<前節・北海道コンサドーレ札幌戦のレビュー>
開始早々に思わぬ形で失点を許した東京。その後も相手にボールを保持される時間帯が続いた。
そんな苦しい状況を打破したのが、頼りになる背番号9。ディエゴ オリヴェイラ選手が見せた乾坤一擲のプレーだった。
まずは前半27分。中盤まで落ちて右サイドからのビルドアップに関与し、ワンタッチで右前方へ絶妙なスルーパス。ディエゴ選手のポストプレーを見越してスペースへ走り込んでいた高宇洋選手がフリーで抜け出すと、この浮き球クロスに中央で俵積田晃太選手が左足ボレーで合わせて同点とする。
試合を振り出しに戻した東京は、中盤と最終ラインの2ラインでコンパクトさを保ち、中央を締める形で相手の自由を奪っていく。そして相手が見せる一瞬のスキを見逃さないように、焦れずに集中した試合運びを展開していく。
静から動へのスイッチを入れたのは、後半15分過ぎ。それまでの展開からは想像できないような激しいプレスを仕掛けて、札幌の戸惑いを誘う。
そして後半20分、スイッチをさらにもう一段階上げ、連動性を持った積極的なプレスで敵陣に襲いかかる。
ディエゴ選手が相手ゴールキーパーのビルドアップに寄せたことをきっかけに札幌のパスワークが乱れ、安斎颯馬選手が高い位置でカット。そのボールを受け直した9番は、前方の仲川輝人選手に預けてゴール前のスペースへ侵入していく。ここで仲川選手が相手に囲まれながら粘ってつないだボールに走り込み、相手ディフェンダーがブロックする寸前で左足を伸ばして逆転ゴールを流し込んだ。
集中した構えから、居合い抜きのような斬れ味鋭いショートカウンター。そして彼のフィニッシュもまた、刹那のような一瞬のスペースとタイミングを突いた一撃だった。
個人としては3試合連発、そしてチームは3連勝。殊勲のストライカーは「自分が得点を決めた試合ですべて勝っていることがうれしい。自分が決めてもチームが勝てなかったら何の意味もない。これを続けていきたい」と笑顔で語った。
何度も煮え湯を飲まされてきたアウェイ札幌の地で2012シーズン以来となる勝利。これでリーグ戦の順位を4位に上げた。
<マッチプレビュー>
前節は北海道コンサドーレ札幌に2-1で逆転勝利を収め、3連勝を飾った。札幌ドームでは実に12シーズンぶりとなる勝利。3試合連続となるゴールを決めたディエゴ オリヴェイラ選手は「この場にいなかった選手も小平グランドでともに競争しながら戦っている。だからこそ、みんなで勝ち取った勝利だと思う。自分のゴールも決勝点だったから本当にうれしいけれど、それもみんなで奪った得点。ファン・サポーターと一緒に全員でこの喜びを分かち合いたい」と胸を張った。
味の素スタジアムに柏レイソルを迎える今節は、4位に浮上したチームをさらに加速させる存在が戻ってくる。U-23日本代表としてAFC U23アジアカップ カタール2024に参加し、パリ五輪行きの切符を勝ち取った松木玖生選手、野澤大志ブランドン選手だ。松木選手は「自分のサッカー人生で記憶に残る大会になった」と振り返りながら、東京での戦いに向け気持ちを高めている。「次はしっかりと東京で活躍して、さらに価値を高めるために良い準備をしていかないといけない。自分自身も目に見える結果を残していきたい」
勝利への強い想いはどの選手も変わらない。チーム一丸となって勝点3を掴み、東京が優勝争いに名乗りを上げる。
今節のマッチデープログラムはこちら
[ピーター クラモフスキー監督インタビュー]
Q、北海道コンサドーレ札幌に勝利し、3連勝となりました。
A、我々にとって大切なことは、ピッチ上で起きたことにアラートに対応することです。ここまでの結果については、選手・スタッフの取り組みをリスペクトしていますが、次の試合に向けて何をするべきか、どのようなアクションを起こすかが重要です。継続することが成長に繋がります。今節の柏レイソル戦もタフに戦いたいと思います。
Q、直近の試合では、失点しても気落ちすることなく逆転する力が付いてきています。
