<マッチレビュー>
川崎フロンターレとの『多摩川クラシコ』での敗戦から中3日、国立競技場に舞台を移し、東京は浦和レッズとのホームゲームを迎えた。
連戦を考慮してか、スターティングメンバーは前節から6人を入れ替えた。ゴールマウスは波多野豪選手が出場停止になり、野澤大志ブランドン選手が守り、右サイドバックには中村帆高選手が約11か月ぶりにスターティングメンバーに復帰。センターバックもエンリケ トレヴィザン選手と土肥幹太選手が開幕戦以来となるコンビを組んだ。そして、両ウイングもフレッシュな選手を起用。左に俵積田晃太選手を、右には安斎颯馬選手を置いた。この日のスターティングメンバーの平均年齢は22.73歳と“若い11人”がピッチに並んだ。
新国立競技場では5戦負け知らずという縁起の良い“俺たちの国立”で連敗は許されない。今シーズンのホーム初勝利を懸けて、雨が叩きつけるなかでキックオフを迎えた。
1stHALF—押し込みながらもあと一歩届かず
青赤の選手たちは、序盤からテンションを高くして試合に入った。キックオフからわずか30秒余りでファーストシュートも生まれる。敵陣でボールを引っかけた荒木遼太郎選手がシュートまで持ち込む。こぼれ球にも中村選手が反応するが、シュートは枠を外れた。その後前半5分にはピンチを迎えるも、ここは野澤大志選手がタイミングよく飛び出してチアゴ サンタナ選手のシュートをブロックして難を逃れた。
東京に歓喜の瞬間が訪れたのは前半12分、左サイドでボールをつなぎながら押し込んでポケット(ペナルティエリアの両サイド脇)を攻略する。中村選手が深いポジションをとり、俵積田選手を経由しその落としを高宇洋選手がミドルシュート。これがサイドネットに突き刺さった。ところが、VARのサポートにより、その直前のプレーでファウルがあったと判定され、このゴールは取り消された。
それでも攻勢を緩めない東京であったが、前半24分に理不尽な一撃に沈められる。自陣でボールを拾ったチアゴ サンタナ選手に運ばれると、ハーフライン付近から左足を振り抜かれる。このボールが前にポジションを取っていた野澤大志選手の頭を越え、ゴールへと吸い込まれた。
さらにアクシデントは続き、好プレーを見せていた中村選手が負傷交代。代わりに白井康介選手が投入されて立て直しを図ったが、チーム全体としてはチャンスを生かし切れず、1点のビハインドで試合を折り返した。
2ndHALF—タロウ弾&クリュウホーム初弾で逆転
“俺たちの国立”で、このまま終わるわけにはいかない東京は、ネジを巻き直し後半の戦いに挑む。好機は早々に訪れる。開始約45秒で俵積田選手がカットインして右足を振り抜いたのを合図に攻撃のスイッチを入れる。
そして後半5分には同点ゴールが飛び出す。左サイドのバングーナガンデ佳史扶選手からの折り返しを足元に収めた荒木選手がペナルティエリア手前から右足でシュート。ゴール左隅を射抜き、ゴールネットを揺らした。
さらに後半13分には逆転ゴールが生まれる。こちらも左サイドでボールを持った俵積田晃太選手が右足でクロスボールを入れると、ゴール前で合わせたのはキャプテンマークを巻く松木玖生選手。利き足の左足でうまく合わせたダイレクトボレーが、西川選手の手を弾いて、ゴールへと吸い込まれた。
オープンな展開になり始めた後半29分には仲川輝人選手と遠藤渓太選手のアタッカー二人を同時に投入。前線からのプレスを強め、運動量を保った。押し込まれる時間帯は増えてくるが、両センターバックを中心に粘り強い対応で1点のリードを死守。我慢強く時計の針を進めていった。
後半45分には相手のビルドアップから局面をひっくり返されて一気にゴール前まで運ばれる。しかし、渡邊選手のシュートに高選手が身体を投げ出してブロック。この試合最大のピンチをしのいだ。5分と表示されたアディショナルタイムには原川力選手とジャジャ シルバ選手を投入。最後のカードを切り、逃げ切る体制を整えた。
クライマックスは後半45+4分。伊藤選手に打たれたゴール右隅へと飛んだミドルシュートを野澤大志選手がビッグセーブでストップ。最後まで集中を切らなかった東京が、“俺たちの国立”で今シーズン2勝目を挙げ、試合終了後にスタジアムには『眠らない街』が響き渡った。
MATCH DETAILS
<FC東京>
STARTING Ⅺ
GK野澤大志ブランドン
DF中村帆高(前半32分:白井康介)/土肥幹太/エンリケ トレヴィザン/バングーナガンデ佳史扶
