<マッチレビュー>
7月31日の清水エスパルスユースとの準決勝から中1日で開催された「第47回 日本クラブユースサッカー選手権(U-18) 」決勝戦。大会初戦に戦ったガンバ大阪ユースとの対戦となった。グループステージではは、1-1と勝敗がついていない相手。
3年ぶりとなる決勝戦で6年ぶりの優勝を掴み獲るため、なんとしても勝利し、東京の地で勝利したい一戦に臨んだ。
1stHALF—互いに譲らない試合展開。同点で折り返す
ガンバ大阪ユースのキックオフで始まった決勝戦。お互いにボールを保持しながらゴールをめざすが、ゴール前での集中力が高くシュートを打つことのできない、拮抗した状態で進む。前半13分には永野修都選手のロングフィードを起点に左サイドでボールをキープすると、佐藤龍之介選手と渡邊翼選手の連携で崩して、ペナルティエリアに侵入するも、ガンバ大阪ユースの身体を張った守備でシュートまで持ち込めない。すると、前半16分には相手センターバックから、永野修都選手の頭上を越えるロングパスがガンバ大阪ユースの安藤選手にとおり、ドリブルで持ち込みシュートを打つが、後藤亘選手が冷静にボール弾き、事なきを得る。
その後も、一進一退の攻防が続き、飲水タイム後の相手のゴールキックからの再開。相手ゴールキーパーのキックを一度はクリアするも、ボールを拾われると右サイドから崩され、ペナルティエリア右角辺りで安藤選手がボールを受けると、トラップしてすぐに右足を振り抜く。ボールは右ポストを叩きながらゴールに吸い込まれ、準決勝に続き先制を許す展開となった。
しかし、直後に東京が反撃に出る。沼田青瑳選手が中盤でボールを奪うと、菅原悠太選手がボールを佐藤龍之介選手に繋ぐ。一気に右サイドを持ちあがり、後ろからサポートに入った金子俊輔選手へ。ダイレクトでクロスを上げると、山口太陽選手が頭で合わせてすぐさま同点に持ち込む。失点後のキックオフから一度もボールが止まることなく、同点に追いついた。 そのままの勢いで東京がボールを握りチャンスを作るが得点には繋がらず、1-1で前半を折り返した。
2ndHALF—劇的なゴールで延長に
後半も両チーム一進一退の攻防が続く中、後半29分に試合が動く。ボールを保持し続けるもペナルティエリアに侵入することができない状況が続いていたが、佐藤龍之介選手、渡邊翼選手、沼田青瑳選手と繋ぎクロスを上げるが、クリアされてコーナーキックとなる。キッカーの菅原悠太選手が蹴りこんだボールを永野修都選手がゴールキーパーの前でヘディングシュート。これがゴールネットを揺らし逆転に成功した。その後、ガンバ大阪は同点に追いつくために勢いを増す。前線からの激しいプレスでボールをことごとく回収。東京としては苦しい時間が続く。
後半36分には中盤でボールを奪われると左サイドへ展開される。當野選手が駆け引きでディフェンダーとの距離をとると、バイタルエリアでボールを受けコンパクトに右足を振り、ボールはゴール右上隅に吸い込まれて同点とされた。その後は両チーム集中して中盤での激しいボールの奪い合いが行われる。そのまま後半が終了すると思われたアディショナルタイムの4分が終わりかけたタイミングで試合が動く。
相手のスローインで一瞬の隙をつかれると、スローインのボールを頭でそらされ、武井選手がペナルティエリアに抜け出される。左足でニアサイドにボールを流し込まれ、試合終了間際に東京が逆転を許した。 しかし、ドラマはまだ終わらない。このまま試合が終了するかと思われた、最後のプレーで劇的な展開を迎える。キックオフ直後からボールを回して相手陣内に攻め込む。右サイドの吉田綺星選手が左足でクロスを供給すると、後ろから走り込んできた永野修都選手が頭で合わせてゴールネットを揺らす。そこで80分の終了を告げるホイッスルが吹かれ、ラストプレーで試合を振り出しに戻した白熱の一戦は延長へと突入した。
EXTRA TIME—拮抗した試合は結果が付かずPK戦へ
