<前節・ヴィッセル神戸戦のレビュー>
トーキョーの国立男は健在だった。
アディショナルタイムに突入した後半45+2分に追い付かれる展開。新装した国立競技場で負けなしを誇っていた東京に暗雲が垂れ込める。
後半も早い時間から後方に人員を割き、1点のリードでクロージングに入っていたため、いざ勝ち越しを狙おうにも前に出ていく推進力が出づらい。インターセプトを狙ったボールが相手につながり、逆襲を食らうシーンもあった。
オープンな速攻の応酬のなかで、東京にも神戸にもゴールが転がり込んでおかしくない展開。その暗雲は一瞬の雷光によって切り裂かれた。
アディショナルタイム13分の大半を消化した後半45+10分。左サイドに大きく開いた浅い位置でアダイウトン選手がボールを受けると、即座にボールを前に、中に、ゴールに向けて運びはじめる。
目前には神戸守備陣の二重三重の壁が立ちはだかっていたが、雷のごときスピードで突進してくるアダイウトン選手を前に神戸のディフェンダーはボールに触ることすらできず、ふたりのディフェンダー間を抜けた後には三人目の刺客がブロックに入ってきたものの、その身体ごと押し込むような強烈なシュートをゴールへと叩き込んだ。
青々としたピッチを切り裂く霹靂のごとく。電光石火の勝ち越しゴールが東京に生まれた。
ドラマはこれでは終わらず、結果的には新装の国立競技場で初めて勝利を逃す形にはなった。しかし、国立男の一撃は「負けなしの国立」を夏の夜に残してくれた。
<試合プレビュー>
東京はここ2試合、後半アディショナルタイムの失点で悔しい想いをしている。横浜F・マリノスにはアウェイで1-2で競り負け、前節は国立競技場でヴィッセル神戸を相手に追いつかれてしまった。神戸戦を振り返り、小泉慶選手は「勝てそうで勝てなかった。自分だけじゃなく、東京に関わる全員がすっきりしない悔しい引き分けだった。負けてはいないが、負けたようなダメージがある」と唇をかんだ。
今節のリーグ戦を皮切りに、アビスパ福岡とは3連戦が続く。まずは初戦に勝利し、続くルヴァンカップ準々決勝へと弾みをつけたいところだ。小泉選手は「この悔しい思いを晴らすには勝つしかない。3連戦の初戦で勝てれば、良いイメージを持ったままルヴァンカップも迎えられる。ホームのアドバンテージを使ってここで勝ちたい」と必勝を期す。
東京にとって福岡はここ3シーズンで7回対戦し、3分4敗(ルヴァンカップを含む)と分が悪い相手。この3連戦でこれまでの悪いイメージを払拭するためにも、今節が重要な一戦となる。シーズン終盤戦に向けて、東京の熱い戦いは続く。
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[ピーター クラモフスキー監督インタビュー]
Q、アビスパ福岡は直近の対戦で相性が悪い相手です。どのように戦いますか。
A、私は後ろを振り返る人間ではないので、今日、明日がどうなっていくかにフォーカスを当てています。もちろん、福岡の監督が良い仕事をしていることをリスペクトしたいですし、タフな相手だと考えています。彼らとの対戦を非常に楽しみにしています。持っているすべてを出し尽くして勝点3を奪うだけです。
Q、長谷部監督が就任してから、福岡に大きなスタイルの変更はないという印象ですか。
A、チームとしての戦い方が明確です。効率良く戦う素晴らしいチームです。相手へのリスペクトを持ちつつ、試合に向けて良い準備をして臨みたいと思います。
Q、福岡の堅い守備を崩すことに直近の数試合では苦戦しています。
A、我々にとっては良いチャレンジになると思います。得点を奪うためにタフに戦い、すべてを出し切る準備ができています。同じチームとの3連戦は、独特な状況ではありますが、それぞれの試合で勝点3を奪うこと、ルヴァンカップで次のステージに進むことが我々にとって重要です。この3連戦では色々なことが起きてしまっても良いように、すべてに対応できる準備を進めています。東京のフットボールを発揮できるように、ファン・サポーターのみなさんのために、すべてを出し切ります。
Q、前節のヴィッセル神戸戦では、松木玖生選手が復帰し、右サイドバックに小泉慶選手が入るなど、選手層の厚さを感じましたが、いかがですか。
A、選手たちはハングリー精神を持って、日々のトレーニングから向き合ってくれています。その気持ちをチームとして全体的に押し上げていきたいと思います。良い練習ができていますし、週末の試合で、選手たちが力を発揮してくれることが楽しみです。
Q、試合終盤のシステム変更に課題が残った2試合となりました。どのように改善していきますか。
A、ここ最近の試合で終盤に守備の枚数を変更しています。改善しなければいけませんし、ここからさらに進化していくと思います。チーム、選手それぞれの進化のどちらも重要です。継続して磨きをかけていきたいと思います。我々が試合終盤のシステムを使いこなすことができれば、さらに良いチームになっていくことでしょう。守備の部分も大切ですが、もっと攻撃的なプレーやゲームをコントロールする戦い方について、使いこなすこと、進化すること、チームとして共通理解を深めること、一つひとつ進歩していくことが重要だと思います。