MF松木玖生(後半45+2分:ジャジャ シルバ)/高宇洋(後半45+2分:原川力)/小泉慶
FW俵積田晃太(後半29分:遠藤渓太)/安斎颯馬/荒木遼太郎(後半29分:仲川輝人)
SUBS
GK児玉剛
DF森重真人
GOAL
後半5分:荒木遼太郎/後半13分:松木玖生
<浦和レッズ>
STARTING Ⅺ
GK西川周作
DF酒井宏樹(後半10分:松尾佑介)/佐藤瑶大/マリウス ホイブラーテン/大畑歩夢(後半35分:石原広教)
MF伊藤敦樹/サミュエル グスタフソン/岩尾憲(後半25分:中島翔哉)
FW前田直輝(後半10分:大久保智明)/チアゴ サンタナ(後半35分:興梠慎三)/渡邊凌磨
SUBS
GK牲川歩見
MF小泉佳穂
GOAL
前半24分:チアゴ サンタナ
[ピーター クラモフスキー監督インタビュー]
Q、試合を振り返ってください。
A、エキサイティングなフットボールだったと思います。2つの良いチームがすべてを出しきった試合だと思っています。我々はチームで良いパフォーマンスを出せました。ハーフタイムの時点で結果に値するゲーム展開ではなかったです。前半は良いフットボールをできていましたし、得点が取り消しになってしまいましたが、良い崩しでゴールに向かうシーンがありました。選手たちが自分たちのフットボールへの信念をもち戦った結果、試合をひっくり返すことができたと思っています。今日の勝利の要因は自分たちのフットボールを信じ、周りのチームメイトを信じ、信念をもちながら自分たちのフットボールをできたことだと思います。そして、自分たちの決まりごとをやり切って、得点を取り、ファン・サポーターを笑顔で家に帰すことができたことをうれしく思っております。
Q、川崎フロンターレ戦から修正、変更したことはありますか。
A、川崎戦ではゴール前でのキレが足りていなかったです。そのなかで、退場者が出て10人になり追いかける展開となった結果、難しい試合になってしまいました。前節のパフォーマンスを分析し、もっとゴールに向かい相手に脅威を与えるための練習をやってきました。それを今日の試合で出せていました。何か大きく変えることはせず、自分たちのパフォーマンスを出し切ってくれたことが結果につながりました。我々のフットボールを前進させていくためにすべての選手が毎日努力していることを誇りに思っています。まだまだハードワークする部分も積み上げていく必要があります。正しい方向に進んできていると思っているので謙虚にハードワークを続けていきます。
[選手インタビュー]
<松木玖生選手>
Q、試合の振り返りをお願いします。
A、相手選手のスーパーシュートが決まって、なかなか難しい展開になりましたが、逆転できたことはチームにとってプラスだと思います。今日の試合については、前線からのプレスや、奪ってからのショートカウンターも相手の脅威になっていたと思います。
Q、全体的には大きなピンチは少なく、固く守れていましたが、守備面での手応えはいかがでしたか。
A、守備の部分も少しずつ良くなっていますし、今日も前線から連動したプレスができて、そのうえでエンリケ トレヴィザン選手と土肥幹太選手が前で奪ってくれて、そこからの攻撃がスムーズにできていたと思います。次の試合ではロングボールも入れてくるチームが相手だと思うので、そういった対策もしっかりやりたいと思います。
Q、後半に入ってから攻撃が活性化した要因はなんでしょうか。
A、相手が少し引いてくれたこともあったと思いますが、今日は自分と荒木選手にボールが入ってからの攻撃の厚みが作れていました。今日は特に自分たちが多くボールを受けることができていたので、そこからうまく攻撃につながったのだと思います。
Q、松木選手と荒木選手のコンビネーションも良くなっているように見えます。
A、荒木選手も自分の特長を分かってくれていて、顔を上げるタイミングで常に荒木選手が見えるようなポジションを取ってくれていますし、逆に荒木選手がボールを持った時に自分がうまく関われるようになっていければさらに良いと思います。
<荒木遼太郎選手>
Q、試合を振り返ってください。
A、前半にアンラッキーな形で失点をしてしまい、チームとしてどのようにこの状況を立て直すかが問われていたと思います。しっかりと整理をし、後半に入って自分たちのサッカーをしっかりと表現できたことが勝利に繋がった一番の要因でした。
