<マッチレビュー>
今シーズン初勝利をめざして福岡に乗り込んだ東京は、これまでの3試合とは違う布陣で臨んだ。センターバックは、エンリケ トレヴィザン選手の出場停止にともない、森重真人選手の相棒として今シーズン初先発となる木本恭生選手を起用。ボランチにはこの試合が青赤デビューとなる高宇洋選手を抜擢した。またトップ下に松木玖生選手、最前線に荒木遼太郎選手が並ぶ、“ゼロトップ”システムを採用した。
過去1勝1分5敗と勝てていない鬼門の地でもある福岡でピーター トーキョーが反撃の狼煙をあげるべくキックオフを迎えた。
1stHALF—長友弾&タロウ弾でパーフェクトな前半
立ち上がりからボールを握ることに成功した。ボランチの位置に高選手が入った効果は大きく、中盤での経由地として抜群の存在感を示す。それに呼応するように周囲も連動し、距離感よくボールが動く。サイドの流動性もこれまでの試合では見られなかった高い位置での連携を見せ、ウイングとサイドバックがスペースを使い分けながら、高いポジションを取り、押し込む時間を増やしていった。
初シュートまでは時間がかかったたが、前半16分にゴール前で獲得したフリーキックを松木選手が左足で直接狙うも、低く速いシュートは相手ディフェンダーにブロックされた。その直後には流れのなかからチャンスを作る。前半18分、仲川輝人選手が右サイドを突破して鋭い軌道のクロスを入れる。これにファーサイドで待っていた松木選手が頭から飛び込むも、惜しくも合わせ切れなかった。
前半28分、それでも主導権を握り続けていた東京に待望の先制点が生まれる。左サイドで松木選手とバングーナガンデ佳史扶選手が絡み、遠藤渓太選手が起点となって落としたボールに佳史扶選手が反応し、ダイレクトでクロスボールをゴール前へ。グラウンダーのボールはゴール前の長友佑都選手の足元にピタリ。先日、約1年3か月ぶりに日本代表に復帰したばかりの背番号5は、ワントラップから冷静にボレーシュートを蹴り込んだ。J1リーグでは実に2010年以来となる、東京復帰後初ゴールが生まれた。
先制直後のピンチはゴールキーパーの波多野豪選手の好セーブで凌ぐ。すると、前半32分には追加点を手に入れる。中盤に下りてボールを受けた松木選手がロングフィードを前線へ。相手ペナルティエリアの手前で巧みにボールを収めた遠藤選手が背後のスペースへラストパスを送ると、ゴール右斜め45度の位置に抜け出した荒木選手が冷静に流し込んだ。
先制点、追加点、無失点。新たな布陣にも関わらずパーフェクトに近い内容で、試合を折り返した。
2ndHALF—佳史扶の追加点で鬼門の地で24年ぶりの勝利
2点のリードで入った後半は、岩崎悠人選手を投入し2トップのシステムに変更したアビスパ福岡が、ロングボールを使いながら素早くゴールに迫ってくるが、慌てずに対応する。立ち上がり最初の5分間を耐えてからは、前半と同じようにボールを動かしながら敵陣で過ごす時間を増やした。後半6分には右サイドで押し込みながら、中央の松木選手へボールが渡ると、得意の左足でミドルシュートを狙った。
そんななか、後半12分には試合の行方を左右する大きな3点目が決まる。右サイドのポケットを攻略し、長友選手が深い位置からクロスを上げる。これはファーサイドに流れたが、走り込んできた佳史扶選手が左足を一閃。強烈なシュートがゴールネットに突き刺さった。
リードを3点に広げてからは、確実に時計の針を進めていきながら、後半26分には長友選手と遠藤選手に代えて中村帆高選手と俵積田晃太選手を投入。両サイドを一枚ずつ入れ替えた。さらに、後半35分には荒木選手と仲川選手に代え、東慶悟選手とジャジャ シルバ選手を投入し前線の強度と運動量をキープする。
後半37分にはかつてのチームメイトである紺野和也選手を起点とした攻撃から1点を返されたが、7分あったアディショナルタイムをしっかりと耐えてタイムアップ。鬼門と言われ続けてきた福岡の地で24年ぶりの勝利を挙げ、今シーズン初の勝点3をつかんだ。
1週間のインターバルを挟み、次節はアウェイに乗り込んで川崎フロンターレとの多摩川クラシコを戦う。
MATCH DETAILS
<FC東京>
STARTING Ⅺ
GK波多野豪
DF長友佑都(後半26分:中村帆高)/森重真人/木本恭生/バングーナガンデ佳史扶
MF松木玖生/高宇洋/小泉慶
FW遠藤渓太(後半26分:俵積田晃太)/仲川輝人(後半35分:ジャジャ シルバ)/荒木遼太郎(後半35分:東慶悟)(後半45分:安斎颯馬)
SUBS
GK野澤大志ブランドン
DF土肥幹太
GOAL
前半28分:長友佑都 / 前半32分:荒木遼太郎 / 後半12分:バングーナガンデ佳史扶
<アビスパ福岡>
STARTING Ⅺ
GK永石拓海
DF小田逸稀(後半27分:亀川諒史)/井上聖也(後半0分:岩崎悠人)/奈良竜樹/田代雅也/前嶋洋太
MF前寛之
FW紺野和也/ウェリントン(後半14分:シャハブ ザヘディ)/重見柾斗(後半27分:松岡大起)/金森健志(後半14分:鶴野怜樹)
SUBS
