<マッチレビュー>
約2週間の中断期間が明けた初戦は天皇杯ラウンド16となり、熊本の地に乗り込んでロアッソ熊本と対戦した。継続と発展を掲げ、公式戦のない期間もハードなトレーニングを積んできたチームは確かな手ごたえを得ている。就任してから1か月半、ピーター クラモフスキー監督のカラーの浸透も進んでいる。
注目のスターティングメンバーは、守護神のヤクブ スウォビィク選手と森重真人キャプテンが不在。ゴールキーパーには野澤大志ブランドン選手が今大会初出場を果たし、夏に加入した白井康介選手が右サイドバックで起用された。新体制ではサイドバックでの起用が続いていた小泉慶選手がボランチに入り、前線には馴染みの顔ぶれが並んだ。
九州独特の暑さが残るなか、J2リーグに所属するロアッソ熊本に対して力の差を見せ、準々決勝へ駒を進めるための戦いがキックオフを迎えた。
1stHALF—開始早々のPKで先制を許す
まさかのスタートとなった。前半2分、右サイドのスローインを渡邊凌磨選手が入れ、ディエゴ オリヴェイラ選手が落として塚川孝輝選手がファーストシュートを放った直後のプレー。自陣ゴール前のクリアから伊東選手にハイラインの裏をとられて独走を許すと、ペナルティエリア内で野澤大志選手が倒してしまいペナルティキックを与える。前半4分、これを昨シーズンの夏まで東京に所属していた平川選手に決められ、立ち上がりに先制点を許した。
リードを奪われてからは両サイドを起点に押し込みにかかるが、久しぶりに公式戦を戦うからなのか、なかなかボールを動かすテンポが上がらない。パスやコントロールのズレが目立ち、反対にカウンターからピンチを招く場面が続いた。何とか野澤大志選手の好セーブでしのぎ追加点は許さなかったが、苦しい展開が続いた。
前半42分にはようやくチャンスが訪れる。中央で細かくつなぎ、右サイドで待っていた白井選手のクロスをゴールキーパーがこぼしたところに俵積田晃太選手が詰めるが、シュートはサイドネットを揺らし、同点とはならなかった。
2ndHALF—追加点を許し16強で大会を去る
まずは追い付きたい後半、選手交代には踏み切らなかったが、開始早々に主導権を握っていく。後半5分には右サイドからゴールに迫っていった。その中心にいたのが渡邊選手。ペナルティエリアの角のポジションに立って惜しいクロスボールを入れれば、続けて塚川選手のラストパスに抜け出し、ペナルティエリア内に侵入してシュートで終わるシーンも作り出す。しかし、枠を捉えていたボールは相手ゴールキーパーに阻まれた。
良い流れが生まれはじめた矢先、またしても落とし穴が待っていた。後半9分、敵陣でのパスミスを東京のアカデミーで育った松岡選手に拾われると、後ろから追い掛けた渡邊選手は追い付けず、エンリケ トレヴィザン選手はかわされて一気にドリブルでゴール前まで運ばれ、最後は冷静にゴールネットを揺らされた。
2点のビハインドを追う展開になると早々に選手交代を行い、フレッシュな顔ぶれを並べるが、大きな変化は起こすことができない。後半19分にはアダイウトン選手のスルーパスに野澤零温選手が抜け出し、途中出場の二人でビッグチャンスを作ったが、野澤零温選手のシュートは枠を外れた。
後半の飲水タイム以降は相手陣内にスペースが生まれ、シュートで終わる回数も増えていったが、シュートに力がなかったり枠を捉えられない場面が続き、無得点でタイムアップ。天皇杯は16強で大会を終えることとなった。
MATCH DETAILS
<FC東京>
STARTING Ⅺ
GK野澤大志ブランドン
DF木本恭生/長友佑都(後半27分:徳元悠平)/エンリケ トレヴィザン/白井康介
MF松木玖生/塚川孝輝(後半11分:野澤零温)/小泉慶(後半26分:東慶悟)
FWディエゴオリヴェイラ(後半31分:ペロッチ)/渡邊凌磨/俵積田晃太(後半11分:アダイウトン)
SUBS
GK児玉剛
DF土肥幹太
GOAL
―
<ロアッソ熊本>
STARTING Ⅺ
GK田代琉我
DF黒木晃平/大西遼太郎(後半38分:酒井匠)/江﨑巧朗
MF上村周平/大本祐槻(後半38分:田辺圭佑)/竹本雄飛(後半26分:藤田一途)/平川怜
FW伊東俊(前半7分:道脇豊)/松岡瑠夢(後半26分:東山達稀)/島村拓弥
SUBS
GK佐藤優也
FW粟飯原尚平
GOAL
前半4分:平川怜/後半9分:松岡瑠夢
[ピーター クラモフスキー監督記者会見コメント]
Q、試合を振り返ってください。
