選んだ道を正解にするために ──​。<br />
安斎颯馬

INTERVIEW2024.2.23

選んだ道を正解にするために ──​。
安斎颯馬

──1年前倒しでプロ契約を結ばれました。どんな思いでしょうか。
一番に思うのは感謝の気持ちが強いです。1年前倒しで挑戦したいという自分の思いを受け入れてくれた早稲田大学の関係者のみなさんや同期にはすごく感謝していますし、この体制を作ってくれたFC東京にも感謝しています。


──心境としては、ワクワクしているのか、プレッシャーを感じているのか、どうですか。
もちろん先のことなんてどうなるか分からないですけど、自分なりに覚悟を決めて決断したのでワクワクしています。やってやろうという気持ちです。


──
この決断の背景には、昨シーズンに特別指定選手としてピッチに立った経験があると思います。
間違いなくあの4試合がなければ、この決断はなかったです。学生ながらプロのピッチに立たせてもらい、何にも代えられない経験をさせてもらいました。レベルもそうですけど、ファン・サポーターがあれだけ入って、選手一人ひとりが殺気立っていたあの緊張感での試合はあまり経験したことがなかったです。あのスタジアムの雰囲気を味わい、もっとここで勝負したいと強く思いました。



──具体的にその思いが沸いてきたのは、いつごろですか。
昨シーズン、怪我のリハビリを小平グランドでずっとやらせてもらいました。練習には参加できなかったですけど、日常をプロの環境で体験し、この日常のレベルにいることで成長できる、来シーズンはここで勝負したいと思い始めました。ただ、当時は早稲田大学のサッカー部の選手であり、早稲田への思いがなくなることはなかったです。それでも、怪我から復帰後は(関東大学リーグ)1部昇格に向けて最後まで本当に早稲田のために戦ったけど、それは叶いませんでした。そこで来シーズンも2部で戦うのと東京で勝負するのを比較した時に、親など色々な人に相談し、自分の中で気持ちの整理と覚悟を決め、最初は早稲田側に話をさせてもらい、そのあとに東京側に話をさせてもらいました。


──人生一番の決断でしたか。
断トツですね。小さいころから自分で決断することが少なかったので、自分で決めた人生一番の決断だと思います。


──ジュニアユース時代はFC東京U-15深川に在籍していましたが、“東京に帰ってきた”という表現が正しいですか。
正直、『絶対に東京に戻りたい』とも『東京はイヤ』とも思っていなかったです。フラットに考えていました。ただ、キャンプに参加して、ここなら環境面も素晴らしいですし、(地理的に)早稲田との両立も考えて決断しました。最初はそういう感じでしたが、実際に加入するとなると“帰ってきた”という想いは出てきましたね。このクラブへの想いは他の選手よりはあると思っていますし、本当にお世話になったクラブであるので恩返ししたいです。中学生の時には味スタには何回も通っていたので、ルヴァンカップのガンバ大阪戦でピッチに立った瞬間は特別な感情にもなりましたね。


──青森山田高校の後輩である松木玖生選手もいますね。
周りに言われるほどそんなに気にしていないですよ(笑)。でも、時間は空いていますけど、2年間一緒にやっていて分かり合えています。プロでは玖生のほうがたくさん経験しているので、そこは頼もしい存在ですね。まあ、普段の関係性を見てもらえれば分かると思いますけど、僕が後輩かと思うくらいフラットな関係です(笑)。もちろん、思い入れはあるので、一緒にピッチに立って戦えればうれしいですね。



──いよいよ、プロ1年目のシーズンが始まります。
フレッシュな力ではあると思うので、戦う部分でチームを勢いづけられればと思っています。自分の特長はチームのために走って戦えるところなので、周りがきつい時に自分がカバーするなど、しっかりと特長を出しながら試合に絡んでいきたいです。昨シーズンは怪我もあったので、今シーズンはとにかく試合に絡み、シーズンを戦い抜くことが目標です。


──右サイドはウイングもサイドバックもライバルが多く激戦区です。
リスペクトすべき選手たちがそろっていますが、自分にしかできない、出せないプレーもあると思うので、そこの差別化によってアピールすることが一番大事だと思っています。ほかの選手と同じアピールをしても敵わないので、自分らしさをアピールしていきたいです。


──自分で選んだ道を正解にするということですね。
その通りだと思います。青森山田高校にも早稲田大学にも自分で選んでいきましたけど、ここまでの決断ではありませんでした。反対意見もありませんでしたし、自分のなかでの覚悟で終わっていました。ただ、今回は東京を巻き込んだ上での決断であり、早稲田大学ア式蹴球部を途中でやめてしまうことで迷惑をかけた人もいます。反対意見もたくさんありました。それは当然だと思います。だからこそ、この選択をして良かったと証明していかないといけないと思っています。




Text by 須賀大輔(エル・ゴラッソ)