<前節・浦和レッズ戦のレビュー>
スタメン平均年齢22.73歳の青赤軍団が、アグレッシブなスタイルで浦和レッズに鮮やかな逆転勝ち。未だ無敗の“新”国立競技場に熱狂を巻き起こした。
苦杯をなめた多摩川クラシコから中3日、スタメン6人を入れ替えた若き東京イレブンが国立のピッチで躍動する。
その中心には、キャプテンマークを巻いた松木玖生選手がいた。
前半12分、左サイドを鮮やかなパスワークで崩して高宇洋選手が巧みなミドルシュートを突き刺す。幸先良く先制点を奪ったかと思われたが、これは惜しくも直前のプレーで松木選手にファウルがあったとしてノーゴールの判定に。
前半24分、敵陣に攻め込みながらカウンターを浴びると、ハーフウェイライン付近から約50メートルの超ロングシュートを決められてしまう。相手を褒めるしかないスーパーゴールで先制を許し、前半を0-1で折り返す。
迎えた後半は、東京の独壇場となった。全員が驚異的なハードワークを続けて浦和を圧倒。連動した積極的なプレス、素早いセカンドボールへの寄せで主導権を握る。
まずは後半5分、左サイドを持ち上がったバングーナガンデ佳史扶選手がマイナス方向へグラウンダーの折り返し。ここに“ゼロトップ”の役割を任されていた荒木遼太郎選手が後方から走り込み、ワントラップして右足で鮮やかなミドルシュートをニアに突き刺して同点ゴールを奪った。
同点弾で盛り上がる国立。勢いづいた雰囲気にチームのムードもどんどんとヒートアップしていく。そして後半13分、キャプテンの一撃で、巨大なスタジアムがさらに熱狂の渦と化す。
中央で大きく左へサイドチェンジした松木選手がそのままペナルティエリア内へ。このボールを受けた俵積田晃太選手が前線で切り返して右足でクロスボールを入れると、松木選手が相手ディフェンダーを巧みに押さえながら身体を前に出し、左足で鮮やかなダイレクトボレー。
待望の今シーズン初ゴールは、チームを逆転に導く鮮烈な一撃。国立の大舞台で殊勲のゴールを叩き込むと、雄叫びを上げながら一目散にゴール裏へ向かった。
「自分のゴールを待っていたと思うし、まず一番にファン・サポーターのところへ行こうと思った」
投げキッスと両手で天を指差すパフォーマンスをしながら大歓声に揺れるスタンドへ走っていく。集まってきたチームメートに押しつぶされ、ゴール裏スタンド前には、歓喜の山ができた。「(つぶされたシーンは)うれしすぎて覚えていない」と振り返るほどの喜びを、国立の大観衆と分かち合った。
まさに獅子奮迅の活躍だった。“幻の先制点”の借りを返し、守っては前線からのプレスだけでなく、自陣ゴール前まで戻っての守備も披露。攻撃の起点になりながら、頼りになるキャプテンが豪快なフィニッシュでチームを逆転勝利へと導いた。
<試合プレビュー>
国立競技場が「至極のフットボール劇場」と化した。前節は浦和レッズ相手に2-1で逆転勝利。前半は浦和に先制を許したが、後半は荒木遼太郎選手の鮮やかなミドルシュートと、松木玖生選手の力強いボレーで逆転。最後は身体を張った守備でリードを守り切り、サッカーの聖地に『You'll Never Walk Alone』が響き渡った。
荒木選手は勝因を「平均年齢がめちゃくちゃ若かったので(笑)。みんなフレッシュだったので『今日は走り勝とう』と話していた」と言葉にした。さらに、待望の今シーズン初ゴールを挙げた松木選手は「ゴールを決められることができて、まず一番にファン・サポーターのところに行きたいと思っていた」と、チームとファン・サポーターが一体となって挙げた勝利の喜びを語った。
今節は中3日で鹿島アントラーズを迎える。鹿島を率いるランコ ポポヴィッチ監督はかつて東京を指揮し、アタッキングフットボールを貫いた経歴があり、今節も激しい打ち合いは必至。松木選手は「ゴール前の感覚が戻ってきている。次も得点できる予感がする」と、2試合連続ゴールへの期待が高まっている。国立競技場で再び、「至極のフットボール劇場」の幕が開ける。
