<前節・アビスパ福岡戦のレビュー>
待望のリーグ戦初勝利だ。アウェイ福岡の地へ乗り込んだ青赤軍団が、3ゴールを奪取してアビスパ福岡を撃破した。
まさに“役者そろい踏み”。その中心となったのは、日本代表に招集された男たちだった。
まずゴールラッシュの口火を切ったのは、FIFAワールドカップカタール2022以来となる日本代表復帰を果たした長友佑都選手。
前半28分、遠藤渓太選手のキープから抜け出したバングーナガンデ佳史扶選手が左サイドからグラウンダーのクロス。このU-23日本代表からのボールを長友選手がペナルティエリア中央で受け、トラップから鋭く右足を振り抜いて鮮やかにゴールネットを揺らした。5054日ぶりとなるJリーグでのゴール。自らの代表復帰を祝う一撃で、東京が先制点を奪った。
続く前半32分には、東京での活躍が評価されてU-23日本代表に招集された荒木遼太郎選手が抜群の決定力で追加点をマークする。同じくU-23日本代表に選ばれた松木玖生選手のフィードを前線で再び遠藤選手がキープ。ここで右から駆け上がった荒木選手がパスを受け、難しい角度から右足で逆サイドネットへ流し込んだ。
これで荒木選手はリーグ戦4戦4発。また、東福岡高校出身の長友、荒木の両選手にとっては青春時代を過ごした思い出の地で輝く結果にもなった。
そして後半12分にも青赤の日の丸戦士が結果を出す。右サイドをオーバーラップした長友選手のクロスが逆サイドへ流れたところで、後方から走り込んだ佳史扶選手がダイレクトで左足を振り抜く強烈なシュート。抑えの効いた一撃をゴールに突き刺した。
まさに先制点とサイドを左右に逆転させたような展開。サイドバックの演出からサイドバックが得点する形でリードを3点に広げることに成功する。
終盤に1点を返されたものの、試合は3-1で勝利。初スタメンの高宇洋選手が攻撃のリンクマンとして機能したことも大きな収穫だ。代表組の大活躍もあり、素晴らしい内容で東京がシーズン初の勝点3を手にした。
<試合プレビュー>
アウェイ アビスパ福岡戦での今シーズン初白星で、リーグ戦成績を1勝2分1敗とした東京。インターナショナルマッチウイークによる中断期間を挟んだが、ここから上位進出を狙うためには是が非でも連勝を収めたい試合となる。
各年代の日本代表組も高いモチベーションでチームに復帰。それぞれの試合後、日の丸を着けて戦った選手たちは口を揃えて「自分のチームで結果を残して成長したい」と話していた。また、ピーター クラモフスキー監督も「国を代表して戦うエネルギーが選手たちの力になる。良いコンディションで戻ってきてくれた」と語るなど、全員が心身ともに充実した状態で青赤のユニフォームに袖を通してくれそうだ。
また、前節を欠場したディエゴ オリヴェイラ選手もチームに合流。充実した選手層で一丸となって重要なゲームに臨む。
今後を占う大一番で乗り込むのは、アウェイ川崎の地。そう、多摩川クラシコだ。
対する川崎フロンターレは現在リーグ戦3連敗と難しい状況にある。さらに今節は左サイドからの突破で決定機に絡んでいたマルシーニョ選手が出場停止となるが、近年タイトルを多数獲得してきたクラブとしての意地、そしてホーム初勝利を狙うチームが普段以上に高いモチベーションで試合に臨んでくることは想像に難くない。
川崎で注意すべきは、今シーズン新加入のエリソン選手。“闘牛”というニックネームを持ち、重戦車のような突破力と強烈な左足キックを兼ね備えたストライカーだ。シーズン開幕前のFUJIFILM SUPER CUP 2024から公式戦4試合連続ゴールを記録するなど、いきなりエースとしての存在感を存分に発揮。中断期間前の2試合は欠場したものの、多摩川クラシコに向けて復帰濃厚とされている。東京としてはゴール前でしっかりと警戒しておく必要があるだろう。