GK村上昌謙
DF 宮大樹
GOAL
後半37分:松岡大起
[ピーター クラモフスキー監督インタビュー]
Q、試合を振り返ってください。
A、強く、良いパフォーマンスを出せたと思っています。戦ってくれた選手たちを誇りに思います。前半は自分たちがコントロールしながら、裏を取って相手にとって危険なプレーができ、そこから得点が生まれました。後半は戦い方を継続しながら3点目、4点目を狙いにいけました。そのなかで自分たちのコントロールを失っている時間もあったと思います。そこはアビスパ福岡が長いボールを蹴ってきたり、ダイレクトなプレーがあったからです。それを教訓として自分たちが改善していければと思っています。
非常に良いゴールをとれましたし、良いチャンスを作れていましたし、良いフットボールを出せていました。選手たちが非常に献身的に戦い、自分たちのやっているフットボールに対して信念を持ちながら戦ってくれました。非常に感動しております。そして、試合の最後まで素晴らしい応援をしてくれたファン・サポーターを笑顔でスタジアムから帰すことができて非常にうれしく思っています。自分たちが勝点3に値するパフォーマンスを出せたと思いますし、ここから分析して自分たちのフットボールを作っていきます。
Q、最初の20分は苦戦したように見えました。自分たちで流れを持ってきた選手たちをどう評価しますか。
A、それはゲームの見方の違いかなと思います。どういった形で見ているかによりますが、良いスタートを切れたと思っていますし、自分たちでボールを動かせていました。最初の30分間で自分たちが支配しながら、使いたいエリアを使いながらプレーできていました。最初の20分もボールを持って動かしていながら、そこから自分たちで相手のディフェンスを崩すモノがなかったのかもしれません。ただ、そこから前への意図を出し、しっかりとプレーできました。それを行えたことで2得点というよい報いが返ってきました。
Q、このスタジアムで東京が90分で勝ったのは初めてのことです。感想をお願いします。
A、本当にそうした結果を残せたのは、自分たちがパフォーマンスを出して、選手たちが周りを信じながら戦ったこと、選手たちが我々のフットボールに信念を持ちながら戦ったことへの報いです。そうした負の記録を破れて良かったと思います。それができたのは、熱を持ったファン・サポーターの応援があったからこそです。彼らを東京に笑顔で帰すことができて良かったです。
Q、代表復帰を果たしたタイミングで先制点を挙げた長友選手の評価をお願いします。
A、すごく良いパフォーマンスで本当にクラブのレジェンドだと思います。そしてこのチームのリーダーですし、特別な選手です。ゴールは素晴らしかったですし、前半、自分たちが試合を支配しながら得点になった場面でした。アグレッシブに自分たちのめざすプレーができましたし、もう一度、ビデオで確認しないといけませんが、おそらくエリアの中までサイドバックがアグレッシブに出てきました。二人がよいプレーをした報いだと思いますが、それはチームとしてみんなでやったことだと思います。東京を愛するすべての方は、彼が日本代表に選ばれたことを誇りに思っていると思います。彼にとっても日本にとっても特別なことです。本当に彼は赤ワインのような選手だと思います。年齢を重ねるごとに成熟しています。
[選手インタビュー]
<長友佑都選手>
Q、今シーズン、初勝利となりました。
A、3試合勝てずに悔しい想いをしていて、特に福岡のアウェイではずっと勝てていないと聞いていたので、今日はとにかくみんなでハードワークして勝てたことが嬉しいです。
Q、先制ゴールを決めました。Jリーグでは14年ぶりのゴールです。
A、14年ぶりですか? 恥ずかしいですね(笑)。コンディションが良くて、あのような場面でもゴール前にどんどん入っていけていましたし、チャンスがあれば、というところでした。うまくタイミング良くトラップとシュートができました。
Q、長友佑都選手は日本代表復帰が発表されたばかりです。このゴールが日本代表の試合に向けても大きな力になるのではないですか。
A、勝利というのは格別ですし、得点もアシストもできて勝てたことが何よりです。僕としても自信を持って臨んでいけると思います。
Q、今日ゴールを決めた長友選手も荒木遼太郎選手も、ここ福岡の東福岡高校の出身です。ゆかりある地でゴールを決めましたね。
A、高校の時はこのスタジアムが夢の舞台で戦っていました。このピッチには本当に思い入れがあって、福岡も大好きな場所なので、僕としても喜びが2倍にも3倍にもなりました。
Q、東京としては鬼門と呼ばれてきた福岡の地で24年ぶりの勝利です。今後の試合に向けて、ファン・サポーターにメッセージをお願いします。
A、いつも応援ありがとうございます。24年ぶりですか? 24年ぶりにこの福岡の地で勝てたということで、やっとファン・サポーターのみなさんに勝利をプレゼントできて良かったです。シーズンはまだ長いので、気を引き締めて、浮かれずに練習に励んでいきたいと思います。
