<前節・サガン鳥栖戦のレビュー>
クラブ設立25周年を祝福する1か月が華々しく幕開ける…はずだった。
迎える相手が8試合連続で敗れているサガン鳥栖ということで、確かに嫌な予感がないわけではなかった。しかし、クラブにとって重要な節目の時に、ジンクスだの苦手だの言っていられる状況ではない、というのはピッチに立つ選手たちも十二分に理解していたはずだ。
にもかかわらず、立ち上がりから鳥栖の勢いに押され、崩し切られたわけではないのに2点を失って試合を折り返した。
ロッカーへと引き上げていくチームに投げかけられた厳しい声は、25周年を勝利で祝いたいファン・サポーターの期待の裏返し。挽回し、逆転し、東京の意地を見せてほしいという青赤の魂の叫びだった。
その叫びが、青赤の選手たちに火を点けた。
後半のキックオフ。前半は自信なさげに見えた25周年記念ユニフォームの青赤が躍動した。
サイドにボールを集めて相手陣内深くまで侵入していき、クロスボールやポケット(ペナルティエリア内の左右サイドのエリア付近)を狙った動き出しで鳥栖の守備をかく乱していく。スコアを振り出しに戻した二つのゴールは、いずれも左サイドバックのバングーナガンデ佳史扶選手のクロスボールが起点になった。
こうなれば勢いは東京のもの。ジンクスや苦手意識など忘却の彼方へ追いやり、鳥栖ゴールへと一気呵成に攻め込んでいく。
最後に仕留めたのは、アカデミーで育ってきたルーキーだった。
ルーキーながら開幕戦で登録メンバー入りし、早くも第2節でプロデビューを果たすと、リーグ戦で22試合の出場機会を得て急激な成長曲線を描いてきた。開幕前のキャンプで見せたドリブルでの仕掛け、フィニッシュに持ち込む積極性、決定的な仕事に関わる高いパフォーマンスは、実際に公式戦のピッチでも随所に見られた。
あと一歩という惜しいシーンも数多くあったが、周囲は結果よりもその堂々としたプレーぶりを評価してきたように思う。しかし、本人は違った。試合後のミックスゾーン、チームが勝利しようとも、仕留めきれなかった反省の弁が止まらない。ルヴァンカップのプライムステージではピッチに立てない悔しさも味わった。
そんな貪欲な男が生んだ25周年を記念する試合の決勝点。俵積田晃太選手が運んできた歓喜は、これまでの歩みを祝うだけでなく、東京の未来も照らすものになったはずだ。
<試合プレビュー>
前節はサガン鳥栖を相手に前半で2点をリードされながら、後半に3得点を挙げて逆転勝利を飾った。その要因となったのは、後半の大胆な作戦だ。センターバックの森重真人選手がポジションを前に上げ、相手のトップ下をマンツーマン気味に抑え込んだ。鳥栖の前線と東京の最終ラインが同数になるリスクの高い方法だったが、個々の選手がひたむきに戦い抜き、劇的な逆転に繋げた。
森重選手は試合中の戦術変更について「追い込まれてから一人ひとりがリスクを取ったプレーをやり出したことが良いほうに転んだ。ハイリスク・ハイリターンだったが、歯車がかみ合ったと思う」と自信を深めている。
今節はクラブ誕生から四半世紀を祝う日に、ガンバ大阪とホームの味スタで対戦する。長友佑都選手はこの記念試合を前に「FC東京はクラブ設立から25年という年月を積み重ねてきた。その間にたくさんの先輩方が歴史を紡ぎ、たくさんのファン・サポーターに支えられてきた。その想いや誇りを感じさせるような熱い試合にしたい」と意気込む。ひたむきに、最後まで諦めない青赤の伝統をこの一戦で体現する。
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[ピーター クラモフスキー監督インタビュー]
Q、週の初めからガンバ大阪戦を想定したトレーニングを重ねているように見られました。
A、今は、もっと良くしていくためにどうすべきか、どう改善すべきか、自分たちがどのようにして戦うかを考えています。今週は高い強度で非常に良いトレーニングを積み重ねることができました。しっかりと成果も出はじめている実感もありますし、良い方向に進んでいると感じています。
