[2023シーズンレビュー]<br />
ピーター クラモフスキー監督インタビュー(後編)

INTERVIEW2023.12.09

[2023シーズンレビュー]
ピーター クラモフスキー監督インタビュー(後編)

6月に途中就任したピーター クラモフスキー監督は、最終的に7勝3分け7敗の成績でJ1リーグ11位に終わった。首都クラブの再建を託された男が、今シーズンを総括する。


クラモフスキー監督インタビュー(前編)はこちら


人としても、選手としても成長できるはず

Q、質問の方向性を変えますが、監督が選手たちに望むことを教えてください。
A、最大限を出し切るメンタリティを常に持ち続けることです。毎日もっとうまくなってやろうという意欲を持ちながらプレーしてほしい。シンプルな答えかもしれません。では、そうするために何をしなければいけないのか。個として成長しなければいけない。それがチームでのパフォーマンスにもつながっていくと思っています。強度もそうですし、ハードワークのところでも全て出し切らなければいけない。そうすれば発展していくことができると思っています。夢、目標を達成することも考えられるようになると思います。30人の選手とスタッフも合わせて50人で毎日前に進んでいく。クラブのなかで、そうしたメンタリティを全員で共有していく。そうすれば何でも達成できる。私は知っています。なぜ知っているのか? キャリアのなかでそうしたことをベースに戦いながら達成した経験があるからです。一日一日やり切ること、それをもっと改善しながら伸ばしていくことを、全員で一人ひとりがやらなければいけないと思っています。

Q、野澤大志ブランドン選手や、俵積田晃太選手のような若手も積極的に起用しました。
A、野澤選手は本当に良くやってくれています。若くて良いタレントですし、今、伸び盛りの選手です。今後多くの経験を積みながら、もっともっと成長できる選手の一人だと思います。例えば、ゴールキーパーのポジションからどうやってチームを引っ張り、安定させていくのか。それも時間を掛けて学ばなければいけない。俵積田選手は本当に最高の若いタレントだと思っています。私が就任してから最高の仕事をしてくれています。二人の成長をうれしく思っています。ただし、まだ彼らのプレーは伸びるはずです。佳史扶選手もそうです。私が就任した時は怪我をしていました。そこからチームの輪に入ってきて、彼のレベルはまた上がってきています。良い発展のプロセスを踏んでくれていると思っています。松木選手もそうですし、このクラブのために素晴らしい仕事をしてくれています。

Q、そうした若い選手たちの変化を多く感じるシーズンでもありました。例えば野澤選手はシーズン当初は『試合に出たい、成長したい』と言葉にしていましたが、試合経験を積んで『チームのために何ができるか』と、クラモフスキー監督が先ほど話した課題も口にするようになりました。そうした気づきや発見が、彼らの成長を促しているのだと思います。
A、きっとそうだと思います。ここからどう進んでいくのか。今がその過程だと分かっています。ここで、シーズンが終わってしまうのが残念です。今彼らは、こういった場面で何をしなければいけないかということを学んでいる最中です。難しい場面を乗り越えることによって、そこから登って成長を繰り返していく。ただシーズンが終わってしまうので、結果が出なかった悔しさもあります。それをプレシーズンに出し切れるようにしなければいけません。今、野澤選手が学んでいるように、同じことを感じている選手が何人もいます。彼らは人としても、選手としても成長できるはずです。プレシーズンに、そういった今学んでいることをしっかりとチームにもたらして、もっと強いチームを作っていければ良いと思っています。



ピッチ上の11人誰しもがキャプテンである

Q、同時に、長友佑都選手や、森重真人選手のようなベテランの選手が夏場にコンディションを落とすことがなかったのも今シーズン見られたポジティブな点でした。
A、そうですね。彼らは真のプロフェッショナルです。身体を大事にしながら彼らが今何歳だろうと、その最大限を出してくれている。私は就任した時に彼らにも話しましたが、彼らが今までのキャリアのなかで1番走れるようになると話をしました。素晴らしいメンタリティを備え、プロとして一つひとつのこだわりを示してくれている。彼らの強いパフォーマンスは、我々のチームにさまざまなことをもたらしてくれている。最大限の力を出せるように準備をしっかりとすることが重要です。そこから自分が最大限出せるパフォーマンスをして、一人ひとりが最高のシーズンにしなければいけません。それは何歳であっても関係ありません。全選手がやらなければいけないことです。全員でこのクラブのレベルを押し上げて、来シーズンをベストシーズンにする。それができれば何でもできると思っています。

Q、小泉慶選手や渡邊凌磨選手のような中堅選手は非常に悩み多きシーズンを過ごしました。彼らは森重選手や長友選手から年間を通じて「もっとチームを引っ張っていく存在になってほしい」という叱咤激励を受けてきました。その悩みは彼らが次のステップを踏むためには避けては通れないことなのかもしれません。
A,そこも大事なステップだと思います。このチームとクラブにとって、とても大事なところだと思っています。私が常々言っているのは、プレーしている11人が誰でもキャプテンであるということです。全員が腕章をつけて試合を戦っていると思ってほしい。一日で何かが変わるわけではありません。それは一週間でもないです。シーズン半分で変わるわけでもありません。私が就任してからここまでの発展は正しい段階を踏んでいると思っています。ただ、まだやるべきことはあります。来シーズン我々がそれを見せることができるチームになりたい。きっと11人のキャプテンがピッチで戦ってくれるはずです

Q、来シーズンはFC町田ゼルビアとヴェルディが昇格してきます。おそらくロンドンのような首都の覇権争いも熱くなりそうですね。
A、ファン・サポーターが、この東京という地域がとても盛り上がるはずです。ただし、誰が目の前に来たとしても、我々は立ち上がって倒さなければいけない。なぜなら『トーキョーは青赤』だからです。それは、常にそうあるべきです。東京の色は青と赤だからです。


Text by 馬場康平(フリーライター)