<マッチレビュー>
J1リーグ、ルヴァンカッププライムステージ準々決勝と続く対アビスパ福岡3連戦。3日前に行われたJ1リーグ第26節では、前半早々に2点を奪われて追いかける展開を強いられ、終盤に1点を返したものの1-2で敗れた。
残る2戦は大会が変わり、ホームとアウェイの2試合で勝敗を決する。第1戦は東京のホーム味の素スタジアムでの一戦。中2日でホームでの連戦となり、リーグ戦の悔しさを晴らしたい一戦となった。
1stHALF—一瞬の隙を見逃さずアダゴールで先制
立ち上がりは福岡の勢いを受けて自陣でプレーする時間が続いたが、センターバックから丁寧にビルドアップし、相手の陣形を見てスペースを活用して素早い攻撃で反撃に出る。
試合の流れがまだどちらにも傾かないうちに東京が試合を動かす。前半16分、福岡の背後に流し込んだボールにアダイウトン選手が反応してドウグラス選手とのマッチアップ。ドウグラス選手が先にボールに到達して頭で戻すが、ゴールキーパーがボールを後逸。勢いのままボールを追ったアダイウトン選手がゴール前にこぼれたボールを詰めてゴールに流し込んだ。
マイボールをしっかりと保持して相手の勢いをいなす東京。前半23分にはペナルティエリア外左寄りの位置でボールを受けた原川選手が一旦ルックアップ。相手が寄せてこないと見るや右足を振り抜くと、鋭いミドルシュートがゴール左上隅を捉える。これは相手ゴールキーパーの好守に阻まれたが、東京が流れの中で相手の隙を逃さずにチャンスを創出した。
前半の終盤に入ると福岡に押し込まれる場面が目立ってくるが、守備陣形を下げ過ぎずにボールサイドにチャレンジして撥ね返し続ける。前半45+1分に強烈なミドルシュートを打たれたシーンでは、スウォビィク選手がゴール左隅へ飛んだボールに鋭く反応して枠からはじき出した。
2ndHALF—先勝して第2戦へ
後半のスタートから3枚の交代カードを切った福岡が勢いを持って前に出てくるが、東京もコンパクトな陣形を維持してスペースを作らずにフィニッシュに持ち込む場面は作らせない。
奪ってからはシンプルに前線を使ってカウンターを繰り出し、重心が前になっている福岡陣内のスペースを活用して攻め込む。後半15分には長友佑都選手からボールを預かったアダイウトン選手が左サイドのスペースを駆け上がると、勢いのままペナルティエリア内に侵入してシュートを放つが、これは間合いを詰めた相手ゴールキーパーにブロックされた。
後半も中盤を過ぎてからは交代カードを切りながら主導権を握りにかかる。後半30分にはアダイウトン選手に代えて仲川輝人選手を、東選手に代えて渡邊凌磨選手を、塚川選手に代えて寺山翼選手をピッチに送り込む。後半35分には白井選手に代えてバングーナガンデ佳史扶選手を投入した。
終盤に入ると押し込まれる場面が増えてくるが、守り切る姿勢で戦うのではなく、マイボールをしっかりと前線につなぎ、運び、追加点を狙って攻撃に出る。アディショナルタイムに入ってもアグレッシブな姿勢を貫き続けた東京。1点のリードをキープし、先勝して第2戦に準決勝進出の望みをつないだ。
MATCH DETAILS
<FC東京>
STARTING Ⅺ
GKヤクブ スウォビィク
DF小泉慶/森重真人/エンリケ トレヴィザン/長友佑都
MF塚川孝輝(後半30分:寺山翼)/東慶悟(後半30分:渡邊凌磨)/原川力
FW白井康介(後半35分:バングーナガンデ佳史扶)/熊田直紀(後半45+2分:土肥幹太)/アダイウトン(後半30分:仲川輝人)
SUBS
GK児玉剛
FWペロッチ
GOAL
前半16分:アダイウトン
<アビスパ福岡>
STARTING Ⅺ
GK永石拓海
DF湯澤聖人/ドウグラス グローリ(後半0分:奈良竜樹)/田代雅也/宮大樹/亀川諒史(後半35分:前嶋洋太)
MF田中達也(後半0分:佐藤凌我)/平塚悠知/森山公弥(後半0分:井手口陽介)
FW鶴野怜樹(後半20分:ウェリントン)/金森健志
SUBS
GK村上昌謙
MF紺野和也
GOAL
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[ピーター クラモフスキー監督記者会見コメント]
Q、試合を振り返ってください。
A、全体的にパフォーマンスは良かったと思います。そのなかで選手たちは素晴らしいものを出してくれたと思いますし、勝利をしっかりとつかんでくれました。前半に関してはすごく良い部分を出せていたと思いますし、後半も堅くプレーできていたと思います。選手たちが献身さ、そして自分たちの特長をしっかり出してくれて、勝利に値するパフォーマンスだったと思います。
