦う思いという複雑な気持ちで戦っていたのも事実です。センターバックで試合に出たときに結果がついてこなかったことが、そのポジションで出られなくなった理由だと思います。考えることが多い1年でした。
Q、セレッソ大阪時代はロティーナ監督のもとでプレーし、マテイ・ヨニッチ選手とセンターバックでコンビを組み堅守ぶりを発揮されていました。一方、グランパスに移籍する際は、当然同じポジションに丸山祐市選手や中谷進之介選手などライバルがいることを理解しながらの挑戦だったと思います。
A、セレッソ時代はすごく充実していましたが、ただ試合に出るだけではなく環境を変えてチャレンジしたいという思いになりました。グランパスでは二人の不動のレギュラーからポジションを奪う気持ちも強かったですが、まずは環境を変えることを優先したのが一番の理由でした。その上で、競争に勝つという考えでしたね。シーズン当初はベンチスタートで、時々センターバックとして出場していました。そこまで落ち込むこともなくやれていましたし、すでに出来上がっていたチームに移籍したので、その状況も理解していました。その中でマルさん(丸山選手)が怪我をして状況は変わりましたが、自分はセンターバックではなくボランチでのプレーが増えていきました。これはセレッソ時代も同じ経験をしているのですが、試合には出られているので贅沢な悩みなのかもしれないですけれど、そこの葛藤みたいなものは正直ありました。
Q、木本選手はセンターバックでもボランチでも高いレベルでプレーできる選手ですが、ご自身の本音はDFで勝負したい気持ちなのですね。
A、そこの思いがすごく強いです。ボランチだと自分では限界を感じてしまっているのも本音で、でもセンターバックだと良いところも出せるしまだまだ成長できる思いがあります。年齢的にもここからはセンターバックで勝負したいです。ロティーナ監督時代にセンターバックを経験し、自分の引き出しがすごく増えた印象で、あの時代が自分の選手としての土台となっています。
Q、東京から獲得オファーが来たときはどう感じましたか?
A、まさかオファーをもらえるとは思っていなかったので、すごく有り難い話だと感じました。新しくアルベル監督が就任し、ポジショニングもボールも大事にする戦い方だと思うので、チャレンジであり成長もできる環境だと思いましたね。ここでもう一度思い切り挑戦したいという気持ちです。
Q、アルベル監督と一度お話されたそうですが、そのときの印象はいかがでしたか?
A、すごく陽気な方でよく話す方でしたね。同じ外国籍監督でもロティーナ監督とは違うなと思いました。ご本人も「彼(ロティーナ監督)とは性格が真逆だよ(笑)」と話していましたね。自分はすごく緊張していたのですが、「もっと笑って」とも言われました(笑)。あとはサッカーの部分では、「ボールを大切にするスタイルなので、より成長ができると思う」と言われました。
Q、これまでの東京の攻撃、守備それぞれの印象はいかがですか?
A、攻撃で言えばやはり強力なアタッカー陣がインパクトありますよね。外国籍の選手はもちろん、福岡大学の先輩である永井謙佑選手など日本人選手も多彩な印象です。守備で言えばやっぱり森重真人選手は自分のめざすスタイルの選手だと思いますし、見習いたいところが多い選手です。
Q、同じセンターバックとして森重選手のどんなところが気になりますか?
A、まずは攻撃のビルドアップのところで、ロングキックもショートパスも通せます。守備のところでは頭をすごく使って守っている印象です。そこは両面、僕も見習いたいしめざすべきスタイルだと思っています。実際にコンビを組むとなると、まだ具体的なイメージは沸かないですが、とにかく優れた選手なので自分も助けてもらうことも多くなるかもしれないですが、ぜひいいコンビを組みたいです。
Q、森重選手は器用なタイプで、木本選手同様に彼もアンカーなどでプレーする機会もありました。ただお二人とも現代フットボールにおいては主流タイプのセンターバックという印象です。
A、そうですね。アルベル監督からも「センターバックはボールを扱う時間が多くなる」と言われました。その意味でも両センターバックからボールを出せれば相手も難しくなると思います。森重選手以外にも若くていいセンターバックがチームには在籍しているので、そこの競争に勝ちたいです。
Q、ちなみに大学の先輩の永井選手の名前が出ましたが、他に繋がりのある選手はいますか?