A、良いフットボールの戦いだったと思います。ロアッソ熊本は非常に良い戦いをしていたと思いますし、おめでとうございますと伝えたいです。
熊本をリスペクトして準備してきましたし、自分たちのやれることをやってきました。ただ、自分たちの力が足りなかったと思います。ゴールがすべてを決めてしまったゲームですし、そのなかで我々が決められそうなチャンスは数回ありました。熊本はしっかりとチャンスで決め切ったと思います。
選手たちは献身的に戦ってくれましたし、必死に戦ってくれたことを非常に誇りに思っています。そして選手たちは継続して出し切ろうと戦ってくれました。そのなかで我々も決定機を作れていたと思います。ここにいる選手たち、残っている選手たちは痛みを感じているでしょうし、残念に思っているでしょう。痛みを持って、強いチーム、強いグループ、強いクラブとなれるように進んでいきたいと思います。
Q、熊本と戦うゲームプランをどのように考えていて、どのくらい実行できましたか。
A、熊本は非常に良いチームですし、彼らはホームのファンの前で勝利をつかむために必死に戦っていました。そうした状況でも相手に向かって仕掛けていきたかったですし、それはできていたと思います。熊本はボールを動かしながらプレーしてくると想定していて、自分たちはそのスペースを突いていくことを理解しながら戦っていました。両チームともにフットボールを実践しようとする試合でした。
先ほども話したように、重要な点は自分たちのやり方を継続してプレーを続けたことです。一つゴールが入れば、二つ、三つと続いていたかもしれません。チャンスは作れていたと思います。もし、ボールを持ちながらチャンスが作れていなければ足りないところもあると思いますが、今日はチャンスを作れていました。数点取れてもおかしくないチャンスはあったと思いますが、今夜はそれを決め切れませんでした。大事なのは、選手たちが自分たちのプレーを最後まで続けて解決策を見つけようと戦ったことです。しかし、チャンスをゴールにつなげられませんでした。
Q、特に前半は相手のプレスにかなり苦戦した印象です。セカンドプランが必要だったのか、準備する時間が足りなかったのか、どちらでしょうか。
A、セカンドプランというよりも、相手も非常に良いプレスをかけてきていました。そのなかでプレッシャーを外せていた部分もありますし、できなかった部分もありました。試合が進むにつれ、自分たちのリズムを取り戻し、相手をこじ開けながらできていたと思います。良かった点は、選手たちが解決法をしっかりと導き出していたことです。
Q、今日の試合の反省材料はなんですか。
A、すべての要素を分析したいと思います。一番大きな点は、選手たちが勇敢に献身的に自分たちのフットボールをやり続けて戦い続けたことです。それが一番重要であり、将来の成功につながっていく要素です。
パフォーマンスをしっかりと分析してフィードバックしていく。それは常に行っていることです。ただ、今日の試合で選手から感じたのは、自分たちのフットボールを勇敢にやること、そして献身的にやること、気持ちを出して戦う姿勢です。こういった試合では、選手がプレッシャーに直面して隠れてしまうこともあるかもしれません。ただ、我々の選手たちは自分たちのフットボールを信じて、解決策を見つけながら戦おうとしてくれました。それは、将来こうなりたいと思い描くチームになるためには重要なことだと思います。
先ほどの質問に答えるのであれば、すべてです。すべてを解決しなければいけないと思っています。すべての局面で良くなっていき、継続して良くなっていかないといけません。
[選手インタビュー]
<白井康介選手>
Q、東京デビュー戦となった今日の試合の振り返りをお願いします。
A、チームを勝たせられなかったこと、タイトルの可能性が一つ減ってしまったことが非常に悔しいです。
Q、攻守に渡ってバランスを取り、積極的な攻撃参加もありました。ピッチの上で意識したことを教えてください。
A、開始早々に失点しましたが、ディフェンスラインの選手としては、特に立て続けの失点だけはしないように意識しました。うまく守りながら、攻撃参加のチャンスを常に窺い、得点に繋がる前への意識を常に持っていました。まずは、1点を奪い同点に追い付くためのプレーを考えていました。
Q、前半と後半で渡邊凌磨選手、野澤零温選手と縦関係でコンビを組む選手が変わりましたが、互いの良さが出ていたと思います。
