<マッチレビュー>
前節、平均年齢22.73歳という若さを武器に、圧倒的な走力とハードワークで浦和レッズに鮮やかな逆転勝利を収めた東京。これで“新”国立競技場での成績を5勝1分とし、「俺たちの国立」での無敗記録をさらに伸ばした。
浦和戦から中3日という連戦、再び国立で迎え撃つのは鹿島アントラーズ。今節は荒木遼太郎選手が契約の関係で期限付き移籍元クラブとの試合に出場できず、1トップには仲川輝人選手を起用。前節で負傷交代した中村帆高選手に代わって右サイドバックに白井康介選手が入った。
浦和戦の勝利で今シーズンの成績を2勝2分2敗と五分に戻した東京としては。好相性の国立で鹿島に勝利して白星を先行させ、上位進出への足がかりとしたいところ。今後の分水嶺としたいゲームは、今節もスタメン平均23.82歳と若いスターティングイレブンを並べてキックオフを迎えた。
1stHALF—一進一退の攻防で試合を折り返す
序盤こそ左右のポケットを突いてくる鹿島にチャンスを作られたが、しっかりと中央を締めてゴールを割らせない。
徐々にペースを握った東京は前半8分、左サイドを俵積田晃太選手がドリブルで独走してチャンスメイク。続く前半9分には松木玖生選手が右サイドからピッチを横切るようなドリブルを見せて左サイドへ展開。これを受けた俵積田選手がカットインから右足を振ったが、惜しくも相手ディフェンダーのブロックにあってしまった。
前半15分にはまたも左サイドから好機を生み出す。俵積田選手がライン際を縦へ突破すると、その落としを受けたバングーナガンデ佳史扶選手がマイナス方向へ折り返し。これを仲川選手が狙ったが、またも相手選手に防がれてしまう。
前半25分にも俵積田選手が左サイドで積極的に仕掛けていく。カウンターから相手のスライディングをかわしてドリブルで抜け出すと、カットインから右足シュート。惜しくもゴールキーパーの正面を突いたが、左サイドを中心に鋭い攻撃を仕掛けていく。
試合はお互いに決定機を作りきれず、一進一退の展開を見せながらスコアレスで前半を折り返した。
2ndHALF—テル&リキの今季初弾で今季初の連勝!
後半、運動量に勝る東京が少しずつ押し込むシーンが増えていく。後半8分にはペナルティエリア内でこぼれ球を拾った俵積田選手が中央やや右で縦へ持ち上って折り返し。絶妙なボールを送り込んだが、これは中央で誰も合わせることができなかった。
そして後半10分、ついに試合が動く。
この試合を区切りにU-23日本代表としてAFC U23アジアカップに臨む松木選手が左後方からフィード気味のクロス。ここに抜け出したのは1トップで起用されていた39番だった。トップスピードに乗ったままジャンプ一番、バックヘッド気味にボールの軌道を変えて巧みにゴールへ流し込み、東京が待望の先制ゴールを奪取する。仲川選手にとっても待ち望んだ今シーズンの初ゴールとなった。
後半22分には粘り強く持ち上がった松木選手から左へ展開。ここで直前に左アタッカーとして投入されていた遠藤渓太選手が鋭く折り返すと、中央に走り込んだのはまたも仲川選手。ドンピシャのタイミングで押し込んだが、これは惜しくもバーを叩き、追加点には至らなかった。
後半37分にはカウンターから松木選手が抜け出し、ドリブルで持ち上がって並走してきたジャジャ シルバ選手へラストパス。これを1トップに投入されていた70番が狙いすまして右足で流し込んだが、わずかにゴール左へ外れてしまった。
終盤、右サイドで奮闘していた安斎颯馬選手に代えて、後半43分にサイドバックを本職とする徳元悠平選手を右ウイングに投入。前線からの守備強度を上げて逃げ切りを図る。
6分間のアディショナルタイム、反撃に出る相手に勝利への欲求を前面に押し出し、球際の激しさやカウンターでピッチを制していく。
大団円は終了間際に待っていた。
左サイドから攻め込むと、松木選手がキープから横へ柔らかなパスを送り込む。そこへ走り込んだ原川力選手が一度コントロールしてすぐに左足を一閃。浮き上がるような強烈な弾道がゴール左上隅に流れ込み、試合を決める追加点を叩き込んだ。
まさに“至極のフットボール劇場”だ。青赤軍団がその第2幕で鹿島を撃破し、今シーズン初の連勝、そして初の無失点試合を演じ、国立競技場に詰めかけた52,772人の大観衆を魅了した。
MATCH DETAILS
<FC東京>
STARTING Ⅺ
GK野澤 大志ブランドン
DF白井康介/土肥幹太/エンリケ トレヴィザン/バングーナガンデ佳史扶
MF松木玖生/高宇洋(後半30分:原川力)/小泉慶
FW俵積田晃太(後半18分:遠藤渓太)/安斎颯馬(後半43分:徳元悠平)/仲川輝人(後半30分:ジャジャ シルバ)