A、それがまったくいないんですよ(笑)。
Q、本当にゼロベースのところに飛び込むのですね(笑)
A、はい、そこも含めてチャレンジです(笑)ちなみにグランパスに移籍の際はセレッソから一緒に柿谷曜一朗選手も行きましたが、彼以外に仲の良い選手はいませんでした。性格的には知らない環境に飛び込むということは、自分には合わないとは思っています。自分から積極的に話しかけるようなタイプではないですし、でも今回名古屋から東京に移籍してきました。矛盾していますね(笑)。
Q、木本選手はセレッソ、グランパス時代にカップ戦のタイトルは獲得していますが、まだリーグ戦優勝は経験していません。これは東京自体も同じ立場なのですが、リーグ制覇に向けての思いについてお聞かせください。
A、タイトルはいつ獲っても自分のサッカー人生の中でかけがえない、忘れられない経験になっています。まだ獲ったことのないリーグタイトルを次は経験したい思いは、すごく強いです。ぜひこの東京でそれを成し遂げたいと思っています。
Q、ちなみに木本選手は海外サッカーや他のJクラブの試合は観ますか?
A、海外はそんなに観ないですね。Jリーグは学生時代から多く観てきました。僕が好きだったのが、浦和レッズの阿部勇樹選手と森脇良太選手。福岡大学に入学後、当時ミシャさん(ミハイロ・ペトロヴィッチ/現コンサドーレ札幌監督)が指揮していたレッズのサッカーをよく観るようになりまして、すごく攻撃的で面白かったので好きでした。森脇選手はDFながらすごく攻撃参加がうまい選手で、自分もDFでしたが攻めるのも好きでしたので観ていました。阿部選手はボランチでもセンターバックでも高いクオリティを持った選手で、森重選手同様に僕がめざしたいスタイルの選手だと思ってずっと観てきました。あとはチームのために戦う姿勢も尊敬できるところでしたね。
Q、地元の静岡、大学時代の福岡、そして大阪、名古屋と来て、初めて東京での生活がスタートします。大都市を大体制覇しましたね(笑)。
A、考えてみればそうですね(笑)東京での生活は正直不安しかないです。静岡のスローな空気が流れるような雰囲気が好きで、そこが一番馴染みやすいですし、都会に行ってもそれは感じながら生活していました。日本の首都に行くことになりますが、人が多いのもそんなに得意ではないので、どうなることやらですね(笑)。
Q、コロナの影響にもよるでしょうが、2022年シーズンは観客制限も緩和される可能性があり、東京のホーム・味の素スタジアムにも大勢のファン・サポーターが戻ってくると思います。いままではアウェイチームとして訪れていたスタジアムですが、味スタでのプレーについて楽しみなことはありますか?
A、2019年は観客数がすごかったという話は以前から聞いていましたし、セレッソの一員として戦ったときもすごくたくさんお客さんが入ったなかでの試合で、いい雰囲気でした。味スタでの東京とセレッソの試合は、長谷川健太監督とロティーナ監督のチームだったので戦術的にも面白い戦いになることが多かった印象です。お互いの特徴が出るような戦いだったのですごく楽しかった記憶があります。今度はホームとして、早く味スタが満員になった試合で戦いたいです。
Q、東京のファン・サポーターにどんなところを見てもらいたいですか?
A、プレーヤーとしては地味なタイプだと思いますが、チームのために貢献する想いは昔から強いので、黒子な役割でもそこを見てほしいですね。プレー面では自分の武器である空中戦ですね。特に守備面での競り合いは得意なので注目してほしいです。一方攻撃面のヘディングは2017年以降、ゴールを奪えていないので課題です。決めきれないところは改善したいです。森重選手は毎シーズン得点を取っているので、そこも見習いたいです。あとはグランパス時代はなかなか出せなかったのですが、最終ラインからのパス出しもぜひ見てほしいです。
Q、そしてご自身のサッカーキャリアの文脈でいくと、センターバックとしてここで勝負することに意味があるということになりそうですね。
A、はい、センターバックでチャレンジしたいですし、逆にここで結果がでなければ終わりだという思いも強いです。危機感を持ってやっていきたいです。
text by YUKI NISHIKAWA