多摩川を挟んだライバル対決は、どちらにとっても勝利が必要となるゲーム。激戦は必至だ。普段以上に激しさが増すであろう球際の勝負を制し、とにかく勝利への強い気持ちを前面に打ち出したい。東京としては来週の国立2連戦に続く3連戦の初戦。未来に向けて弾みをつけるためにも、一戦必勝を期す重要なゲームとなる。
[選手インタビュー]
<仲川輝人選手×脇坂泰斗選手 スペシャル対談>
──共通点の多いお二人がライバルとして3月30日(土)に多摩川クラシコの対戦を控えています。
仲川輝人 やはり、盛り上がりますよね。30日は僕らにとってアウェイゲームですが、Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsuが満員になってほしいです。会場の雰囲気やグランドコンディションも素晴らしいスタジアムなので、面白い試合をみなさんに届けたいです。楽しみですね。
脇坂泰斗 観に来てくださる両クラブのファン・サポーターやJリーグファンのみなさんに“多摩川クラシコとはこういう試合だ”というのを見せつけるかのような試合が過去にたくさんありました。これまでのゲームに負けないようなベストゲームにふさわしいプレーを見せないといけません。僕らにとってはホームですので、受けに回ることなく、アクションを起こしていきたいです。
──お互いのチームの印象を教えてください。
脇坂 タイムリーな話でいうと長友佑都選手が日本代表に選出されたことや、U-23日本代表の活動に4名選出された印象が強いですね。若い選手も勢いがありますし、一人ひとりにフォーカスできるような能力の高い選手が揃っている印象です。荒木遼太郎選手は鹿島アントラーズから期限付き移籍で今シーズン加入して、結果をしっかりと残しているし、色々なところに注目できるクラブだと思います。
仲川 川崎フロンターレは主力級の選手が移籍などでいなくなってもチームとしての力がある。毎シーズン、主力選手が海外などに移籍するケースが多いにも関わらず、底力というかベースの能力が高いチームという印象です。
脇坂 今はリーグ戦3連敗中で苦しい時間が続いています。
仲川 僕らも直近でいうと、開幕から3試合勝利がなく、第4節のアビスパ福岡戦でやっと勝てました。
脇坂 お互いまだ波に乗り切れていないチーム状況ですので、多摩川クラシコを機に、という想いが強いと思います。そういう意味でもこの一戦が非常に重要です。
──脇坂選手からもありましたが、両クラブの今シーズンの今後を占ううえでも重要な一戦になるかと思います。
仲川 前節の福岡戦でいうと、クラブとして24シーズンぶりに福岡の地で勝利を掴み獲ることができました。福岡相手にほぼ勝てていない時期が長く続いていたなかでの勝利でした。
脇坂 それでいうと僕らも9シーズンぶりに鹿島アントラーズ相手に負けてしまいました。多摩川クラシコまでいつもより長い準備期間を設けたなかで試合に臨めるので、僕らにとってはこの時間は非常に大きいと思います。
仲川 僕らは逆に1週間の中断期間なく試合に臨みたかったというが本音ですね。
脇坂 この2週間が重要だと思いますし、4月の連戦を控えていることを考えると非常に重要な試合になると思います。次節が今シーズンのリーグ戦における一試合と考えることもできますが、今後のチームに勢いを与えるためにも重要な位置付けで考えています。
仲川 僕らは福岡に勝った勢いを継続したいです。試合内容も満足のいくものでしたし、1週間の中断期間はありますが、自分たちのサッカーをどのように見せるかが重要ですし、このような一戦で自分たちの戦い方ができるかどうかが、目標として掲げている“J1リーグ優勝”にも関わってくると思います。重要な一戦といっても過言ではないです。それくらい多摩川クラシコには色々な要素が詰まっています。
──あらためて、お互いのチーム状況を踏まえ、試合のポイントを教えてください。
仲川 お互い、めざすサッカーのベースはポゼッションだと思います。ですが、ポゼッションだけでは川崎相手に勝つことは難しいです。僕らのスタイルとしては、ボールを保持しつつ、縦に速い攻撃をいかに出せるか。そして、今シーズンは無失点の試合がまだないので、失点のリスクを減らしつついかに得点を奪えるかがポイントだと思います。今の僕らにとって一番重要であり、勝利に向けた課題だと捉えています。