延長に突入すると、両チームとも真夏の猛暑の中での連戦での疲れの影響か、簡単なミスが増えてきた。そのなかで東京が一瞬の隙をつく。沼田青瑳選手のパスに抜け出した山口太陽選手が抜け出し、ペナルティエリアに進入すると、左足でシュートを放つも相手ゴールキーパーの飛び出しにより防がれる。その後も東京は、攻め込みながらも最後の精度を欠いてゴールには繋がらない。
延長後半に入ってからも佐藤龍之介選手のドリブル突破からチャンスを創出するも相手の選手が身体を張ってゴールを割ることができない。一瞬の隙を突かれシュートを打たれるシーンもあったが、後藤亘選手が冷静に対応。東京は複数のチャンスを作るも得点には繋がらず、試合が終了し試合はPK戦に突入した。
PENALTY SHOOTOUT
先攻の東京は1人目の佐藤龍之介選手が枠外へと外して一本目を失敗する。続く2人目の菅原悠太選手、3人目の吉田綺星選手、4人目の永野修都選手が冷静に決めると、相手の4人目の選手がゴール上へと外し、4-4の同点とする。5人目のキッカーはここまでチーム最多得点数を記録している山口太陽選手。ここで決めて後攻のガンバ大阪へプレッシャーをかけたいところだったが、相手ゴールキーパーがセーブ。相手の5人目が決めれば負けとなる厳しい状況となった。そこに立ちはだかったのは後藤亘選手。相手のキッカーが正面に近い軌道でボールを蹴ると、残した足に当ててブロック。試合を終わらせない。その後は6人目のキッカーまでお互いに冷静に決めて7人目へと進む。東京の7人目のキッカーは佐々木将英選手、ボールはゴールキーパーの逆をついたが、ゴールの枠を外れる。後攻の相手は7人目が冷静に決めて試合終了。何度も追いつく粘り強さを見せた東京だったが、あと一歩及ばず準優勝で大会を終えた。
MATCH DETAILS
<FC東京U-18>
STARTING Ⅺ
GK後藤亘
DF永野修都/石堂純平/沼田青瑳/金子俊輔(延長前半8分:佐々木将英)
MF渡邊翼(延長前半1分:尾谷 ディヴァイン チネドゥ)/佐藤龍之介/田邊幸大(後半15分:吉田綺星)/鈴木楓/菅原悠太
FW山口太陽
SUBS
GK小林将天
DF兼子貴成/岩田友樹
MF伊藤ロミオ/大町彪悟/田中希和
GOAL
前半28分:山口太陽/後半24分:永野修都/後半40+6分永野修都
<ガンバ大阪ユース>
STARTING Ⅺ
GK荒木琉偉
DF 與那嶺虎汰朗/山口 遥太
MF 和泉圭保/宮川大輝(延長前半1分:遠藤楓仁)/大倉慎平(延長後半6分:中島悠吾)/古河幹太/森田将光
FW 岡本陽向(後半30分:武井遼太朗)/天野悠斗(後半34分:當野泰生)/安藤陸登(後半30分:久永虎次郎)
SUBS
GKステイマンジョシュア草太郎
DF 長谷川航世
MF 笹記佑太/山本天翔
GOAL
前半26分: 安藤陸登/後半37分:當野泰生/後半40+4分:武井遼太朗
[奥原崇監督 試合後コメント]
Q、試合を振り返ってください。
A、まずは、このような素晴らしい大会を開催してくださったクラブユース連盟の方々、味の素フィールド西が丘に帰ってきてからは私たちが普段はライバルとしている東京都のチームの方々に、ホームのような雰囲気を作ってくれたと思えるような2試合を運営していただき、この場をお借りして御礼をお伝えさせていただければと思います。
今日の結果で最終的にはチャンピオンになることはできませんでしたが、試合が終わり選手たちには、これまで継続してきたことをやめずにプロになるための歩みを止めないこと、引き続き明日からの1日1日を大切にすること、を話しました。
ガンバ大阪ユースは非常に素晴らしいチームで、お互いが分析し合い、特長を消しにいくプレーや特長を出すためのプレーが見られました。フェアプレーでしたし、我々が学ぶべき点もあったので、次に戦う時には勝てるように日々頑張っていきたいと思います。
Q、グループステージ初戦の相手との決勝になりました。開幕戦との違いは感じましたか。