今節のマッチデープログラムはこちら
[ピーター クラモフスキー監督インタビュー]
Q、第5節の川崎フロンターレ戦から、前節の浦和レッズ戦に向けて修正したところを教えてください。
A、相手の脅威になる攻撃が川崎戦よりも浦和戦では多く見られました。我々のフットボールのなかで、何かを大きく変えたわけではありません。良いプレーや良い場面、そしてゴールに向かう脅威になるプレーが増えたことが勝利に繋がりました。同じプロセスを踏みながら、鹿島アントラーズ戦ではさらに良いプレーができるように、チームとしての成長を促していきたいと思います。
Q、今節は鹿島との対戦です。
A、常に言い続けていますが、自分たちの戦い方に焦点を置く、自分たちがめざすフットボールをどのような相手であろうと出し続けることが重要です。もちろん、対戦相手へのリスペクトはありますが、相手が我々のフットボールを恐れるようなチームになっていけるようにしていきたいです。
Q、今節は荒木遼太郎選手が出場できません。前節の浦和戦では後半途中から、仲川輝人選手がその位置に入りました。
A、戦ううえでのオプションのひとつです。仲川選手が過去にあのポジションでプレーしていたのは見ていますし、ダイナミックなプレーができることも知っています。また違った形で、相手に脅威を与えられると思っています。彼の能力を考えれば、中央からの飛び出しも大きな武器です。浦和戦では、彼の特長が出せていましたし、試合を良い形で終えられるように貢献してくれました。誰が出たとしても、我々の戦い方にしっかりと貢献してくれるプレーを見せてくれると思います。
[選手インタビュー]
<俵積田晃太選手>
Q、浦和レッズ戦は、開幕のセレッソ大阪戦以来のスタメン出場でした。
A、川崎フロンターレとの多摩川クラシコもベンチ入りはしましたが、試合には出られなかったので、その悔しさを浦和戦にぶつけようと思っていました。久しぶりのスタメン出場ということもありましたが、その気持ちが強かったので、良い形で試合に入れたと思います。
Q、チームとしては逆転勝利で、松木玖生選手のゴールも俵積田選手のアシストから生まれました。
A、数字を残せたのは一つ良かったと思いますが、ゴールは生まれませんでした。前線の選手としてゴールをめざすプレーを見せていきたいです。(アシストのシーンは)対峙した相手ディフェンダーが、ドリブルを警戒していたのか寄せが甘かったので、クロスを選択しました。松木選手がいることは、ぼんやりですが間接視野で見えていました。エリア内に味方の姿も2~3人見えたので、そこを目掛けてクロスボールを送りました。
Q、クロスボールの質が冴えてくれば、プレーの選択肢も広がるということでしょうか。
A、そうだと思います。クロスの供給を警戒してくるのであれば、カットインからのシュートや、切り替えして縦へのドリブル突破など、他の選択肢で仕掛けることができます。選択肢が増えることで良いプレーが増えてくると思いますし、相手にとっても怖い選手になれると思います。貪欲に仕掛けるプレーを出していきたいと思います。
Q、浦和戦では両ウイングに良い形でボールが入る回数も多くありました。
A、ウイングの選手に良い形でボールが入れば、チームとして浦和戦のように良い試合運びができると思います。積極的にボールを要求して、自分がチャンスを演出できるように、仕掛けていきたいですし、僕自身の特長であるドリブルを武器にして、勝利に貢献したいです。鹿島アントラーズ戦まで中3日のスケジュールですが、個人的に疲れは溜まっていないので、この勢いのまま試合に臨みたいと思います。
