<前節・川崎フロンターレ戦のレビュー>
0-3。一戦必勝を期した多摩川クラシコは、かくも苦い結果となってしまった。
前節と同じ11人でスタートした東京。序盤はボールを回しながら相手陣内に押し込み、前線からの果敢なプレスを仕掛けて主導権を握っていたが、前半34分に先制を許してしまう。
そこから流れは川崎フロンターレに。荒木遼太郎選手や松木玖生選手への縦パスが封じられるなど、東京の持ち味を消しに来た相手に対してなかなか攻撃の形を作ることができず。後半、波多野豪選手の退場後に2点を奪われて敗戦を喫する結果となってしまった。
そんなゲームを人一倍の気持ちをもって迎えた選手がいた。シーズン初先発を勝ちとったアビスパ福岡戦でボランチとしてチームの潤滑油となり、続けてスタメン出場を果たした高宇洋選手。彼にとっては、U-12からU-15世代までを過ごした“古巣”との一戦でもあった。
子どもの頃から慣れ親しんだスタジアム。試合前には「当時から多摩川クラシコは観に行っていた。東京の選手として、あの舞台に立って戦いたい」と話すなど、本人にとっても心に期すものがあったはずだ。
待ち望んでいた大一番で出番を得た高選手は、細かな動き直しと大きなジェスチャーで何度もボールを要求し、中盤の底で最終ラインから攻撃の起点となるべくトライしていく。
川崎が福岡戦を徹底的に研究してきたこともあって、厳しいマークに特長を発揮し切れなかったが、本人は浮き彫りとなった課題をプラスに捉えてしっかりと前を向いている。
「自分としてはあれくらいプレスに来てくれたほうが相手を剥がせる。ハーフタイムにも『もう少し自分を見てほしい』という話は伝えました。プレスに来る相手に対してのポジショニングや判断の速さは、チーム全体としてもっと求めていきたい」
自然と周りからボールが集まるようになってきた。だが、彼が持つ広い視野と高いパスセンスはもっともっとスタジアムを魅了できるはず。継続したチャレンジが彼を起点としたパスの受け方、出し方のバリエーションを格段に増やすのは間違いない。
自分を高め、そしてチームに勝利をもたらすために──。この悔しさが彼を、そして東京をさらに強くする。
<試合プレビュー>
川崎フロンターレとの“多摩川クラシコ”に0-3で敗れ、今シーズン初の連勝を逃した。中央を固く閉める守備をしてきた相手に後手を踏み、今シーズン連続得点中だった攻撃陣も沈黙。ピーター クラモフスキー監督は「結果が出なかったことに全員が痛みを感じている。この痛みを乗り越えて強くなりたい」と悔しさを表した。
開幕から4得点を挙げて攻撃をけん引してきた荒木遼太郎選手は「対策された相手にどうすべきかができていなかった。(松木)玖生と自分のところにあまりボールが入らず、良い攻撃ができていなかった」と反省の言葉を並べた。“東京対策”を講じてくる相手には、それを上回る戦い方が必要になる。チームのスタイルを成熟させるためにも、避けては通れない課題が明確になった。
今節からは浦和レッズ戦、そして中3日で鹿島アントラーズ戦と国立競技場での連戦となる。東京は改修後の国立競技場でいまだ無敗と相性が良いだけに、この2連戦で流れを掴みたいところだ。もちろん、厳しい日程を乗り越えるためには、サブメンバーを含めたチームの総力が試される。新たな選手が新しい風を吹かせ、進化した東京のサッカーを見せてくれることに期待したい。
今節のマッチデープログラムはこちら
[ピーター クラモフスキー監督インタビュー]
Q、ここから国立競技場での2連戦が控えています。
A、練習から良い準備ができている感触です。川崎フロンターレ戦に出場したメンバーはリカバリーの時間に充てていますが、選手たちのフィジカル面やコンディション面を確認しながらメンバーを選考していきたいと思います。
Q、浦和レッズとはシーズン開幕前に練習試合で対戦をしていますが、どのような印象をお持ちですか。
A、練習試合でも対戦はしていますし、しっかりと分析をしながら、相手の基本的なプレースタイルは理解しています。浦和を相手に自分たちの戦い方をどれだけ展開できるかが重要です。そして、多くの得点を奪うゲームにしたいと思います。
Q、浦和戦に向けたミーティングでは、どのようなことを共有しましたか。
A、川崎戦の振り返りをメインに行い、フィードバックをチームに落とし込み、我々がさらに良くなるために、チームとしてのパフォーマンスを高めることを話しました。川崎戦については、攻撃の部分でもう少し相手の脅威になるようなプレーが表現できれば、という試合でした。良い局面を作り出すことはできていましたが、浦和戦ではよりゴールに向かい、得点に繋がるプレーで相手に脅威を与えたいです。攻撃面では、全体的にシャープにしていきたいです。浦和戦に向けて、改善していきたいと思います。
Q、ディフェンス面についていかがですか。
A、修正すべき点はいくつかありますが、川崎戦については10人で戦った時間帯もありチームにとって難しい時間もありました。チームとして構築している守備の基盤を活かして、パフォーマンスに表れるように促していきたいと思います。
[選手インタビュー]
<野澤大志ブランドン選手>