A、我々もグループステージやトーナメントで戦いながら、力を付けてくることができた認識はあったのですが、ガンバ大阪の精度も高くなっていました。後手になるシーンが増えていたと思います。
Q、非常に緊張感のある試合となりました。夏の暑さと連戦をうまく戦うことができた要因と、PK戦で勝ち切ることができなかった要因はどこにあると思いますか。
A、プレミアリーグでは苦戦をしているなかで、最後のアディショナルタイムでの失点も多い前期の戦いぶりだったので、そういった意味では失点をしても下を見ないようにすることや、全員でまとまって最後に耐え切るという点については、本大会を通して大きく成長できたと思っています。最後の勝負の部分は、メンタルだけではなく技術や判断、全てが重要になるかと思います。その部分を意識していましたが、選手たちは良く戦ってくれたと思います。強いていうのであれば、自分の采配や選手の疲労度の見極めの部分に後悔が残りました。ただ、休息日を含めて選手の一挙手一投足を漏らさず見てきて、今日時点での自分の采配力は発揮した自負があります。
Q、本大会では下級生の成長が大きかったと思います。
A、プレミアリーグで苦しんでいるのも、その部分がカギだと思っています。3年生が下級生をどのように受け止めるのかが重要になると思います。この大会では3年生が1年生をうまく取り込み、1年生はしっかりと謙虚さを持ちサッカーと向き合うことを学ぶことができた大会だったと思います。今までは見たことがないような一体感を出すことができたと思います。これまでは涙を流すようなことがなかった1年生の選手が、涙を流す様子も見受けられました。勝負ごとに対しての意識が疎いような選手が今日の対戦相手が優勝するシーンをみてたきつけられて、心が出たのがすごく良かったと思います。将来につなげていってくれればと思います。
[選手インタビュー]
<渡邊翼選手>
Q、本日の試合を振り返ってください。
A、今日の試合は、ほとんど覚えていないぐらい、濃い内容の試合でした。気持ちの上がり下がりも大きく、これまでの人生で一番楽しい試合となりました。
Q、本大会はキャプテンマークを巻き、チームを引っ張る存在になっていました。
A、最初はキャプテンになると聞いて、自分ではあまりキャプテンをするキャラクターではなかったので、どうなるかと不安もありました。大会の初戦となったガンバ大阪ユース戦はキャプテンとしての立ち居振る舞いができていなかったので、最初のガンバ大阪戦と最後のガンバ大阪戦で比較すると、今日はキャプテンとしての声出しや、周りをみて個人に声を掛けることはできたと思います。
Q、本大会での経験は、今後のご自身のプレーにもつながると思います。どのように活かしていきますか。
A、この大会で、僕だけではなく、チームが大きく成長することができたと思っています。今は11位と苦戦をしているプレミアリーグでも、上位をめざすことができるチームになっていきたいと思います。
Q、この後も、プレミアリーグは続きます。ファン・サポーターに向けて一言お願いします。
A、今日も、最後のPK戦まで応援をしてくれていて、チームメイトはもちろんですが、ファン・サポータのみなさんが応援してくださってくれたからこそ、決勝まで進むことができたと思います。その分、恩返しの意味も込めて、プレミアリーグでも最高な姿を見せられるようにこれからも頑張っていきたいと思います。
<吉田綺星選手>
Q、本日の試合を振り返ってください。
A、今日の試合は、先制をされる試合展開となりました。準決勝でも先制を許してしまう、良くない入りでしたが、そこで下を向くことなく、自分たちも負けないように得点を取り返すことができたのは良かったと思います。
Q、本大会では、途中出場も多いなかで3年生としてチームを引っ張っていく姿も見受けられました。
A、やはり、自分が途中から入ったからには、流れを変えて得点をとり、勝ち切るために貢献したと思っていました。