<小泉慶選手>
Q、浦和レッズ戦ではチーム全体が連動したサッカーで逆転勝利を収めました。
A、失点はしましたが、前半の入りも決して悪くはなかったですし、後半も入りが良かったからこそ逆転に繋がりました。まずは同点に、そして2点目を奪う姿勢とプレーも全員が同じ意識を持っていました。試合の入り方の重要性をあらためて感じた試合でした。
Q、浦和戦の走行距離が14kmとチームトップでした。ハードワークの表れかと思います。
A、率直に90分で14㎞走って、負けなくて良かったと思っています(笑)。長い距離を走れば良いという問題でもないですし、ここから控える夏場の試合を考慮しても、頭を使って質の部分も考えながら走りたいと思っています。走りの質を意識して、今後に繋げていきたいです。
Q、6試合を終えて2勝2分2敗という結果です。ここから上位争いに食い込むために、求められる部分を教えてください。
A、まずは連勝することです。それがなければ上には行けません。優勝を争うチームは必ず連勝しています。だからこそ勝った次の試合が一番大事だと思っています。
Q、今シーズンはキャプテンにも抜てきされましたが、あらためてチームの状況を踏まえたなかで、どのような立ち位置や振る舞いを意識していますか。
A、キャプテンは大変だな、というのが素直な想いです。過去、キャプテンとしてチームを引っ張ってきた選手たちは本当にすごいなと実感しています。チームメイトはあまり考えずに自分のプレーに集中しなよ、と言ってくれますが、自分としてはせっかく選んでもらったこの状況や立場から逃げずに向き合いたいと思っています。もちろんプレーで魅せることが選手として一番の仕事ですが、それ以外の部分でも支えていきたいです。
Q、国立競技場の高揚感や雰囲気は特別なものがあると思います。あらためて鹿島戦に向けて、ファン・サポーターにメッセージをお願いします。
A、先日の浦和レッズ戦は、平日の試合にも関わらず、たくさんのファン・サポーターのみなさんが会場で後押しをしてくれて、あの雰囲気のお陰で逆転勝利に繋がりました。ピッチに立つと、みなさんの声から伝わってくるパワーを感じます。次の試合も国立競技場ですし、鹿島アントラーズを相手にまた違った雰囲気や熱気を感じられることを楽しみにしています。そして、その最高な雰囲気、特別な空間で勝利をみなさんに届け、喜びをともに感じたいです。それこそが、最高の瞬間だと思っています。
<白井康介選手>
Q、前節の浦和レッズ戦の振り返りをお願いします。
A、中村帆高選手の怪我もあり、緊急的な出場にはなりましたが、落ち着いて試合に入ることができました。守備の局面でも落ち着いて対処でき、安定してプレーできた点は良かったですし、何より勝てたことが良かったです。
Q、急に出場機会が巡ってきたなかで、あらためてどのようなことを意識しましたか。
A、対戦相手が浦和ということを考えた時、両ワイドの選手を活かした攻撃を仕掛けてくると思っていたので、まずはその局面になった時にしっかりと抑えることを意識しました。
Q、キャンプの時にも安斎颯馬選手と同サイドの縦関係でプレーしていましたし、安定感がありました。
A、安斎選手のストロングポイントでもある走力や攻守の切り替えがあったお陰で、後ろの選手としてとてもプレーしやすかったです。プレーのなかでコミュニケーションをとりながら、守備のポジショニングも賢くプレーしてくれたお陰で安定感が出たと思います。
Q、あらためて、ここからの目標を教えてください。
A、苦しい時間もありましたが、チャンスが巡ってきた時のために、常に良い準備を続けてきました。浦和戦のように、出場した試合でチームの勝利に貢献していきたいと思います。いつでも良い準備ができています。