<マッチレビュー>
前節、北海道コンサドーレ札幌戦で12シーズンぶりに札幌の地で勝利し、3連勝を挙げた東京は4位へと順位を上げた。首位の背中も見えてきたなか、今節はホーム味の素スタジアムに戻ってきて2021シーズン以来3シーズンぶりの4連勝をめざして柏レイソルと戦った。
約1か月間、U-23日本代表の一員としてカタールの地で激戦を繰り広げ、パリ五輪の出場権を獲得して帰ってきた松木玖生選手がスターティングメンバーに名を連ねた。久しぶりのJリーグの公式戦ながら、その腕には青赤のリーダーの証であるキャプテンマーク。警告累積で出場停止となった小泉慶選手に代わってボランチで高宇洋選手とコンビを組んだ。また、3試合連続ゴール中のディエゴ オリヴェイラ選手にとっては古巣との一戦となった。
1stHALF—早々に失点も着実にゴールを重ね2点をリード
開始早々に先制点を許した前節の札幌戦に続き、いきなり自分たちのゴールネットを揺らされた。自陣ペナルティエリア前で仲川輝人選手がボールをキープしようとするも、相手に引っ掛けられて、こぼれ球をマテウス サヴィオ選手に蹴り込まれた。
しかし、今の東京はちょっとやそっとのことでは下を向かない。
松木選手が仲川選手に声を掛けて鼓舞するなど、チーム全体でスイッチを切り替えると、前半6分に同点ゴールが生まれる。コーナーキックをショートコーナーで素早くはじめて俵積田晃太選手がドリブルで仕掛けてクロスボールを入れると、エンリケ トレヴィザン選手のヘディングシュートはゴールキーパーに止められたものの、こぼれ球を仲川選手が押し込む。自身のボールロストから喫した失点の分を取り戻し、ミスをすぐに取り返す背番号39がスコアを振り出しに戻した。
追い付いて以降はディフェンスラインからのビルドアップが機能し、押し込む展開に持ち込んだ。左サイドを俵積田選手とバングーナガンデ佳史扶選手の連係で崩し、素早いクロスボールを入れると、ファーサイドから全速力で飛び込んできた安斎颯馬選手がペナルティエリア内で倒されてペナルティキックを獲得。前半32分、このチャンスをディエゴ選手が決めて、4試合連続ゴールで逆転に成功した。
さらに、前半37分には左コーナーキックのこぼれ球に反応した松木選手が豪快に左足で蹴り込み、スタジアムのボルテージが一気に最高潮に達した。
ところが、アディショナルタイムに突入した直後、勢いに乗ったチームをアクシデントが襲う。
ディフェンスラインでボールロストして相手フォワードが抜け出すと、カバーに入ろうと飛び出してきた波多野豪選手が相手選手を倒したと判断され、レッドカードが提示されて退場と判定される。今シーズンJ1リーグ初出場となる児玉剛選手をゴールキーパーとして投入する代わりに仲川選手が下がった。
2ndHALF—数的不利を撥ね返せずドロー決着
後半も立ち上がりに失点する。キックオフから1分もたたない内の出来事だった。センターバックの犬飼選手にセンターサークルを越えた位置でボールを持たれると、誰も寄せることができずに豪快にミドルシュートを打たれる。ボールはゴール左上隅へと流れ込み、リードを詰められた。
その後も押し込まれる厳しい時間帯が続き、どうしても数的不利な状況をひっくり返すことができない。後半13分には左右に大きく揺さぶられ、ペナルティエリア内に放り込まれるクロスボールは何とか撥ね返していたが、こぼれ球を拾われたところでまたしてもミドルシュートを許してしまう。白井選手のミドルシュートは児玉選手がセーブしたが、セカンドボールがゴール目の前にいた島村選手の足元にこぼれ、押し込まれて同点に追い付かれた。
試合を振り出しに戻されてからは東京も前に出ようと試みるが、なかなかボールをキープする時間を作れずに苦しい試合展開を強いられる。
それでも、後半27分に原川力選手と長友佑都選手を投入して押し返そうと試みる。しかし、何度かセットプレーのチャンスもあったが生かし切れず、試合は3-3でタイムアップ。数的不利な状況で勝点1を残す結果となった。
MATCH DETAILS
<FC東京>
STARTING Ⅺ
GK波多野豪
DF白井康介/森重真人/エンリケ トレヴィザン(後半45分:木本恭生)/バングーナガンデ佳史扶(後半45分:ジャジャ シルバ)