A、前の選手の良さ、特長が活きるプレーを意識していました。そのなかで、僕自身がサポート役として攻撃参加することで厚みが生まれると思っています。先日の練習試合でも、その面で良い連携が取れていました。うまくプレーでみせることができたと思います。
Q、白井康介選手の特長が活きたプレーも随所に見られました。
A、スプリントで外側のスペースを追い越す動き、深い位置まで運んでクロスボールを送るシーンを表現できた局面もありました。ここから連携を深めつつ、僕自身の特長であるスプリントの部分で守備のカバーリングや攻撃参加の回数をもっと増やしていきたいです。
Q、今日の試合で得た手応えと課題を最後に教えてください。
A、チームとして守備ラインの設定を高くしているなかで、1失点目に繋がってしまったシーンは減らしていきたいです。一方で、チームとして挑戦することが大事ですし、ミスを修正しながら良くしていきたいです。今日の試合でも随所で良いシーンはあったと思います。チームとして改善して良いものにしていきたいと思います。
<松木玖生選手>
Q、試合を振り返ってください。
A、やはり立ち上がりに失点してしまうと流れを持っていかれてしまいます。相手は狙いを持ってプレスをかけてきて、サイドに入った時に圧力をかけられ、自分たちはそれにはまってしまった印象があります。
Q、相手の攻撃の崩しによって守備のズレが生まれたり、想定していた戦いと異なることがありましたか。
A、相手は、自分たちの最終ラインに対してワントップでプレスをかけてきていたので、意外とはがせるなと思っていましたが、センターバックからディエゴ オリヴェイラ選手に入った時に、サポートがなくてボールをロストするシーンが多かったです。ボランチもピックアップしにいくことはできるとは思いますが、センターバックから押し上げていかないと、少し引いた相手に対しては難しくなってしまうなと感じました。
Q、攻撃時に松木選手がボールを持った時に厳しく寄せられていた印象です。攻撃の組み立てについてはどうでしたか。
A、後半の終盤は相手もバテていましたが、コンビネーションのところはできていましたし、これを前半からできるようにしないといけません。まだ試合は続くので、この課題を持ち帰って、次のセレッソ大阪戦で勝てるように準備をしていきたいと思います。
<野澤零温選手>
Q、後半途中からの出場でした。クラモフスキー監督からどのような指示がありましたか。
A、クラモフスキー監督からは、右サイドの守備とチームの決まり事を遂行しながら、僕自身のストロングポイントを活かし、相手の背後を突くように伝えられました。途中から出場したからには、得点に絡むプレーで良い流れをもたらそうと思っていました。
Q、白井康介選手とうまく連携し、決定機に繋がるプレーを作り出せていた印象を受けました。
A、白井選手が後ろから常に声をかけてくれていました。オーバーラップや内側に入るプレーで互いに動きを確認し合いながら、連携しながらプレーできていました。互いの特長を理解しつつ、良い関係性で崩すことができましたが、僕自身、最後のところで決め切れなかったことが課題です。今シーズンのデビュー戦となったルヴァンカップのセレッソ大阪戦と同じ過ちを繰り返してしまい、まだまだ成長できていないと思いました。
Q、少しずつプレー時間が長くなってきていますが、あらためて今節の課題と収穫を教えてください。
A、ボールを失う回数が多かったと思います。ワンタッチプレーの精度が低く、簡単にロストして相手にボールが渡ってしまうシーンが目立ってしまいました。もう一つは、相手ゴールキーパーとの1対1のシーンや、ボレーシュートのチャンスで決め切ることができませんでした。大事なシーンで決め切らなければ、ここから生き残っていけないと思っています。背後への抜け出しについては、今日の試合も先日の練習試合でも良い感覚が掴めてきています。ストライカーとしての感覚を整理して、得点に繋げていきたいと思います。
Q、ゴールに近付いている過程だと思いますが、今後の意気込みをお願いします。
A、僕自身、得点に近付いてきている感覚はありますが、練習試合で表現できても公式戦で結果を残してこそのストライカーだと思います。次節以降、出場のチャンスがあれば、個人として目に見える結果を残していきたいと思いますし、日ごろのトレーニングから高めていきたいと思います。