[2023シーズンレビュー]<br />
ピーター クラモフスキー監督インタビュー(前編)

INTERVIEW2023.12.08

[2023シーズンレビュー]
ピーター クラモフスキー監督インタビュー(前編)

6月に途中就任したピーター クラモフスキー監督は、最終的に7勝3分け7敗の成績でJ1リーグ11位に終わった。首都クラブの再建を託された男が、今シーズンを総括する。


ファン・サポーターが誇りに思い、ワクワクするようなチームを

Q、今シーズン途中から指揮を執ってきましたが、シーズンを振り返っての率直な感想を教えてください。
A、色々な感情があります。就任当初から良い形を披露することができました。ゲームモデルや、チームに強い基盤を形作りながら、色々な部分で強くしっかりと成長、発展してきていると思います。ただ、まだまだです。自分たちが進化させていかなければいけない部分があります。シーズン終盤の試合で、勝点を失ってしまいました。それを悔しく思っています。ファン・サポーターと喜びを分かち合えなかったことに、自分たちも非常に痛みを感じています。色々な感情があるというのは、そのためです。良い成長を見せてきましたが、結果を出しきれなかった部分もあったと思います。

Q、シーズン途中の就任は非常に難しい仕事だったと思いますが、まず着手しなければいけないと思ったことはどんなところでしたか。
A、何か理由があったからこそ、シーズン途中で就任することになりました。当初は数日間の練習の後に、名古屋グランパスとの対戦が控えていました。自分たちを分析しながら、名古屋のことも考えてやっていかなければいけません。自分たちが夢見たプレーをどうしていきたいかを、毎週毎週発展していけるようにと考えました。複雑な状況の中での途中就任になりましたが、シーズンを通してこうしたチャレンジは起こりうるものです。必要なのは、自分たちのフットボールがしっかりと成長することと、進化していくことです。そこから着手することが大事だと思っています。一つのトピックだけに絞ることはできませんでした。もちろん、フットボールというのは何か一つを取り上げて改善したところで変わるわけではありません。我々がピッチに立った時にファン・サポーターが誇りに思ったり、ワクワクするようなチームをつくりたい。そこに焦点を置いてきました。


Q、さまざまな課題があるなかで、クラモフスキー監督が選手たちに継続して伝えてきたことはありますか。
A、自分たちのゲーム、プレーモデルをもっと良くするためには、毎日のアプローチの仕方をぶれずにやっていかなければいけないと思っていました。チームとしても個人としても、そこを日々やり切っていかなければいけないと話してきました。強いチームになるために、自分たちが手に入れた強い基盤もできてきました。もちろん明確な改善点もあります。


Q、前半戦は26失点を喫していましたが、クラモフスキー監督就任後の後半戦はそれを18失点にまで抑えました。守備の改善はデータにも表れていますが、そうした失点数の減少からもチームを整理できたように思います。
A、今、選手たちはゲームモデルのイメージが明確にできていると思います。ピッチにいる選手一人ひとりが個々で何をしなければいけないか、そのつながりを持ちながらやれるようになってきました。そうした要素が我々の良くなった、改善できた一つだと思っています。後半戦に関しては、クリーンシートを1番多く取れている(アルビレックス新潟、浦和レッズと並んで8試合)。強いチームになるための重要な基盤ができてきたと思っています。そこをもっと伸ばしていきたい。もちろん堅く守ること、相手に何も与えないということも重要になってきます。攻撃の部分でも自分たちのやりたいプレーを改善しながらできるようになってきているとも思っています。自分たちが意図した形で得点を奪い、チャンスを多く作ることもできるようになってきました。オープンプレーのなかからも多く得点が取れています。

特別なチームを作っていくための重要な積み重ね、積み上げというベースは作れていると思っています。チームとして、明確なステップや目に見える成長度合いもあります。対戦相手が止められないようなチームになるために、自分たちが望み、改善しなければいけないギャップをしっかりと埋めながらめざしていければ良いと思います。強い基盤や積み上げは、私がシーズン途中に就任してからできていると思っています。ファン・サポーターが夢見たようなチームになるために、自分たちのそういった積み上げができていけばいい。それが私の持っている野心であり、やりたいことです。



力強く誰にも止められないチームになるために

Q、細かく振り返っていくと、ターニングポイントになるような試合、もしくは印象に残っている試合はありますか。
A、タフな質問ですが、ゲームによって違う要素があって良かったり、良くなかったりします。パワフルにできたこともあれば、試合を支配しながらとても良いゴールを奪えた試合もありました。サガン鳥栖や、ガンバ大阪との試合がそうした試合でした。ただ、セレッソ大阪戦はいいプレーができなかったなかでも、無失点に抑えてアウェーで勝利を掴みました。苦しい展開で、自分たちで結果を残すこともできました。私が気に入ったゲームも多くありました。ですが、肝心なことは安定してそうした試合をすることです。好不調の波が出ないようにしなければいけません。自分たちのパフォーマンスを常に高いレベルで出していけるようにしていけたらと考えています。今は自分たちの弱点として相手に少し良い時間帯を与えてしまっている。力強く誰にも止められないチームになるためにも、トロフィーを奪っていくチャンピオンになるためにも、自分たちのプレーを追加タイムも含めて95分間しっかり出し切らなければいけません。そこは改善していかなければいけない点だと思っています。

Q、北海道コンサドーレ札幌戦の前半は非常に良い内容のゲームでしたが、後半は手綱を放したように試合の流れが変わってしまった。まさに、今改善すべき点が表面化したゲームでした。
A、私もそう思っています。チームにもその話を伝えました。我々が3ポイントを掴めるようなゲームでした。まずポジティブな点は決定機を多く作れたこと。それは前向きに捉えています。ピッチの上でしっかりとハードワークし、やり切って力を出してくれたと思います。そして、攻撃の場面ではスペースをうまく使い、良い動き出し、良いテンポでプレーできていました。違う試合だとしたら、そこで数点は入っていたかもしれません。その形を90分間出し切れるかだと思っています。特に後半の立ち上がりの15分間が気になりました。パフォーマンスのレベルが落ちてしまっていた。もっとアグレッシブに、相手をもっと押し込んでいかなければいけない時間帯でした。レベルを落とさず、ぶれずに波を持たずにやっていくという話にもつながっています。このクラブが持っている希望、野心、チャンピオンになること、それがみんなの野望、野心、やりたいことだと理解しています。あの前半のレベルを保ちながら後半も戦わなければいけない。そうしたメンタリティを植えつけながら、もっと成長させていければ良いと思っています。

Q、選手それぞれが変化、成長してきました。『全ての選手が欠かせない』という答えになることも理解していますが、あえて欠かせなかった選手はいますか。
A、私の答えは分かっていますね(笑)。ピッチに送り出した11人全員が、誰も止められないような選手たちになってくれることを望んでいます。それが私の作りたいチームです。いろいろな味を出してくれる選手がいます。彼らを信じて全選手の一つひとつのプレーを伸ばしていければいいと思っています。


Text by 馬場康平(フリーライター)