MF松木玖生/高宇洋/仲川輝人(前半45+5分:児玉剛)
FWディエゴ オリヴェイラ(後半27分:原川力)/俵積田晃太(後半27分:長友佑都)/安斎颯馬
SUBS
DF徳元悠平
FW野澤零温
GOAL
前半6分:仲川輝人/前半32分:ディエゴ オリヴェイラ/前半37分:松木玖生
<柏レイソル>
STARTING Ⅺ
GK松本健太
DFジエゴ(後半33分:立田悠悟)/古賀太陽/犬飼智也/関根大輝(後半29分:川口尚紀)
MF白井永地/土屋巧(後半0分:戸嶋祥郎)/島村拓弥(後半44分:熊澤和希)
FWマテウス サヴィオ/小屋松知哉(後半0分:木下康介)/細谷真大
SUBS
GK守田達弥
FW鵜木郁哉
GOAL
前半2分:マテウス サヴィオ/後半1分:犬飼智也/後半13分:島村拓弥
[ピーター クラモフスキー監督インタビュー]
Q、本日の試合の総評をお願いします。
A、色々なこと、多くのことがあったゲームだったと思います。前半と後半でまったく違う展開になりました。前半に関しては自分たちが出そうとしているフットボールができましたし、ボールを動かしながら自分たちが使いたいスペースを活用することで、良い攻撃ができていました。そういった部分は継続していきたいと思っています。
後半は10人で戦わなければいけない状況になってしまいました。もちろん10人で戦うのは常に難しいものだとは思いますが、選手たちはしっかりとすべてを出し切ってくれました。数的不利な状況でも頭の中をクリアにして、団結して自分たちのキャラクターをしっかりと出して、後半もプレーしてくれました。この後、自分たちのパフォーマンスがどうだったのか振り返りをして、継続しているプロセスを踏みながら、しっかりとコンディションを回復して次の試合に向かっていきたいと思います。勝てなくて残念ですが、この勝点1を持って次の試合に向けて準備していきます。
Q、タイトなスケジュールのなかで、怪我やコンディション調整なども厳しい状況だと思いますが、連戦を乗り越えるために大切にしていることは何でしょうか。
A、大切なのは自分たちがやっているプロセスを継続していくことです。今日の試合でも多くのポジティブな面があったと思いますので、それをしっかりと継続していくことです。次の試合に向けては、良い回復をすることも大切ですし、どの選手がフレッシュな状態で良い準備ができているのか、次の試合に向けてそういったことを見極める時間はまだあると考えています。
ただし、いつも言っていることですが、長いシーズンのなかでは全員の力が必要です。もちろん難しい状況になることもありますが、誰が出てもインパクトを残せるようにしておくこと、そして良いパフォーマンスに貢献すること、誰が出たとしても自分たちのフットボールを成長させていかなければいけません。その兆候はすでに我々には見えています。まだまだ成長できる伸びしろがあると思っていますので、めざすところに向けてブレずに続けていきたいと思います。
[選手インタビュー]
<松木玖生選手>
Q、試合を振り返ってください。
A、前半の立ち上がり早々に失点してしまいましたが、自分たちが求めているサッカーが表現できたことで、前半のうちに3ゴールを奪えたと思います。後半の立ち上がり早々に相手のスーパーゴールもあり、チームとして守備的にかまえ過ぎたことで耐える苦しい時間が増えてしまいました。前半で一人退場してしまったこともあり、後半は守備の時間が長くなってしまいました。
Q、うまく合わせたボレーシュートでした。
A、前日の練習からこぼれ球をシュートする狙いはありました。前日からボールフィーリングがとても良かったので、うまくインパクトできたと思います。僕自身、味の素スタジアムでのリーグ戦初ゴールでしたので、その点については嬉しく思います。
Q、一人少ない状況で後半に入るにあたって、チーム全体でどのように整理しましたか。
A、ハーフタイムには、ある程度ブロックを敷いてしっかりと守り、カウンターで追加点を狙っていこうという話になっていました。ですが、守備に重きを置きすぎて、後半はほとんどチャンスを作ることができなかったので、悔いの残るものになりました。
Q、2点差を追いつかれて試合が終了しました。