脇坂 僕らも攻守におけるゴール前の部分で課題があると思っています。かといって、守備が悪いかというとそうではなく、攻撃時の配置やリスク管理の部分だと思います。攻撃と守備は常にリンクしているので、攻撃をやり切ること、守備においてはどれだけしぶとく守れるかが重要です。この中断期間でしっかりと詰めていきたいです。
──お互いの威信をかけた一戦といっても過言ではないのが多摩川クラシコだと思いますが、そのなかでお二人の熱量や試合に向けた今の気持ちはいかがでしょうか。
脇坂 伝統ある一戦ですね。色々な意味で大事になりますし、ファン・サポーターの熱量やこれまでの歴史を感じています。
仲川 僕は東京に加入してまだ2シーズン目ですが、多摩川クラシコの盛り上がりや両クラブの熱量を感じています。すべての人を巻き込んで良い試合にしたいです。
脇坂 昨シーズンの国立競技場での開催もすごかったですよね。花火とか演出とか。
仲川 かなりすごい演出でしたし、力を入れているのは感じていました。両クラブの選手たちだけが戦っているのではなく、クラブやそこに関わる人たち同士も熱くなるような一戦にしたいですし、そんなイメージを個人的には持っています。
脇坂 最近だと試合前に“多摩川コラシコ”もやっていますよね。僕らが子どもの時はありませんでしたが、僕ら選手たちももちろん認識しています。多摩川クラシコという名前だけが独り歩きしないようなゲームにしたいという想いは強いです。あとは、アカデミー出身選手として、仲川選手だけには得点を取らせないようにしたいです。まだお互いに望むような結果が出ていないなかで、シーズンを終えた時に“多摩川クラシコを機に良くなったよね”と誰もが思える試合にしたいです。
仲川 先ほども言ったように僕らは福岡相手にリーグ戦で勝利を掴むことができ、良い兆しが見えつつあると思います。それを川崎相手にどこまで表現できるかという点でいえば、早く試合がしたいですね。
[ピーター クラモフスキー監督インタビュー]
Q、今節は川崎フロンターレとの多摩川クラシコです。
A、特別な試合ですし、我々のフットボールを見せたいと思います。ファン・サポーターが観ていてワクワクするような、東京というクラブを誇りに思えるような戦いをしたいです。相手の嫌がるところを積極的に狙っていきたいと思います。約二週間、公式戦はありませんでしたが、しっかりと準備を進め、チームも選手も継続して成長できています。
Q、今シーズンの川崎をどのように見ていますか。
A、私も日本に来て、様々なチームと対戦をしてきましたが、川崎は成功を収めてきたチームの一つだと思っています。彼らは毎シーズン、自分たちのフットボールを成長させ、トップを勝ち獲ってきたチームです。それは、彼らが自分たちのフットボールを信じ、ブレずにやってきた功績です。そのようなチームを相手に、我々はしっかりとチャレンジしながら自分たちのフットボールを展開したいと思います。
Q、勝敗を分けるポイントがあれば教えてください。
A、まずは、我々のプレーを見せることです。攻撃では、いま自分たちが積み上げているボールの動かし方をしっかりと表現し、ボールを動かすことで相手の隙を突いていきたい。自分たちのプレーをすることで相手が怖がり、勇敢に自分たちのフットボールを表現できれば得点につながります。守備では、決まりごとを献身的にやり切ることが重要です。
Q、ここから連戦になります。どのような意識で臨みますか。
A、準備が大事ですし、1試合1試合を見ていくことが重要です。選手全員が出場に向けた準備ができています。誰が出たとしても自分たちのフットボールを表現できるようにしていきたいですし、チーム内の競争も激しく、選手それぞれのエネルギーを感じています。まずは川崎戦にフォーカスしたいと思います。