[選手インタビュー]
<小泉慶選手>
Q、前節は、後半アディショナルタイムに勝ち越しながら追い付かれて2-2のドローに終わりました。どのように振り返りますか。
A、選手全員もそうですし、ファン・サポーターのみなさん、東京に関わるすべての人が、負けたかのようなダメージを受けたといいますか、“もったいない”というところに尽きると思います。誰がどうこうではなく、チームとしても個人としても、細かいことを言えば課題はたくさんあります。僕個人でいえば、失点する直前のプレーでスライディングをするかしないかで迷い、少し中途半端なプレーになってしまいました。例えば、そのシーンで大胆にスライディングして外に逃げておけば…などもちろん結果論ではありますが、細かいところを突き詰めていきたいと思います。チームとしてあのような試合で勝ち切れないことが、今の順位に表れています。ですが、現実をしっかりと受け止め、リーグ戦残り9試合とルヴァンカップのタイトルを懸けて、みんなで高めていきたいと思います。
Q、横浜F・マリノス戦、ヴィッセル神戸戦は悔しい結果に終わりましたが、一方で、チームとして良くなりつつある手応えは感じていますか。
A、リーグ戦上位のチームと続けて戦いましたが、何もできなかったかというと違うと思いますし、2試合とも勝てるチャンスはありました。ですが、結果を見ると2試合とも勝てていません。上位陣が相手でも高い強度でプレーできている時は自分たちのリズムでサッカーができていると思いますし、そこはどの試合も継続していきたいです。上位にいる横浜FMと神戸との“少しの差”を痛感しました。
Q、プレー強度という点では、小泉選手はチーム内でも運動量が多く、激しく戦っている印象があります。
A、順位表を見ると、何も満足できていません。個人としては、特にボールを奪い切るプレーです。ボールホルダーに強く行くことができていても奪い切れない時があります。1対1の局面でしっかり奪い切ること、守備だけではなく攻撃も、相手を剥がすプレーなど、“個の力”が重要になると思います。もちろんチームスポーツなので、組織的なところもありますが、一人ひとりが個の力で負けなければ、チームとしてもそう簡単には負けないと思います。もっともっと、個々を高めていく必要があると思います。プレー強度、攻撃についても、しっかり自分にベクトルを向けていきたいです。
Q、アビスパ福岡が2021シーズンにJ1リーグに昇格後、7度対戦して公式戦3分け4敗です。小泉選手としてはどのような点がポイントになると思いますか。
A、相性やイメージの悪いチームとの対戦では、ゲームの入り方に関してより一層集中する必要があります。福岡は強度の高いプレーとある程度割り切ってプレーする場面も見られますし、ボールを持てる選手や運んで攻撃の起点を作る選手も多いので、セカンドボールの回収や空中戦のバトルが肝になると思います。その局面でしっかりと勝ち、自分たちがボールを持つ時間が長くなれば、自然とリズムも出てくると思います。ゲームの入り方を間違えなければ、必ず良いゲームになりますし、勝利に繋げたいと思います。
<エンリケ トレヴィザン選手>
Q、直近の2試合、上位チームと対戦しましたが、どのような手応えと課題を感じていますか。
A、2試合とも、現在のリーグ戦で優勝候補の相手でしたし、難しい試合だったと思います。残念ながら勝つことはできませんでしたが、試合内容に関しては決して悲観する内容ではありませんでした。すべてが得点に繋がったわけではありませんが、多くのチャンスを作ることができました。この2試合で勝てなかったことは残念ですが、下を向かず、アビスパ福岡戦を含め、次の試合に向かっていきたいと思います。
Q今節からリーグ戦とルヴァンカップを含め、福岡と3連戦になります。福岡にはどのような印象を持っていますか。
A、リーグ戦では私たちより上の順位にいますし、天皇杯、ルヴァンカップのそれぞれで勝ち進んでいる非常に調子の良いチーム、良い成績を残しているチームだと思います。福岡との対戦では、非常に難しい試合をいつも強いられている印象ですが、今のチーム状況は決して悪いわけではないので、良い練習を積んで、週末、そしてその先の試合に向かっていきたいと思います。
Q、クラモフスキー監督になってから意識していることはありますか。
A、まずは出場機会が増えたことを嬉しく思っています。その反面、強い責任を感じています。もちろんこの先、自分のウィークポイントを修正したり、ストロングポイントをより強くしたり、成長していきたいと思います。チームの勝利に貢献できるよう、試合に出続けていくことが重要です。東京には素晴らしい選手が多く在籍しています。試合出場の確約はありませんので、さらに練習を積んでレベルアップしていきます。
Q、リーグ戦も残り9試合です。終盤に向けてどのようなパフォーマンスを見せたいですか。
A、残念ながら、今の結果や順位は私たちが望んでいるものではありませんが、ここから先は1試合でも多く勝ち、一つでも上の順位を狙っていきたいです。そして、1試合でも多くファン・サポーターのみなさんと喜びを分かちあいたいと思います。