<前節・浦和レッズ戦のレビュー>
ピーター クラモフスキー体制では初めてとなるアウェイゲーム。その相手は浦和レッズだった。当日、埼玉スタジアム2002には49,000人を超える観衆が集まり、スタジアムはピッチ内ウォーミングアップから熱気に包まれた。
と同時に、両チームを苦しめたのは湿気だった。朝から断続的に降っていた雨は蒸気のようにスタジアムを漂っていた。
前半は熱気がそのまま両チームに乗り移ったような展開だった。東京はコンパクトな陣形を維持しながら前線からプレッシングを強め、浦和は東京の背後を狙って速攻を仕掛けてくる。
この日、東京のビッグチャンスは前半20分に訪れた。中盤の攻防でこぼれたボールを松木玖生選手が拾い、左サイドのハーフスペース(センターとサイドの中間地点)にスルーパスを通す。インナーラップした俵積田晃太選手が抜け出すと、ペナルティエリアに走り込んできた松木選手にリターン。相手がマークを捕まえ切れていないうちに松木選手がダイレクトで合わせた。惜しくも相手ゴールキーパーに触られ、右ポストに当たって枠から逸れたが、狭いエリアを打開して決定機を作る東京の速攻が光った。
前半終了間際には、大きなピンチを迎える。関根選手のミドルシュートが味方のブロックでコースが変わってゴールの隅へと飛んだが、ボールの軌道を察知したヤクブ スウォビィク選手が身体を投げ出す方向を変えながら右手で弾きだすビッグセーブ。守護神の驚異的な反射神経でゴールを死守し、前半を終えた。
後半に突入すると、高温多湿な環境が強度の高い東京のサッカーに影響を及ぼす。後半11分には渡邊凌磨選手の個人技で決定的なシーンを作ったものの、徐々に運動量が落ちていき、陣形が間延びして前線からのプレッシャーが効きづらくなる。
自陣からなかなかチームが出てこられない時間が続くと、終盤には木村誠二選手を投入して失点をしないようにリスク管理を徹底。一方で、マイボールになればカウンターを発動して試合終了間際にはフリーキックのチャンスを作るなどゴールも虎視眈々と狙い続けた。
ホームでの2試合に比べるとやや劣勢に回る時間が長かったものの、強度と戦う姿勢は最後まで失わず、ファイター集団への変貌を印象付けた。
<試合プレビュー>
6月にピーター クラモフスキー監督が就任して以降、リーグ戦では3試合連続で無失点に抑え、2勝1分無敗。天皇杯3回戦でも、PK戦を制しベスト16に進出。チーム状態は急激な上昇曲線を描いている。
クラモフスキー監督は「クラブ全員の行動が成績に反映されているのだと思う。団結して一日一日を過ごし、それがパフォーマンスにも出ている」と、チームの快調な滑り出しを称賛する一方で、首を振りながらこう続ける。
「まだまだやれることは多くある。油断をせずに一歩一歩取り組むことで自分たちは夢に近づけるのだと思っている」
リーグ中断前の最終戦となる今節は、鹿島アントラーズを味スタに迎える。前線の鈴木優磨選手、垣田裕暉選手の強力2トップを封じつつ、相手の手堅い守備をこじ開けるのは簡単なミッションではないが、チームの勢いは東京が勝っている。お互いに直前の天皇杯ではPK戦までもつれる激闘を演じているだけに、試合に向けたコンディショニングも勝敗を左右するカギとなる。
東京の夏は始まったばかりだ。ここからさらにチームを進化させ、熱い“ピータートーキョー”が真夏の主役を演じる。
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[ピーター クラモフスキー監督インタビュー]
Q、ヴェルディ戦は激闘の末、勝利を手にしました。あらためて試合の振り返りをお願いします。
A、カップ戦であり、色々なことが起こりうる状況にありました。何が起きるか最後まで分からない、本当に熱の入ったゲームになりました。チームとして、最大限のパフォーマンスを発揮できたと思っています。もちろん、90分で試合を決めることができれば良かったとは思っていますし、試合を決定づけるチャンスも数回ありました。
選手たちの取り組みもあり、ファン・サポーターのみなさんの記憶に一生残るようなゲームになったと思っています。ヴェルディ戦では、選手個々のメンタリティやキャラクター、クラブへの愛を示してくれました。“青赤こそが東京”と、すべての人が誇りに思えるようなプレーを見せてくれました。
Q、今節対戦する鹿島アントラーズの印象を教えてください。
A、タフな試合になると思っています。しっかりといつも通りの準備をすること、勝点3を奪うためにすべてを出し切るゲームにしたいと思います。誰がメンバーに入ったとしても、戦いに向けた準備をしてくれると思います。全力で準備をして、ファン・サポーターのみなさんに笑顔で帰ってもらえるような試合にしたいと思います。
Q、目の前の試合に集中し、全力を注いでいくというスタンスですか。
A、目の前の試合に焦点を合わせなければ、大事なことを見失ってしまうかもしれません。次の試合にベストを尽くし、一歩一歩前に進んでいければと思います。
Q、安部柊斗選手のRWDモレンベーク(ベルギー)への完全移籍がクラブ間で合意したと発表されました。クラモフスキー監督から見て、安部選手はどのように写っていましたか。