Q、川崎フロンターレとの多摩川クラシコは悔しい結果に終わってしまいました。
A、リーグ戦ではずっとスタメンからは離れていましたが、自分の置かれている状況に関係なく、勝てていない状況が本当に悔しいです。アビスパ福岡に勝利し、良い感触がチーム内にあったことは間違いないですし、川崎戦も退場者が出る前までの時間は0-1で負けている状況でしたが、いくつかのチャンスはありました。開幕から一勝しかできていない状況を打開するため、勝利のために貢献したいです。
Q、今節は野澤選手がゴールマウスを守る可能性が非常に高くなりました。今のイメージや試合に向けた感覚、その後に控えるU-23日本代表の活動に向けてはいかがですか。
A、自分自身のキャリアでAFC U23アジアカップ カタール2024の日本代表メンバーに選ばれること、その先のオリンピックの出場権を獲得することはもちろん大事なことではありますが、まずは東京の選手として、東京のために戦うべき試合が目の前に控えています。まずは勝ちたい。その気持ちが強いです。今節の浦和レッズ戦、日曜日の鹿島アントラーズ戦で出場のチャンスが巡ってきたら、チームの勝利に貢献したいです。チームのために戦うことで、その先に繋がると思っています。それはベンチスタートだったこれまでの試合でもそうですし、出場するしないに関係なく、“すべては勝利のために”という想いです。
Q、特に福岡戦の時はベンチから聞こえる野澤選手の声や振る舞い、試合後の表情が、まさしく今言った内容とリンクする姿が印象的でした。
A、自分自身、色々と整理をして試合に臨んでいます。選手によってチームへの寄り添い方は様々ですが、僕自身は先ほども言ったように試合に出場できなかったとしても、チームの勝利を常に念頭に置いた行動を心掛けています。そのなかで、自分に出場のチャンスが巡ってきた時には、その想いをプレーで表現するだけです。
Q、日本代表選出やU-23日本代表の活動など、短い期間で吸収するものがとても多かったと思います。あらためて東京の活動に合流し、整理する時間も得たなかで迎える国立連戦に向けた意気込みをお願いします。
A、日本代表メンバーとして帯同したAFCアジアカップでは、コンディション不良で出場できず、東京の活動に合流してからも公式戦出場からは遠ざかっていましたが、この数か月で本当に多くの学びと経験を積むことができました。良いことも苦しい時間も経験できましたし、昨シーズンは多くの試合に出場させてもらっていたからこそ、今は試合に出場してチームに貢献したいという想いや貪欲さが増していると思っています。試合出場から離れていたことで感覚的に鈍っていたものもありましたが、先日のマリ代表戦や川崎との試合で取り戻せている感覚です。いつまでも調整する期間には充てていられませんし、国立の2連戦はすぐ目の前に迫っているので、空回りすることなく、自信をもってピッチに立ちたいと思います。
<荒木遼太郎選手>
Q、今シーズンは開幕からリーグ戦で4得点を挙げ、2年ぶりのU-23代表でも存在感を見せました。好調の理由をどう分析していますか。
A、何か特別なことをしているわけではなく、今までやってきたことの積み重ねだと思っています。継続して取り組み続けたことが結果として表れていると思っています。U-23日本代表の活動に久しぶりに招集していただいて、ウクライナ戦では自分自身のプレーというのもしっかりと示すことができたと思います。結果を残すことはできませんでしたが、積極的にゴールをめざして、シュートを打つところまで持ち込むことができた手応えは感じています。短い期間の代表活動でしたが、存在感を示すことができたと考えています。
Q、鹿島アントラーズから期限付き移籍で東京に加入しましたが、今シーズンの目標や、テーマとして設定していることがあれば教えてください。
A、数字の目標だと、ゴールとアシストを合わせて二桁という成績を達成したいです。自分自身に課しているもの、テーマとしては、攻撃面でゴールやアシストはもちろんですが、攻撃の起点になることを意識していますし、特に今シーズンはそこのプレーの質にこだわっています。試合に出場できない時期もありましたが、自分自身の軸やプレーをブラすことなくやってきたことが今の結果に繋がっていると思いますし、今の状況に満足することなくさらにゴールとアシストでチームの勝利に貢献したいと思います。
Q、東京ではトップ下やフォワードとして攻撃の中心になっています。チームの中でどういった役割を求められていますか。
A、中盤の位置でボールを受けた時に、ゴール方向にボールを運ぶプレーや、サイドの選手にボールを送り、自分自身がゴール前に入っていく動きを求められています。先ほども言った通り、攻撃の起点になること、ゴールが生まれるようにプレーで攻撃陣を活性化させることを意識してプレーしています。
Q、国立開催ということでいつも以上に多くのファン・サポーターが集まることが予想されます。そのサポーターに向けて試合の意気込みをお願いします。
A、国立競技場という特別な空間でゴールを決めてチームを勝たせられるように頑張ります。ファン・サポーターのみなさん、今節も熱い応援をよろしくお願いします。