新体制発表からチーム始動を経て沖縄・国頭キャンプがスタート。1月23日には2024明治安田Jリーグの年間スケジュールも発表された。果たして新シーズンのチームはいかなるサッカーを見せてくれるのか。指揮官が極めんとする積極的なスタイル、新戦力が持つポテンシャルと既存戦力との融合、そして全ポジションでの激しいポジション争い。そこには開幕が心待ちになるような魅力と可能性が詰まっていた。今回は2024シーズン開幕に向けた中間報告として、ここまでの取り組みとチームの現状をお届けする。
ついに年間スケジュールが発表され、ファン・サポーターもシーズン開幕を待ち遠しくしているはずだ。2024明治安田J1リーグ開幕戦は2月24日にセレッソ大阪とアウェイで対戦し、3月2日にはホーム味の素スタジアムにサンフレッチェ広島を迎える。4月には浦和レッズと鹿島アントラーズとの“国立2連戦”も控える。J1リーグに初めて東京を本拠地とする3クラブが集い、首都の覇権争いにも注目が集まる。
そのなかで、FC東京は「夢見たチーム」へ、着実な歩みを見せている。新シーズンに向けて新たに高宇洋、遠藤渓太、小柏剛、荒木遼太郎らを補強。また、コーチングスタッフも増員し、視点を細分化させて課題克服へと挑んでいる。
昨シーズンリーグ11位からの巻き返しに向け戦力を整え、今年で13回目となる沖縄・国頭キャンプで本格的な新たなチームづくりが始まった。昨シーズン途中から指揮を執るピーター クラモフスキー監督は「昨シーズンから残っている選手たちと築いた良い基盤がある。このまま改善、成長していきたい」と、継続成長路線を強調する。
今合宿では課題を整理し、順序立てて問題解決に取り組んでいる。まずハイラインハイプレスを基盤に、いかに相手を敵陣に押し込んでプレーするかに注力する。変化という点で、目立つのはボールを奪った後のワンタッチパスの回数だ。選手同士の距離と角度を微調整しつつ、流動的に選手が動き回ってプレス回避する場面も練習中から出ている。指揮官も「良いフットボールもできているし、良いゴールを奪う場面も出てきている」と、手応えを口にしている。
今シーズン初の練習試合となった1月23日のFC琉球との45分×3本のトレーニングマッチでは大量8得点を奪った。だが、それ以上にチャンスの数も多く、もっと得点が奪えてもおかしくないゲームだった。あえて名前を挙げるとすれば、今シーズンの仲川輝人は面白い存在になるかもしれない。横浜F・マリノス時代から彼をよく知る遠藤の加入は大きく、ゴール前に顔を出す回数が明らかに増えている。二人のポジション変更はスムーズで、このコンビが攻撃のリズムを生み出していた。
そして、プロ3シーズン目を迎えた、松木玖生だろう。この試合では左腕に腕章を巻き、持ち前のキャプテンシーを発揮してチームをけん引していた。指揮官が言う、「ピッチに立つ11人それぞれがキャプテンだと思え」を体現する一人だ。強度の高いプレーとハードワークで守備のスイッチを入れ、ピッチを自由に動き回って攻撃の起点にもなっていた。松木自身も責任と自覚をこう口にする。
「今シーズンは自信を持ってできていると思う。実際に、(練習試合で)キャプテンをやらせてもらったので、なおさらチームを勝たせなきゃいけないという思いが今シーズンは強くなった。自信も高まってきて、結構自由にできているので、これを維持しながらもっと質を高めていければと思う」
まだまだ他にも楽しみな選手は多い。明らかに力強さの増した俵積田晃太は切れ味鋭いドリブルにパワーが加わり、さらなるブレイクの予感が漂っている。大怪我を乗り越えた中村帆高も、さほど遠くない時期に帰ってくる予定だ。一芸に秀でた新加入組も加わり、既存の戦力との定位置争いは全ポジションで熾烈を極める。ポジションを約束された選手など一人もいない。
さらに、今合宿では昨シーズンの課題であったセットプレーからの得点増をめざし、練習でも多くの時間を費やしている。細かい位置取りやサインプレーを確認。ショートコーナーのパターンも含めてかみ砕いて、一から見直しを図った。そうした成果が練習試合でも表れ、コーナーキックから森重真人が頭で合わせて最後は安斎颯馬が得点を奪っている。ここからそうした小さな成功体験を積み重ねていく。
開幕に向け連係面の向上と、ハイプレスを基盤にした守備の再構築も必須だ。一歩ずつ乗り越えた先にクラモフスキー監督が口にする「自分たちが夢見たチーム」の姿がある。南国の地で流した汗と、悩ませた頭が“明日のトーキョー”を作っていく。この稿は、熱い指揮官の言葉で締めようと思う。
「ファン・サポーターが誇りに思える、エンターテインメント性の高いチームにしていきたい。そして、勝利を多くつかめるようにしていきたい。それはお約束します」
Text by 馬場康平(フリーライター)
Photo by 新井賢一