Q、多くのファン・サポーターが応援に来ていました。
A、やはり、今大会に登録されていないチームメイトや、保護者、ファン・サポーターの方々の声援は胸に響き、力になりました。自分たちもその空気感があったからこそ、より強い一体感を持つことができたと思っています。
Q、プレミアリーグは続きます。意気込みをお願いします。
A、今大会は準優勝という結果でしたが、ここで一喜一憂せず、しっかりと継続して積み上げていきたいと思います。ファン・サポーターのみなさんも引き続き応援いただければと思います。
<永野修都選手>
Q、試合を振り返ってください。
A、後半の試合終了間際に同点に追いつくことができていたので、何としてもこの試合は勝ちたかったです。相手も強い気持ちを持って臨んでいたと思います。自分も守備の選手として3失点してしまっているので、そこは改善していければと思います。
Q、最後の得点シーンは、なんとしても決めるという気持ちがゴールへと導いたと思います。
A、残り時間少なかったので、何かをしなければそのまま終わってしまうと思っていました。右サイドにボールが流れた瞬間に自分のなかで“これは来るな”と思ったので、ゴールからは遠い位置でしたが、絶対に決めるということしか考えてなかったです。思い切りヘディングをしたらゴールに入ったので、良かったです。
Q、プレミアリーグで苦戦しているなかで、大会を通してここまで強くなれた要因はどこにあると思いますか。
A、プレミアリーグでは順位を見れば分かるように、うまくいっていない状況のなかで、この大会にかける想いはチーム全員が強かったと思います。群馬県での開催期間中には、選手同士でコミュニケーションをとったり、ミーティングを通して自分たちのプレーを振り返り選手間の関係性は、試合を重ねるごとに良くなったと感じています。
Q、背番後「3」への想いはありますか。
A、トップチームでは森重真人選手、昨シーズンまでFC東京U-18にいた土肥幹太選手など、センターバックと中盤どちらもできる選手がつけている背番号なので、チームの中心として活躍している選手がつけていた番号なのですごく重みを感じています。
Q、味の素フィールド西が丘に多くのファン・サポーターが訪れていました。
A、群馬県でのグループステージの時から応援に来てくれていたファン・サポーターの方もいらっしゃいましたし、準決勝もそうですが、決勝は特にすごい声援でした。結果として負けてはしまいましたが、声援が自分たちに届いていました。厳しい展開になったなかでも最後、PK戦まで戦うことができたのは声援のおかげだったと思います。
<後藤亘選手>
Q、本日の試合を振り返ってください。
A、先に失点したなかで、すぐに追いつき追加点を獲ってくれていたなかで、最後の締めの部分の甘さが出てしまい逆転されてしまいました。チームとして最後に追いつくことができたのですが、最後自分がPK戦でボールを止めることができず、非常に悔しい想いが残りました。
Q、大会を振り返ってください。
A、プレミアリーグで苦しんでいる状態で大会が始まりましたが、一戦一戦チームが成長することができ、そのなかで3年生が中心となり一体感を生むことができました。決勝は負けてしまいましたが、これまでにないすごく良い雰囲気で試合ができていたことが印象的でした。
Q、大会を通じて好セーブを連発していました。
A、今日も3失点してしまっていましたし、課題しか残っていないです。今日はミドルシュートが多かったので、それを止めるシュートストップの能力とチームメイトを動かすコーチングの部分を上げていきたいです。
Q、これからも試合が続きます。ファン・サポーターの方へメッセージをお願いします。
A、プレミアリーグ前期は結果が出ないかなかでも多くのファン・サポーターが応援に駆けつけてくれていたので、後期はファン・サポーターの方のためにもプレミアリーグでも勝利を重ねていきたいと思います。