SUBS
GK波多野豪
DF森重真人
MF寺山翼
GOAL
後半10分:仲川輝人/後半45+7分:原川力
<鹿島アントラーズ>
STARTING Ⅺ
GK早川友基
DF濃野公人/植田直通/関川郁万/安西幸輝
MF知念慶(後半35分:土居聖真)/佐野海舟(後半40分:ギリェルメパレジ)/樋口雄太(後半35分:松村優太)/仲間隼斗(後半16分:藤井智也)
FWチャヴリッチ(後半35分:ミロサヴリェヴィッチ)/鈴木優磨
SUBS
GK山田大樹
DF須貝英大
GOAL
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[ピーター クラモフスキー監督インタビュー]
Q、試合を振り返ってください。
A、良い相手に対してタフな試合だったと思います。フットボールの観点で言っても良いゲームができました。我々の選手たちがハードワークして勝利に値するものが出せたと思います。前半はキレが少し欠けていました。パフォーマンスに関してはOKでしたが、もう少しできたかなと思う部分もありました。ゴール前で相手に対して脅威になるところが足りていませんでした。しっかりとハーフタイムで細かいところを見直し、後半は選手たちが表現してくれたと思います。無失点で終われて良かったですし、もう数点取れてもおかしくない試合でした。重要なことは、ハードに戦って勝利を喜んで、明日リカバリーを行い、また次の勝利へのプロセスを踏んでいくことです。
Q、前々節の川崎フロンターレ戦と前節の浦和レッズ戦、今節の鹿島アントラーズ戦で変わった部分はありますか。
A、まずは自分たちのフットボール信念の継続だと思っています。チームや何かを作る時は真っすぐに進まないといけません。我々のフットボールを作っていくなかで選手たちが我々のフットボールと仲間たちに信念を持ちながら、献身的にやり続けました。
Q、鹿島に勝利できた要因をどのように考えていますか。
A、鹿島という強い相手に対して、チームとして非常に強いパフォーマンスを出せました。相手のことをリスペクトしていますし、本当にタフな試合でしたが、今日は無失点に値するパフォーマンス、勝利に値するパフォーマンスを出せました。また、フィールドの上で献身的に守備の決まりごとに取り組んだ結果です。守備の形やしっかりと決まりごとを実践できたことにより、相手のチャンスが減ったと思っています。選手たちが96分間、フィジカル的にも献身的に戦ってくれました。
Q、来週はヴェルディとの試合になります。監督自身はどのように捉えていて、どのような準備をしていきたいですか。
A、ヴェルディとの試合は特別な試合の一つです。選手にとっても、クラブにとっても、ファン・サポーターにとっても特別な試合だと思っています。色々な感情があり、特別な雰囲気を作ってくれると思います。ダービーでは何でも起こると思っているので、そのための準備をしていきます。今、自分たちの良い点は、フットボールの基盤を作れてきていることです。規律を守りながら、自分たちのプロセスを踏みながら準備していきます。
[選手インタビュー]
<仲川輝人選手>
Q、いつもと違うポジションでの出場となりました。試合を振り返ってください。
A、どこのポジションで試合に出場しようが、チームのやりたい事やるべきことを体現することがサッカー選手だと思います。あとは僕の特長が出せるように裏への抜け出しなどを意識していました。
Q、チーム全体にスイッチを入れるような守備のシーンが多くありました。
A、いつも荒木遼太郎選手がやっているポジションで、これまでの試合を見ながら、献身的な守備の仕方や追い方、味方の選手がどうやったら楽になるのかなどを見つけていました。プレッシャーをうまくかけながら、自由にパスを回させない誘導の仕方ができていた時と、できていなかった時がありました。前半から松木玖生選手と話しながら狙う場所を共有していき改善をしていきました。
Q、ここ2試合、チームとしても勢いのあるプレーができていると思います。
A、川崎フロンターレ戦で負けた後に、選手だけでミーティングも行いました。それが良い効果を生んでいると思いますし、このサッカースタイルを続けることの共通理解を持ってやることで一歩ずつ結果が出てきているので、これを継続してやっていく事が大切だと思います。ただ、勝ったからすべてが良いという事ではなく、試合中の課題も多くあるので、勝ちながら修正していきたいです。
Q、得点シーンを振り返ってください。