Q、攻守両面にフットボールの要素が詰まったトレーニングでした。
A、連携を深め、共通理解をうまく持ってプレーすることが重要です。攻守において、多くのパターンをこれまでに積み重ねることができています。前節のサガン鳥栖戦では後半に我々の持っているものを良い形で表現してくれましたし、ここからさらに成長する必要があります。今週のトレーニングをとおして、チームとしての発展を感じました。しっかりと試合で表現できるようにしていきたいと思います。
Q、積み重ねてきたものが試合で表現できている手応えを感じていますか。
A、攻撃だけではなく、守備もしっかりと精度を高めていきたいです。木曜日の練習では、守備の決まり事を全体で共有しました。全てのパフォーマンスを高いレベルで出し切ることにフォーカスしています。
Q、今節対戦するガンバ大阪の印象を教えてください。
A、非常に素晴らしいチームですし、我々に色々な試練とチャレンジする瞬間を与えてくることでしょう。そのようなチームに対してしっかりと戦える準備をするだけです。我々が投げかけた問題を相手に解決させる展開になるように、ガンバ大阪に対して積極的に仕掛けていきたいと思います。鳥栖戦の後半のような試合運びが望ましいですが、フットボールに完璧はありません。良いパフォーマンスを出す時間をできるだけ長くするために、厳しい時間帯をチーム全体で乗り越えていきたいと思います。
Q、10月1日はクラブが25年前に設立された日になります。記念すべき日にホームで試合ができることをどのように感じていますか。
A、東京にとって10月1日は特別な日です。その特別な日にスペシャルなパフォーマンスを出せるようにしたいと思います。これまでクラブに携わった方々、ファン・サポーターのみなさんが、あらためて東京というクラブに誇りを持ってもらえるようなワクワクする試合をお届けしたいです。そして、勝利をプレゼントしたいと思います。
[選手インタビュー]
<バングーナガンデ佳史扶選手>
Q、前節のサガン鳥栖戦はバングーナガンデ佳史扶選手の活躍もあり、勝利を手繰り寄せました。
A、怪我から復帰後初のリーグ戦でスタメン出場し、結果を残せたのは、チームとしても個人としても大きな手応えを感じています。
Q、アシストのシーンを振り返ってください。
A、アダイウトン選手と目が合って供給したクロスではありましたが、日頃の練習からあのようなクロスを積極的に上げていたので、ゴール前にいた選手たちも練習のようなボールが入ってくるだろうな、と飛び込んできてくれました。アダイウトン選手とは、練習からお互いにトライして確認しながら良い連携が取れています。鳥栖戦の前半は守備の部分で僕がアダイウトン選手をコントロールしきれなかったので、ここからの試合に活かしていきたいと思います。
Q、鳥栖戦の前半30分間は課題が多く残ったと感じていますか。
A、後半のサッカーを前半からなぜできなかったのか、と今週は選手間で色々と話し合っているところですし、守備がハマらない時間帯でどのように修正していくかがチームの課題です。チーム全員の意識を同じにしなければ、一人ひとりがバラバラになってしまい、後手に回ってしまいます。守備の入り方がうまくできれば、ガンバ大阪戦も鳥栖戦の後半のようにチームとしてアグレッシブなプレーが表現できると思います。
Q、復帰して2試合目だからこその意気込みはどうですか。
A、前節はアシストでチームに貢献できましたが、仮にあの試合で勝利できていなければ、アシストも意味がないと思っていました。あのように勝利できた次の試合こそが大事だと思っています。ガンバ大阪には前回対戦で負けていますし、絶対に勝ちたいです。個人どうこうではなく、結果にこだわって勝つことにフォーカスしていきたいと思います。
<原川力選手>
Q、前節のサガン鳥栖戦では前半と後半で全く異なる試合展開になりました。前節の振り返りをお願いします。
