代表経験がもたらした変化<br />
バングーナガンデ佳史扶選手×<br />
野澤大志ブランドン選手(前編)

INTERVIEW2024.2.28

代表経験がもたらした変化
バングーナガンデ佳史扶選手×
野澤大志ブランドン選手(前編)

アカデミー時代から青赤で育ち、昨シーズンはともに日本代表に選出。バングーナガンデ佳史扶野澤大志ブランドンには、確かな自信と自覚が芽生えている。

今年、23歳と22歳を迎える二人は口を揃えて言う。「もう若くない。自分たちが引っ張っていかないといけない」と。

前編では、日本代表の空気を吸い、変わろうとしている男たちに、日本トップレベルの舞台で得てきたことや、日常で大事にしていることを聞いた。



──仲良しの二人ですが、どんな関係性ですか。
バングーナガンデ佳史扶 たぶん大志は僕のことを一つ上だと思ってないですね(笑)。
野澤大志ブランドン  いやいや、思ってますよ。ちゃんと年上だって(笑)。
佳史扶 でも、一緒にトップチームに昇格したからそういう感覚はないよね。
大志 確かに普段は敬語の時もあれば、そうでない時もありますね(笑)。
佳史扶 そこはごちゃごちゃだね。初めて会ったのはFC東京U-18だよね。大志が沖縄から練習生として来て、寮で会った時だと思う。ビンゴ大会やったよね?
大志 二人でちゃんと話したのがいつかは覚えてないけど、たぶん会ったのはその時。
佳史扶 自然と仲良くなっていったよね。
大志 今ももちろんサッカーの話はするけど、普段は本当に他愛もない話をしているし(笑)。
佳史扶 うん、本当に他愛もないことばっかり(笑)。




年齢は佳史扶が1歳上であるが、普段から仲の良い二人。そんな両選手は2023年3月に佳史扶が、12月には大志が日本代表に選出された。まだ、20代前半、U-23世代で吸収力が高い若武者たちは、最高峰の舞台であらゆるものを吸収してきた。そして、日常を過ごす小平では、身をもって体感した高い基準を保ったまま、自身のレベルアップと向き合っている。

──日本代表を経験して最も感じてきたことはなんですか。
佳史扶 自分のなかでの基準がすごく上がりましたね。3月に招集されて、最後は怪我をして帰ってきてしまったけれど、トップレベルのスピード感や雰囲気を直接、肌で感じられたことはすごく大きかったです。今でも感覚は残っていますし、またあの舞台に戻りたい、あの舞台で活躍したいというこれまでになかった新たなモチベーションが生まれたので、すごくプラスに働いています。
大志 上のレベルに行くと、「もっとやらないといけない」と思うのは自然なことだと思うし、僕も佳史扶くんと同じように思っています。代表活動を通じてすごく感じたのは、トップレベルの選手たちは試合になると、みんなスイッチがパッと入ること。もちろん練習は試合に向けて準備しているけど、練習と試合では全く雰囲気が変わりますね。試合で100パーセントの力を出すのは決して簡単ではないけど、代表の選手たちはそれができている。自信を持って自分のイメージをピッチで表現しているんです。そういう姿を見て、試合で“魅せる”ことができる選手になることが大事だとすごく思いました。



──「基準」という言葉について、もう少し詳しく教えてもらえますか。
佳史扶 言ってしまえば全部ですが、特にスピードです。パススピード、走るスピード、判断スピード。やっとJリーグのスピードに慣れてきたと思っていた3月のタイミングで日本代表に選ばれましたが、トップレベルを体感すると、まだまだ甘かったと思い知らされました。「日本代表はこんなレベルなんだ」と衝撃を受けましたね。
大志 僕はゴールキーパーなので、準備が大事だと感じました。ボールを触る前にどれだけ正確な情報を入れているか。それをどれだけ味方と共有し伝えられるか。そこはもっとできないといけないと感じました。

──日本代表での経験を経て、お互いに感じる変化はありますか。
大志 まだ僕が帰ってきてからは一緒に試合でプレーはしていないよね。
佳史扶 確かに試合の部分は分からないけど、大志はこれまでも練習でも試合でも自分のスタイルを持っていたから、東京では昨シーズン途中から公式戦に出始めたけど、全然問題なくやれるとは思っていた。日本代表に選ばれた時もめちゃめちゃうれしかった。正直、びっくりしたけど、あのパフォーマンスなら選ばれるだろうなと。そのくらい大志はしっかりと準備をしてやっていたし、そこは今も変わってない。
大志 ありがとうございます。普段あんまり言われないから、今の言葉はうれしかったです(笑)。



──日本代表を経験して以来、小平での日常で大事にしていることはなんですか。
佳史扶 準備のところですね。日本代表を肌で感じてみて、あそこでずっと戦ってきている(長友)佑都さんのすごさをあらためて感じました。普段の佑都さんをあらためて見ていると、準備や身体のケアなど、当たり前のことを全力で続けている。その姿を見ていると、「こういう人が残っていける世界なんだ」と思うところがありました。そこは自分もすごく大切にするようになりましたね。
大志 これは自分の理想像でもあるんですけど、うまいだけの選手では足りないと思っていて、チームに良い影響を与える選手になりたいです。佑都さんがまさにその代表例で、「コイツが出ていたら」みたいな雰囲気ってあるじゃないですか。その雰囲気がチームにもたらすものはすごく大きいんですよね。もちろん、佑都さんも最前線で10数年戦い続けてきたからこそ今があると思いますし、そこに到達するために焦っているわけではないですけど、チームに良い影響を与えられるために何ができるのかは、自分にすごく求めるようになりました。
佳史扶 それはすごく分かる。だからすべての能力を上げるのは当たり前だけど、良い意味で“焦って”トレーニングに取り組むようになったんだよね。もっとやらないといけないし、その思いは間違いなく強いです。例えば筋力に関して言うと、以前よりはかなり上がってきていると思うんですけど、日本代表に選ばれたり、パリ五輪世代でアルゼンチン代表と試合をしたりすると、全然足りないと感じるんです。だから一日一日の練習を全力でやっています。毎日、寝る時に、その日やり残したことがないようにとこだわっています。 



後編はこちら


Text by 須賀大輔(エル・ゴラッソ)