Q、同点ゴールを含め、後半に入って攻撃面が整理され、活性化された印象です。
A、ハーフタイムに松木玖生選手と、お互いの距離感やプレーエリアを少し下げて前半よりもボールに関わってゲームを作ることを確認し合いました。二人で共有したことがピッチ上で表現できていたと思いますし、良い関係でプレーできた感触があります。チームのビルドアップも活性化できた感覚です。
Q、今日のゴールでリーグ戦5ゴール目となりました。ゴールに向かうプレーやシュートの感覚も研ぎ澄まされているように見えます。
A、ゴール前こそ冷静に、と常に意識してプレーしています。今日もその意識がゴールに繋がったと思います。
Q、国立競技場で今まで良い思い出がなかったとおっしゃっていました。
A、今日のゴール、チームの勝利でその想いは払しょくできました。
Q、次節の鹿島アントラーズ戦は契約の関係で出場できませんが、ここからどのように高めていきますか。
A、自分たちのプレーをブラさずに継続することが大事だと思っています。U-23日本代表に選ばれた際には、チームに貢献することを意識してプレーしていきたいです。
<安斎颯馬選手>
Q、久しぶりのスターティングメンバーでの試合出場でしたが、安斎選手の持つ特長や良いプレーを出し切れた90分間だったと思います。試合を振り返ってみてどうでしょうか。
A、直近5試合で試合に絡むことができなくて本当に悔しかったですし、試合に出られていなかった選手が活躍するのを見て、自分もやらなければいけないと思っていました。チームが勝てていない状況のなか、悔しさをピッチで晴らすことができて良かったです。
Q、守備のブロックを敷くのが速い相手に対し、対応して多くのチャンスに関与していました。攻撃面で意識していたことを教えてください。
A、キャンプから取り組んでいた、クロスが上がる際にファーポストの位置に入ることを、この試合でも意識していました。何本もチャンスがありましたが、決めることができず反省しています。あのようなチャンスでゴールが決められるように、試合の重要な場面で仕事ができるように取り組んでいきたいです。
Q、試合に出られない期間、試合に出るために取り組んでいたことはありますか。
A、試合に出ているメンバーと強度の部分で差が出ないように、練習から強度を落とさず、いつ試合に出ても体力を落とさないように、普段から取り組んでいました。それが今日の試合のパフォーマンスにも繋がったと思うので、続けていきたいです。
Q、今週末の鹿島アントラーズ戦や来週のヴェルディ戦など、4月は試合が続きますが、このあとの試合に向けての意気込みを教えてください。
A、今日は勝つことができましたが、次の鹿島戦含めて勝ち続けないと意味がないです。今日の勝利を喜ぶことも大事ですが、気持ちを切り替えて次の試合に向けてしっかりと準備をして、連戦で苦しいなかでチームを助けられるように頑張りたいと思います。
<俵積田晃太選手>
Q、試合の振り返りをお願いします。
A、前半もボールを握れている時間がありましたし、前半に失点してしまった後も、すぐにチームで集まり話し合いをしました。ハーフタイムのロッカーでも選手間で多くの会話がありました。言葉に表せるような根拠はないですが、失点した後も自分は勝てるなと思っていました。
Q、今日の試合では左サイドから多くの攻撃が見られました。
A、バングーナガンデ佳史扶選手や高宇洋選手とも、前日や試合前にもコミュニケーションを取っていました。自分が欲しいタイミングでパスを受けることができたので、仕掛けやすい場面を多く作れたと思います。今日はプレーしていて楽しかったですし、試合に出られない期間もありましたが、その期間に溜まっていたものをぶつけることができました。
Q、今日のアシストのシーンを振り返ってください。
A、あのようなカットインする仕掛けの練習も多く取り組んでいました。良いスピードのボールをあげることができたと思いますが、もっと質の高いボールをあげられればよかったと思っています。結果としては練習の成果が出たシーンだと思っています。
Q、国立競技場での鹿島アントラーズとの試合がすぐにあります。意気込みをお願いします。
A、相手がどこであろうと、自分たちがやることは変わらないと思っています。リカバリーをしっかりとして、自分のプレーを出せるように準備したなかで、次の試合では得点を奪いチームを勝利に導きたいと思います。