A、安部選手と同じチームで戦えたことを嬉しく思います。今の髪色を見ていただければお分かりの通り、彼がどれだけ東京を愛していたかを私は知っています。彼は、自分自身の夢を追いかける大きな決断をしたと思います。100パーセント、彼の活躍を心から応援しています。
[選手インタビュー]
<松木玖生選手>
Q、7月12日の天皇杯3回戦ではPK戦の末にヴェルディを破りました。
A、相手がヴェルディということでファン・サポーターのみなさんも気合いが入っていたと思いますし、自分たちとしても相手を圧倒する試合を見せるつもりで臨みました。ヴェルディもハードワークをしてきたので、難しい試合になりましたが、ファン・サポーターもすごく気合いの入った声援を届けてくれましたので、後押しもあって勝利できたことは良かったと思います。
Q、ピーター クラモフスキー監督が就任してから公式戦4試合無敗となりました。監督交代によって何が大きく変わったと感じていますか。
A、監督は選手全員に意識を変えることを求めていて、特に守備の意識を厳しく求めています。ボールを奪われた時に全員がスプリントで戻ることや、自陣のゴール前で身体を張って守るところは、クラモフスキー監督になってからしっかりやり切るようになってきていると思います。攻撃面はまだ大きく変えず、以前のサッカーの良さを採り入れながらクラモフスキー監督の色を出している印象ですし、目標としているサッカーに少しずつ近づけている段階だと思います。ここまで、リーグ戦は無失点できていますが、こういった試合を続けて勝点を積み重ねることが今はとても重要です。無失点で相手を抑え、1得点でも多く挙げられるように戦うことで、順位も上がっていくと思っています。
Q、クラモフスキー監督は戦術面だけでなく、試合に臨むメンタルについても強調している印象です。
A、試合に懸ける想いが強く、熱い気持ちを持って、情熱を持って自分たちに接してくれている監督だと思っています。普段からずっと熱いわけではなくて、個人で会話する時はジョークも交えるなど、柔らかい雰囲気もあります。
Q、クラモフスキー監督が来てから、松木選手はシュートの本数が増えています。攻撃面で意識を変えた部分はありますか。
A、攻撃への意識はあまり変えていませんが、システムがダブルボランチになったので、バランスを取りながら、自分が前にいける時には思い切りいこうと思っています。攻撃よりも意識が変わってきたのは、カウンター対策やリスク管理の部分です。ボランチとセンターバックが協力して常に気をつけていないと、カウンターを受けてしまうので、そのバランスは強く意識しています。
Q、今節を最後に、安部柊斗選手がRWDモレンベーク(ベルギー)に移籍します。松木選手にとって安部選手はどのような存在ですか。
A、東京に加入してから安部選手と中盤で一緒にプレーする機会が多く、色々なことを学んで、刺激を受けてきました。だから率直に寂しい気持ちはありますが、同時に負けていられないという気持ちもあります。チームのためにも、安部選手のためにも、今節は勝利しか求めていません。まずは無失点で終わること、そして勝ち切ることを目標に、全力で戦いたいと思います。
Q、鹿島アントラーズ戦に向けた意気込みをお願いします。
A、自分たちは勝利しか求めていません。中断期間前にホームで試合ができることはすごく大きいと思うので、まずは無失点で終わること、勝ち切ることをベースにしながら、内容を積み上げていけるようにしたいと思います。
<小泉慶選手>
Q、天皇杯のヴェルディ戦では、両サイドバックが揃ってハードワークを体現していました。
A、僕自身はまだまだですが、左サイドバックの長友佑都選手は、37歳で120分走り切るプレーでチームを引っ張ってくれました。本当にすごいとしか言いようがないです。カップ戦は内容よりも結果が重要だと思っていました。ヴェルディとの対戦でしたので、延長戦に入りましたが、勝つことだけに集中してプレーできたと思います。
Q、連戦のなかでコンディション調整はうまくいっている手応えを感じていますか。
A、常に良い準備をすることを意識しています。天皇杯はトーナメント戦ですので、簡単な試合はないと思っていました。何が起こっても良いように、準備をしています。
Q、今節は鹿島アントラーズとの古巣対戦になります。
A、何度も対戦はしていますが、当時在籍していた時のメンバーの多くが今も鹿島でプレーしています。僕のプレーもそうですし、パーソナルな部分を多くの選手が知っています。ですが、僕自身も鹿島がどのようなチームで、選手がどのようなプレーをするかを知っています。以前もお話しさせていただきましたが、鹿島というチームに対して、僕自身、良い思い出しかありませんし、感謝の気持ちで一杯です。楽しみな一戦です。
Q、クラモフスキー監督になり、強度などが研ぎ澄まされた印象です。前回の対戦より、自信を持って臨むことができそうですか。
A、練習で求められている高い強度が試合にも活きていると思います。連戦で迎える鹿島との一戦ですので、選手全員がしっかりと準備をしたうえで試合に臨むことが、良い戦いに繋がります。天皇杯ではヴェルディと120分の戦いをしましたので、油断することなく戦う準備をしていきたいと思います。