A、先ほども言った通り、自分たちがめざし、求めているサッカーが今日の試合もできていたので、大きく悲観はしていません。ロッカールームの雰囲気もとても落ち込んでいるというわけではなく、次の試合に向かって頭をクリアにして、整理して臨もうという空気感でした。
<高宇洋選手>
Q、試合を振り返ってください。
A、勝点2を失った試合でした。試合の入りの失点は大きな反省点ですが、前半全体を通してみると、自分の中でも手応えはありました。個人的なところでボールを引き出すところ、リスク管理、ボールを回収するところはほぼパーフェクトにできていました。チームとしても3点とることができていましたし、距離感を含めて相手を押し込む時間も長かったので、非常に良い内容でした。ですが、退場者が出てしまい、すごく厳しい状況になったと思います。それでも2点の差がありましたし、もう1点とれるチャンスもあったので、勝ち切れなかったことはまだまだ自分たちの力不足だと思います。反省点はしっかりと突き詰めていかないといけないと思います。
Q、一人少ない状況で迎えた後半はどのような意識で試合に入りましたか。
A、決して受けることはしないように、攻めようと話していました。その中で早い時間帯に失点してしまいました。そのシーンではもっと自分たちが圧をかけていかなければいけなかったですし、逆に受ける形になってしまっていたので、もっと集中して試合に入らなければいけなかったと思います。ただロングボールを蹴るだけにならないように、しっかりとボールを動かすことも意識していました。上手くいった部分もあったので、もっと細かい部分をすり合わせていきたいと思います。
Q、同点になった後は、どのようなことに意識してプレーしていましたか。
A、立て続けに失点をしてしまっていたので、4失点目は絶対にしないように共有しました。そのなかで一つ、二つ剥がせれば前向きにサイドの選手が関われるようなシーンがあったので、そこで一刺しできればと思っていました。ただ、さらに失点をしてしまい勝点が0になることなく、勝点1が取れたことをポジティブに捉えていきたいです。
Q、試合を通して選手同士で話しているシーンが多くありました。
A、3点取ったあとも誰一人満足していなかったですし、僕個人としてももっと圧倒したいと思っていました。僕が個人的に思ったことでも、年齢は関係なく気付いた時にはしっかりと共有して改善していきたいと思います。それがチームの共通認識になると必然的に会話が増えてくると思います。その点は、チーム全体で多くの意見がでるようになり徐々に良くなってきていると思うので、継続してやっていきたいと思います。
<白井康介選手>
Q、試合を振り返ってください。
A、前半早々に失点してしまいましたが、その後、良い形で3点を取ることができました。前半を退場者なく終えることができれば良かったのですが、後半頭に失点してしまい、難しい展開になってしまいました。
Q、ジエゴ選手とマテウス サヴィオ選手の対策やマッチアップの感触はどうでしたか。
A、大きくは崩れなかったと思いますが、相手もハードワークをしてくる選手なので、こちらも攻めあぐねる形にはなっていました。お互い良さを消し合いながらやっていた印象です。
Q、守備の面での振り返りをお願いします。
A、2失点目は、決して失点してはいけない時間帯でした。相手のシュートが凄かったということはありますが、それでもやはりボールホルダーにもっと寄せなければいけませんでした。後半、フワッと入ってしまったというのが反省点です。その後、さらに失点して追い付かれてしまいましたが、リードを考えても、どれだけ優位な時間を長く保てるかが重要なところだったので、早い時間に追い付かれてしまったのが残念です。
Q、守備の時間が長かった分、攻撃のパワーがもう少し必要でした。
A、攻撃のパワーがなかなか出せず、相手も上手くリスクマネジメントをしていたので、ずっと押し込まれる展開が続いてしまいました。カウンターが数回ありましたが、なかなか攻撃し切れたシーンは少なかったと思います。
Q、さらに連戦が続きます。チームとしてどう切り替えていきたいですか。
A、3連勝の後に引き分けを挟んだので、次の試合で勝つか負けるかが本当に重要になります。5月の連戦というのは総力戦になるので、全員の力を合わせて必ず勝点3をとって、上位争いに残っていきたいです。