<荒木遼太郎選手>
Q、試合を振り返ってください。
A、今日はフォワードの位置での出場だったので、なるべく早くゴール前に顔を出すことを意識しました。良い形で生まれた得点でした。守備もしっかりと連動し、コンパクトな戦い方を表現できたと思います。1試合1得点のペースで得点を重ねられているので、自分の得点を勝利に繋げていきたいと思います。
Q、得点シーンの振り返りをお願いします。
A、自分の頭を越えるボールに対して素早くフォローやサポートに入ることを意識しました。そのなかで、遠藤渓太選手が良い形でボールを受けた後に捌いてくれました。1対1の状況を作ってくれましたし、相手のゴールキーパーの位置を見て、左の隅のエリアに冷静に流し込むことだけを意識しました。
Q、リーグ戦開幕から好調を維持しているなかで、U-23日本代表のメンバーにも選出されました。
A、僕自身のプレースタイルは変わりませんし、良い状態を継続し、結果にこだわってプレーすることに集中しています。代表活動では、どのポジションでプレーするかは分かりませんが、与えられた時間やポジションでパリ五輪の最終メンバーとして生き残れるように頑張ります。
荒木遼太郎 Sportsnavi連動インタビュー「思考と成長と変化」はこちら
<高宇洋選手>
Q、本日の試合を振り返ってください。
A、まずは、ほっとしました。僕自身、ここまで悔しい想いをしていましたし、今日勝たないと次はないと思っていたので、勝てたことが良かったです。
Q、攻撃面で、中央からサイドへの展開をしてダメならやり直すことを、高宇洋選手中心にチームとして冷静に行えていたように見えました。
A、3試合、外から試合を見ていたなかで、もう少し中盤の選手が引き出しても良いのではないかと思っていたので、僕が入ったことによってそれを証明したいと思っていましたし。どこにボールが入っても常に、顔を出してボールを受けて出してを繰り返していました。小泉慶選手や、松木玖生選手、荒木遼太郎選手との距離感は意識していたので、前半はそこでのテンポやビルドアップの仕方で非常に良い形が作れていたと思います。
Q、これまでは、ディエゴ オリヴェイラ選手がターゲットになっていましたが、今日はそのターゲットが不在でした。“選手の受ける意識”についてはどのように見えていましたか。
A、常に、パスを出して動くことを繰り返すことを意識していました。荒木遼太郎選手、松木玖生選手はもちろんですが、サイドの仲川輝人選手や、遠藤渓太選手もより気持ちよくプレーさせてあげたいと思っていました。そこが窮屈になってしまうとチームとして良いサッカーができないと思っていたので、前線の4選手を活かしてあげたかったので、それを実現するためにもより前線にテンポ良くパスを供給していくことを意識していました。
Q、守備の面では前線からのプレスもしっかりと整理されていて、狙いをもったプレスをかけていたように見えました。
A、ミドルブロックの守備のところが個人的には気になっていたので、練習から取り組んでいたサイドの選手を押し出して前線からはめるところもタイミングよくできていたと思います。ただ、全てのシーンでそれをやってしまうとチームとしてもきつくなってきてしまうと思っていたので、ミドルブロックで構えてウイングの選手を落として対応しようと伝えていたので、前線からの守備とミドルブロックで受けるシーンの使い分けが、今日はうまくいきました。最後に失点してしまったシーンは余計だったので、そこは突き詰めていきたいです。
<バングーナガンデ佳史扶選手>
Q、今までの鬱憤を晴らすような攻撃力でした。
A、これまで良い形で攻撃はできていたのですが、ゴールが奪えていない、チームとしてチャンスを決め切れていないというなかで、今回はみんながゴールを決め、自分も決めることができて本当に良かったです。
Q、今日、これまでと違った部分はなんですか。
A、前への意識がより強かったのかなと思います。チームとして、ディフェンスライン、ミドルライン、前線のラインのつながりのところも今までの試合に比べて良い連携ができていたのかなと思います。
Q、ゴールシーンですが、長友佑都選手からのクロスが抜けてくるイメージはありましたか。
A、前半も僕のクロスを長友選手が決めてくれて、この前の試合でも長友選手のクロスボールに僕が中に入っていれば、というシーンもあったので、その右サイドからのクロスボールは試合前から意識していました。実際に、「来たな」と思いましたし、合わせることができて良かったです。
Q、U-23日本代表にともに選ばれている荒木遼太郎選手のゴールもありました。良い流れで代表の活動につなげられるのではないですか。
A、チームとして勝利がなかったなかで、なんとしてもこの試合で勝って代表に行きたいという話をみんなとしていたので、本当に良かったです。自分の特長は攻撃の部分なので、当然ディフェンダーとして守備のところも無失点で抑えることが大事ですし、攻撃のところで今日の試合にようにガンガンいけたらと思います。