<前節・横浜F・マリノス戦のレビュー>
中断期間が空け、リーグ戦で連勝して迎えた優勝争いを演じている横浜F・マリノスとの一戦。連勝の要因は勢いなのか、または中断期間中に取り組んできたピーター クラモフスキー監督の戦い方の浸透なのか。東京の現状を計るバロメーターとしては恰好の相手との一戦となった。
立ち上がりはいきなり面食らうことになった。横浜FMの勢いに押され、ボールホルダーへの圧力を強めようとしてもパスワークではがされ、自陣に押し込まれる時間が続く。
そして前半12分には、積極的にディフェンスラインを押し上げた背後を突かれてゴールキーパーとの1対1の場面を作られると、二度は相手のシュートシーンをブロックしたものの、三度目のこぼれ球を拾えずにゴールに流し込まれて先制を許した。
しかし、東京は連勝の勢いを盾にしていたわけではなかった。中断期間中から徹底して浸透を図ってきた攻守両面での約束事を徹底。攻守の素早い切り替えからリズムをつかむと、相手よりも速いトランジションでカウンターを繰り出し、横浜FMの守備陣を慌てさせた。
そして、前半のうちに自分たちの形でゴールをこじ開ける。
前半23分、右サイドでボールを持った仲川輝人選手がピッチ中央にドリブルで運びながら、左サイドにできた広大なスペースへ右足のアウトサイドキックでボールを送り出す。
ボールを受けた俵積田晃太選手は迷わずにスピードアップして縦方向にボールを運ぶ。ゴール前の状況を見て、ニアサイドにクロスボールを入れると、相手との競り合いのなかでボールをコントロールしたディエゴ オリヴェイラ選手が押し込んで同点弾を挙げた。
センターフォワードと両サイドのウイングの3選手で、マイボールにしてから一気呵成に攻撃をやり抜いた東京の電光石火の一撃。
後半もクロスバーを直撃する決定的な場面を二度にわたって作るなど内容では上位を相手にまったくひけをとらないサッカーを展開した。確かに結果もほしいのだが、それを手繰り寄せている実感が得られるゴールが、この試合の東京のハイライトシーンだった。
<試合プレビュー>
東京はセレッソ大阪、京都サンガF.C.を破ってリーグ再開後2連勝を飾った。前節時点で2位の横浜F・マリノスを相手に1-2で競り負けたが、ピーター クラモフスキー監督就任後のリーグ戦はこれで4勝1分2敗。猛暑のなかでも選手たちはコンディションを上げ、安定した戦いを見せられるようになってきた。
チーム最年長の長友佑都選手は冗談交じりに「1試合でも動けないと終わりだと思っているから」と言い、こう続ける。「そこは、ベテランの意地でもある。やっぱり(東)慶悟も、シゲ(森重真人)も日々やっていることが報われている。練習の準備を誰よりもやって、しっかりとトレーニングしている。プロとしてのあるべき姿の基準が高いからこそ、このレベルでも走れている。僕らが動けている理由はちゃんとある」
今節はリーグ2位のヴィッセル神戸と対戦する。神戸はここまで大迫勇也選手や武藤嘉紀選手といった攻撃陣を中心に、リーグ2位の44得点を記録。クラモフスキー監督のもと、リーグ戦7試合中5試合を失点ゼロに抑えてきた東京の堅守が改めて試される一戦となる。聖地・国立で勝つのは、もちろん東京だ。
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[ピーター クラモフスキー監督インタビュー]
Q、横浜F・マリノス戦ではクロスバーを叩く惜しいシュートもありました。今週の練習ではシュートの意識をどのくらい植え付けましたか。
A、まずは、そのようなシュートの場面を生み出すところからしっかりとやらなければいけません。選手たちがプレーをやり切れるように、最後の部分に集中できるように促したいと思います。ここまで磨き続けてきたこと、積み上げてきたこと、さらには改善してきたことを表現するだけです。シュート、得点はゲームにおいて一番重要なことですし、高めていく必要があります。その場面だけではなく、横浜FM戦では追加点を奪うチャンスがありました。昨シーズン王者のチームとアウェイで、非常に良い雰囲気の試合でしたし、ポジティブな部分もありました。継続して高めていくだけです。
Q、素早くゴールへ向かうヴィッセル神戸の特長を教えてください。
A、神戸はチームとしてやるべきことをブレずに行っている印象です。チームとしての強さを感じますし、素早い攻撃だけではなくロングボールも併用し、相手のゴールをこじ開けるシーンも見受けられます。齊藤選手の怪我は非常に残念に思いますが、彼らはしっかりと週末の試合に向けて準備を進めていると思います。どのチームと対戦することになったとしても、試合のなかでチャレンジをして、勝点3を奪いにいきます。我々にとって恐れるものは何もありません。自分たちの戦い方の決まり事を出し切ること、積極的かつ勇敢に戦うこと、一つひとつのプレーに焦点をしっかりと当てることができれば、どのチームを相手にしても倒すことができると思っています。国立競技場で試合ができることにワクワクしています。東京のみなさんが会場に足を運んでくださることを期待しています。ファン・サポーターのみなさんの応援や後押しは、我々に力を与えてくれます。ぜひ友人を誘ってスタジアムに足を運んでください。そして、素晴らしい夜にしましょう。
Q、クラモフスキー監督は国立競技場で指揮を執られるのは初めてですか。