A、過去にそのような試合があったのかもしれませんが、今ここで創り上げている環境に選手たちはハングリー精神を持って臨んでくれています。忍耐強さや選手個々のキャラクター、それぞれのメンタリティが嚙み合った時、どのような障壁も乗り越えることができると思っています。自分たちの道を切り開くためのチャレンジを継続すること、歩みを止めないことが重要です。
Q、札幌戦では、ポジションにとらわれないプレーが得点に繋がったと思います。
A、高宇洋選手は素晴らしい仕事をしました。札幌戦の同点ゴールは、チームとしての良い要素が多く詰まっていたと思います。俵積田晃太選手のフィニッシュも良い動き出しがあったからこそ生まれた得点です。そのような選手個々の良いプレーは練習から多く見受けられます。小平グランドでの日々のトレーニングで積み上げてきたことが選手たちにしっかりと返ってきたことを嬉しく思います。一方で、改善すべき点もありました。継続すること、課題を改善することで、また一つ成長に繋がると考えています。
Q、これまでの得点シーンを振り返って、チーム全体の流動性をどのように感じていますか。
A、一番はチームとしての成長とスペースの使い方だと思います。相手の嫌がるエリアやスペースをうまく突き、連動性やプレーの繋がりを選手たちは意識してくれています。仮に札幌戦でディエゴ オリヴェイラ選手がフォワードの位置で出場しなかったとしても、代わりに出場した選手があのポジションでプレーする選択、サイドに流れた高選手にパスを送る選択をしていたことでしょう。チーム全体の意識や理解は、まだまだ成長できると思っています。チームとしての形があるからこそ、流動性が生まれます。特に我々は前への意識が強いです。試合を観ていて、身体に電流が走るようなエキサイティングなシーンが得点に繋がっていると感じています。
[選手インタビュー]
<ディエゴ オリヴェイラ選手>
Q、3戦連続弾がチームに3連勝をもたらしました。
A、リーグ戦開幕直後のチームは、なかなか勝ち切れず私たちが望むような結果が付いてきませんでした。個人としてもコンディションが上がらない時期もあり、全体的に良いスタートを切ることができずにいました。4月の下旬からチームとしても個人としても調子が上向いている手応えがありますし、今の良い状況が続くように意識してプレーしていきたいと思います。3試合連続ゴールは私自身のキャリアを振り返っても、多く経験できているわけではありません。ですが、何より一番嬉しいことは、私がゴールを決めた3試合すべてで勝利できていることです。チームの勝利と、私自身が決め切れていることがうまくリンクできていると思います。
Q、仲川輝人選手をはじめ、選手間の好連携が得点を生み出す要因に繋がっていると思います。
A、みなさんもご存知の通り、仲川選手は非常に高い能力を兼ね備えている選手です。そして、どのポジションで出場したとしても高いクオリティのプレーで攻撃を支えてくれていいます。それは私にも言えることで、チームが求めるのであれば、今とは別のポジションでプレーする必要もあるかと思います。チームの勝利のために全員が力を合わせることが重要です。
Q、直近のチームとしての得点はディエゴ オリヴェイラ選手が必ず関与しています。
A、北海道コンサドーレ札幌戦の得点もそうですが、チームとして戦えている、連動している証だと思います。札幌戦の1点目については、本来中央の位置でプレーしている高宇洋選手がチャンスを活かしてサイドに流れたことが得点に繋がりました。また、私たちフォワード陣も攻撃だけではなく、守備へのサポート意識や強度も高まっていると思います。ポジションなどにとらわれない、全員が同じ意識で戦えていることが良い結果に繋がっている一番の要因です。
<松木玖生選手>
Q、U-23日本代表の活動を優勝で終え、あらためてどのように振り返りますか。
