<前節・名古屋グランパス戦のレビュー>
前半からコンパクトな陣形で中央を締めてくる名古屋グランパスを攻めあぐね、活路を見出すことができない東京。前半にペナルティキックで先制を許すと、後半にも2点を追加されて、0-3という苦しい展開を強いられてしまう。
ベンチで見守っていた選手たちは、なかなか思いどおりにいかない試合にパワーを溜め込んでいた。ようやく流れを変えるゴールが生まれたのは後半33分。反撃への思いを強く抱いていた三人の男たちが、渾身のプレーでゴールネットを揺らす。
右サイドでクイックなスローインを受けた長友佑都選手が横パスへつなぐと、一気にインナーラップする形で前線へダッシュ。ここで高宇洋選手がワントラップから鋭いスルーパスを供給し、右サイドのポケットへ抜け出した長友選手がスライディングで中央へ折り返す。これを中央で仕上げたのは荒木遼太郎選手。3選手がそれぞれの持ち味を存分に発揮した速攻で反撃弾を決めてみせた。
絶妙な狙いどころとパススピードで局面を打開した高選手の縦パス、「魂の攻め上がりや」とアシストシーンを振り返った長友選手のインナーラップ、そして長友選手からの浮き球のスライディングクロスを巧みに右足のインサイドでゴールに流し込んだ荒木選手の決定力。三人が絡んだボールの道筋や人の動きに矢印が見えるかのような鮮やかな攻撃だった。
「簡単なシュートに見えるかもしれないですけど、ボールも浮いていたし、絶対に決めなきゃいけないところだったんで、神経をとがらせて決めました」と振り返った71番。U-23日本代表から戻ってきたポイントゲッターにとっては、“タロウ、ここにあり”をアピールするような青赤復帰弾となった。
その後、何度もビッグチャンスを作ってゴールに襲い掛かった東京だったが、相手の身体を張った守備や好セーブ、ゴールラインギリギリでのクリアなどに阻まれてスコアは動かせず、リーグ戦5試合ぶりの黒星。荒木選手は「上に行くにはああいうところを決め切らなければいけない。(復帰戦で)点を奪えたことはうれしいですけど、負けたことが腹立たしい。引きずっても良くないので、すぐ切り替えて、みんなですり合わせながら、助け合いながらやっていきたい」と力強く前を向いた。
<マッチプレビュー>
前節は名古屋グランパス相手に1-3で敗れ、5試合ぶりの黒星を喫した。ピーター クラモフスキー監督は「簡単に失点してしまう部分は改善しなければいけない。厳しい教訓にはなったが、しっかりと身に付けて次に向けて準備をしていきたい。それができれば相手にとって倒しにくいチームになっていける」と試合を振り返った。
東京は名古屋を上回る11本のシュートを放ち、この試合から復帰した荒木遼太郎選手にゴールが生まれるなど、攻撃陣は依然として好調。それだけに守備面の課題は明らかだろう。荒木選手は試合後、「ゴールはうれしいけど、負けたことが腹立たしかった。ただ、引きずってもしかたないのですぐに切り替えたい」と言葉にした。
今節は横浜F・マリノスを味の素スタジアムで迎え撃つ。2020シーズン以来勝利がない相手だが、攻撃力に自信を持つ相手をしっかり封じることができれば、東京にとって大きな自信になるはずだ。名古屋戦で4月7日の鹿島アントラーズ戦以来のスタメン出場となった野澤大志ブランドン選手は「必ず勝って、チームとして上に行けるように頑張っていきます」と力強く語った。その言葉どおり、チームとして向上し、一歩前進できるかどうかが試されている。
今節のマッチデープログラムはこちら
[ピーター クラモフスキー監督インタビュー]
Q、失点数を減らしていくことが今のチームの一番の課題と捉えていますか。
A、複雑に考えすぎないことが重要です。問題に対してシャープに取り組むことで、自分たちが“こうなりたい”と志向するチームに一歩近づくことができると思います。改善すべき重要なポイントの一つです。ここまでの失点で大きく崩されたシーンは少ないと考えていますが、直前の場面でしっかりと対応することが求められていると思います。失点をすることで、当然、我々がイメージしている試合展開に持ち込むことが難しくなってしまいます。90分のなかで、予期せぬ場面や展開が訪れてしまうこともありますが、そのような困難をうまくかわし、乗り越えながら前に進むことが重要です。
名古屋グランパス戦でも試合中に難しい場面が多々ありました。守備の局面でも自分たちに流れを引き寄せるような、攻守の繋がりをあらためて意識したいと思っています。繋がりがうまくいっている試合は相手にとって脅威を与えられています。大事なことは、自分たちが何を改善して、どのように磨きをかけていくかを同じ意識で理解することです。
Q、今節対戦する横浜F・マリノスの印象を教えてください。
A、数日後にはアジア王者になっていることでしょう。実力のあるチームです。対戦相手すべてにリスペクトの気持ちをもっています。アジアチャンピオンを獲るであろうクラブとの対戦にワクワクしています。どのような相手だろうと、まずは我々のフットボールを展開することが重要です。相手の流れになってしまったとしても、全体をコントロールすること、意図を持ってプレーすること、ハードワークを怠らないことが、勝利に直結すると思います。