A、車を運転しているときに横を何度か通ったことはあります(笑)。非常に美しいスタジアムだなと思っていました。指揮を執ること、スタジアムの中に入ることも初めてです。非常に特別な一戦、特別な夜になると思っています。エキサイティングな試合をぜひ観に来てほしいです。神戸は非常に調子の良いチームですし、タフさが求められます。東京として上位を走る神戸を相手に、ファン・サポーターのみなさんも一緒になって戦い、勝利を掴みましょう。
[選手インタビュー]
<森重真人選手>
Q、前節の横浜F・マリノス戦は集中した守備を継続しましたが悔しい敗戦となりました。
A、全員で我慢強く戦うことはできていたと思います。あとは、個人のところ、1対1の局面で負けないディフェンスや、交代してピッチに入ってくる選手も含めたチーム全員での戦い方を追求していかなければ、横浜FMのような経験値の高いチームには勝点を奪えないという悔しさを味わいました。
Q、今節のヴィッセル神戸も攻撃力が非常に高いチームですが、守備の統率で意識していることを教えてください。
A、先ほども言ったように、チーム全体での守備と局面における個人の守備力が求められると思いますし、勝敗を左右する部分だと思います。ディフェンスの選手として、まずは相手選手に自由を与えずに負けないことを意識し、組織的な守備については、今まで通り、チームとしての約束事を理解し、プレーできれば問題ないと思います。
Q、攻撃力のある神戸を森重選手はどのように分析していますか。
A、神戸の強みは大迫選手と武藤選手の攻撃力です。その2選手をはじめ、相手攻撃陣に自由を与えないこと、局面で負けないことが一番求められていると思います。
Q、クラモフスキー監督が就任後、森重選手自身が守備面で求められていることはありますか。
A、特に難しいことをしているつもりはありませんし、守備をするうえで当たり前のこと、チームとしての約束事を守ることで、隙のない守備が構築されると思っています。やるべきことをプレーで示しつつ、プラスアルファとして各選手の良さや特長を出すことで、もっと良いチームになっていくと思います。
Q、今節のホームゲームは森重選手自身、数々の思い出が詰まった国立競技場が舞台となります。
A、国立競技場の試合を振り返ると、良い印象しかありません。リーグ前半戦は神戸に2-3と負けているので、リベンジするには最高な舞台だと思っています。
<長友佑都選手>
Q、横浜F・マリノス戦で勝ちに届かなかった要因と試合の手応えを教えてください。
A、成熟度の差を感じた試合でした。ビルドアップやポジションの取り方、連動したカバーの動きなど、細かい部分ではありますが、横浜FMと東京の違いをピッチ上で感じました。ですが、選手の能力やクオリティで負けたとは感じていませんし、横浜FMのように優勝争いができる選手が東京には揃っていると思います。冷静に試合を振り返ると、両チームのチャンスシーンで、個人の能力任せではなくチームとしてシュートに持ち込む回数が横浜FMの方が多くありました。僕らもチャンスを多く作ることができた試合ではありましたが、どちらかというと個人の能力でこじ開けたシーンが目立ちました。“成熟度”があるがゆえにボールを回され、それがボディブローのように僕らを疲弊させました。
Q、一つでも順位を上げていくためにはチームとしての成熟度が重要ということですか。
A、とても重要だと思います。選手個々の能力はJ1リーグで優勝争いできるトップレベルの選手が揃っています。攻守において細かい部分を突き詰めること、連動すること、判断力を高める必要があると思います。
Q、試合を重ねるごとに長友選手のパフォーマンスが高まっている印象です。
A、日々のトレーニングから負荷をかけて練習できています。それは、チームトレーニングもそうですが、自分の長所を高める練習を重ねられていることが要因だと思います。今までは、夏場の蒸し暑さもあり、リカバリーに重点を置いていました。今は、リカバリーはもちろんですが、長所を伸ばすトレーニングの回数を増やしています。例えば、疲労が取りづらくなってしまい、疲れを取りたいがゆえにリカバリーに重点を置き過ぎるとフィジカルコンディションが高まらないなど、年齢的な部分が良くない方向に導いていた時期もありました。自分のなかの比重を練習の強度を高める方向に振っていることが今のパフォーマンスに繋がっていると思います。
Q、今節は戦友の大迫選手や武藤選手が在籍するヴィッセル神戸との対戦です。この一戦に懸ける意気込みを教えてください。
A、僕自身のコンディションも良い状態ですし、そのなかで神戸のストロングポイントでもある武藤選手、大迫選手、酒井選手と対戦できることはとても楽しみです。彼らとのマッチアップは非常に楽しみですし、まるで海外の試合を観ているかのようなバチバチした熱く激しい試合で東京に勝利を届けたいと思います。リーグ前半戦の対戦では非常に悔しい試合となってしまいました。心の中の燃え盛る炎のような熱い想いが、自分を奮い立たせてくれています。
Q、ここまで負けのない国立競技場であらためて“強い東京”を取り戻したいですか。
A、国立競技場では負ける気がしないくらいの雰囲気を感じますし、モチベーションも高まります。国立競技場で現在好調の神戸を相手に戦えることはとても楽しみですし、僕らはホームですので勝利を届ける強い気持ちでこの試合に臨みたいと思います。