Q、今日は3バックを採用していましたが、その狙いはどのあたりにありましたか。
A、自分たちの今の状況に合ったプレー、現状に合わせたプレーができたと思います。選手たちがしっかりと一つひとつやり切ってプレーしてくれて、すべて出し切ってくれました。先ほども言いましたが、前半は素晴らしいものを出せていました。そのなかで、まだまだ磨きをかけなければならない部分もありました。重要なことは、ここからまずはしっかりとリカバリーすること。そしてまだハーフタイムですので、アウェイで勝利を掴みに行きたいと思っています。
Q、アビスパ福岡との3連戦の2試合目となりましたが、やりづらさなどはありましたか。
A、ユニークな状況ですが、先を見過ぎずに次の試合に向けた準備を正しくやることが大切です。たしかに難しい部分もありますが、今日選手たちが出してくれたパフォーマンスは、とても質の高いものでした。そして彼らはこのクラブに対する想いやキャラクターをしっかり出してくれました。選手たちこそ褒められるべきですし、彼らは勝利に値すると思います。
Q、連戦としては3戦目、ルヴァンカップ準々決勝第2戦に向けた意気込みをお願いします。
A、どこが相手でも、自分たちがしっかりとプレーすることが大切です。3連戦ということで相手のやり方はお互い分かっていますし、我々は自分たちのところだけに焦点を当てて、自分たちが良いパフォーマンスを出せるように準備をしていくだけです。まだハーフタイムです。タフなアウェイの試合になると思いますが、そこで勝利を掴みにいきます。
[選手インタビュー]
<エンリケ トレヴィザン選手>
Q、無失点での勝利でした。
A、今日は厳しい試合になると思っていました。相手のプレースタイルに備えて、無失点で試合を終えることができて、非常に嬉しいです。
Q、ディフェンスラインが普段と違う3枚の形でしたが、守り方の部分で意識した点を教えてください。
A、前回の試合と比べて試合に挑む姿勢が大きく違ったことが良かったと思います。システムを変更したことで、良い形で守ることができました。アビスパ福岡でのアウェイの試合が残っているので、きちんと勝って次のステージに進みたいと思います。
Q、日曜日のリーグ戦ではかなり苦しい展開で負けたなか、短い準備期間で今日の試合を迎えました。前回の試合と比べて大きく改善できた点は何でしょうか。
A、試合開始直後からしっかり集中して試合に入れた点が、今日の勝利に繋がったと思います。
Q、後半にウェリントン選手や佐藤凌我選手が投入されて、守備の時間が増えたと思います。守備の選手同士でどのようなコミュニケーションを取っていましたか。
A、長友佑都選手ともスペイン語で意思疎通ができますし、森重真人選手とは何度も試合を一緒に戦っています。うまくコミュニケーションを取りながら、良い距離感で強度を高く保つことができました。
<原川力選手>
Q、移籍後初スタメンで勝利に大きく貢献されました。90分の振り返りをお願いします。
A、カップ戦ですので、チームとしてまずは手堅く戦おうと話していましたし、3日のリーグ戦では開始早々に失点を喫していましたので、その点を整理して試合に臨むことができたと思います。アダイウトン選手、熊田直紀選手に、割り切ってロングボールを最初の時間帯は入れていこうと話していたので、共通認識を持ち意図を汲んだプレーがアダイウトン選手の得点に繋がりました。チームとして大きな手応えも得られたと思います。
Q、中盤の低い位置で守備のケア、攻守のバランスを取るプレーが見られました。意識していたことがあれば教えてください。
A、相手は僕がボールを持った時にあまり積極的にボールを取りにくることもなかったので、フリーでボールを受けるシーンが多くありました。相手のフォーメーションやプレスのかけ方を見ながら前半はプレーできていたと思います。試合全体をとおして、攻撃に積極的に関わるというよりは、全体のバランスを取る、流れを読む、前線と守備陣の繋ぎ役としてプレーしました。低い位置から前線の選手にボールを送るためのポジショニングをとくに意識しました。
Q、得点後は守備にまわる時間が長かったと思います。追加点を奪うためにチームとしてどのような課題がありますか。
A、得点後は、どちらかというと守備に重きを置くプレーが目立ってしまいました。もちろん、失点をしないために守備的なプレーは重要ですが、2点目を奪うという意識の比重を、チームとしてもう少し増やすことがポイントになると思います。