A、松木選手がバングーナガンデ佳史扶選手と良い形でボールを運んできてくれて、松木選手が僕を見てくれていたので、パスが出てくると信じていました。パスが出た時に先にボールに触ることを意識していました。僕は松木選手のボールに合わせるだけでしたので感謝したいです。意外にヘディングは得意なので、それが結果に出たと思います。
Q、次節に向けて意気込みをお願いします。
A、勝っている勢いをそのまま崩さないように、勝ちを重ねていくことで上位にいるチームにプレッシャーをかけることもできますし、ヴェルディとの試合は絶対に負けられない戦いになると思います。今日の試合での修正点を見直して、勝てる準備をしていきたいと思います。
<原川力選手>
Q、後半の途中交代はどのようなことを意識してピッチに入りましたか。
A、少しオープンな展開になっていたので、まずは守備のところを意識しながら入りました。押し込まれた時も割り切りながらうまくやれていましたし、ここ数試合のなかでやることを統一できているのが良いと感じています。
Q、ナイスシュートでした。あのシーンを振り返ってみていかがでしょうか。
A、久々にペナルティエリア付近でパスを出してボールが返ってきたので、そこで持ったら自分のクオリティを示す場所だと思いますし、松木玖生選手がうまく落としてくれました。相手選手の股下を狙うかニアを狙うか迷いましたが、ボールの置き位置的に、相手選手の足があまり開かなかったので、ニアを狙ってうまく入れることができました。
Q、次節はヴェルディとの一戦となります。試合に向けて一言お願いします。
A、これまでの流れは関係ないと思いますし、選手もいつもと違う思いで入らないといけません。次節もしっかりと勝って、次に進んでいきたいです。ファン・サポーターのみなさんも東京といえば“FC東京”だと思っているので、それを結果で示せるようにチーム全体で良い準備をしていきたいです。
<松木玖生選手>
Q、試合の振り返りをお願いします。
A、2アシストできたのは、ゴールを決めてくれた選手をはじめ、味方のお陰だと思います。荒木遼太郎選手が今日は出場できませんでしたが、チームとして誰が出場しても勝利に繋げることができていますし、競争力と質の高いチームに成長していると思います。チーム全体で高め合えていることが勝利に繋がっていると思います。
Q、国立競技場での2連戦で1ゴール2アシストと数字として結果を残しました。
A、今シーズンはより数字を意識するようにしています。昨シーズンよりも一つ前のポジションでプレーする回数も増えていますし、僕が前線で攻撃の起点になれば、得点に繋がるということも国立競技場開催の2連戦であらためて再確認できました。貪欲に今後も、得点やアシストを狙っていきたいと思います。今日の試合ではゴールも狙っていましたが、まずはチームの勝利を最優先にプレーすることを意識していました。そのなかで、2アシストでチームに貢献できて良かったと思います。
Q、ここからU-23日本代表としての活動もスタートします。パリ五輪出場権獲得に向けた意気込みをお願いします。
A、直近のリーグ戦では数字で示すことができていますし、得点やアシストでチームに貢献する姿勢は、代表活動でも継続していきたいです。リーダシップも積極的にとっていきたいと思います。
<野澤大志ブランドン選手>
Q、試合を振り返ってください。
A、前半は我慢比べの時間が続き、アグレッシブさに欠ける試合展開でした。ハーフタイムに監督からの話や選手同士でも声を掛け合って、攻守でもっとアグレッシブにトライしようと意識を共有できたことが、後半に繋がったと思っています。
Q、今シーズン初のクリーンシートで試合を終えることができました。どのような準備をしてきましたか。
A、ディフェンダー陣がかなり集中していたので、今日に限っては僕自身の仕事はあまりなかったです。そのなかでも、ボールが来ない時間帯にいかに集中力を切らさないかを意識していました。結果に繋がって良かったです。
Q、5万人を超えるファン・サポーターが国立競技場に集まりましたが、改めて国立競技場での試合はどうでしたか。
A、国立競技場での2連戦は、リーグ戦を勢いづけるという意味でも、国立の雰囲気をみなさんに楽しんでもらうという意味でも、2連勝できて良かったです。
Q、国立の雰囲気も、選手として高ぶる部分はありましたか。
A、得点が決まると歓声が沸いて盛り上がるので、ピッチの中でも鳥肌が立つくらいでした。
Q、U-23日本代表のパリ五輪に向けて重要なアジアカップが始まりますが、どのように貢献していきたいですか。
A、覚悟は持っていますし、東京から選出されているという誇りもあります。代表選手にふさわしいことをプレーで表現したいと思っています。