[選手インタビュー]
<エンリケ トレヴィザン選手>
Q、チームの状況を考えると、上位を争うために失点を減らすことが求められていると思います。
A、相手の攻撃を防ぐことが役割ですから、センターバックの選手として非常に責任を感じています。攻撃も守備もチーム全体で取り組むべきことですし、全員でアジャストしていかないといけませんが、私たちディフェンスの選手たちが中心となって失点を減らすために改善が必要です。次の試合は無失点で勝利に繋げたいです。
Q、失点を減らすために一番の修正ポイントは何ですか。
A、状況に応じたコミュニケーションが一番重要です。ミスから与えた失点、相手が攻撃の枚数をかけて決めた得点、様々なケースがありましたが、どのような形であれ、まずはディフェンスの選手が中心となってコミュニケーションで最終ラインからコントロールすることが必要だと思います。
Q、今節は横浜F・マリノスとの一戦です。
A、私たちは前節、名古屋グランパスに敗れましたが、その前は3勝1分けと好調を維持していました。次の横浜FM戦で勝利することで、自分たちのリズムや自信が取り戻せると思っています。
Q、横浜FMには個の能力が高いフォワード陣が揃っています。
A、強烈な存在ですし、チームとしての完成度も高い、素晴らしいチームです。横浜FMのようなクオリティの高いチームから勝点3を取ることで、自分たちのモチベーションも間違いなく上がります。難しい試合をチーム一丸となって乗り越え、勝利することが、チームとしての自信に繋がると思っています。
<荒木遼太郎選手>
Q、名古屋グランパス戦の得点シーンを振り返ってください。
A、まず、良い感覚でプレーできていますし、U-23日本代表の活動もあり、数週間チームの活動から離れていましたが、やりやすさやプレーのしやすさを感じています。僕自身のやるべきプレーや求められている部分を表現できたシーンもありましたが、やはり一番は勝利したかったです。クロスからの得点については、チームとして取り組んでいる形ですし、僕自身も東京にきてから意識している崩しの一つです。チームとしても今シーズンは、あのような得点シーンが増えてきていると思います。チームとしての得点の形を持っておくことは重要ですし、積み上げてきた成果を感じています。
Q、チームに合流してすぐに得点を決めたことに大きな手応えを感じていますか。
A、リーグ戦が開幕してから僕自身うまくいきすぎているな、と心配していましたし、またこのように合流後すぐに得点を奪えたことにホッとしています。継続して良いプレーを続けていきたいです。
Q、複数失点の試合が続き、前節は第9節以来の敗戦。あらためて、今ここで整理すべきポイントはどのような点ですか。
A、まずは失点を減らしたいです。これだけ失点が多くてもまだ上をめざすことができる順位にいることは大きいですし、上位争いも混戦状態ですので、1点差の試合や拮抗した内容の試合も増えてくると思います。守備面の課題を修正することが、上位に定着するポイントだと思います。
Q、横浜F・マリノス戦に向けて、意気込みをお願いします。
A、横浜FMを相手に勝利できれば、またチームとしての勢いが出てくると思いますし、負けた後の試合というのは、どのような相手であれ特に重要です。自分たちらしさを出して、攻撃的にプレーして勝ちにいきます。
<ディエゴ オリヴェイラ選手>
Q、水曜日の名古屋グランパス戦は悔しい敗戦となりました。どう振り返りますか。
A、私たちがとても良いプレーができたわけではありませんが、1-3というスコアほど実力に差があったわけではないと思います。東京にも多くのチャンスがありましたし、悲観してはいません。課題を修正して、次の試合に備えたいと思っています。
Q、アルビレックス新潟戦以降、5試合で4ゴールを決めています。ディエゴオリヴェイラ選手自身、どのような変化を感じていますか。
A、特に何かを変えたことはありません。リーグ戦序盤に負ってしまった怪我も治り、コンディションが回復したことが一番の要因だと思います。久しぶりに公式戦に復帰したアルビレックス新潟戦以降、自分の本来のプレーが不自由なくできているということが得点を積み重ねられている理由です。
Q、東京がここから上位を争うために、どのようなことが必要になると考えていますか。
A、今シーズンは上位争いが混戦状態ですし、もちろん私たちにも上を狙うチャンスがあります。ただ、シーズン中はタイトルのことを考えるよりも、目の前の試合に集中することが大切です。上位に離されないようについていけば、最後に結果が出ると思います。
Q、ファン・サポーターへ、今節の意気込みをお願いします。
A、横浜F・マリノスは非常に良いチームなので、難しい試合になると思います。ただ、ホームでは何としても勝たなくてはいけません。ファン・サポーターのみなさんの応援はいつも僕たちの力になっています。今節はブラジルフェスタが開催されると聞いていますし、そんな一日の最後に勝利の喜びを届けたいと思います。