プロ2シーズン目のレギュラー争い
父子二代にまたがる青赤の夢
DF 32 土肥幹太
2024シーズンに挑む全青赤戦士を紹介していくスペシャルコンテンツ。果たして開幕を控えた選手たちは何を考え、どんな覚悟で一年に臨もうとしているのだろうか。クラブ愛、タイトルへの渇望、活躍への想い、そして果たすべき役割を胸に秘めた選手たちのストーリーとは──。かつて東京の守護神として一時代を築いた土肥洋一氏(現横浜FCゴールキーパーコーチ)を実父に持つ土肥幹太。トップ昇格2年目 の今シーズンは、開幕前のキャンプからセンターバックの定位置争いに加わるなど、大きな躍進が期待できるシーズンとなるかもしれない。
何とも肝っ玉の据わった若手が登場したものだ。FC東京U-18からトップ昇格2シーズン目の土肥幹太が、堂々とレギュラー組に混ざってプレーしている。沖縄キャンプと宮崎キャンプを終えて帰京した時点でも複数のポジションで競争が継続しており、そこで力強くプレーしてしっかりと定位置争いに加わっているのだ。
相手が強度高く寄せてきた状態でもボールを保持して持ち運ぶ力があり、2023シーズンはボランチとセンターバックの両方でプレー。よりストロングな部分を発揮できる中盤のポジション奪取にも意欲を見せていた。しかし年が明けてみると、ピーター クラモフスキー監督から最終ラインの一角で戦力として計算されていた。「対人プレーをしっかり見てくれる監督なので、ずっとやり続けることが大事だなと思いながらやっていました」(土肥)。ハードワークを貫徹する姿勢が指揮官から評価されたのだろう。
代表級の強烈な“個”が揃う東京にあって、年齢に関係なくストロングポイントを発揮して抜きん出ていかなければ生きていけない。その点、この男には図抜けたメンタルの強さがある。
「自己主張は昨シーズンから自分はできていたと思う。今後はもっと人の意見も聞きながらやっていきたいなというくらい、逆に主張が強すぎた」
宮崎キャンプ中に行われたサンフレッチェ広島との練習試合、隣のピッチに居合わせたのは横浜FCでゴールキーパーコーチを務める実父の土肥洋一氏。かつて青赤に初タイトルをもたらした名守護神だ。そこで「あっち行け」と言われたことがSNSで話題になっていたが、父譲りの強心臓が幼少期からの環境で大きく成長した結果が、今日の幹太なのかもしれない。
その広島戦では、セットプレーの流れから松木玖生のラストパスを受け、トレーニングマッチの1、2本目に勝利をもたらすゴールを足で決めた。ストロングヘッダーのイメージが強いが、器用さも兼ね備えている。マルチに役割をこなすことと合わせて、多角的な能力を有することが魅力だ。
「センターバックだけじゃなくて両方できたほうが、退場者が出た時もやっぱり良いと思う。それが自分の強みなので、どちらのポジションでも活躍できるような能力を伸ばしていきたい」
無限の可能性を持つ背番号32。プロ選手としてのストーリーはまだ始まったばかりだ。アカデミーで受け継いだクラブの血脈、そして実父から受け継いだDNA。土肥幹太が父子二代にまたがる青赤の夢を紡いでいく。
Text by 後藤 勝(フリーランスライター)