A、どのような試合でも流れが悪い時間帯は必ずあります。その時間帯でいかに失点をゼロに抑えながら試合を進めることができるかどうかが重要です。鳥栖戦の後半のようなサッカーを毎試合90分間表現することは、あまり現実的ではないと思います。チームの流れが悪い時に、しっかりと守り抜くことができれば、自分たちの流れが徐々に生まれてくる。我慢できる場面でしっかりと耐えた先に、自分たちの流れが生まれてくると思っています。
Q、“我慢”というワードが出ましたが、前節の鳥栖戦ではまさに前半の30分間で我慢が必要だったということですか。
A、鳥栖のスタイルとして、前半の入りが非常に良いチームということは過去に在籍した経験上、分かっていました。サッカーは相手ありきのスポーツですので、相手の戦い方をうまく受け入れながら、うまく我慢しながら戦うことが重要です。鳥栖戦は後半だけで3得点を生み出すことができましたし、前半の失点がなければ3-0で勝利できた試合です。相手に得点を許さない時間を長くすることが必要だとチーム全体で意思統一しながらプレーしていきたいです。
Q、チームとして流れの悪い時期が続きましたが、鳥栖戦の勝利が良いキッカケになりそうですか。
A、相手に得点を許してしまうとピッチ内のテンションが一つ下がってしまうような印象を受けていたので、鳥栖戦のような逆転勝利はチームとしての成功体験に繋がると思いますし、大きなキッカケになると思っています。試合展開に左右されるのではなく、自分たちにフォーカスすることが大切です。
Q、今節対戦するガンバ大阪の印象を教えてください。
A、ボールを回すことに長けている印象です。相手の動きを見ながらボールを回し、主導権を握るチームだと思います。強度の高いプレーで相手の流れや勢いを飲み込むことがポイントですし、仮にうまくいかない時間が続いたとしても、集中を切らすことなくプレーしたいと思っています。
Q、今節を含めて、今シーズンもラスト6試合となりました。終盤戦の意気込みを聞かせてください。
A、シーズンの終わり方は次に繋げる意味でも大事だと思っています。最後まで結果にこだわりたいですし、チームはもちろん自分自身にも集中して、毎試合良いプレーができるようにやっていきます。最後まで応援よろしくお願いします。
<ディエゴ オリヴェイラ選手>
Q、サガン鳥栖戦は前半と後半で全く別のチームを見ているような展開でした。
A、前半は非常に悪い試合運びをしてしまいました。後半を迎えるにあたり、ロッカールームで戦術的な修正を加え、強い気持ちで臨もうと選手間で話し合いました。2失点した苦しい前半から、後半は同点、逆転と得点を重ねられたことを嬉しく思いますし、気持ちの部分が試合を良いものに変えたと思います。前半の出来が悪く、うまくいっていないことは、ピッチ内にいる選手たちも当然分かっていました。メンタリティの部分で後半は相手に勝っていましたし、早い時間で得点が生まれたことでチームに勢いがついたと思います。
Q、あと1ゴールで、東京での最多タイ記録となるリーグ戦14ゴールに並びます。今シーズン、ここまで調子を伸ばすことができている要因を教えてください。
A、昨シーズンは怪我の影響もあり、自分が思い描いたようなプレーもできず、得点も積み重ねることができませんでした。記録としての最多ゴールは14得点ですが、今シーズンは残り6試合もあるので、多くのゴールを重ね、私自身の記録を更新したいと思っています。今シーズンも残りの試合が少なくなってきました。私たちが持っているエネルギーをリーグ戦が終わるまで、勝利に繋がるようにしっかりと示していきたいと思います。
Q、東京が25年前に設立された10月1日という特別な日に、ガンバ大阪との試合が行われます。
A、クラブとして25周年という節目を迎えるタイミングかつ特別な一戦になると思います。私たち選手もそうですが、スタッフやクラブ関係者、ファン・サポーターそれぞれが特別な想いを持ってこの試合に臨むはずだと思っています。しっかりと気持ちを入れて、勝利を届けられるよう頑張ります。