Q、以前、“もう少しボールに触る時間を増やしたい”と試合後におっしゃっていましたが、その点はいかがですか。
A、徐々にボールを受ける回数、触る回数は増えてきていますし、時間を重ね、僕のプレースタイルを理解してくれている実感があります。リードしている時間帯に、さらに勇気を持ったプレー、割り切って守備に徹するプレーのバランスが取れれば、もっと良いチームになっていくと思います。
Q、中3日で準々決勝の第2戦が控えています。勝率の悪いアビスパ福岡のアウェイ戦に向けた意気込みをお願いします。
A、東京がアウェイ福岡で勝率が悪いという話は聞いていますが、良い意味で僕はそれを知りません。むしろ、僕個人としてはベスト電器スタジアムでは良いイメージが多くあります。今日の試合で、1-0で勝利したことで、福岡はさらに勢いを持って臨んでくるでしょうし、第2戦の立ち位置、カップ戦ということを考えて試合に臨みたいと思います。
<白井康介選手>
Q、久しぶりのスタメン出場でした。試合を振り返ってください。
A、J1リーグ第24節の横浜F・マリノス戦では僕自身のミスで失点し、負けてしまいました。信頼を一から取り戻さないといけない状況にあったと思いますし、身体を張って守ること、走り抜くことをプレーで示すことができたと思います。ここから一歩一歩、信頼を取り戻していきたいと思います。
Q、左サイドの位置がスタートポジションでした。これまで右サイドでプレーする回数が多かったなかで意識したことを教えてください。
A、3日のアビスパ福岡戦では相手の背後を取るプレーの回数が少なく、対峙する形が目立ちましたし、その局面で奪われてしまい相手の攻撃を受けるシーンが多くありました。自分の特長であるスピードをうまく活かし、今日は積極的に背後をとることを特に意識しました。相手のディフェンスも嫌がっているように見えました。
Q、左サイドでうまい位置取りをして、攻守において相手のプレーを抑制するシーンも見受けられました。
A、東慶悟選手、長友佑都選手と良い関係でコミュニケーションをとりながらプレーできていました。東選手が長友選手と僕の間に生まれるスペースにうまく顔を出してくれて、サポートを受けながらプレーできていました。
Q、3日の福岡戦から修正できた大きな要因を教えてください。
A、立ち上がりから相手が嫌がるプレーをチームとして表現できたことだと思います。前回の試合では球際で負けるシーンも多くありました。それぞれの局面で勝利できたことが、僕たちに流れを引き寄せた要因だと思います。
<バングーナガンデ佳史扶選手>
Q、5月24日セレッソ大阪戦以来の出場となりました。
A、約4カ月ぶりの公式戦出場だったので、とても新鮮な気持ちでした。味の素スタジアムに到着するまではいつも通りでしたが、ウォーミングアップでピッチに入ると、帰ってきたんだなと実感が湧いてきました。
Q、長いリハビリ期間でしたが、どのような準備をしてきましたか。
A、日本代表での膝での怪我から始まり、足首の怪我もしてしまったので、怪我を防ぐために身体の動き方を見直すトレーニングに取り組みました。多くの方の支えがあり、4カ月間を乗り越えピッチに立つことができました。この日を楽しみに4カ月間やってきていたので、今日はその想いをぶつけました。ここからが改めてスタートだと思います。
Q、怪我をした後に監督が代わり、怪我をする前と復帰した時では戦術など異なることも多くあったと思います。練習試合などを通してどのようなことを意識して取り組みましたか。
A、怪我をしている間に監督交代があったので、外からどのようなサッカーをしているのか見てきていました。今日はこれまでと違うポジションでしたが、サイドの攻防で負けてクロスを上げられないように意識していました。監督の指示を全うすることを意識しました。
Q、途中出場となりましたが、どのようなことを意識して出場しましたか。
A、良い流れで試合ができていたので、その流れを崩さないように、またさらに勢いをもたらしたいと思っていました。勝っている状況でラスト10分の出場だったので、まずは守備を固めることを特に意識していました。
Q、次節の結果次第では、準決勝進出となります。第2戦に向けての意気込みをお願いします。
A、ルヴァンカップのプライムステージは180分で1試合だと思っています。まだ前半が終わっただけなので、第2戦で結果を残さなければ、今日の勝利も意味がなくなってしまいます。今シーズン、リーグ戦のアウェイでは負けてしまっているので、短い時間ですが次の試合で勝てるようにしっかりと準備して、必ず勝ちたいと思います。