A、連戦続きの試合日程でしたし、チーム全員がタフに戦えたからこそ優勝できたと思います。良く戦い抜いた、というのが率直な感想です。韓国との試合で敗れましたが、チームとして積み上げてきたものが優勝という結果に繋がったと思います。今まで経験できなかったことがこの大会では多く味わえましたし、自分のサッカー人生においても記憶に残る大会で、濃密な時間を過ごすことができました。良い形で東京に帰ってきて、チームも1位を狙えるポジションに位置していますので、しっかりと切り替えて貢献することに集中したいと思います。
Q、代表活動中も東京の試合や結果を注視していたと伺いました。
A、怪我人なども出てしまっていたなかでタフに戦ってくれていた印象です。ゴールデンウイークの連戦でしっかりと3連勝できたことで、チーム全員の矢印がさらにまとまり、同じ方向に進んでいます。今節はホームゲームですし、しっかりと勝って、チームとしての価値を高めていきたいと思います。僕自身、久しぶりにチームに合流しましたが、活気に溢れていますし、練習から良い雰囲気でプレーできています。僕自身は代表活動から合流したばかりですので、芝生の感触や天候に慣れ、コンディション面をしっかりと調整していきたいと思います。
Q、柏レイソル戦に向けて、重要なポイントがあれば教えてください。
A、まずは、僕らが代表活動で離れていた期間にチームとして積み上げてきたものに僕自身の長所を融合させて、さらに良いものを生み出したいです。味の素スタジアムでの試合なので、勝利が絶対条件です。ホームゲームでの“勝利”を一番にこだわってプレーしたいと思います。
<安斎颯馬選手>
Q、北海道コンサドーレ札幌に勝利し、チームは現在3連勝です。どのような手応えを得ていますか。
A、U-23日本代表の活動で中心選手がチームを離れていた点でいえば、3連勝という結果にチーム全体でも手応えを感じていると思います。ですが、試合のなかで感じる課題や修正すべき点は多いですし、無失点で試合を終えることができていません。ここからさらに上をめざすために突き詰めないといけないところが多くあります。3連勝はしましたが、ここからが上位争いのスタートだと思っています。毎試合負けることができません。柏レイソル戦を含め、目の前の試合に勝つことだけ考えて取り組みたいです。
Q、チームは現在4位で、得点数がリーグトップの21得点です。要因を教えてください。
A、様々な得点パターン、特にオープンプレーからのゴールが多いことがプラスに働いていると思います。得点バリエーションが増えているということは、試合に出ている11人、ベンチメンバー、試合に出場できなかった選手も含めて、自分たちのやりたいこと、戦術的なポイントを全員が同じ意識で理解できている証拠だと思います。最近ではクロスからの得点が多いですが、ゴール前に侵入する際のポイント、ボールを流し込むポイントの理解がチーム全体で深まっています。そして、東京の選手たちはとてもクオリティの高い選手が揃っています。攻撃の共通理解度の高さが得点数リーグトップの数字に表れていると思います。
Q、右のウイングで出場する際に意識していることを教えてください。
A、チームのために戦いたい想いが強いです。誰かの分まで走る、きつい時に自分の戦う姿勢でカバーすることを常日頃から心がけています。東京ヴェルディ戦では、前半で退場してしまい、迷惑をかけてしまいましたが、チームメイトに救われました。そういった想いも含めて、今度は自分がチームを助ける番だと思ってプレーしています。
Q、ファン・サポーターのみなさんに柏戦の意気込みをお願いします。
A、5月は連戦が続く厳しいスケジュールですが、試合に出るメンバー、出られないメンバー、ファン・サポーターの方々も含めて東京に関わる全員が一緒になって戦うことが大切だと思っています。みなさんの応援を力にして、自分たちはピッチ上で、プレーで示していきます。前回のホーム 京都サンガF.C.戦も、後半の攻め込まれた苦しい時間帯にみなさんの声援が間違いなく僕たちを後押ししてくれました。あと一歩、あと数10センチの勝負になった時に、力になっています。今節も一緒に戦ってください。
安斎颯馬選手 ORIGINAL COLUMN「365 -成長の分岐点-」はこちら